モバイルWi-Fiサービス「MUGEN WiFi」と「AiR-WiFi」、WiMAX業界へ参入した「5G CONNECT」を経て急成長を遂げた株式会社FREEDiVE。
事業の拡大と進化が勢いを増していくなか、次なるステージとして取り組みを始めたのは「SkyeSiM(スカイイーシム)」というeSIMサービス。「1日単位で購入できる日本人の生活スタイルにあったeSIM」というサービスモデルにユーザーからの支持が集まっています。
今回は同社Digital Communication事業本部 事業戦略・マーケティング統括の富塚大海(とみづかおうみ)さんに、SkyeSiMサービス誕生の経緯をお話していただきました。
海外渡航者も国内ユーザーも。広がりを見せるeSIM事業

ー「MUGEN WiFi 」「AiR-WiFi 」「5G CONNECT」の3つの通信事業を経て、次は「SkyeSiM」でeSIM領域に参入されました。そのきっかけはなんだったのでしょうか。
富塚大海さん(以下、富塚):MUGEN WiFiから5G CONNECTまでの事業を通して、国内のWi-Fi市場で成果を上げることができたので、次は海外Wi-Fi事業に挑戦していこうという話になりましたが、「eSIMの事業をやろう」と決めていたわけではありませんでした。
正直私も海外Wi-Fiに関する専門的な知識は持っていなかったので、事業づくりのスタートラインは限りなくお客様の視点に近かったと思います。
まずは世界を知ろうということで、eSIMの世界・国内におけるマーケット動向調査や既存の商流・サービスに関する比較表の作成、既存のお客様に対するアンケート調査など、思いつくところからひたすら状況の精査をしていくなかで「eSIM」に出会い、そこから具体的な事業企画が動き出しました。
ー具体的に、どのような調査を行っていったのでしょうか。
富塚:最初はやはり海外Wi-Fiの存在が頭を占めていましたので、調べるにしても「どんな海外Wi-Fiがいいのか」や、既に存在する海外Wi-Fiサービスと比較して「うちでどんなことができるか」を考えていました。
しかし海外Wi-Fiの市場を調べるほどに「参入が難しい」と感じるようになりました。
現在の弊社基盤では、大手他社サービスのように空港のカウンターで受け取れる仕組みにしたくても、いきなりその仕組みを作るのは難しい。無理やりサービスをリリースすることは簡単ですが、お客様に利のないサービスが淘汰されるのは自明です。
また、モバイルWi-Fiレンタル事業を運営するなかで、実際に淘汰されるサービスをみてきたのも、また事実。そうやって競合サービサーの動きやや市場を見ていけばいくほど、海外Wi-Fiそのままのサービスで勝てるビジョンは見えなくなりました。
だからこそお客様の需要を徹底的に調査していたのですが、そんなときにヒントが見つかりました。とある女性誌に掲載されていた日本人海外渡航者向けの記事(女子旅特集)で、海外渡航時の不満に「海外Wi-Fiは使いたくない」という声がありましたその理由も言われてみれば納得のものばかりで、「届くまで時間がかかる」「受け取りカウンターに並ぶのが面倒」「旅行中に無くしてしまわないか不安」「返却に手間がかかる」「リチウム電池内蔵は面倒でこわい」中には「重くてダサい」という声も。
その時に気づいたのが「そもそも海外Wi-Fiのレンタルしかないから使っているだけで、それ自体が求められているわけではないんだ」ということでした。
その後数日もしないうちにテレビのトレンド系ニュースで、海外トレンド層の中ではもう当たり前になっているレンタル不要・返却不要なeSIMサービスの特集がされており「見つけた」という気持ちで、新規事業をeSIMで行うビジョンが見えました。
私の上長も既にeSIMを知っていて、理解を得やすかったのも事業化のポイントだったかもしれません。
ーSkyeSiMの強みやアピールポイントを教えてください。
富塚:実際にお客様に一番喜んでいただけているのは、1日単位で購入できるところです。
例えば、日本を5日間離れるとすると、海外Wi-Fiの場合は受け取ってから返却するまでの5日間でレンタルする必要があるため、5日間のレンタル代が発生してしまいます。
ですが、本当に使いたい期間は飛行機に乗っている移動時間を除いた、真ん中の3日間だけという場合もあります。
また、旅行期間は3日間だとしても、レンタルプランが合わずに仕方なく5日間のプランを買うということも。
ですが、1日単位で契約できるSkyeSiMなら柔軟に必要な期間だけ買えるため、金額を抑えることが可能です。
あとは、今は国内専用プランも提供しているところもアピールポイントです。
ー国内プランもあるということで、完全に海外向けのサービスというわけはないのですね。
富塚:もともとは海外渡航者向けでしたが、海外でしか使えないというわけではありません。
1日単位で契約できる使いやすさが、仕事で国内出張に行かれる方からのニーズもありました。
「必要な時にサクっとeSIMでいいじゃん」と普段使いしていただけることもありますし、月末にギガをちょい足しする目的で利用してくださるお客様もいらっしゃいます。
一番安いプランなら税込み396円なので、ワンコインです。
トレンド層を味方に。手探りで始めたSkyeSiMの大きな可能性

ー先ほどSkyeSiMの幅広い使い方が伺えましたが、リリース当初に想定していたターゲット層はどこでしたか。
富塚:最初は27歳~34歳の女性、いわゆる“旅女子”と言われる方々をターゲットにしていました。
現在の利用者状況としては、22歳~40歳ほどまで広がりました。
ー国内外まで広がった現在のサービス状況からすると、かなり絞られたターゲット層のように思いますが、最初にそこを狙った理由はありますか。
富塚:私自身が海外Wi-Fiの市場について学びながらのSkyeSiMリリースという背景もありましたので、トレンドに一番敏感な層にサービスユーザーのコア層になっていただくことができたら、そのお客様の声を起点にサービスをどんどん改善していけると考えました。
例えば、全く同じ時間帯に同じ名字の方から注文が入ったとすると、それはおそらくご家族様からの申し込みです。名字は違うけれど、同じ時間帯に同じ旅行期間で同じプランでの申し込みがありましたら、それは多分パートナーさん同士かなと。
そういった利用状況にあわせて限定クーポンをお届けするなど、サービスのさらなる充実を目指しているところです。顧客関係管理(CRM)の考え方が近いかもしれません。
ー実際にeSIM事業を始めてみて、想定と違った発見などはありましたか。
富塚:これはポジティブな驚きですが、思っていたよりも市場が大きかったです。
世界ナンバーワンのeSIMサービス・airaloさんの市場シェア1%を取れるだけで、国内では圧倒的なシェアが獲得できると言われています。しかも、eSIM市場自体も年々拡大していて、正直なところ国内単体のWi-Fiマーケットとは比べ物にならないほどの成長速度です。
現にこうしてSkyeSiMの取材を受けさせていただく機会も増えているので、やはりこれからeSIMの時代は来ると思います。
逆に、それほど将来性がある分野なので、SkyeSiMがリリースされた時はプレッシャーもありました。FREEDiVEを、業界を牽引していく会社にしたいと感じています。
拡大していく市場規模。今後の展望は―

ーSkyeSIM事業で思い描く、今後の展開を教えてください。
富塚:まだ公開できない情報もありますが、弊社が思い描くステージは3段階あります。
最初のステージは「アウトバウンド」ステージ。現状のSkyeSiMでは、日本から海外に旅立つ日本人海外渡航者(アウトバウンドユーザー)を中心に利用していただいています。このマーケットを抑えることが最初のステージです。
次のステージは「インバウンド」ステージ。海外から日本に来られる「訪日インバウンド」の皆さんにもSkyeSiMを知っていただき、使っていただきたい。そのための準備を進めているのが今まさに、といった状況で、既に市場検証も間近といったところです。
3つ目のステージが「マルチバウンド」ステージです。これは私が勝手に作った呼称ですが、いわゆる日本を経由しない海外から別の国へ行かれる「海外to海外」の方です。いわゆるプラットフォームビジネスになろう、という話ですね。マーケットの定義を超えて、地球の距離を近くする。そういった動きが今後のSkyeSiMには求められると感じています。
ーそれを叶えていくために、今後SkyeSiMで取り組んでいきたい施策はありますか。
富塚:eSIMをもっと普及させていくための活動をやっていきたいと思っています。
現在“eSIM先進国”と言われている韓国、台湾、北米エリアでは、国民の80%がeSIMの認知・利用経験を保有しています。それに対して、日本国内でのeSIM市場認知は60%ほど。その中の30%ほどがeSIM利用経験を保有しており、日常使いまで落とし込まれた方はもっと少ない。
アメリカで販売されているAppleのiPhone17の端末はeSIM専用になっていますし、世界的にeSIMが主流になっていく中で、このままでは日本は出遅れてしまうと思います。
eSIMがどんなものか分からないなら、それを「分かる」に変えていきたい。
SkyeSiMのシェアや市場でのポジションも大事ですが、それ以上に文化革新を目標にeSIMそのものを普及させていきたいです。
ー本当にeSIMがこれからの主流になっていくんだなと感じますね。
富塚:そうですね。そのために、やっぱり知ってもらうことが第一歩です。
最近お見かけしたお客様は、3枚のeSIMを使い分けられていました。
スマホの契約時から使っているeSIMに、さらに「節約したいから」と音声通話用のeSIMを追加して、会社で貸与されている法人のeSIMをあわせた、合計3つのeSIMを1台のスマホに入れているみたいです。
そういったお話を聞くと、確実にeSIMの波が近づいてきていると感じます。
ーeSIMの普及を目指して、すでに取り組んでいる活動などはありますか。
富塚:eSIMに関するコンテンツのタイプを年齢層で分けて、情報発信をしています。
特に若い方は柔軟に受け入れてくれる即効性が高いため、tiktok(@skyesim_official)でショートドラマ仕立てにしたコンテンツを投稿しています。内容としては、「こんな時はeSIMがいいよ」というようなものです。
あとはGoogleなどで検索された時に、ちゃんと読んでいただける記事のコンテンツも用意しています。
eSIMはSIMカードのような物理的なものがないので、eSIMに懐疑的な方も当然いらっしゃいます。SNSだけではなく、雑誌やテレビなど、他の路線からもプロモーションを行って幅広い世代にeSIMを知ってもらいたいです。
老若男女すべての方がeSIMに馴染む社会というのは難しいですが、テレビがアナログから地デジに変わった時も順応できたと思います。ガラケーからスマートフォンが主流になっていった時もそう。
定着はしなくてもいいので、「eSIMはこういうもの」と認知してもらえたら嬉しいです。
