瞼の母

5歳で母親と生き別れた番場の忠太郎。博徒になり、母を捜す旅を続けていたある日、弟分を救うため飯岡家の数名を斬る。江戸に向かった忠太郎だが、飯岡家の追っ手も迫る。そんななか、母と思われた女性に「忠太郎は九つの時に死んだ」と告げられ…。

「瞼の母」は、長谷川伸原作の名作戯曲を映画化した作品で、戦後の日本映画界を牽引した銀幕スター、中村錦之助が主演を務めています。監督は加藤泰で、彼自身が脚色を手掛け、わずか15日間という短期間で撮影を完了しました。作品は、流麗なカメラワークや長回し、そして的確なカッティングといった、加藤の職人芸が随所に見られます。これらの要素が絶妙に組み合わさり、観る者を引き込む力強い映像美を生み出しています。