木の上の軍隊

映画「木の上の軍隊」は作家・井上ひさしが残した原案を基に舞台化もされた作品です。
主演に堤真一、共演者には山田裕貴を迎え、終戦を知らぬまま木の上で2年の時を過ごした日本兵の姿が実話を基に描かれます。
監督・脚本を手掛けたのは沖縄出身の平一紘。全編にわたり沖縄で撮影が行われ、戦争の恐ろしさ悲惨さがリアリティを持って迫ってきます。
太平洋戦争末期の1945年、沖縄県伊江島に米軍が侵攻し、やがて沖縄戦に突入。
沖縄が陥落し、2発の原子爆弾が投下され、日本はポツダム宣言を受諾して戦争に負けました。
日本の敗戦を知らないまま約2年もの間、沖縄・伊江島のガジュマルの木の上で生き抜いた宮崎から派兵された山下一雄と新兵の安慶名セイジュンの2人の日本兵の実話を基にした、井上ひさし原案の同名舞台劇を映画化した作品です。
沖縄戦を扱った作品では、「ひめゆりの塔」などをはじめ、過去から数々の作品が映画になっています。
今作は、米軍が沖縄本島に上陸したほんの少し後の、「城山」(グスクやま)、通称「伊江島タッチュー」と呼ばれる山がシンボルとなっている伊江島での攻防、戦闘終了、米軍の確保、戦争の終結、その後のお話になります。
伊江島は沖縄戦に備え、山間部が少なく平野部が多い島の特性を生かして飛行場が作られましたが、1945年3月に米軍に奪われることを懼れて、ほとんど使われる事なく日本軍の手で自ら破壊されました。
今作の劇中でも、そのエピソードが描かれています。
そういったエピソードや、伊江島での6日間ほどの戦闘や集団自決などで、当時島にいた住民の半数1,500人が犠牲となっているなどの、戦史や史実を知っているとより深く心に刻まれる作品となると思います。
今作は元々舞台劇ということもるし、物語の大半が木の上での生活であったり、その周辺の場所でのサバイバル物語で展開します。
前半、伊江島での戦闘では悲惨なシーンや映像的にもショッキングなものもあります。
しかし、中盤から後半にかけてがこの作品の見せ場でもあります。
決して、単に面白かった!と軽く言える内容の作品ではありません。
セリフも心に染みるものがたくさんありました。
後世に伝えるための響く言葉もがいくつかありました。
是非、80年前に世界で、日本で、沖縄で起きた悲劇を、噛み締めていただきたい。
単なる映画としてではなく、しっかりと心に響かせたいです。
音響もなかなかトラウマになりそうなくらい印象的です。
ずっと聞こえる砲弾の音が、とても怖いです。
映画でも怖いのに、実際に戦場にいた人たちにとっては、どんなに恐ろしいものだろうかと考えてしまいます。
全編を通しての緊張感もあるので、ハラハラするところもあります。
上手く、この物語を表現していると思います。
これまでの戦争ものとはまた違ったテイストであるというのも良かったと思います。
後半は、泣かせるところもあります。
といっても思い切り泣かせにきているわけではありません。
じんわり染み入ってくるものです。
全体的にベタな描き方でなかったのがいい。
なんならちょっとインディーズ感を感じるテイストも心地よい雰囲気だと思います。
そして、少し笑いどころも何箇所かあったりするところもいいバランスだと思います。
人類が人類である限り、戦争がなくなることはないかもしれません。
せめて、戦争を経験した国の者として、その時代や苦しみや悲しを直接知らない私たちでも、さらに先の世代に伝えていかなければならないと思います。
この作品もそういう役割をもって製作されています。
監督・脚本は、「STEP OUT にーにーのニライカナイ」「ミラクルシティコザ」などの平一紘。
監督をはじめ、スタッフや出演人も沖縄の方が数多く参加されています。
この作品を作った側から、とても強い沖縄愛が感じられます。
作っている側もみなさん心を寄せていると思うので、観ている私たちも心を寄せて観たいです。
主演の一人、山田裕貴は沖縄・伊江島の人を演じました。
実際は、沖縄出身ではありますが、沖縄弁や発音も含めて、とても勉強されたように感じました。
すっかりうちなんちゅみたいでした。
お見事な演技であったと思います。
主題歌を歌うAnlyの「ニヌファブシ」という曲もとても素敵で心に響く楽曲でした。
Anlyは沖縄出身という事もあり、歌声には心震わせられます。
興行収入は、2022年の東宝の「ラーゲリより愛を込めて」は、約26億7,000万円というこの手の映画としては大ヒットしました。
今作は約3億5,000万円と苦戦しました。
劇場公開時にはやはり若い世代には敬遠されたように思えます。
配信などにより、老若男女、より多くの方々に観てもらいたい作品です。
【書いた人】
映画大好きroninです。
年間、劇場など新作を350本前後、その他配信などで約700本以上の映画を観ています。
ラジオドラマを数本、映画のシナリオや企画も執筆しています。
たまに映画のトークイベントやラジオにも出演。
映画検定2級。
アメブロで映画のブログやってます!
https://ameblo.jp/roninfilms/
制作国 | 日本 |
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作品カテゴリー | 映画 |
公開日 | 2025年7月25日 |
作品ジャンル | 戦争,ドラマ |
公式サイト | 公式サイトへ移動する |
あらすじ
1945年、太平洋戦争末期の沖縄・伊江島。米軍との激戦のさなか、上官・山下一雄と地元出身の新兵・安慶名セイジュンは、敵の追撃を逃れ巨大なガジュマルの木の上に逃げ込む。
連絡手段も断たれ、仲間は次々と倒れていく中、2人は援軍を信じ、終戦を知らぬまま木の上での潜伏を続ける。
やがて日々の飢えと孤独に追い詰められながらも、互いの心に変化が生まれ始めるのだった...。
レビュー 2件
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想像していた内容だったが期待以上に面白かった。面白いという表現は少し違うかも知れないが、とても観てよかったと思った。実話というのがより重く感じる。2人の演技が素晴らしかった。

2025.8.4
ふくさん/30代/女性
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尊い 映画館で見るのがおすすめ
ジャングルの中で木の上に陣地を構えた兵士たちが戦う姿を描いた戦争映画。サバイバルと人間ドラマが絡み合い、戦争の狂気と命の儚さがリアルに伝わってきます。緊張感と仲間との絆が心に残る作品です。
キャスト
【出演】
山下 一雄[堤 真一] 安慶名セイジュン[山田裕貴] 与那嶺幸一[津波竜斗] 長田[玉代㔟圭司] 松尾中尉[尚⽞] 池田中尉[岸本尚泰] 安慶名 郁子[城間やよい] 農道の農民男[川田広樹(ガレッジセール)] 宮城[山西 惇]
【スタッフ】
監督/脚本[平一紘] 企画/プロデューサー[横澤匡広] プロデューサー[小西啓介] プロデューサー[井上麻矢]
予告動画
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