遠い山なみの光

2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの1982年に出版された同名小説を映画化したヒューマンミステリー作品です。
太平洋戦争の敗戦後間もない1950年代の長崎と、1980年代の英国で、女性3人の記憶に隠された嘘と真実を紐解いていく物語になっています。
監督・脚本・編集は、「蜜蜂と遠雷」「Arc アーク」「ある男」などの注目の石川慶が三役をこなしています。
出演は、「片思い世界」や「ちはやふる」シリーズなどの広瀬すず、「翔んで埼玉」「私の男」などの二階堂ふみ、「ラブ×ドック」などの吉田羊、「ミステリと言う勿れ」などのシンガーソングライターでもある松下洸平、カミラ・アイコ、「大コメ騒動」などの柴田理恵、「ケイコ 目を澄ませて」や「線は、僕を描く」などの三浦友和などが顔を揃えます。
原作・製作総指揮は、カズオ・イシグロ。
日本=イギリス=ポーランド合作映画になります。
素晴らしい作品です。
文学的で、美しい。
原作を読んでない方には、観る前は「なんか難しそうかな」と思ってしまうかもしれまぜが、特に難解な内容ではありません。
上映時間123分の中に、セリフや間、空気感など、カズオ・イシグロ文学の世界観を忠実に映画化している感じでした。
セリフも原作通りの言葉が多かったです。
原作者のカズオ・イシグロがエグゼクティブプロデューサーで参加しているだけのことはあり、今作の力の入れようが伺えます。
戦後80年の今だからこそ観なければならない作品ですかね。
戦争の悲劇や原爆の悲惨さをしっかりと伝えつつ、当時の日本の教育や思想の酷さも描いているのが素晴らしいです。
展開的にもなかなか見応えがある作品でした。
ミステリー作品なのですが、そうでないような雰囲気もあって、ちょっと不思議な感覚になる作品でした。
なんか変な感情になるような。
文学的な雰囲気ががっつりあるのも良かったです。
ラストの畳みかけは少し爽快感すらありました。
構成的にも、2つの時代にある時間の縦軸と人間関係の横軸が上手く絡みあって展開していきます。
その繊細な構成にまるでミルフィールのような積み重ねの厚みがあって、味わい深い。
なのに、さほど難解な作品ではなく、ちゃんとわかりやすく表現されているのがいいですね。
トリックも面白かったし。
素直にちょっと驚いてしまいました。
そして、映像も美しいです。
1950年代の長崎のコンクリートの団地の外観の質感もとてもいい雰囲気を出しています。
団地の中の部屋の中、狭い玄関や窓など、昭和ノスタルジックで雰囲気は最高です。
音楽もバッチリハマっていて、作品全体の雰囲気を静かですが大きく盛り上げてくれています。
映像もなにもかも、とてもバランスの取れた仕上がりになっている作品ですね。
特に前半は、日々の日常を淡々と描いているだけのような感じで進みます。
セリフや役所の言動を見ていると、なんかちょっと独特な異質感を感じたりします。
でも、前半の日常がちゃんと伏線になっていました。
わかりやすい物語ではあるのに、どことなく掴みどころがなかったりするところもあります。
でも、余白も十分にあり、色々な解釈が出来るところもあったりします。
このバランスがいいですね。
二階堂ふみは、今作の役所にバッチリハマっていたんじゃないでしょうか。
話し方や声も顔、髪型も、なんかとても文学的な雰囲気でした。
ちゃんとその時代を表現している演技だし演出でした。
こういう役、ほんと上手いですね。
広瀬すずも素晴らしく、存在感が大いにあります。
今作のこの役にハマってるようなハマってないような…という微妙な雰囲気が見事にハマってるという見事なキャスティングです。
【書いた人】
映画大好きroninです。
年間、劇場など新作を350本前後、その他配信などで約700本以上の映画を観ています。
ラジオドラマを数本、映画のシナリオや企画も執筆しています。
たまに映画のトークイベントやラジオにも出演。
映画検定2級。
アメブロで映画のブログやってます!
https://ameblo.jp/roninfilms/
制作国 | 日本 |
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作品カテゴリー | 映画 |
公開日 | 2025年9月5日 |
作品ジャンル | ドラマ,サスペンス・ミステリー |
公式サイト | 公式サイトへ移動する |
あらすじ
日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を作品にしたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。だが、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く──。
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キャスト
【出演】
緒方悦子[広瀬すず] 佐知子[二階堂ふみ] 1980年代の悦子[吉田羊] ニキ[カミラ・アイコ] 藤原[柴田理恵] 松田重夫[渡辺大知] 万里子[鈴木碧桜] 緒方二郎[松下洸平] 緒方誠二[三浦友和]
【スタッフ】
監督[石川慶] 原作[カズオ・イシグロ] 脚本[石川慶] 製作総指揮[堤天心]
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