今回は、映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』で主演を務めた森香澄さんにインタビューしました。
映画初主演作となった本作でのお芝居裏話や役への想いを伺いました。
映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』は2026年10月23日(金)よりPrime Videoで独占配信予定です。
映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』作品紹介
ヤマダミサキ30歳、独身。特技はこれといってなく、やりたいこともない。20代の頃は半地下アイドルとして活動し、その後も仕事や居場所を転々として、今は友人のつてでホームヘルパーとして働いている。ところが恋人の浮気が発覚し、仕事もうまくいかなくなってしまう。
葬儀社で働くシバ、38歳。過去の心の傷から人との関わりを避けて生きてきたが、姉の一人息子を預かることになる。途方に暮れるなか、ヤマダと関わるうちに、甥との距離を少しずつ縮めていく。
一方、デザイナーのシミズ、46歳。仕事を優先してきた彼女は、父が倒れたことを機に仕事か介護か、そして自分の人生をどう生きるかの間で揺れ始める。年齢も境遇も異なる3人は、それぞれが迷いながらも、自分の居場所を見い出していく――。
映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』公式サイトより引用
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映画初主演作への不安が役柄との共通点に

ー今回の作品への出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。
森香澄さん(以下、森):台本がすごく面白かったのでやってみたいと思いましたし、このヤマダミサキという役を森香澄にやってほしいと思っていただいたことがすごく嬉しくて、ありがたいなという気持ちでした。
ー森さんから見て、ヤマダの一番の魅力はどこにあると思いましたか。
森:今の時代は、「自立しろ」とか「ひとりで生きていけるように」みたいな個人を重視する風潮がありますが、ヤマダには「私は誰かと生きていきたい」と言える強さがあります。
やりたいことがない、叶えたい夢がないというところで悩んでいますが、ヤマダは結局人が好きで、人と関わって生きていきたくて。結果として、誰かと一緒にずっと仕事をしているし、信頼されて頼まれたことに全力で応えています。そこにヤマダの良さがあると思いました。
ー公式サイトで今回のお芝居に対して「不安も表現に変えられるかもしれない」とコメントされていましたが、これについて詳しく伺いたいです。
森:ここまでどっぷり映画作品をやったことがなかったので、どういう撮り方をするのか、どういうお芝居が求められるのかも分からなかったから「はい、演じてみてください」って言われたらどうしようとか、「役の理解をもっと深めないといけないんじゃないか」という不安がありました。
そんな中で台本を読んでいると、ヤマダ自身が「これはこう」とはっきり芯があるというより、迷いながらフラフラしているけど目の前の仕事はテキパキこなすような役だと感じたので、私も不安を抱えながらでも、ちゃんとヤマダに寄り添って向き合えればいいのかなと気づいて。自分の中に抱えている不安はヤマダと共通する部分があるんじゃないか、この気持ちを活かせるんじゃないかと思いました。
ーヤマダとの一番の共通点は、不安や迷いという気持ちだったのですか。
森:そうですね。でも不安や迷いと言っても、仕事がなくなったとか路頭に迷ったとか、そういうすごく大きなものではないんです。
ヤマダは仕事があって彼氏もいたけど、「愛嬌だけで生きてきたけど、それでいいのかな」「私の夢って何なんだろう」みたいに、日常のふとした場面で「本当にこのままでいいのかな」という考えが頭をよぎってしまうような不安や迷いがありました。
そこに私はすごく共感できて、私もお仕事をいただいていますし、やりたいこともあるけど、「これやれます!やらせてください!」と言えるほどの自信はないので、そこが似ているなと思います。
ー「愛嬌だけで生きてきた」と公式サイトでも紹介されていましたが、そういうヤマダのバックボーン的な部分に対する感想はありますか。
森:それこそ私も「愛嬌がある」「あざとい」と言われることが多いですが、昔は人見知りで人と会話をすることがすごく苦手でした。なので、私にとって愛嬌は処世術。多分ヤマダもそうだったんじゃないかな。
コミュニケーションの多いお仕事をするうえで、とにかく相手に好印象を持ってもらえるように会話をするということは、私が大切にしている礼儀でもあり、それが私にとっての“愛嬌”です。
ー森さんはこのお仕事をきっかけに、愛嬌という処世術が身についたのですか。
森:もっと小さい時から知らず知らずのうちに、だと思います。
人と真剣に話すことが苦手だったので、私が笑っていれば相手も笑ってくれるとか、とにかくポジティブな言葉を言うとか。人見知りだった時にそこまで打算的に考えていたわけではないんですけど、人付き合いの中で無意識にやっていたことが、大人になって「愛嬌」という名前がついたような感じです。
ヤマダもそういうバランサーみたいな部分があって、例えばアイドルをやっていた時に、不機嫌なメンバーがいたら駆け寄って「どうした」と声をかけたりして、みんなを見てバランスを取っていました。
ヤマダは、やりたいことはないけど人と関わって生きていきたいと思っていて、でもヤマダ自身が「自分についてこい!」みたいなタイプではないから、みんなの中でうまくやっていくために愛嬌という処世術を身につけたんだろうなと思います。
「話し方がはっきりしすぎていると言われました」撮影の裏話

ーヤマダを実際に現場で演じるうえで、箱田優子監督やスタッフさんからのディレクションなどはありましたか。
森:現場で撮影をしながら話し合って作っていくことが多かったのですが、「話し方があまりにもはっきりしすぎている」と言われました。伝わりやすすぎるって(笑)。
私はそんなにハキハキしゃべっているつもりはないんですけど、アナウンサーの経験があるからか、私の潜在意識の中に「しゃべる内容は全部伝えなきゃいけない」という気持ちがあるんだと思います。
ダラダラしゃべっているつもりでも「聞き取りやすい」と言われ、「これ以上は言葉ではなくなりますよ」って言いながら試してみても、「まだ全然聞こえるから」と。私の中では楷書を草書にしているくらいダラダラしゃべっていたんですけど、そこのところの試行錯誤は印象的でした。
ーダラダラしゃべるということを意識してお芝居をされたのですね。
森:そうですね。意識したのはあまり伝えようとしないこと。
やっぱり人に何かを伝えようとカメラに向かってしゃべる仕事ではあるので、どうしても単語を立てた話し方になっちゃったり…。これがキャリアウーマンのような役ならいいんですけど、今回はそうではないので、とにかくダラダラしゃべるということを考えていました。
ー今回の撮影を通して、1番撮影が楽しかったのはどんなシーンでしたか。
森:どのシーンも楽しかったんですけど、ひとつ挙げるなら親友フルヤ(芋生悠)と喧嘩するところです。コミカルに描かれているのに、実はヤマダが「かっこいい女になれなんてあたしには無理なんよ」と、自分の思っていることをあそこで初めて言葉にしているので、意外と大事なシーンでした。ヤマダの心境としては丁寧に作っていきつつも、フルヤとの喧嘩の掛け合いは結構演じていて楽しかったので、印象に残っています。
あとは、フルヤに損をさせようと思って、持って帰ろうとポケットに入れた高そうなお菓子を、結局その後フルヤにムカついて投げつけちゃって、自転車に乗りながら「バーカ」とか言いながらビューンっていなくなるところも、演じていて楽しかったです!
ー感情を前に出してお芝居をするようなシーンも意外と多かったのですか。
森:そうですね。浮気した彼氏の車を追いかけていくところは、感情の切り替えがグラデーションでした。
最初は怒っているのに段々悲しみに変わっていって、最後は「ごめん」って謝る。誰に向かって謝っているのか分からないけど、それくらい訳わからなくなっている様子を演じるのはちょっと面白かったです。

ー今回は映画初主演作品ですが、主演としての手応えはありましたか。
森:スタッフさんや共演者さんみんなで見る試写に行けていなくて、ひとりでスマホで完成映像を見たから周りの反応が分からなくて…。公開されてからどんな反応があるか、ちょっとドキドキしますが、できることは全てやれたと思います。
ー今回は主演として撮影現場に入られましたが、現場の雰囲気はどうでしたか。
森:現場は、基本は和やかな空気感で、私は共演シーンの多いシバ役の若葉竜也さんとフルヤ役の芋生悠さんとお話することが多かったです。
話の内容は映画と全く関係なく、最近見たものとか買ったものの話なんですけど、雰囲気がそれぞれシバとフルヤ、ヤマダをまとっているような感じがしました。
芋生さんとはこの作品で初めてお会いしましたが、お話をしているとなんかフルヤとヤマダっぽくなるし、同じ作品を作る仲間としてみなさんと関係を深められました。
若葉さんは、特に不思議な方でした。自然体なのに雰囲気があって、話し方を変えるスイッチがあるわけでもないのに、撮影場所や少しの違いで見え方と印象が変わるから、“偏光レンズ”みたいな俳優さんだなと思いました。
ー今回のお芝居を振り返ってみて、お芝居の面白さはどんなところにあると感じられましたか。
森:アナウンサーやタレントはカメラの前で笑顔を見せる職業ですが、お芝居はそうではなく、怒りや悲しみ、ネガティブな感情を表現することも多いと思います。
私は冗談交じりではなく本心の悩みや怒りなどの負の感情を表に出すことが苦手ですが、台本や役、お芝居を通してなら自分の抱えている感情を表現できます。そのことに気づいてから、お芝居がすごく楽しいと思うようになりました。
自分の中ではやりきったので、撮影がクランクアップした時は達成感があって、すごく良い作品に巡り会えたなと思います。
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