雑然とした作業場。猛烈なスピードでミシンをかける姿はアクション映画のようで、振り付けられたダンスのようだ。若い男女の恋愛をめぐる駆け引きはボーイ・ミーツ・ガール。あちこちで起こる言い争いは、暴力への沸点をはらむ。そして、5元をめぐる経営者とのささやかな攻防。これまでも、被写体との距離やフレーミング、すくいとる瞬間などに天才的な感覚を見せてきたワン・ビン監督ならではと言えるだろう。この映画は約20分のエピソードを9つのセグメントで描いている。登場する彼らすべてがここで生きていることを圧倒的に肯定し、それぞれの登場人物を注意深く見つめる。ワン・ビンの視線は、やがて中国という巨大な国に生きる一つの世代全体の運命を浮かび上がらせてしまう---必見のドキュメンタリー体験である。

中国の巨匠ワン・ビン監督が、中国の巨大経済地域にある小さな衣料品工場で働く若者たちの姿を描いたドキュメンタリー映画。上海を中心に広がる「長江デルタ地域」の衣料品工場で朝8時から夜11時まで働く若者たちの過酷な労働環境と青春の日々を見つめる。彼らの仕事風景はアクション映画のようで、恋愛や争いも交えながら、若者世代全体の運命を浮かび上がらせる。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、第60回金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞、第49回ロサンゼルス映画批評家協会賞でエクスペリメンタル賞を受賞した必見の作品。