「棒っきれのように生き、棒っきれの様にくたばる」人生に甘んじている大村組の中堅幹部・田中。ある日、組長命令で組の分家を命じられた田中は、本家に吸い取られる巨額の上納金と、それを工面するしのぎを形成するうちに、いつしか反逆の絵図を描き始める。

「棒の哀しみ」は、日活ロマンポルノから生まれた鬼才・神代辰巳の最後の劇場映画です。冒頭の長回しや生々しい濡れ場の演出など、神代の特徴を感じさせる晩年の傑作と言えます。主演の奥田瑛二は、本作で9つの主演男優賞を受賞し、あくの強い中年ヤクザを見事に演じています。神代の独特の世界観と奥田の熱演が見事に融合した作品で、邦画ファンならずとも見逃せない一本です。