ミュージカル『ETERNITY」東京公演観劇レポート|舞台セットと楽曲の魅力を語る

2026年7月10日(金)より、東京建物ぴあシアターで日本版初演を迎えたミュージカル『ETERNITY』

韓国発祥のミュージカルを、新設された劇場のこけら落とし公演として開幕した本作。日本ミュージカル界の“新たな風“を感じる斬新な舞台セットと楽曲が印象的でした。

今回は、そんなミュージカル『ETERNIY』2公演(現時点)を観劇した感想をレポートします。

目次

ミュージカル『ETERNITY』出演者とキャラクター

本作は、「ブルードット」「カイパー」「マーマー」の3人が登場します。

登場する3人のキャラクター
  • ブルードット:1960年代に一世風靡した伝説的グラムロックスター
  • カイパー:現代に生き、ブルードットのようなグラムロックスターを夢見る青年
  • マーマー:時間を司る神秘的な存在。時そのものであり、狂言回しの役割を担う
キャラクター俳優
ブルードット小池徹平/小西遼生
カイパー伊藤あさひ/小野寺龍之介
マーマー美弥るりか

ブルードットとカイパーはWキャストですが、マーマーはシングルキャストのため全公演を美弥さんお一人で担当されています。

作中の音楽番組の司会者の役やブルードットの世代交代を象徴するかのように大衆人気を席巻したJJ、グラムロックバーのオーナーや、新人発掘の有名プロデューサーまで、数多の役を演じられ、本当にこの作品に欠かせない、かえのきかない俳優さんです。

ブルードットは、ステージ上で「神」のように崇められていたグラムロックスター。中性的なメイクを施し、キラキラの衣装を身に纏って熱狂を巻き起こしていたが、その胸には深い孤独を抱えています。

ブルードットを演じられた小池徹平さんは、u-watchで『ETERNITY』のインタビューを受けてくださっています。

ぜひ振り返ってチェックしていただけたらと思います。

カイパーは1人孤独にグラムロックスターに憧れを持ち夢を見る若者。なりたい自分を夢見ながらも、葛藤を抱えている人物です。

キャラクターの名前の由来と考察

宇宙・天体という要素が散りばめられているミュージカル『ETERNITY』。各キャラクター名に使われている単語の意味を調べてみました。

ブルードット:1990年に宇宙探査機「ボイジャー1号」が、約60キロメートルもの彼方から撮影した写真に写る地球のこと。暗闇の中に微かに青く淡く光る地球の姿=a pale blue dot

「ブルードット」という単語は、はるか遠くから見た時の地球の姿から生まれた単語のようです。

ブルードットの写真が取られたのは1990年ですが、設定上ブルードットが存在したのは1960年代で、作中に仄めかされているアポロ計画も、1960年代の出来事です。

カイパー:海王星の軌道より外側で、太陽系の縁に広がる天体の密集地帯「カイパーベルト」に基づく

ちなみに、地球からカイパーベルトまでの距離は、約45億〜75億キロメートルとされています。ブルードット写真が撮影されたのも約60億キロメートルだったとのことで、距離感としてはちょうど「ブルードット(地球)からカイパーまで」と一致します。

天体になぞらえた名前を考察する

ブルードットは地球という惑星単体ひとつを指し示すのに対して、カイパーは天体の密集地帯を意味するのであれば、単数/複数という関係性があると考えられます。

グラムロックスターとして唯一無二の存在であったブルードット
色々な音楽のジャンルが日々派生して生まれている現代に生きる中で、グラムロックスターになりたいと夢を見るカイパー

それぞれのキャラクター性とリンクした名前になっています。

ちなみに、ブルードットの写真が撮られたのは1990年でしたが、物語のあらすじとしてはブルードットが活躍していたのは1960年代です。作中で仄めかされているアポロ計画も1960年代の出来事。この点は時間軸にズレがあります。(この理由がわかる方がいらっしゃったら、SNSのコメントでお願いします)

7月18日(土)ソワレ|小池ブルードット&伊藤カイパー

私の観劇初日が7月18日(土)のソワレで、小池徹平さんと伊藤あさひさんのタッグでした。

ミュージカル『ETERNITY』初観劇ということもあり、舞台の演出面に関する印象が強かったです。

2026.07.18 推しポイント
  • 良い意味でミュージカルらしくないライブ感
  • 20個以上の大量のスポットライト
  • 3段で組まれた舞台セットと電飾
  • 小池徹平さんの空気を貫く歌声
  • 伊藤あさひさんの“青年感”完璧なビジュアル

小池さんご自身も、韓国の本場の作品を見て、「その音の大きさに驚いた」とインタビューでお話ししていただいていますが、そこは完全同意で私も驚きました。

グラムロックとは言いながらも、ジャンルレスな幅広い楽曲があり、単なるライブ感というよりも、「フェス」という言葉の方がしっくり来るような感触があります。

実際に音楽フェス「マグネティックハイウェイ」が作中に登場するので、ブルードットのワンマンライブというより、もっと色々な音楽の要素があるというニュアンスを込めてのフェスです。

もちろん席に座って見ているのですが、正面から音楽が飛んでくるので、楽曲が始まり歌い出すたびに、サビを迎えるたびに何回も鳥肌が立ちました。

休憩なしのおよそ100分間ノンストップという時点で、従来のミュージカルとは違うと分かりますが、「ミュージカル音楽そのもの」のあり方すら一風変わっていました。舞台上で出ずっぱり、ずっと音楽を奏でてくださったバンドメンバーも立派な出演者。ミュージカルに音楽は欠かせません。弦楽器の演奏者が参加されていたりなど、一曲一曲で感じる印象が全く違います。

作品名にもなっている「ETERNITY」は言わずもがな、純粋にイントロが好きすぎます。

スポットライトの多さやその演出もものすごく印象的でした。ザッと数えただけでも20個以上で、圧巻のライブシーンを演出しているのはこのスポットライトたち。あそこまで派手にスポットライトを使った作品は見たことなかったです。

意図しているのかは分かりませんが、劇場の側面の壁に映し出されるシルエットも、どこか意味ありげで結構ポイントです。

そもそもステージのセット自体かなり斬新で、天井にはひし形のモニターのようなものもあります。

3段の作りになったセットは大胆ですし、そこに張り巡らされたされた電飾が舞台をより華やかにしていて、すごく面白かったです。

このミュージカルは休憩がないので、一度も幕が下りません。そもそも思い返すと、今回の作品に“幕”が登場していません。

わざとらしく深く考えると、「永遠の音楽」をテーマにした作品で「幕が下りない」ということは、それ自体で「永遠に続くミュージカル」を暗示しているのかなと。そう捉えられる作りというだけで、勘繰ってしまいます。

舞台セットや音量、電飾の美しさそれだけに、これだけ心を奪われました。ここからは出演者の皆さんの感想です。

小池徹平さんの出演作「キンキーブーツ」と「ある男」は、観劇経験がありました。キンキーブーツでミュージカルの沼にはまった身としては、小池ブルードットの中にチャーリーの面影を探してしまいました。(翻訳はキンキーブーツも担当された森雪之丞さんですし)

落ちぶれていくブルードットが孤独の絶望感に打ちひしがれて歌う「永遠の悪夢 リプライズ」。あの曲、キンキーブーツの「Soul of the man」を歌っている時のチャーリーっぽくありませんでしたか。共通する何かがあったように感じます。

どん底から歌うシーンの、小池徹平さんのストレートな歌声には諦めからくる素直さのようなものがあって、でもどこかエネルギーが詰まった伸びやかさもあり、ミュージカル界の「嘆きの歌」部門があったとしたら、小池さんはその最高峰に君臨すると思います!

伊藤あさひさんの「夢見る青年感」のビジュアルが素晴らしかったですし、シンプルなカイパーの衣装やグラムロックスターとして歌う赤い衣装まで着こなされていて、かっこよかったです。カイパーの心情や覚悟、それを描いたストーリーに説得力があり、感動しました。

先日『モーツァルト!』への出演も発表され、間違いなく今後もっと羽ばたいていく俳優さんだなと、改めてその実力を教えられました。

7月23日(木)ソワレ|小西ブルードット&小野田カイパー

やむを得ない休演もあったため、東京公演で見られる「小西ブルードット&小野寺カイパー」コンビはこの日の1回だけだったそうで、またとない機会に観劇することができました。

2026.07.23 推しポイント
  • どっちが歌っているのか分からないくらいのシームレスなハモリ
  • 小西さんのブルードットのハマり具合
  • 小野田さんの歌唱力で劇場が震撼
  • 小西×小野田コンビの圧倒的なパワー

今回の感想を一言で言うなら、「ETERNITYの完成形」です。

毎公演がそれぞれの正解で唯一という大前提はもちろん弁えております。ただ、それでもあえて「完成形」という表現をしたい、そう感じるほどの圧巻で、開いた口が塞がらないというような舞台でした。

SNSでも話題になっていましたが、小西さんと小野寺さんの「混ざり合い」のような、ブルードットとカイパーの自然な重なりをありありと感じました。

デュエットの曲も、聞いているうちにどちらが歌っているのかわからなくなるくらい、2人が1人に見えてくるほどに溶け合っているような感覚でした。

小西さんは身長が高いので、それだけでオーラがあり、キラキラな衣装から発せられる色気もありました。今回の作品ほど小西さんの歌をじっくりと聞いたことがなかったので、ものすごく素敵な声の音色に心を奪われました。

小西さんアドリブを入れて会場を盛り上げていたので、そのお芝居に対する自由さやブルードットとしてのアドリブの立ち振る舞いには、ステージに泰然と立つカリスマ性がありました。

小野田さんの歌唱力の高さと歌声の安定感がずば抜けていて、ひたすら聞き心地がよかったです。ここ最近色々な作品で小野田さんのお名前を見かけていたので、「やっぱりこの歌唱力の高さが売れっ子たる理由なんだな」とミュージカル俳優としての高い能力とポテンシャルを、歌声を通して全身で浴びたような感じがします。劇場の床も振動していました。

その2人がタッグを組んで作った『ETERNITY』は爆発的な化学反応が起きていた気がして、やはりひとつの完成形として観客の心を奪ったんじゃないかなと思いますし、私自身がそうでした。

Wキャストの組む相手によって、それだけ作品が見せる表情が違うというのも、映画やドラマでは楽しめない、ミュージカルならではの魅力です。

7月25日(土)ソワレ|小西ブルードット&伊藤カイパー
7月26日(日)東京千秋楽|小池ブルードット&小野田カイパー

観劇後追加します!

東京建物ぴあシアターでの見え方は?

東京建物 ぴあ シアター&カンファレンス公式サイトより引用

劇場全体で806席あるようです。正面・左・右のブロックに分かれている形でした。

N列とJ列で観劇したのですが、A~J列(前方席と、通路挟んだ後方席の1列目)までは、それほど高低差がなく、ステージが低めに位置しているということもあり、前の人の頭は結構被ってしまうと思います。

K列より後ろは、かなり傾斜があり高低差がはっきりしているので、男性であっても前の人がステージと被るということは少なそうです。

後方席でもステージまでの距離感は結構近く、オペラグラスなしでもしっかりと見えるほど。逆に、近いからこそオペラグラスを覗くんだという意見もよくわかります。

これまで公演した感覚では、前の人とも被らずステージ全体を一望できK~N列が個人的にはおすすめです。

ミュージカル『ETERNITY』感想まとめ

私の中で巻き起こった『ETERNITY』愛はとどまることを知らず、行くたびにリピータチケットを買い、結局全4組のブルードットとカイパーの組み合わせを制覇することになりそうです。

ミュージカル好きではない人からすると、「同じ公演4回見ても面白いの?」と聞かれますが、断言できます。面白いです。

ミュージカル『ETERNITY』は特にそれが顕著で、劇場じゃないと体感できない音楽とか、その日だけのアドリブとか、観客の空気感はひとつとして同じ公演はありません。

公式HPのあらすじは少し難解ですが、実際に見てみるとそれほど難しいストーリーではなかったので、初めてミュージカルを見る人にも本当におすすめしたい作品だと思います。

カイパーのグラムロッカーとしての未来が、ブルードットの過去かもしれないし、再び孤独感に苛まれたブルードットの未来が、カイパーにとっては過去の孤独感だったかもしれない。

マーマーという時の存在を隔てて姿が重なった2人は、どうつながったのか。単純に未来と過去では分類しきれない繋がりがあるように感じ、これは考えがつきません。

グラムロックスターになるという夢をかなえたカイパーも、いずれはブルードットのように人々の記憶から消え始めてしまう可能性もあります。そう考えると、単純にブルードットが過去、カイパーが未来と分けられるものでもなくて、円を描いて循環している時の流れみたいな要素があるのかもしれません。

いずれ時代は変わり日々移り変わっていく。そんな流動の激しい悠久の時の中で、「永遠でありたい」と曲を歌い残したブルードットの光は、60億キロメートル先のカイパーまで届いた。マーマーが2つの時空をひとつのステージの上でつなげたことで、2人はお互いに孤独じゃないと知り、グラムロックで音を紡いだと言う結末が、ミュージカル「ETERNITY」で人を魅了する所以なのかなともいます。

単純に音楽自体も素晴らしいので、バンドメンバーの演奏と出演者の歌声にも酔いしれます。どこを切り取っても傑作のミュージカル。こけら落とし公演で日本初演で前評判もなかった作品に出会えたことが嬉しいです。

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この記事の監修者

ユーウォッチを運営する株式会社GEARのライターです。
日本語学を専攻した知識とエンタメ愛を持って、分かりやすく誠実な執筆と正確な情報発信を心がけています。

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