【栄信インタビュー】189センチの長身を活かし、さまざまな役をこなす名優。『おいしい給食』シリーズで体育教師役を熱演

インタビュー
インタビューニュース

189センチという長身が際立つ、俳優の栄信さん。10年という長いエキストラ活動を経て、話題作『ヒメアノ~ル』で映画出演したのをきっかけに、ドラマや映画の出演を重ねてきました。

現在は連続ドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』出演のほか、5月24日から全国公開される人気シリーズの映画『おいしい給食 Road to イカメシ』に、体育教師の木戸四郎役で出演しています。存在感たっぷりで優しく男前。注目の俳優・栄信さんにお話を伺いました。

『おいしい給食』のイカメシはめちゃくちゃ美味しかった。撮影中は共演者と和気あいあい

提供:映画『おいしい給食 Road to イカメシ』

映画『おいしい給食 Road to イカメシ』作品紹介

1980年代。ある中学校で、給食マニアの教師と生徒が、静かな「闘い」を続けていた――。どちらが給食を「おいしく食べるか」。飽くなき給食道を描き続けてきた食ドラの金字塔『おいしい給食』。ドラマ3シーズン、劇場用映画2本と作品を重ね、最新作『おいしい給食 Road to イカメシ』が2024年5月24日にいよいよ全国公開される。

給食をこよなく愛する中学教師、甘利田幸男役に市原隼人さん、甘利田が教育係を務める女教師に大原優乃さん。栄信さんはseason3から、体育教師の木戸四郎役で出演中。

映画『おいしい給食 Road to イカメシ』公式サイト

おいしい給食 Road to イカメシ
1989年、冬。中学教師・甘利田幸男は、北の地に降り立った。隠し持った真の目的はアレを味わう事。だが赴任から一年以上経つもアレが献立に登場する事は無い。相変わら...
提供:映画『おいしい給食 Road to イカメシ』

いよいよ『おいしい給食 Road to イカメシ』が公開になりますね。函館での撮影はいかがでしたか。

栄信さん(以下、栄信):撮影した去年5月ごろの函館はまだ寒かったのですが、特に校門での朝の登校シーンが大変でした。

一度に合計5~6回分の登校シーンを撮影したのですが、僕はもともと心配性なので、すべてのパターンを面白く演じ分けられるか不安でした。「子どもたちとハイタッチする木戸」としかト書きに書いていないので、これどう演じよう…と(笑)。

あとは、函館での完成披露試写会のときに、市原さんや生徒役の皆さんが前日に現地入りし、“子どもたちに思い出を作ってあげたい”と函館山に夜景を見に行ったそうなのですが、僕は翌日入りだったので一緒に行けなかったのが心残りです。

思い出に残ったエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

栄信:特に印象に残ったのは、子役の皆さんの姿ですね。最初に監督とプロデューサー、スタッフとメインキャスト、生徒役の方々と顔合わせしたんです。小学6年~中学3年の子役の方が来ていたんですが、みんな物怖じしないんですよ。

みんな、度胸があって、ピュアで、言葉がまっすぐに刺さってくる。この子たちのほうが自分よりよっぽど大人だなと思いました。可愛いし可能性がありすぎて、見ていてうらやましかったですね。

また、映画の撮影では、小堺一機さん(校長役)、六平直政さん(PTA会長役)とのシーンが多かったので、待機時間を3人一緒に過ごすんですが、おふたりが、本当にびっくりするぐらい話すんですよ。3時間あったら3時間、しゃべりっぱなし!

もうね、『ごきげんよう』を観覧席で見ているような感じで楽しかったです。僕が知らない昔の話、もうお会いすることができない大俳優の話もたくさん聞かせていただいて、本当に貴重な時間でした。

提供:映画『おいしい給食 Road to イカメシ』

和気あいあいとした雰囲気が伝わってきます(笑)。給食メニュー“イカメシ”が映画のタイトルにもなっていますが、栄信さんはイカメシを食べられましたか?

栄信:イカメシだけは食べられました!

全編を通して、給食のシーンは市原さんや大原さんのクラス内だけでの撮影なので、別クラスの担任である僕は給食の撮影はないんです。でもイカメシを食べるシーンだけは撮影がありまして。

フードコーディネーターの方が時間をかけて再現していく給食は、とにかくめちゃくちゃ美味しいんですよ。イカメシ以外にも、撮影用の給食が余ると、みんなでロケ弁に足して食べていましたね。

ちなみに栄信さん自身は、子ども時代の給食の思い出って何かありますか。

栄信:小学校時代、給食をとにかくすごくたくさん食べていた記憶がありますね。美味しくて大好きだったのはABCスープ!で、昼休みにドッジボールをしたいがために、急いで食べて片づけて教室を出ていくという(笑)。

映画『おいしい給食 Road to イカメシ』は、どんな人に見てもらいたいですか。

栄信:この映画は、1980年代に小中学校で給食を食べていた世代にも、その親の世代の方にも、現在給食を食べている若い世代にも、みんなに楽しんでもらえると思います。

インハイまでいった空手をやめて、ぽっかりした心の中に「俳優」への希望が

そもそも、栄信さんが俳優になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

栄信:高3のときに、とある映画の撮影シーンを見たときですね。

僕は6歳のときから空手をやっていました。小5で県大会優勝、小6で九州大会優勝、中3で全国大会準優勝。“人を攻撃して褒められる”空手が本当は好きではなかったけれど、空手を通して知り合った人たちが大好きだったので、声援に応えたかった。

高校3年に地元の佐世保で行われるインターハイ。それまでは空手を続けようと頑張り、結果は5位でした。

その先の大会へのお誘いもありましたが、空手はインハイまでと決めていたので、きっぱりお断りして空手を辞めました。

そこからいきなり、生活のど真ん中にあった空手をやる必要がなくなった。とにかく暇で、心の中が空っぽの日々が2,3週間続いたかな。

そんなときに、地元・佐世保で映画『69 sixty nine』の撮影があったんです。村上龍さんの長編小説の映画化で、主演は妻夫木聡さんと安藤政信さんでした。

映画の舞台は、村上さんが通っていた佐世保の高校。村上さんは僕の高校の先輩にあたるので、まさに僕の高校の話なんです。

ロケ場所も小中学校の通学路で、僕にとっては見慣れた風景のはずなのに、妻夫木さんと安藤さんがそこに立っているだけで、なぜか全然知らない道に見えました。その瞬間、「ああ、こんな風に存在感のある人になりたい」って思ったんです。

映画の撮影は、空っぽになっていた当時の自分にはすごく新鮮だった。そこから俳優という道を意識するようになり、高校卒業してからお金を貯めて、東京に出ました。

エキストラばかりの10年間。映画『ヒメアノ~ル』出演から人生が一転する

上京してからすぐに、俳優になる夢はかなったのでしょうか。

栄信:それが、オーディションには10年間、一度も通らず、ずっとエキストラの仕事ばかりでした。

何も結果を出せていないから俳優は諦めようと思っていた10年目のある日、当時の事務所の社長が「これ、書類審査受かったけどどうする?オーディション受けてみる?」と。その作品が、映画『ヒメアノ~ル』でした。

ヒメアノ~ル
若者のありふれた日常と無機質な連続殺人事件が交錯するサスペンススリラー

俳優を辞めて地元に帰ろうというタイミングだったけれど、今までお世話になった社長に言われたからと、オーディションには行きました。そこにいたのは監督とプロデューサー2人だけ。「書類に全部書いてあるから」と、自己紹介すらさせてもらえなかった。

「セリフ覚えたよね?じゃあ演ってみて、ハイ!」と言われて、オーディションはたったの3~4分で終わりました。いつものように「絶対落ちた」と思ったから、オーディションの後は、アテンドしてくれたマネージャーと居酒屋に立ち寄り、お酒を飲んでました。

「今までありがとうございました。大した俳優人生じゃなかったっすね。俺、何もできなかったな…」なんて言ってたときに、マネージャーの電話が鳴って。向き直ったマネージャーが、「さっきのオーディション、受かりました」って。

なんだかドラマみたいな展開ですね…!

栄信:ですね。『ヒメアノ~ル』には出演できたものの、撮影は半日くらい、本当にあっという間でした。こっちはエキストラしかやったことがないから、どういう感じで撮影しているのかもわからない。緊張していたら撮影が終わっちゃった、みたいな。

でも初めて映画に出られたのは嬉しかったです。映画のエンドロールで自分の名前を見たときは、もうほんと、言葉にならなかったですね。

そこからどんどん、役が来るようになっていきますよね。

栄信:その後も、オーディションを受けても落ちるんです。でも、キャスティングの方やスタッフの方に気に入っていただけたのか、いいタイミングで新しい作品に呼んでもらえる。

オーディションを受けなくても、徐々に役をもらえるようになっていきました。なんだか、「俳優を辞めるな」と言われているような気がして…。そんな感じで今もこうして俳優を続けられています。

役作りは自由なスタンスで。今後演じてみたいのは“恋愛していく過程”

栄信さんの189センチという長身も、どの作品の中でも、すごく目立つんですよね。

栄信:そうですね、背の高さを活かせる役も、たくさんもらってきました。ただ、身長はデメリットでもあるんです。普段着も、衣装も、体が大きいからなかなかぴったりくるものがなくて、それこそ『おいしい給食』の木戸のジャージも、つんつるてんで短い(笑)。

あと、長身で困るのは、乗り物ですかね。手も足も長いから、1席だと窮屈すぎて。それこそ、エキストラ時代のロケバスなんて地獄でした。朝6時に新宿に集合して、ロケ地まで4時間半、バスの1人席で直角の姿勢のまま、微動だにできなくて。

撮影場所に着くころには、体はボロボロでしたよ。若いからできたんでしょうね。今は2席をひとりで使わせてもらえることも増えて、本当にありがたいです。

役作りでこだわっていることはあるんでしょうか。

栄信:役作りで大事にしているのは、“事前に何も決めない”ことです。役をいただいてからのアプローチの仕方は、役ごとに毎回変えています。

セリフを覚えてからキャラクターを考えることもありますし、前作がある作品なら、それを見て世界観を感じてから、自分に求められているものを箇条書きにメモしてから役作りをすることも。いつも、自由な気持ちで新しい役に向き合うようにしています。

今後、やってみたい役があれば教えてください。

栄信:作品の中で“恋愛”してみたいです。メインじゃなくて脇役でいいから、女性と出会って恋に落ちていく…。そんな役をやってみたいですね。

栄信(えいしん)プロフィール

長崎県出身、1985年7月29日生まれ。映画『ヒメアノ~ル』(2016年)の川島役を皮切りに、ドラマ『ニッポンノワール―刑事Yの反乱-』(NTV系)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(NTV系)、「仮面ライダービルド」(テレビ朝日系)、『ACMA:GAME』(NTV系)ほか出演多数。特技は高校3年まで続けた空手(インターハイ5位)。実弟は俳優の龍真。

●X @eishin_japan04
●インスタグラム @eishin4

取材・文:小澤彩

タイトルとURLをコピーしました