「愛する人と繋がりたい…」“セックスレス”に悩む不器用な大人のラブストーリー、『ふったらどしゃぶり』。美しい映像とともに、心を締めつける痛みが見る人の心を揺さぶる…。そんな切ないBLドラマが1月からスタートします。
報われない愛と性に翻弄される主人公、整(せい)と一顕(かずあき)。難しい役どころを演じる主演の2人、伊藤あさひさんと武藤潤さんにドラマの見どころや撮影の裏話、プライベートをお伺いしました。
MBSドラマ特区『ふったらどしゃぶり』作品紹介
直木賞作家・一穂ミチの代表作、大人の愛と性に迫ったBL小説「ふったらどしゃぶり When it rains, it pours」の実写ドラマ化。伊藤あさひ&武藤潤、初主演・初共演でおくる、悩める大人のラブストーリー。
家電メーカーの営業部で働く、萩原一顕(はぎわらかずあき・武藤潤)は、同棲中の彼女・水谷かおりとのセックスレスに悩んでいた。ある日、会社で同期会の幹事を任され、店の候補を自分宛にメールしたつもりが、誤って“誰か”に送ってしまう。
届いた相手は、一顕と同じ会社の総務部で働く同期の半井整(なからいせい・伊藤あさひ)だった――。
連絡を取り合っている相手が同僚だと知る由もなく…「顔も名前も知らない赤の他人」だと思い込む二人は、いつしか本音を話せる不思議な関係になっていく。「愛する人と繋がりたい…」一顕と同様に、整も同居相手との関係に悩んでおり、幼馴染・藤澤和章にやり場のない感情を抱いていた。
「好きだから抱き合いたい、抱いてほしい…」一件のメールから共有した秘密は、やがて心の容量を超えて溢れ出し…。報われない愛と性に翻弄される大人の恋が動き出す―。
MBSドラマ特区枠にて2025年1月9日(木)より順次放送スタート!
(※MBSドラマ特区『ふったらどしゃぶり』公式サイトより引用)
「誰もが心の中に抱える孤独感や寂しさ、“分かる!”と思った」(伊藤)
―このドラマは大人のラブストーリーですが、まずは台本を読んだ感想から教えてください。
伊藤あさひさん(以下、伊藤):原作も台本も、人間の心理描写や情景がすごく綺麗で、登場人物の心情が自分たちに迫ってくるような内容だったので、美しい世界観を映像作品にしたいと、すごく楽しみにしていました。
役柄と同じような悩みがあったり、寂しさを抱えている孤独な人にも寄り添えるような作品になっていると思うので、そういう部分を楽しんでいただけたらと思っています。
武藤潤さん(以下、武藤):1人の人間を愛することによって、自分がどんどん翻弄されていくさまが鮮明に描かれている原作だったので、今までのBL作品と比べて、よりリアリティーをもって視聴者の皆さんに届けたいと思いました。
―それぞれの役柄で共感できる部分やご自身との違いがあれば教えてください。
武藤: 僕の演じた一顕はまっすぐで素直。僕自身、思ったことを素直に口に出すこともあれば、うまく自分の気持ちを伝えられずに自分の中にこもってしまうこともあるので、そういうところは一顕に共感できる部分ですね。彼と違うのは、僕は彼のようにメールを続けられないタイプなんですよ。
伊藤:メール、全然返ってこないんです(笑)。
武藤:すみません(笑)。
伊藤:整はつかみどころのないような印象だったので、共感できる点があるのかなと思いながら台本を読み進めていたんです。
でも実際自分が演じてみると、好きな人に甘えるところがあったり、相手を試すようなところがあったり。僕もどちらかというと先輩とかに甘えがちなので、そういうところは共感できるかなと思いました。
あと、「これ分かる」と思ったのは、心の中に寂しさを抱えているという部分。人間誰しも、ふとした瞬間に孤独を感じることはありますよね。整のそういう繊細な部分をうまく表現したいと思いました。
武藤:整みたいなタイプは確かにいるけれど、何を考えているかわからないなと思っていましたが、あさひさんの演技で「なるほど、こういうことだったのか」って腑に落ちたというか。
伊藤:僕は武藤君は一顕の役がすごくぴったりだなって思います。ちょっとほっとけない感じもあるし、整が言いたいことをバシッと言うと、一顕がうろたえる演技がすごく自然だなと感じました。
僕自身、整みたいな部分を持っているし、武藤くんにも一顕っぽさがある。そういう2人の関係性を最初から武藤くんに感じていたので、お芝居しやすかったですし、武藤くんの存在が頼もしかったです。
―お2人は撮影中、「あさひさん」、「武藤くん」と呼んでいるんですか?
伊藤:僕は「潤」って呼んでます。
武藤:僕は「あさひさん」ですね(笑)。
「一人の人間が、人を愛して変わっていく様子に共感してほしい」(武藤)
―BL作品に取り組む上で意識したことや大切にしたことはありますか?
伊藤:今回の作品は愛という部分にフォーカスしていると思います。同性とか異性と関係なく、僕たち2人の中で作っていけたらと撮影前から思っていたので、BLだからという特別な気構えはありませんでした。
あとは今回、一顕とのベッドシーンやキスシーンもあるのですが、美しさ、繊細さを大切にしながら演じていくので、いろいろな人に見ていただけたらと思っています。
武藤:僕もBL作品という部分を意識したことはないです。男女問わず、人間として一人の人を愛して自分自身が変わっていくさまを、見る人に共感してもらいたいです。
―今回のドラマのテーマは「セックスレス」というセンシティブなものですが、ご自身でもこのテーマについて考えられましたか?
伊藤:一顕が恋人に「体に触れないで」と拒絶されたり、整が思いを寄せている人に触れようとした瞬間、ふっと離れられてしまったり。どちらも心では確かにつながっているかもしれないけれど、体の距離が縮まらないというのは難しい問題だと思います。
僕自身はそこまで誰かとずっと一緒にいた経験がないので自分ごととしてはっきりと言うことはできませんが、心と体の関係がもっと明確になればいいのにと思いました。
武藤:一顕のように、3年もの長い期間同棲していると、カップルによっては直面する問題なのかもしれないですよね。セックスレスはデリケートな問題ですし、難しいなと感じています。
「主演だから、は気にしない。良い作品にするために自由でいたい」(伊藤)
―撮影中のエピソードはありますか。
伊藤:実は2人のシーンはまだ1回しか撮っていないんです。(インタビュー時点)
武藤:そうなんです。海沿いのシーンで。
伊藤:でも、そのシーンで夕日がめっちゃ綺麗で、初めて一緒に写真を撮れたんです。
整が一顕を突き放すシーンは晴天。整と一顕の絆が深まるシーンは雨。晴れているときに突き放して、雨の時に関係が深まるというのは、まさにエモーショナルなこの作品ならでは、だなと思ってます。
武藤:2人の撮影はこれからが本番ですが、あさひさんは結構、僕をリードしてくれる感じがあります。現場で、ご飯食べに行こうと僕に声をかけて一緒にお弁当を取りに行くなど、お兄ちゃん的な感じのところがあってすごく優しい。共演中に写真をたくさん撮りあえたらいいなと思っています(笑)。
―役作りの上で気を付けたことはありますか?
武藤:僕は、今まで舞台経験が多いので、舞台とドラマの芝居の違いや細かいニュアンスを学んでいる最中。よりリアリティーのある、自然体のお芝居をしようと意識しています。
会社にいるときの一顕、恋人のかおりといるときの一顕、整といるときの一顕…。いろんな一顕を演じていくので、その演じ分けを見ていただけたら。
伊藤:整は、大切な存在である同居中の和章(かずあき)には嫌われたくなくて顔色をうかがう。でも、和章以外の人からは何を思われてもいいと思っている人間なんです。
そんな整の行動で一顕を翻弄させたいと意識して演じています。セリフの言い方をマイルドにして、普段喋っている感覚に近いような雰囲気で、間も大事にして…。
―今回、お2人は主演ということですが、それについては。
武藤:僕は、ドラマにこれだけ出演させていただくのは、今回の作品が初めて。さらに今回は原作があるドラマなので、若干緊張していますね。
僕自身、原作を読んで結構辛い気持ちになりつつも、読み終わった後にちょっと大人になれた気がしたので、そんな気持ちの変化を視聴者の方にも感じてもらえたらいいなと思っています。
伊藤:僕は、普段からそんなに主演だとか、主演じゃないとかはあまり気にしないようにしています。今回は責任もある役どころなので、主演だから頑張るというより、武藤くんも僕も、自由なスタンスで演じて行けたら良い作品になるのかなと感じています。
「撮影中か撮影後か、武藤くんとカラオケに行きたいと思ってます」(伊藤)
―ちなみに、お2人ともクリエイティブな趣味をお持ちですよね。伊藤さんは写真撮影、武藤さんは絵を描くこと。
伊藤:最近は全然、写真撮れてないのですが、今はそれよりギターばかりやってます。
武藤:そうなんですか?すごい!
伊藤:アコギ(アコースティックギター)を弾くとか、音楽に触れることが多くなっていて。武藤くんはダンスボーカルユニットで歌も歌っているので、撮影中か、撮影が終わったらカラオケに一緒に行きたいと思ってます。
武藤:一緒にカラオケ!いいですね!一顕と整が一緒にカラオケ行っているシーン、追加!みたいな感じ?(笑)
―せっかくなので、大人のラブストーリーにちなんで、お2人の好きなタイプをお聞きしてもいいですか?
伊藤:好きなタイプは毎回変わるんですが、僕は結構相手に甘えたいので、年上年下関係なく、甘えさせてくれる人。
僕より若干、精神的に大人な人がいいかなと思ってます。どっしり構えている女性にドキッとくるかもしれないです。
武藤:好きなタイプですか?うーん、僕もあさひさんに近いかもしれないです。ちょっとお姉ちゃん感というか、大人っぽい雰囲気の方には確かにキュンとしますね!
―伊藤さんは、慶應義塾大学法学部を卒業後、俳優としての道を選ばれて約1年。同級生が就職する中、俳優を続けるのは勇気のいる決断だったのではないかと思います。
伊藤:高校生の時にこのお仕事に出会って、やり切った感じがしなかったので、大学を卒業してからもこのお仕事をやるようになりました。
友達が就活をしているときに、自分は就活をしなかったので、これで本当に良いのかと、当時は結構悩みました。でも、ここで芸能界を辞めても未練があるし、自分の中でももっと自分を高められるはずなのに、高められていない後悔があったので、逃げたくないなと思い、続ける選択をしました。
実際に今もお仕事が楽しいので、楽しいと思えるならとことんやろうという感じです。
―武藤さんは、舞台やダンスボーカルユニットで活躍するなど、いろいろな顔をお持ちですが、活動のバランスについてはどのように考えていますか?
武藤:どの活動に関してもバランスや配分は決めていないんです。それぞれの活動で得たものを自分のものにして、表現の幅をより広げていきたいので、いろいろな分野にチャレンジするのはむしろいいことだと思っています。
舞台に出ることも多いですが、映画もドラマも、僕の中では歌に近いというか、Aメロ、Bメロがあってサビがある、みたいな感じ。台本も、歌に例えれば歌詞のように思えるんです。
個人の仕事やお芝居の仕事で学んだ事は、グループでも生かせるように。逆にグループで学んだ事は個人のこういったドラマなどで見せることができたらいいなと思っています。
「いつかやってみたい役は“マッドサイエンティスト”」(武藤)
―お仕事をする上で、心がけていることがあれば教えてください。
伊藤:僕の場合は、自分がその仕事の中で、いかに自由に楽しめるかということを一番大事にしています。自分の殻に閉じこもるのではなく、その時の感情や動きを自由に表現できるように。
自分がその瞬間を楽しめるようなメンタルでいることがなによりも大切ですし、そのためにはちゃんと息抜きも必要だと感じています。
仕事に対して、いつでも前向きになれるようなアプローチを心がけたいので、メンタルのケアには特に気を配っています。
武藤:僕は舞台をやっているせいか、お客さんからどう見られているのかを想像しながら動くようにしていますね。こうした取材の際の写真撮影でも、常にカメラマンから自分がどう見えているかを想像して動こうと心がけています。
―今後、やってみたい役はありますか?
伊藤:僕は特にこれをやりたいっていうのはありません。
武藤:僕はマッドサイエンティストがやりたいですね。
伊藤:マッドサイエンティスト!?(笑)
武藤:ラスボスの直属の部下で、悪いボスの横に控えている、1番頭の良い科学者ね(笑)。
伊藤:結構具体的にイメージがあるんだね(笑)。
―お2人とも、なんだか対照的でありつつ、兄弟のような感じもあり、いいコンビだということが良く分かりました。最後になりますが、2025年はどのような年にしたいですか?
伊藤:2025年は『ふったらどしゃぶり』から始まるので、武藤くんと一緒に良い作品にしたいです。僕たちにとって大きなステップなので、お互いに成長しつつ、たくさんの人に見てもらえる、愛される作品になればと思ってます。
ドラマの後はミュージカルへの出演が決まっているので、2025年も皆さんに応援していただけるような作品にたくさん出演しながら、変わらず全力で頑張ります。
武藤:このドラマもですが、より多くの人が自分が出ている作品を見て心を動かしてくれるように、一生懸命作品を作れたらなと思っています。僕の2025年は、多くの人に感動を届けたいっていう、その目標で頑張りたいです。
●MBSドラマ特区『ふったらどしゃぶり』公式X @dramatokku_mbs
●MBSドラマ特区『ふったらどしゃぶり』公式Instagram @dramatokku_mbs
●MBSドラマ特区『ふったらどしゃぶり』公式TikTok @drama_mbs
伊藤あさひ(いとうあさひ)プロフィール
2000年1月19日生まれ、東京都出身。2018年放送の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』でルパンレッドを演じ、近年では2023年に日曜劇場『下剋上球児』や2024年に日本テレビ土ドラ10『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』など、話題作に多く出演する注目の俳優。2025年4月よりミュージカル『1789 ―バスティーユの恋人たち―』に出演が決定。趣味は写真、特技は野球とバドミントン。
●伊藤あさひ X @asahi_ito_0119
●伊藤あさひ Instagram @asahi_ito_official
武藤潤(むとうじゅん)プロフィール
2001年8月18日生まれ、東京都出身。7人組ダンス&ボーカルグループ「原因は自分にある。」のメンバーで、ミステリ・ミュージカル 『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 幻影戦争 THE STAGE』主演、来年公開の映画『BATTLE KING!! Map of The Mind-序奏・終奏-』出演など、ドラマ・映画・ミュージカルと俳優としても幅広く活躍中。趣味は映画観賞、絵を描くこと。特技は空手、水泳、バスケットボール。空手初段。
●武藤潤 Instagram @junm_0818
伊藤あさひさん
ヘアメイク/ numata mami
スタイリスト/ダヨシ
武藤潤さん
ヘアメイク/ なかじぃ(KIND)
スタイリスト/辻本紅葉
※全て税込価格
衣装協力/ジャケット¥68,200、パンツ¥46,200/共にJIVELTA(TARKS)、シャツ¥28,400/Mizuid、リング¥13,750/NARRATIVE PLATOON(ROLE)、その他スタイリスト私物
取材・文:小澤彩
撮影:天倉悠喜