小島藤子、話題のドラマで愛人に転生したサレ妻を好演。キスマイ・千賀健永のモラハラ演技にたじろぐ

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今年に入って、次々と話題の映画やドラマに出演し、注目を集めている女優の小島藤子さん。9月後半からは、舞台版『嫌われる勇気』への出演も決まっています。今や飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している彼女に、『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』の撮影エピソードや、舞台に賭ける意気込みなどをお伺いしました。

ドラマ『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』作品紹介

©「愛人転生」製作委員会・MBS

LINEマンガでリリースされた大人気漫画が、MBSドラマ特区枠(毎週木曜MBS 24:59~/tvk 23:59~)で実写ドラマ化。

母親を小さい頃に亡くし、父と二人で平凡だけど幸せに育った千里(小島藤子)。大学の同級生だった大企業の御曹司・真山悠太(千賀健永/Kis-My-Ft2)と大学卒業後すぐに結婚し、幸せな結婚生活を送るはずだった…。

結婚して8年―夫と義両親に“家政婦”のように扱われ、罵詈雑言を浴びせられる日々。それでも、夫のたまに見せる優しさに、わずかな望みを持ちながら、健気に耐えてきた。そして、迎えた30歳の誕生日。仕事に出かけたはずの夫・悠太が若い女性・三井瑠奈(香音)と仲睦まじく歩いているのを目撃してしまう。千里は、信じていた夫の裏切りを知り、それまでの不条理な態度を許せない…と怒りが爆発。瑠奈と揉み合いになり、勢いで二人は車に轢かれてしまい―。

病室で目を覚ますと「瑠奈が、生きてて良かった…」と愛人の名前を呼ぶ夫。なんと、悠太の愛人・瑠奈に“転生”してしまっていたのだ…。“あなたが愛するこのカラダで人生めちゃくちゃにしてあげる”千里は新しい命を全て懸け、悠太への復讐を誓う――。

ドラマ『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』公式サイト より引用

モラハラ夫に不倫された妻が、事故死して愛人に転生。難しい役に挑戦

―小島さんは、話題作『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』で、モラハラされる妻役を演じられています。夫(千賀健永さん)の浮気を知った直後に事故で亡くなり、愛人に転生する妻…すごい設定ですよね。

小島藤子さん(以下、小島):オファーをいただく前から原作漫画の存在は知ってはいましたが、実際に内容を教えてもらうと、不倫、転生、復讐と、今話題のテーマをすべて詰め込んだような作品で。実写化したら一体どんな作品になるのだろうと、一人の視聴者としてもワクワクするようなストーリーでした。

―小島さん演じる千里が、愛人の瑠奈(香音さん)に転生した設定。姿は瑠奈なのに、鏡の中のカットや心の声に千里として見え隠れする。千里の実体が伴わないから、演じるのも大変そうです。

小島:そうなんですよ。香音ちゃんと私で、千里という一人の女性の感情を共有するってすごく難しそうだなとは思ったんですが、こういう役にはなかなか出会えないから、ぜひ演じてみたいと仕事をお受けしました。

撮影中は、香音ちゃんと私でたくさん打ち合わせして、現場でお互いのお芝居を見ながら、ひとつひとつの演技を合わせていきました。

ドラマは、撮影の都合でシーンの順番をバラバラに撮ることも多いので、先に演じた私が、後から演じる香音ちゃんに「こんな風な仕草で」と伝えたり、その逆もあって。

演技もナレーションも、2人一緒だったり別々だったり、いろんなバージョンで撮っていき、編集でうまく組み合わせていく。細かな設定を役者、スタッフと詰めながら進めていくのはすごく面白かったです。

―なるほど。それは通常のドラマにはない苦労ですね。ちなみに小島さんは“モラハラされる妻”の役でしたが、演じていて辛くなかったですか?

©「愛人転生」製作委員会・MBS

小島:辛かったです!なんでこんな言われ方をされなきゃならないんだと、いつも思っていました。夫の悠太だけじゃなく、悠太の両親からもさんざん心無い言葉を投げつけられる。千里は何でこんな家庭にとどまり続けているんだろうと不思議でしょうがなかったです。

私自身、演じているうちにどんどんイライラが溜まっていって、撮影が終わった瞬間に「すごくむかついてきちゃいました!」と愚痴ってしまうくらい(笑)。

―ですよね(笑)。

小島:撮影中も、監督と千里という人間について、かなり話し合いました。

結婚前は明るかった千里が結婚後の抑圧された家庭環境でだんだん自分に自信がなくなっていってしまう。だから、大学生のときのようなネイルもしなくなり、化粧も薄くなり、どんどん地味になっていく――。過去回から見直していただくと、千里の外見の変化の過程を感じていただけると思います。

私自身はまだ独身なので、千里の気持ちが根本的には理解できていないかもしれません。でも、千里みたいな環境に置かれたら、自分を責めて、なぜか逃げられない気持ちになってしまうのかな。そう考えたら、千里が本当にかわいそうで、さらに心が辛くなりました。

千賀さんの“おまうる”を知らないで現場に。「千賀さんの演技は衝撃的でした」

―一視聴者としては、バラエティ番組で千賀さんが子ども相手に演じたサイコパスっぽい演技「お前さ、うるさいんだよ」がドラマで見られるなんて、と結構ワクワクしました(笑)。しかも小島さんは、千賀さんに“おまうる”をいわれてしまう張本人だという!

小島:監督は、あのバラエティでの千賀さんの演技を見込んで主役をオファーしていただけに、「お前さ、うるさいんだよ」のセリフにこだわりがすごくあったようなのですが、実は私、撮影まで千賀さんのその演技を全く知らなかったんです。

現場でシリアスなシーンを撮っていたとき、いきなり千賀さんのあの“おまうる”の演技が始まって、結構な衝撃でした(笑)。

「やりすぎくらいな感じでやってみて」と監督からの注文があって、千賀さんが演技で応える。千賀さん、ものすごい振り切るタイプなので、めちゃめちゃものすごい「お前さ、うるさいんだよ」が来て本当にびっくりしました(笑)。

あのシーンは、私にとってクランクイン直後の撮影だったんです。千賀さんって、なんだかとんでもなくぶっ飛んだお芝居をされる方なんだなと思いました (笑)。

その後も、“おまうる”のいろんなバリエーションを模索して、千賀さんが白目剥く演技もあって(笑)。インパクトありすぎなのに、監督も千賀さんも真剣な表情で撮影が進んでいくから、ここでツッコミ入れちゃいけないと思って、私もただ黙って見ているばかりで(笑)。

―え(笑)!あの有名な“おまうる”に何の反応も示さない小島さんに、千賀さんも驚いたでしょうね(笑)。

小島:のちのち千賀さんとあの演技について話せるようになったとき、「笑ってくれてもいいはずなのに、小島さんが全然突っ込んでくれなくて、めちゃくちゃ恥ずかしかった。プロデューサーも撮影前に伝えておいてくれないと、ねぇ!」と(笑)。

その後も、悠太(千賀さん)のシーンはどれもなかなかクレイジーなんですが、千賀さんは常に、本番1テイク目から100%の力で演じていく。しかも毎回、振り切り方が半端ない。あそこまでぶっ飛んだ芝居を恥ずかしがらずに演じられる役者さんってなかなかいないものです。千賀さんの演技はめちゃめちゃ見習いたいと思いました。本当にすごい役者さんですよ。

撮影スタッフさんもこだわりがある方が多くて、悠太一家のオーバーな演技と、千里の控えめな芝居をうまくまとめていく。とにかくすごいチームで作られているドラマなんです(笑)。

―そのお話を聞いて一層、千賀さんのモラハラ演技が楽しみになります(笑)。

小島:あと、ドラマには小さなこだわりが随所に散りばめられているので、ぜひ細かくチェックしてもらえたら。

例えば悠太が女性にプレゼントするバラの花束。プロポーズのときに千里がもらう花束と、悠太が愛人の瑠奈に渡す花束では大きさが倍も違う。まさに悠太の愛情の大きさを表しているんです。

また、瑠奈に転生した千里を表現するために、私と香音ちゃんで、同じ仕草を共有するのもこだわりで。指でくるくるペンを回して、そのペンで髪の毛を留める仕草。テーブルを拭くときの仕草。顔の前でつくる手の仕草…。私と香音ちゃんで同じ仕草ができるまで何度も練習しました。

私の衣装はずっと同じ服。これは事故に遭って亡くなったときの服が、千里にとって最後の服だからという、実はちょっと切ない設定なんですよね。

―細かな部分まで深く作り込まれているんですね。ドラマをもう一度見返したくなりました。

小島:私たち役者は、できあがっている設定を演じていくだけですが、それを最初に考えた作者さん、転生を分かりやすく脚本にした脚本家さん、そして映像で“転生”を表現していく監督はじめスタッフの方々…。みなさん、本当にすごいなと思っています。

ドラマは30分番組で1話ずつが短めですが、1話ごとの展開が早く、どんどん濃いキャラクターが出てくるので、かなり楽しめると思います。千里がどう悠太に復讐していくのか、あれだけ自信がなかった千里が、瑠奈の体に入ってどんどん自信をつけていく、その変化も見どころのひとつなので、ぜひチェックしてください。

舞台稽古で叩き込まれた、役柄の持つ“人間としてのリアリティ”

舞台版『嫌われる勇気』作品紹介

異例の300万部を突破したビジネス書『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著・ダイヤモンド社)を、和田憲明(脚本・演出)がサスペンスあふれる人間ドラマとして戯曲化。2015年の初演から9年ぶりに再演が決定。

刑事・木戸修(石田佳央)は、娘の陽子(辻千恵)を2年前に交通事故で亡くしたが、娘は自分の意思で車の前に飛び出したのではないかと疑っていた。木戸は、娘の恩師である大学教授の香月一郎(大鷹明良)のもとを訪ね、教授の講義を聴くが、彼の論説は木戸には受け入れがたい内容だった。そんなとき、ふと木戸が思い浮かべたのは、今まさに彼が担当している殺人犯の女性容疑者(小島藤子)の人生。娘の死をきっかけに、木戸の心の中で何かが変わり始める…。(2024年9月24~29日、新宿・紀伊國屋ホール)

舞台版『嫌われる勇気』公演公式サイト 

―ドラマの放送と同時期(9月後半)に、舞台版『嫌われる勇気』にも出演されますね。

小島:はい。今回の舞台は、コメディ要素が全くない、シリアスな人間劇です。サスペンス要素もあり、ずっしりと重くて心に残る作品に仕上がっています。

人間のリアルな姿を描きたいという演出家・和田さんのこだわりが詰まった舞台で、キャストもたったの5人。セリフの分量も多く、まさに集中力の勝負といった感じです。

―コメディ要素のないシリアスな舞台。気力も体力も求められそうですね。

小島:確かに、短いシーンを小刻みに撮り重ねていく映像のお仕事と違って、1~2時間の舞台の間中、ずっとシリアスな内容が続くのは大変ではあります。私は他の共演者さんと比べて、舞台経験が5~6回程度と少ないこともあって、舞台稽古が終わる時間には毎日グッタリ(笑)。

帰宅するなりベッドに身を投げ出して寝こんでしまって、気付いたら深夜!そこから歯を磨いたり、お風呂に入ったり、なんてことも…。

―ハードなチャレンジをされているのが伝わってきます。

小島:舞台の稽古が始まってから2週間、ずっと同じシーンを練習しているのですが、そこで演出家の和田さんに「リアルにそこに生きろ」と言われています。それが結構難しかったりするんですが(笑)。

私のようにドラマや映画などの映像作品ばかりを演じている俳優にとっては、こま切れのシーンを演じることが慣れっこになってしまっているようで。“演技のプランを考える前に、役の人間が心の奥にどんな感情を抱えているのかを忘れないようにしてほしい”と、和田さんに常に指摘されています。

「その日すごくつらいことがあった人間なら、楽しくおしゃべりするシーンだとしても、必然的に演技が変わってくるはずだ。役柄の人間のリアルはどこにあるのか、絶対に忘れないようにして」と。

その一方で和田さんは、「舞台の途中でセリフが飛んでしまっても、そのときの役の感情が生きているなら、セリフが少々違っても気にしないから」とも。

こんな経験は今回の舞台が初めて。今回和田さんに教え込まれた“役柄が持つ、人間としてのリアリティ”という意識は、今後の映像のお仕事でも絶対に活かしていきたいと思っています。

―ヘビーなお仕事もパワーに変えていく小島さん。お話を聞いていると、華奢な見た目とは裏腹に、すごくタフな方なのかも、と感じました。

小島:昔から、泣く役や、不遇な境遇の役を多くいただくんですが、私自身は結構あっけらかんとした性格で、めちゃくちゃ切り替えが早いといわれます(笑)。泣くシーンでも、直前まで現場のスタッフさんとおしゃべりして、「本番入りまーす!」の声でスッと役に入って泣く。カットの合図で、また「さっきの続きなんだけど…」って話し始めちゃう。

 “自分は役に入り込めていないんじゃないか。役者としてどうなんだろう”と悩んだ時期もあったんですが、このお仕事が長くなってくると、いろいろなお芝居のスタイルを持った役者さんがいるんだなと理解できるようになりました。それなら、私みたいな人間がいてもいいんだなと、今は開き直って演じられているかな。

舞台稽古の入り時間が私だけ遅かった日、洋服を買ってから稽古場へ。重い内容の舞台なだけに、休憩時間にも重い雰囲気が流れていたりもするんですが、「見て見て!今、こんなお洋服買っちゃった」と買ってきたものを披露したら、共演者の皆さんから「小島さんは自由奔放だな!」と爆笑されたりも(笑)。

―役と違って、小島さん自身はすごく明るい方なんですね。なんだかホッとしました(笑)。陰と陽の絶妙なバランス感覚が、次々とオファーの舞い込む要因になっているのかもしれませんね。意外とコメディとかも似合いそう(笑)。

小島:そう、コメディやりたいんです(笑)!こういうご時世ですし、笑いが届くドラマがたくさん増えたらいいなと思っているんです。私もいつか、視聴者の皆さんに「小島藤子の演じるキャラ、面白すぎる」と笑ってもらえるような役に挑戦したいですね。

小島藤子(こじまふじこ)プロフィール

1993年12月16日生まれ、東京都出身。小学6年生のときに、スカウトされ芸能界入り。ドラマ『キミ犯人じゃないよね?』(2008年)で女優デビュー。『小公女セイラ』(2009年)・映画『書道ガールズ』(2010年)などに出演し注目を浴びる。その後、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)、『共演N G』(2020年)、『降り積もれ孤独な死よ』(2024年)、ショートドラマ『トリッパーズ』(2024年)、映画『三日月とネコ』(2024年)など話題作に続々出演。趣味はカメラ・映画鑑賞・音楽鑑賞。

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舞台版『嫌われる勇気』公演公式サイト

文:小澤彩

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