「おっパン」の愛称で親しまれ、SNSで高評価を集め話題をさらったドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』がオリジナルストーリーで映画化し、2025年7月4日より劇場公開されます。
今回は、ドラマに続き、常識を“アップデート”していく物語の主人公・沖田誠を演じられた原田泰造さんにインタビューしました。
2024年日本民間放送連盟賞でテレビドラマ部門優秀賞を受賞した人気話題作の映画化に際して、主演自ら感じた作品の魅力を語っていただきました。
『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』作品紹介
ゲイの大学生・五十嵐大地(中島颯太)との偶然の出会いによって、時代遅れの“昭和脳”から令和の価値観にアップデートしつつあった、「銀杏事務機器リース」の営業戦略室・室長・沖田誠(原田泰造)52歳。
ある日、アップデート以前の彼の直属の部下だった佐藤(曽田陵介)が誠の取引先相手として現れる。新入社員時代、パワハラともいえる誠の度重なる言動によって、心を傷つけられ、退職していた佐藤は、誠らに対する不信感によって、成立するはずだった契約を白紙にしてしまう。
一方、大地は晴れてパートナーになった獣医学部時代の先輩・円(東啓介)が九州の水族館からの応援要請に応じたため、寂しくも不安な日々を送ることに……。そんな遠距離結婚の思いを紛らわせると同時に、九州への旅費を稼ぐため、ペット用品店「エルモッサ」でアルバイトを始める大地だったが、その店長は何と、佐藤だったのだ。
果たして、彼らはそれぞれのタスクを攻略し、更にアップデートさせることはできるのだろうか!?
(『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか』公式サイトより抜粋)
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6月28日(土)に東海テレビ・フジテレビ系全国ネットでスペシャルドラマを放送!
常識を“アップデート”するホームコメディ。沖田誠の成長ぶりに注目

ー話題を呼んだドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』の映画化ということですが、どんな物語なのでしょうか。
原田泰造さん(以下、原田):この作品全体のキーワードとして「アップデート」というものがあって、今回の映画では、過去に自分のせいで会社をやめた子と、取引相手として再会するというストーリーがあります。
僕の演じる沖田誠と、誠の先輩で一緒にアップデートしてきた古池(渡辺哲)との「(過去に)やってしまったものはどうしたらいいんだろう」という、ドラマでも登場していたようなテーマが、今回の映画でもう一度登場します。
誠自身としては、アップデートする前の過去の誠と向き合うような物語です。
ー今回の映画で、お芝居をしながら工夫したことはありましたか。
原田:元部下と再会するというところをどうやって演じようかと考えながらやりました。
色々読んで考えてみたり、たくさんイメージを膨らませてみたりもしましたが、映画だからって特別なことをしたわけではなく…。というのも、ドラマの放送が終わってから今回の映画の撮影までが早かったんですよ。
ドラマを撮り終えて、放送して、ちゃんとドラマをお届けできた余韻に浸っていたら、しばらくして映画の話が来て、もう撮影がはじまるというような感覚でした。
そのスピード感には驚きましたが、ドラマの感触を忘れずに映画を撮影出来て良かったです。
ーそうだったのですね。映画というひとつの集大成になったかと思いますが、ドラマ最初からの誠の成長をどう感じますか。
原田:すごいスピードで変わったなと思います。やっぱり誠が変わったから職場の雰囲気も変わったし、部下の接し方も変わっていきました。
家でも、子どもたちや奥さんの好きなものや趣味を最初は否定していたけど、アップデートをしていくうちに、逆に応援するようになりました。
だから今回の映画でも「アップデート」。決めつけていた誠が柔軟に変化していくところがこの作品の面白いところですし、演じながら僕自身もアップデートしていけたと思います。
ー演じて感じた、沖田誠自身の魅力はなんでしょうか。
原田:本当にアップデートする力がすごいところ。一度決めたらとことんやる人だから、大地くんの言うことを聞いたり、家族とちゃんと話したり、アップデートしようと向き合っていくところが魅力です。
だから僕も誠を真似しようとしているし、「すぐやろう」と実行する力があるところも素敵だなと思います。
ー今回の映画の中で、印象的だったシーンを教えてください。
原田:中島颯太くんが演じられた五十嵐大地くんが、バイトのメンバーに自分が同性愛者であることを伝えたら、「悪いことを聞いちゃったね」って返されて、それに対して「別に全然恥ずかしいことじゃないので」って会話をするシーンの大地くんがすごくかっこよかったです。
サラっと言えちゃうかっこよさや芯の強さが感じられるシーンで、そういうところは現代っぽいですが、多分昔もそういうことをサラっと言える人はいたと思うんです。それを今こうやってちゃんと映画で描けているっていうのも良かったです。
あとは、自分が以前に傷つけてしまった元部下が取引先になって対面するのは、自分自身もグッとくるシーンなので思い出深いです。
家族、友人、元部下。人間模様を描いた作品の撮影現場

ーこの作品全体を通して「人を受け入れる」「人の変化」というテーマ性を感じますが、そこについてどう思いますか。
原田:確かに今回の映画でも、かつての部下・佐藤が「人ってそんなに簡単に変わるかな」みたいなことをつぶやくシーンもあります。
でも僕は、「変わること」って可能だと思う。やっぱり自分自身、変わってきているなって感じているところもあるから、「よし、今からやろう」という思いさえあればどんな年齢でも変わることは出来るんじゃないかな。
ーなるほど。この作品はネットでも話題を呼び、大勢のファンから支持されています。演じてみて、人気の理由はどこにあると感じましたか。
原田:不正解がないところだと思います。
やっぱり原作の漫画が面白いし、作り手側の作家さんがすごく気合を入れて描かれていると思うので、「好きなものにまっすぐでいいんだ」というメッセージが感じられます。
おじさんが頑張っている姿にも背中を押されるし、その姿からパワーをもらえるところもポイントです。
ー大地くんや家族をはじめ、登場人物それぞれが魅力的です!
原田:誠の息子・翔(かける)も本当にいい子に育ったし、誠にとって大地くんの存在は大きかった。大地くんと出会えたから変われたし、誠と大地くんとの関係性も面白い(笑)。
友達であり、お互いをリスペクトしているんだなって思います。
ー誠にとって、大地くんの存在は大きかったとのことですが、現場での中島颯太さんの雰囲気はどうでしたか。
原田:もう現場でも本当にそのまんま。でも根っからの関西人だから、結構ツッコミをしてくれることもあります(笑)。
ーどんな会話をしましたか。
原田:「昨日何時に寝たの」とか「もうちょっと寝たほうがいいよ」とか。僕、人の睡眠に興味あるんだよね(笑)。
忙しいのに、中島くん若いからずっと起きてて、寝た方がいいよって睡眠の話をしました。
ー親しい様子が伝わってきました(笑)。撮影現場全体の雰囲気はどうでしたか。
原田:ドラマから1年くらいの間があって映画の話をいただいたから、ドラマを撮影していた頃と繋がっているような感じで、スタッフさんたちとも「こんにちは」の挨拶でした。「久しぶり」っていう感じじゃないから(笑)。
スタッフさんのメンバーも全然変わっていなかったからやりやすかったです。
“おっパン”の家族は、もう本当に慣れきった感じでした。嫌な緊張感がないというか、撮影以外でも本当に家族って感じで、ダラーっとスマホをいじるとか、ソファで誰かが寝ていても別になんとも思わないくらいのアットホームな雰囲気でした。
ーそうなんですね。家族の一員、愛犬・カルロスも可愛かったです。現場ではどんな感じなんですか。
原田:カルロスは現場のアイドルでした。スーパーアイドル(笑)。
お利口さんだし、そこら辺を歩いていたら「こっち向いてくれないかな」とか思いながら現場にいました。たまにこっちに来てくれることもあって、かわいかったです。
「このお仕事はずっと続けられる」楽しみながら歩んだ四半世紀

ー作品のテーマにちなみまして、原田さんご自身の「アップデート」はありましたか。
原田:あったのかな。どうなんだろう(笑)。
自分ではアップデートしているつもりでも、他から見たらまだっていうのはいっぱいあるかもしれない。
やってるつもりなのよ、アップデートは。でも、できてないところも多分いっぱいある。
奥さんから「食器洗って乾いたら食器棚に入れてって言ったじゃん」ってよく言われるってことは、僕はそれができてないということだから、アップデートします(笑)。
ーアップデートのきっかけは年下の大地さんとの出会いでした。原田さんが年下から教わったという経験もありますか。
原田:それこそ、自分の息子と話して吸収しようと思う。「新しいあそこのサウナいいよ」とか(笑)。
でもやっぱり、男親あるあるで、奥さんがハブ空港みたいになっているから、奥さんを通してお互いの今の状況を知るということもあって…。それでも見守るということは大事にしています。
ーなるほど。後輩芸人さんと接する中で教えられることや学ぶこともありますか。
原田:いっぱいありますよ!みんなテレビという同じ板の上だから学ぶことばっかりですし、みんなすごいなって思います。
M-1を見ていて「どうやってネタ作ったんだろう」とか考えるし、バラエティ番組に出演された時のアイドルや俳優の方も本当に面白い。
新人の芸人がドーンと堂々としている様子を見て「マジかよ、すごいな」って思います。僕は今でも緊張することがあるから、「なんで慌てないの?」って逆に聞きたいくらい。僕は毎回慌ててる(笑)。
ーそれは少し意外でした。ですが、お笑いで培った頭の回転の速さがお芝居でも生かされているのかもしれませんね。
原田:でもセリフを覚えて言うのと、バラエティ番組に出るのとはテンション感が違うから、僕としては全然違うところでやっている感じはあります。
文芸のクラブに入ったり、今度はスポーツやってみたり、そういうイメージです。
ーそうなんですね。お芝居もお笑いも両方やられてみて、どうですか。
原田:ずっと楽しい!すっごく楽しい!
もう四半世紀ですね。バイトも部活も、なにも続かなかったけど、このお仕事はずっと続けられるくらい楽しいから、本当にこの職業はありがたいなって思います。
ネプチューンの2人に会えたのもよかったし、ボキャブラブームが来たっていうのもよかったから、運が良くて恵まれていたなって感謝しています。
※ボキャブラブーム:1990年代中盤にフジテレビ系で放送されたバラエティ番組「タモリのSUPERボキャブラ天国」の若手芸人出演コーナーがきっかけとなり、若手芸人が熱狂的に支持されるようになったこと
ー最後に、映画の公開へ向けてメッセージをお願いします。
原田:どんな世代の方にもこの映画を見てもらいたいです。ドラマを撮影している時も映画になるとは思っていなかったので、映画が公開されることが本当にうれしいし、この作品のファンの方をはじめ多くの方に見てもらえたらいいなと思います。
おじさんが頑張る話なんだけど、家族の物語でもあるし、ひとりの男の話でもあります。
登場人物それぞれが主役みたいなものだから、この作品から共感できるものがどこかにはあると思います。映画でもそれを感じ取ってもらえたらうれしいです。

原田泰造(はらだたいぞう)プロフィール
1970年生まれ、東京都出身。
「ネプチューン」のメンバーであり、俳優としても映画、ドラマ、CMなど多岐に渡って活躍。
主な出演作にドラマでは、NHK大河ドラマ『篤姫』や『龍馬伝』、『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』、『はぐれ刑事三世』や『サ道』に出演するほか、映画では『神様のカルテ』や『アイネクライネナハトムジーク』、『大きな玉ねぎの下で』など、多くの作品に出演。
●公式X @horiuchi_ken
撮影:髙橋耀太