原作・今村翔吾と声優を務める梅原裕一郎&三吉彩花が語る、アニメ『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』の魅力

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左:三吉彩花さん、中央:今村翔吾さん、右:梅原裕一郎さん
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直木賞受賞作家・今村翔吾さんによるデビュー作、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(以下『火喰鳥』)がアニメ化!

原作者の今村翔吾さんと、出演する声優の梅原裕一郎さん、俳優の三吉彩花さんにインタビュー。アニメ『火喰鳥』の魅力をたっぷり伺いました。

アニメ『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』作品紹介

アニメ「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」の配信サービス・あらすじ・キャスト・作品概要|ユーウォッチ
「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」は、人の命を守るためには危険を顧みない江戸の火消たちが奔走するエンタメ活劇です。直木賞受賞作家の今村翔吾のデビュー小説を原作とし瀬口忍によって漫画化された作品をア...

かつて「火喰鳥」と呼ばれた江戸随一の火消侍・松永源吾。訳あって火消を辞めていたが、突然新庄藩から仕官の誘いが来る。

妻・深雪の後押しもあり、源吾は頭取として崩壊した火消組を再建することに。

一癖も二癖もある仲間を集め、「ぼろ鳶」と揶揄されながらも「どんな命も救うのだ」と奮闘する源吾だったが、江戸では「狐火」という、謎の連続不審火が続いていた。

迫りくる災いに、諦めの悪い火消達が奔走する、「エンタメ活劇」が開幕!

(※アニメ『火喰鳥』公式サイトより引用)

2026年1月11月〜CBC/TBS系全国28局ネット「アガルアニメ」枠(日曜夜11時30 分〜)より放送決定

※放送時間は編成の都合など変更となる可能性がございます

●X @hikuidori_pj

●Youtube @ACSanimation

U-NEXTにて2026年1月12日(月)より 毎週月曜1時00分~ 3日間先行配信

視聴はこちらから!

『火喰鳥』は“王道”の作品。「ド直球、全力ストレート(笑)」

ー今村翔吾さんによるデビュー作、『火喰鳥』がアニメ化。まずは、作品の見どころを教えてください。

今村翔吾さん(以下、今村):『火喰鳥』は本当に“王道のおもしろさ”を描いたつもりです。

僕は、自分のことを“王道”を書く作家だと思っているのですが、特にこの作品はド直球、全力のストレートです(笑)。

王道の作品だからこそ、全世代の老若男女どんな方にも、どこかに共感したり楽しんでいただけるところがあると思います。

時代劇や時代もののアニメだと思わって敬遠せずに、まずは騙されたと思って観てほしいですね。

梅原裕一郎さん(以下、梅原):仲間がどんどん集まっていく様子が、王道の少年漫画のような土臭い空気感ですごく心地よいです。

キャラクターたちの個性が豊かで、それぞれが源吾についていくきっかけが描かれていきます。さらに物語の展開が大きくなっていき、“次の話はどうなるんだろう”と気になる作品です。

三吉彩花さん(以下、三吉):前のめりになって感情移入してしまうような作品です。源吾と深雪の夫婦の関係性も、すごくリアルに描かれています。

ぜひいろんな世代の方に楽しんでいただきたいですし、世界に羽ばたいてほしいなと思います。

ー声優を務める梅原さんと三吉さん、原作を読んだときの感想を教えてください。

梅原:時代ものということで、“難しいんじゃないか、予備知識がないと楽しめないのではないか”と勝手な先入観をもって読み始めたのですが、全くそんなことはなく。

本当にエンタメとして楽しめる、誰でも入りやすい作品だと思いました。

アニメ映えする作品だろうな、と。

実際にあった火事の話が出てくるなど時代考証もしっかりしていて、リアリティを感じました。

三吉:火消のヒーローたちが挫折しながらも困難に立ち向かっていく、かっこいい場面がたくさんありました。

それに加え、どのキャラクターにも、誰もが共感できる感情や抱えているトラウマが人間らしく描かれていて、すごく感情移入しました。

文章で読んでいるものがアニメとして動きだして、自分の声と合っていくのを想像すると、読んでいてすごく楽しみになりました。

火消は、“誰かの命を守る“という普遍的なテーマを持っている

ー今村先生のデビュー作でもある『火喰鳥』。アニメ化することについて、いかがですか?

今村:『火喰鳥』はデビュー作なので、すごく思い入れがあります。初めて書店で完成した本を見た瞬間は、一生忘れられません。

他の作品以上に思い入れが強い作品なので、アニメ化するのは本当に嬉しいです。

ーこの作品を描いたきっかけを教えてください。

今村:北方謙三先生が僕の短い小説を読んで、「この子に何か小説を描かせてみろ」と言ってくださったことがきっかけです。

ただ、「1作は3か月くらいで描けないと、作家として生き残れない」と言われて。

北方先生は『水滸伝』のような“(おとこ)”をテーマとした小説を書く方です。だから、“3か月で1作”という期限も、僕の“(おとこ)”としての力量を試されていると思って。

「3か月もいりません、1か月で十分です」と言ってしまったんです(笑)。

ーそうだったんですね。“火消”というテーマはどう決めたのですか?

今村:火消についての知識があったので、取り組んでみようと思いました。火消はすごく人気の職業なのに、意外と火消について描いた小説は少なかったんです。

火消の“誰かの命を守る“というテーマは普遍的だな、と思いました。

タイミングとしては、一度諦めかけていた小説家という夢を、もう一度目指そうと思ったとき。だから、小説の内容も「一度は諦めた夢を再び目指すような物語にしたい」と想って書きました。

松永源吾は「まっすぐで実直、嘘のない人間(梅原)」深雪は「芯が強く、懐の深い温かい人(三吉)」

ー江戸随一の火消侍・松永源吾を演じた梅原さん。役の魅力を教えてください。

梅原:源吾は挫折から立ち上がっていく人物で、挫折する前も立ち上がった後も、一貫して人の命を救うというところは変わっていません。

そのまっすぐさ、実直さが彼の魅力の一つです。実直なあまり、ときにものすごく不器用な人間にも見えます。

ですが、嘘のない人間なので、周りの人たちがついていくんだと思います。

ーこの役を演じるにあたっての思いはいかがでしたか?

梅原:実はこの作品は、2年前(2023年)にパイロット版の制作があり、二言三言ほど収録したんです。

そのときは、年齢的なこともあり、“この役はまだ自分には少し背伸びだな”と感じました。

そこから2年経って収録に臨み、“今のタイミングで本当に良かった”と思いました。2年間の間にいろんな役をやったり年を重ねて経験を積み、役に自分自身が追いついくことができたのではないかと感じています。

2023年のときの自分だったら、源吾を演じるのは難しかったかもしれません。

今村:いやいや、2023年の時点で、うちの事務所のスタッフは「梅原さんの声は源吾にぴったりだ!」って歓声を上げていましたよ!(笑)

梅原:(笑)。恐縮です。

今村:ただ、これは声優さん、作家でも同じことですが、作品を作るうえではご本人の“納得感”はすごく大事です。

そういった意味では、梅原さんにとっても、作品にとっても、2025年というタイミングですごくよかったのだと思います。

梅原:ありがたいです。

今は最終話近くまで収録しましたが、まだまだ続きがあればいいなと思ってしまうくらい源吾という役にどっぷり浸かることができて、すごく楽しかったです。

今村:原作はまだまだあるので、やろうと思ったらまだまだできますよ~!(笑)

梅原:いつかぜひ演じさせていただきたいです(笑)。

ー続いて、源吾の妻・深雪を演じた三吉さん。役の魅力を教えてください。

三吉:深雪はすごく芯の強い女性で、どんな立場の方に対しても言うべきことは言える性格です。何が来てもドーンと構えている強さを感じました。

そんな芯の強さを持ちながら、周りの人たちを温かく包み込む懐の広さもあります。

自分とリンクする部分もあれば、こういう人間でありたいと思わせてくれる部分もあり。演じていて、深雪と対話しているような感覚になりました。すごく魅力があるキャラクターでしたね。

ー普段、俳優として活動している三吉さん。声優として作品に臨んだ感想はいかがでしたか?

三吉:収録中はとにかくひたすらついていくという感覚でした。正解は分からないけれど、できるだけのことをやって、食らいついていく。

自分の今まで培ってきた俳優やモデルの仕事でさえも、分からないことや学ぶことはたくさんあります。

でも、作品を重ねていくごとに、意識していないつもりでも少し慣れがでてきたり、変な余裕が出てきていたんです。

今回は全く新しい環境で、新しいジャンルのお仕事に取り組ませていただいたので、本当に自分にとっては刺激的でした。

今後の自分にとって、本当に財産になるような経験だったと思います。

ー今村先生がキャラクターを作る際に大切にしたポイントを教えてください。

今村:源吾は主人公としてかっこいいだけでなく、かっこ悪いマイナスな部分も描くことを大切にしました。

人として弱いところも描くことで、人間としての振り幅を持たせたいと思ったんです。

深雪は逆に、弱い部分を見せないようにしました。

もちろん深雪本人の中には弱い部分もあるのですが、深雪はそういう部分を自分の中にぐっと抑え込むキャラクターなんです。実はこの物語の中で一番強いのは深雪かな、といつも思っています。

ー三吉さんと梅原さんが演じたそれぞれのキャラクターはいかがでしたか?

今村:梅原さんの声は源吾に合うだろうな、と思っていましたが、本当に思っていた通りでした。源吾に魂が宿ったという感じで、嬉しかったです。

三吉さんも、思っていた通りに演じてくださいました。

三吉さんは、声優のお仕事が初めてということで緊張されていたと思います。ですが、監督からのアドバイスや指示を必死に受け止めて、どんどんブラッシュアップさせていく姿そのものが、まさに“深雪さんだ”と。すごく安心しました。

お互いの印象は?「今村先生の気さくな雰囲気に、肩の力が少し抜けました(三吉)」

ーお互いの第一印象を伺いたいです。まずは、梅原さんの印象はいかがでしたか?

今村:僕はアニメが好きで、梅原さんが出ている違う作品を観たことがあったんです。

だから、“すげ〜、あの声のままや〜”って(笑)。

梅原:(笑)。

三吉:(笑)。

私は、梅原さんに対して、本当にずっと緊張していました。

私は俳優歴はそこそこありますが、声優としては本当にド素人。なので、プロの声優さんである梅原さんにどこまで聞いていいのかわからなくて…。あまりにも初歩的な質問をしてしまったら失礼かも、と。

収録中以外も、ずっとこの素敵な声でいらっしゃる梅原さんに、何を話しかけていいのか探り探りでしたね。

ーそうだったんですね。三吉さんの印象はいかがでしたか?

梅原:三吉さんは、緊張されているんだろうなという様子がひしひしと伝わってきました。

でも、いざマイクの前に立つと堂々としていて。肝が座った方だなと感じました。しっかり演じられているのがすごく伝わりましたね。

三吉:実は最初から最後まで、緊張で一度もお腹の調子が良くなることはなかったです(笑)。

でも、形になっていく作品を内側から見るという貴重な経験をさせていただき、本当にいい影響をいただきました。

今村:僕は、三吉さんに初めてお会いしたとき、“背、高ぇ〜”って思いました(笑)。

事務所に帰っても、スタッフたちはみんな「三吉さん、バリ綺麗だし、背も高いな~」って話でもちきりでした。

三吉:ありがとうございます(笑)。

ー最後に、今村先生の印象を教えてください。

梅原:今村先生は、第一声から気さくな方だなという印象でした。

実は、先生も少しだけこの作品に声優として参加されているのですが、その声がすごく良い声で。いい感じの“あらくれ感”があって、印象的でした。

ブースにいた皆さんが「声優としても活躍できる」とおっしゃっていたくらいです。そういった意味でも、今村先生はエンターテイナーな方なのだな、と思いました。

ー今村先生、とてもいい声ですよね。三吉さんはいかがでしたか?

三吉:私は、声優の現場がほぼ初めてだったので、初対面の日はものすごく緊張していました。

実は今村先生と誕生日が一緒でして、絶対にそれを伝えようと思って話しかけたんです。

お話してみると、先生の気さくな雰囲気で少し肩の力が抜けました。本当にありがたかったです。

ー今村先生の気さくな雰囲気、お話していてもすごく感じました。

今後の展望は「“世界の今村”(今村)」「平穏に生きていたい(梅原)」「アクションに挑戦したい(三吉)」

ー今村先生、今後の展望があれば教えてください。

今村:ずっと言っていることなのですが、大河ドラマの原作をやりたいです。大河ドラマが大好きで3歳から見ているんです。大河ドラマの原作を担当するのが一つの目標です。

あとは、とにかく世界に出ていきたい。「世界の今村」になりたいんです。世界に広まるような作品を描いていきたいというのが僕の願いですね。

僕は、やりたいことはなんでもかんでも口に出すタイプなんです(笑)。

今度、『イクサガミ』シリーズという僕の作品がNetflixで実写化するのですが、その前から「世界を見据えている」と言っていたから、Netflixが寄ってきてくれたんじゃないかと思っています(笑)。

ーなるほど、言霊ですね(笑)。梅原さんはいかがですか?

梅原:僕は先生と違って夢がないんですよ(笑)。YouTubeとかラジオでも言っているんですけど、平穏に生きていたいみたいな感じです。

三吉さんみたいに新しい現場に飛び込んでいくのは本当にすごいなと思っていて。僕で考えたら、いきなりある日突然顔出しのお芝居をやっているようなものですから。

僕は多分それはできない人間なので、声優として堅実にやっていきたいなと思いました。

やってみたい役とかも特になくて、お声掛けやオーディション、今回みたいにお声掛けいただいたものにどれだけ応えられるかという方が好きかもしれないですね。

今までと違うような、やったことないような役でも、お声掛けいただければ頑張っていく感じです。

ー三吉さんは今後の目標についてどうですか。

三吉:私は割と言霊を信じるタイプなので、いろんなところでずっと「アクションをやりたい」と言っています。本当に国内外問わず、出会える作品があれば挑戦していきたいです。

自分が映像の作品をやらせていただくときに、戦いだけのストーリーにはなかなか共感できないことが多くて。壁にぶつかったり、挫折を乗り越えたり、そういう人間味のある作品に胸を打たれます。

だから、私がお芝居をする時は、常に自分がその役としてどういうメッセージを世の中に発信できるのかということに重きを置いています。今後、海外でもそういう作品に出会えたりしたら、すごく幸せだなと思っています。

ーアクションを演じる三吉さん、絶対にかっこよくて似合いそうですね…!

三吉:両手に銃を持って戦うようなカッコいいアクションができる女性の役に憧れがあるんです。

今村:そういうキャラクター、昔書いたことある!

三吉:本当ですか!やってみたいです(笑)。

今村:その時はぜひ!

ーすごい!まさに言霊ですね(笑)。

ー日常の中でのリフレッシュ方法を教えてください。

梅原:僕は三国志が好きで、その時代の歴史の本を読んだり、解説しているYouTubeの動画を見たりするのが楽しいですね。癒されながら、遥か昔の歴史に思いを馳せています。

三吉:私は友達と会うことが本当に多いです。

あとは月に2回くらい、冬眠のように眠る日もあったりして、寝て回復しています。料理も作るので、料理でストレス発散をしますね。

ー本日はありがとうございました。アニメの放送を楽しみにしています。

今村翔吾(いまむら しょうご)プロフィール

1984年京都府生まれ。滋賀県在住。

ダンスインストラクター、守山市埋蔵文化財調査員を経て2016年に、「狐の城」で第23回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢(ささざわ)左保(さほ)賞を受賞。授賞式での北方謙三先生の一言をきっかけに書いた『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組シリーズ』(祥伝社)で2017年に作家デビュー。2021年 「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞受賞。

2022年『塞王の楯』(集英社)で第166回直木三十五賞受賞。受賞後、これまでのお礼を伝えるため「今村翔吾のまつり旅」と称し2022年5月より4カ月間かけ全国の書店や学校を行脚した。執筆活動の他にも、若者に読書や言葉の大切さを伝えることなどを目的とした一般社団法人ホンミライを設立し、代表理事を務める。2021年大阪府箕面市にある書店『きのしたブックセンター』を事業承継したのを皮切りに、JR九州佐賀駅内に「佐賀之書店」を新規出店、2024年4月にはシェア型書店『ほんまる』を東京都神田神保町に出店し現在3店舗のオーナーを務める。他の代表作としてNetflixにて世界独占中の『イクサガミ』シリーズ(講談社)がある。

●Instagram @shogo_imamura1984

●X @shogo_imamura_

梅原 裕一郎(うめはら ゆういちろう)プロフィール

1991年3月8日生まれ。静岡県出身。2013年に声優デビュー。2015年の『美男高校地球防衛部LOVE!』の由布院煙役でテレビアニメ初レギュラーを果たしブレイク。2015年、『ヤングブラック・ジャック』の間黒男役で初主演を果たした。主な出演作に『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』のジークフリード・キルヒアイス役、『ゴブリンスレイヤー』のゴブリンスレイヤー役などがある。

三吉彩花(みよし あやか)プロフィール

1996年6月18日生まれ、埼玉県出身。身長173cm、血液型B型。モデル出身で、2010年に『Seventeen』専属モデルに選ばれ、雑誌モデルとして活動を開始。女優としても数多くの作品に出演。主な出演作に、映画『グッモーエビアン!』(2012年)、『旅立ちの島唄~十五の春~』(2013年)、ドラマ/配信作品『今際の国のアリス』(Netflix)などがある。現在はモデル・女優として国内外で活動中。

●Instagram@miyoshi.aa

撮影:髙橋耀太