ミュージカル『梨泰院クラス』出演の川口ゆりな。挑戦を続けて切り開いた新境地

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世界的人気作『梨泰院クラス』(イテウォンクラス)が、世界初のミュージカル版として、日本で初演を迎えます。

今回インタビューした川口ゆりなさんは、主人公の同級生だったオ・スア役を演じられます。

座長の小瀧望さんやWキャストの相方・梅澤美波さんとの稽古場エピソードにミュージカル初挑戦の裏話、ファンへの想いまで語っていただきました。

ミュージカル『梨泰院クラス』作品紹介

高校生のパク・セロイ(小瀧望)は、父(浅野雅博)の仕事の都合で引っ越した転入先で、クラスメイトのチャン・グンウォン(秋沢健太朗)が傍若無人にふるまいヒドイいじめを行っている様を見かける。校内の誰もが見て見ぬふりをするが、セロイは彼を許せずに思わず殴ってしまう。グンウォンは父の勤務先でもある国内最大手飲食チェーン「長家」の会長チャン・デヒ(佐戸井けん太)の長男で、揉めたセロイは転校僅か1日で退学、父も会社を辞めることに。

数日後、セロイは引っ越し初日に出会って以来気になっていた1日だけの同級生のスア(梅澤美波/川口ゆりな)に道で偶然出会い、成り行きで自分の気持ちを打ち明けることになる。だが、そこで父が事故で亡くなったという知らせが入る。グンウォンが乗ったバイクに轢かれたと分かり怒りを止められないセロイは、グンウォンに暴力を振るって刑務所へ収監されてしまう。

ー出所から7年後、働いて資金を貯めたセロイは梨泰院で飲食店を開いていた。

父の復讐を誓うセロイは、彼に興味を持ち追いかけてきた天才でソシオパスなイソ(和希そら/sara)、セロイによって人生を救われたヒョニ(土井ケイト)とスングォン(吉田広大)、イソに想いを寄せるグンウォンの弟グンス(新原泰佑)ら仲間たちと共に、梨泰院の街で成功を目指して駆け上がっていくー。

ミュージカル『梨泰院クラス』公式サイトより引用

役作りは香り、音楽、洋服。寄り添いながら“推し”を体現

ー『梨泰院クラス』、世界初のミュージカル化ですが、川口さんの演じられた役とその印象を教えてください。

川口ゆりなさん(以下、川口):私はオ・スアという人物を演じていて、スアは小瀧さんが演じられた主人公パク・セロイの高校の同級生でした。

スアは、自分の意志や自分にとっての幸せをすごく大事にする子。周りからひねくれているように見られても、善か悪かで言ったら悪寄りになってしまっても、スアにとってはそれが最適解だし、意志を貫き通せる子です。

そこがすごくかっこよくて憧れます。私の感じるスアの魅力を体現できるように、たくさん試行錯誤をしました。

ーなるほど。スアの役作りで意識したことはありますか。

川口:脚本を読み込むとか、セリフに込めた感情を読み取るとかもそうですが、私は音楽や香りから役をイメージしました。

スアは学生時代から大人びた感じの振る舞いをしているから、甘い香りではなく大人っぽいローズの香りのイメージでした。だから私も、その香りをまとって現場に行ったり、韓国が舞台の作品だから韓国の曲をたくさん聞いたりして、イメージを膨らませました。

着る洋服とかも結構演じる役に影響されています(笑)。

ーこの役はどうやって決まりましたか。

川口:オーディションでしたが、実は最初のオーディションで合格をいただいたわけではないんです。

私自身初めてのミュージカルで、少しトレーニングをしてから再オーディションをすることになりました。レッスンを受けて確かに変化したと実感していましたが、合格できるとは思っていなかったから、オーディションを受けた後は「いいお勉強をさせてもらったな」と少し諦めモードでした。

でも、最初のオーディションと比べた時の伸びしろを評価していただき、オ・スア役になりました。

ーそうだったんですね。役が決まった時のお気持ちはどうでしたか。

川口:稽古期間でもっと成長することを期待して選んでいただいたと思いますし、スアは私の推しでもあったので、なおさらこの素敵な役を世界初のミュージカル化という大舞台で務まるかなと思っていました。

ー実際にスアを演じて感じた共通点などはありますか。

川口:ドラマの『梨泰院クラス』を見ていた時、私はスアとMBTI(性格診断テスト)の結果が一緒で、共感できるところも多かったです。

「ここはそういう発言になるよね」と納得しつつも、現実世界ではスアのようにはいかないから、なおさら「自分のこうしたい」をスアとして体現することに憧れと歯がゆさもあって。だから今回、普段できない部分を思いっきり「オ・スア」として全うしたいなと思います。

「素に近い自分でいられた」和やかな現場の、Wキャストの相方と座長の姿

ーミュージカルはお稽古の期間も長いと思いますが、現場の雰囲気はどうですか。

川口:ミュージカル以外のことも気軽にお話しできるから、すごく穏やかで平和な現場です。

ーWキャストの相方、梅澤美波さんとはどうですか。

川口:自分では思いつかない方向からスアの表現を見ることができて刺激的でした。ダブルキャストだからこそ、みーたんとはお芝居に対してプロフェッショナルに一緒に向き合えている感覚があって楽しいです。

ー梅澤さんのことを「みーたん」と呼んでいるんですね。

川口:そうなんです。みーたんはお茶目な一面もありますが、大人数をまとめる(乃木坂46の)キャプテンでもあるから、「本当に私と年ひとつしか違わないの!?」って思うくらいしっかりしたお姉さんって感じのときもあるし、同い年くらいに感じるときもあって。そのギャップもなんだか面白いです。

ー梅澤さんとの印象深いエピソードってありますか。

川口:なんで「みーたん」って呼ぶことになったのかですが、お稽古に入る前に主演の小瀧望さんがご飯会を開いてくださったんです。

そこでみんな大体同世代の役柄だから、タメ語であだ名で話そうって小瀧さんが提案してくださいました。

最初は、みーたんとも距離のある「うめさん」「ゆりなちゃん」呼び。でも、小瀧さんが良い空気を作ってくださったし、せっかくのダブルキャストだから「うめさんじゃなくてみーたんって呼んでいいですか」って勇気を出して言ってみたら、「じゃあ私もなーたんって呼ぶ」ってなって(笑)。

「なーたん」「みーたん」って呼び合ってからやっぱり距離も縮まって、今ではすごく仲良しです。

ーWキャストを生かした良い関係性ですね。

川口:あとは、小瀧さんが好きなお菓子を入れた「お菓子ボックス」を作っていらっしゃるのを見て、みーたんと私は同じ机だったから「私たちも作りたい」ってなって、お気に入りのグミを持ち寄りました。

そしたら偶然同じグミで!お菓子の好みも合うし、ラフに接することができてありがたかったです。

ー座長の小瀧さんはどうでしたか印象を教えてください。

川口:すごく柔らかい方です。

お稽古も本番もアーティスト活動と並行してやられているから、寝る暇もないくらい忙しいはずなのに、現場では疲れている素振りも一切見せず、周りを支えてくださいました。

最初のご飯会で、座長の小瀧さんにみんながついていく平和な現場になるんだろうなと確信しましたが、穏やかなテンションで周りをうまくまとめられているのを見て、さすがだなと思いました。

ーすごいですね。他のキャストさんとはどうですか。

川口:和希そらさんは硬いグミがお好きなようで、私とみーたんが偶然被ったグミも硬めだったからおすそ分けし合っていました。

saraちゃんは私と同い年で、最初からフィーリングが合うだろうなって直感がありました(笑)。

和やかな稽古場だったので、何を話したか忘れるぐらいのたわいもない話ができました。「受け入れてくれそう」という安心感があって、すごく素に近い自分でいられたからよかったです。

稽古場から舞台上へ。初挑戦で感じたミュージカルの難しさと面白さ

ーミュージカル初挑戦ですが、苦戦したことはありましたか。

川口:映像とは見せ方も違うし、体や声帯の使う部位も全てが違うので、試行錯誤をしました。

映像作品なら眉毛や目線、声のトーンで変化をつけられるけど、舞台だと声のトーンを小さくしたら聞き取りにくくなるし、眉毛を動かしても前列の人しか見えないから、その違いには苦戦しています。

ミュージカルの広い会場の一番後ろの席まで感情の変化を伝えなきゃいけないけど、役としては演技しているように見えない自然体で、というバランスもすごく難しいんです。

でもその難しさも楽しみたいし、同じお芝居というカテゴリーでも全然違っていて面白いと思いました。

ーその違いに気づいてから意識したことなどはありますか。

川口:とりあえずやってみるしかない。お芝居に歌、色々考えることが多くて頭がパンクしながら頑張りました(笑)。

あとは、動き方をよく教わりました。スタッフさんも有名なすごい方ばかりで、不自然に見えない立ち回りや、セリフとタイミングを一致させる基本的な動き方とか、わからないことがあっても聞きに行きやすい現場でありがたいです。

いいミュージカルを作り上げるためにどんどん聞きに行けるし、一緒に作り上げているという実感があるのですごく楽しいです!

ー印象的なシーンはどこですか。

川口:ミュージカルならではの歌唱シーンです。

感情のこもったセリフが音楽になっていて、歌詞や感情をお客さんに伝わるように歌わなくてはならない一方、物語としては相手役に届けるための動き方をしなきゃいけない。そこがアーティストの表現とは違い、ミュージカルのお芝居としての表現と向き合いました。

そうしていくうちにスアらしい振る舞いも考えられるようになって、自転車を使うシーンでは特にスアらしい扱い方を意識できました。

ーミュージカルの出演が発表されて、ファンの反応はどうでしたか。

川口:まさか私がミュージカルをやるとは思っていなかったという驚きのコメントもありました。『梨泰院クラス』世界初のミュージカル化に集まる期待を上回るようなスアをお届けできるよう頑張りたいです。

ーいよいよ東京、大阪、愛知と公演がはじまっていく、その意気込みをお願いします。

川口:『梨泰院クラス』という素晴らしい作品の、オ・スアという素晴らしい役柄を務めさせていただくプレッシャーもありますが、川口ゆりなの演じるスアのオリジナリティも残しながら、納得してもらえるパフォーマンスや表現をお届けできたらいいなと思います。

ミュージカルらしいクラシカルな音楽というよりは、ポップス寄りのサウンドだからミュージカルを見たことがない方でも聴きやすいし、もちろんミュージカル作品としてもクオリティの高いすごい作品にできたと思っているので、たくさんの人に見て楽しんでいただきたいです。

ミュージカルは毎公演全く同じものになるわけではないし、私も自然と演じているうちに変化する部分はあると思うので、そこも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「変化し続けていきたい」目指すは“川口ゆりな”というジャンル

ー川口さんご自身のことについても教えていただきたいです。芸能生活を振り返って、大切にされていることはありますか。

川口:今回のスアにつながる部分もありますが、自分の意志や欲に正直に生きる、遠慮しすぎないことを意識しています。

そのきっかけになったのは、ガルプラ(『Girls Planet 999』)です。韓国発のガールズグループオーディションで、生き残りをかけたサバイバル番組だから誰も助けてくれないし、どんどん自己主張しないと埋もれていってしまう環境で約半年間を過ごして、他の方のすごく積極的な姿を見て刺激を受けたことを今でも覚えています。

「確かに自分の人生だし、後悔する生き方はしたくない」と思うきっかけになって、そこからはウィッシュリストを作ったりとか、自分のしたいことやどうなりたいかをよく考えるようになりました。

ーなるほど。これからやってみたいことはありますか。

川口:大幅なイメージチェンジをしてみたい(笑)。

事務所に入った15歳から今までずっと前髪ありのロングというヘアスタイルで、そのイメージを持っている方が多いから、新たな一面を見せていきたいし変化し続けていきたいなと思います。

ー今後の目標を教えてください。

川口:ジャンルやイメージにとらわれない人になりたいです。

私には個性がないと悩んでいた時期もあって、個性がないからといってわざと作っても、それは自分じゃないし…。

でも個性がないって思うのもそれが私だし、「川口ゆりな」という存在が個性だと捉えられるようになってからは、自分というジャンルが出来たらいいなと考えるようになりました。

だから「川口ゆりな」というジャンルで、お芝居もアーティスト活動もモデルも、全部のお仕事を大切にしていきたいです。特にお芝居では、「どんな役柄でも川口ゆりなだったらハマりそう」と思ってもらえるような柔軟性やスキルを身につけたいです。

ー芯の強さがまさにスアだなと思いました。

川口:スアをはじめ、色々なことを経験したうえで自分の揺るがない信念がある人に憧れるから、私もそうありたいです。

物事や意見に対して否定せず、受け止めながらも自分でこだわる部分もある。そういうスタンスでいると自分と向き合う時間も増えるから、貫きたい信念が定まってくるのかなと思います。

ーなるほど。すごく胸に響きました。

川口:私、なにか考えるということを常にしていて、寝ながらお仕事のことを考えて夢をみることもあるんです(笑)。

何かを考えることが好きなので、そこを私の芯の強さだと思ってもらえるのはうれしいです。

ー川口さんにとって、ファンとはどんな存在ですか。

川口:ゆりしす(ファンネーム)はお守りみたいな存在です。

やはりファンの方がいてくださるから頑張らなきゃって思うし、反応してくれることが励みになって、ちゃんと届けられているという安心感にもつながるから、なくてはならない存在です。

ー最後に、メッセージをお願いします。

川口:ミュージカル初挑戦ということで、本当に新しい、初めて見る川口ゆりなを感じていただけると思うので、ワクワクして本番を待っていてくれたらなと思います。

川口ゆりな(かわぐち ゆりな)プロフィール

1999年生まれ、宮崎県出身。

2014年第14回全日本国民的美少女コンテスト演劇部門賞を受賞し、2016年にはアイドルグループ「X21」に新メンバーとして加入。

2021年8月に韓国で放送されたオーディション番組「Girls Planet 999:少女祭典」に出演し、アジア各地から注目を集めた。

2022年にアーティストとしてソロデビューを果たし、多方面で活躍している。

●公式X @Kwgc_yrn0619

●公式Instagram @kawaguchi_yurina_official

●公式ファンクラブ「yurisses」Official – Kawaguchi Yurina OFFICIAL FANCLUB 【Yurisses】

撮影:髙橋耀太

ヘアメイク:ナカヤスミク

スタイリスト:二宮梨緒

衣装協力:POOLDE、aw、Matilda rose、TUWAKRIM(805showroom)