作家アーサー・コナン・ドイルの知られざる内面と葛藤を、名探偵シャーロック・ホームズとの対峙を通して描くミュージカル『最後の事件』。
ドイル役とホームズ役、それぞれ3名ずつ計6名のキャストが日替わりでペアを組む2人芝居の本作は、組み合わせによって物語が多様な表情を見せるのが大きな魅力です。
2026年2月7日(土)の開幕を控え、ドイル役の一人を担う髙橋颯さんにインタビュー。 役作りの苦労から、多忙な日々の中での意外な(!)リフレッシュ方法まで、髙橋さんの現在に迫りました。
ミュージカル『最後の事件』作品紹介
ミュージカル『最後の事件』は、アーサー・コナン・ドイルが1893年に発表した短編集『シャーロック・ホームズの回想』の「最後の事件」をモチーフに創作された2人芝居で、2021年2月に韓国のドリームアートセンター2館にて初上演されました。そして、日本では2023年に初開催された韓国ミュージカルの紹介イベント『K-Musical Roadshow in TOKYO』(司会:加藤和樹)にてお披露目されました。
本作は、世界一有名な探偵のひとり「シャーロック・ホームズ」を生み出した作家アーサー・コナン・ドイルの知られざる心の内面と苦悩、そして彼にまつわる隠れた実話をもとに、ミュージカルとして新たに創作された作品です。世界的な名探偵を生み出した彼が、なぜ自身のキャラクターと対立することになったのか。成功の裏にあった夢と葛藤の物語が、舞台上で明らかになります。
脚本・作詞・演出は、『SINGLES』(08)で第2回ミュージカルアワード最優秀賞及び作詞/脚本賞を同時受賞に続き、『READY TO FLY』(19)で第3回韓国ミュージカルアワード・ニューウェーブ賞を受賞、そして脚本・作詞・演出を担当した『CAFFEINE』と『RUN TO YOU』(原題:「StreetLife」)を韓国で初演後に日本進出も果たし、その他にも『MUSIC BOX』、『地球滅亡30日前』など様々な作品を幅広く演出してきたソン・ジェジュンにより上演いたします。
シンプルな2人芝居だからこそ、俳優たちの持つ魅力のすべてが鮮烈に浮かび上がり、キャストの組み合わせも変わるため、物語に無限の表情を与えて何度観ても楽しめる作品です。アーサー・コナン・ドイル役には加藤和樹・矢崎 広・髙橋 颯、シャーロック・ホームズ役には渡辺大輔・太田基裕・糸川耀士郎。それぞれ3名の個性豊かな俳優陣が集結し、夢の共演が実現します。さまざまな個性を持つ俳優たちの競演は、唯一無二の緊張感と、濃密な空間を創り出します。お気に入りのペアを見出すことはもちろん、全ての組み合わせが織りなすそれぞれの物語をご堪能いただくなど、様々な角度から作品をお楽しみいただけます。
小説の世界と現実が交錯する、2人だけの濃密なミュージカルにぜひご期待ください。
(※ミュージカル『最後の事件』公式サイトより引用)
2026年2月7日(土)~3月8日(日) 東京・博品館劇場
3月13日(金)~3月16日(月) 大阪・サンケイホールブリーゼにて上演
3役の演じ分け、3人の相手役と3通りの舞台。心の中にある期待と不安

―2月から始まるミュージカル『最後の事件』に向けて、稽古の真っ最中とお伺いしています。まずはこのミュージカルに出演が決まったときのお気持ちから聞かせてください。
髙橋颯さん(以下、髙橋):出演が決まった時はとても嬉しかったです。歴史ある博品館劇場の舞台に立てること、そしてこの素晴らしい作品に携われることに、今からとてもワクワク、まさにエキサイティングしてます。
実は少人数での芝居は、今回が初めての経験。
僕が演じるアーサー・コナン・ドイル役は、複数の役柄を演じ分ける必要があり、とって大きな挑戦ですが精一杯頑張りたいと思っています。
―髙橋さんが演じる主人公のアーサー・コナン・ドイルは、どのような役なのでしょう。
髙橋:僕が演じるドイルは、感情表現が激しめな人物だなというのが第一印象ですね。
彼は、「シャーロック・ホームズ」というすごい小説を書いた小説家であると同時に、医者でもあります。
人生を達観しているような人物ですし、いろいろな職業をこなすドイルの多面性と、台本に描かれる多彩なキャラクターが魅力的だなと思います。
―今回の舞台を、髙橋さんは「大きな挑戦」と表現されていますよね。トリプルキャスト、2人芝居、アーサー・コナン・ドイル、モリアーティ、ワトソンという3役の演じ分けも難しそうです。
髙橋:確かに僕にとって今回のミュージカルは挑戦であり、不安の方が大きいのが正直なところです。去年、『アンドレ・デジール 最後の作品』(2025)というリーディング・ミュージカルで、2役を演じることに苦戦したので。
『アンドレ・デジール 最後の作品』では、天才画家・デジールの没後、彼に憧れるエミールという青年を演じましたが…。
エミールがデジールの絵を模写するうちにデジールが憑依したようになる瞬間があったんです。ナンバーの途中で役柄を切り替えて歌い分けなければならなくて。
あのときはゲネプロまで、演出家の方からいろいろ指導されてしまうほど、演技に悩みました。
その点、今回は3役の演じ分けといっても、ドイルが小説の中に登場するモリアーティやワトソン役を演じるというシチュエーションなので、僕にとっては前回よりは演じやすいと思っています。
ドイル自身も役者ではなく小説家なので、小説の登場人物とキャラクターに違いもつけられます。
とにかくいろいろ表現力を磨くきっかけとなる作品なので、僕にとってはまさに「挑戦」ですね。僕の演じる3役に味わいが出ればいいなと願うばかりです。

―今回のミュージカル『最後の事件』では、年齢層もさまざまなトリプルキャストの皆さんと、組み合わせを変えて演じられるそうですね。演じることに難しさはありませんか。
髙橋:三者三様のキャストと演技をすることになる点は、確かに大変ではあります。そのハードルはうち破らなければいけないと思って、一瞬一瞬を過ごしている気がします。
役者の実年齢と、ドイルやワトソンなどの役の年齢にも、それぞれ違いがありますし、若手、中堅、ベテランと、演じる人によって役の印象も変わる気もします。
ただ、それこそがこのミュージカルの魅力でもあるんですよね。
役者の組み合わせは、全てが正解だと信じて、舞台の上でどれだけ新しい世界観をクリエイトできるか、芸術として認めてもらえるかというところが勝負かなと思います。
―トリプルキャストでドイルを演じるに当たって、キャストの皆さんと話し合いをされたりも?
髙橋:台本読みの時には、作品やドイルについて他のキャストと少し話しました。
台本の中に、現実の世界と小説の世界を行ったり来たりする描写があるんです。
ドイルは、現実世界のドイルと、小説世界のワトソンやモリアティの間を。ホームズはホームズで、現実世界のホームズと本の中のホームズとしての2役を生きています。
つまり、ドイルとホームズは現実でも向き合うし、小説世界の中でも対峙する…。
まさに世界線が入り乱れるんです。
例えるならそれは(緻密さと激しさが共存する)モーツァルトのようで。
緻密な頭脳戦だったり、渦巻いた感情だったり…、うごめくような、モーツァルト(の音楽)のようなニュアンスを、見る方に受け取ってもらいたいなと思いながら、丁寧に稽古を重ねています。
「医者や作家に見えない」と言われないよう、表現の幅を広げたい

―お話を伺うにつけ、魅力もありつつ、難しさも共存する作品だと感じられます。
髙橋:脚本も執筆している演出家のソン・ジェジュンさんの中には、この台本の確固たる軸が存在しているんですよね。ソンさんは作家としての経験があるので、ドイルにもこの作品にも、ソンさん自身を投影しているのではないかと感じる瞬間もあるんです。
ソンさんの台本を読み、演出してもらっていると、ソンさん自身がすべてのキャラクターにも、それこそホームズにも近いなと思えますし、ソンさんを見ていると、この物語にきちんと答えがある気がして、楽しく稽古できています。
―髙橋さんはこの作品の魅力をどう考えていますか?
髙橋:色で言ったら、赤い炎と青い炎というような…。激しさと静寂のコントラストを感じます。特に僕が演じるドイルに関しては、感情の振れ幅がすごく大きかったりするので。
あと、音楽がすごく秀逸なんです。それこそ完璧に近いというか…。
役の感情だったり、物語の展開だったり、作品が動いていくきっかけそのものに音楽が関わっていたり…。まさに音楽こそが作品そのもの、ドイルやホームズの存在そのものだと感じられる瞬間がたくさんありまして。
とにかく魅力ある作品なので、俳優として、このミュージカルの世界に少しでも近づけるように、役柄と一体になれるように演じたいなと思いますね。
―この作品に出ると発表されたときに、WATWINGのメンバーや周りの方の反応はいかがでしたか?
髙橋:「(髙橋さんが)本当にドイルを演じられるの」とは言われました。自分自身、初日には自分が医者や作家には見えないんじゃないかと思っちゃいましたし(笑)。
もし役柄と僕との間に違和感があったとしても、若さだと思ってもらえるなら成功だと思っていまして。見る方から「落ち着いていない」、「その職業の人っぽくない」となれば問題なので、そこは作り込まなければいけないなと感じています。
見ている人に没入感を感じてもらうために、さらに自分の表現の幅を広げたい。それだけです。
―でも、ファンの方も、髙橋さんがいろいろな幅広い役柄を演じられていることに喜んでいるようにも思います。ドラァグクイーンを夢見る高校生役(ミュージカル『ジェイミー』)やロボット役(ミュージカル『アトム』)、そして今回のドイル役。さらに次作の舞台『「鬼滅の刃」其ノ陸 柱稽古』(2026年)では竈門炭治郎を演じられるわけで、役の幅がだいぶ広いですよね。ファンの方もいろいろな髙橋さんが見られると喜んでいるようですよ。
髙橋:本当ですか。仰せのままに(笑)。
「不器用なので、なんでも効率化したい。トイレで水を飲んでみるとか(笑)」

―作品への出演が続いていて、グループでもツアーをやっていて。過密なスケジュールだと思うのですが、大変ではないですか。
髙橋:すべて天才マネージャーと、素晴らしい能力のあるスタッフさんに恵まれて、このスケジュールが可能になっています(笑)。
―髙橋さんご自身が今後演じてみたい役、そして今後の活動のイメージを教えてください。
髙橋:話している時よりも、黙っているときの方が情報量が多いような人物を演じてみたいですね。沈黙している、静寂な時間こそが、その人物が本当に何を思っているのか感じられるのではないかと思うので。
今後の活動の目指す先は、…東京ドームはもちろん、スタジアムアーティストですね。そう言うようにしています(笑)。
―常に全力投球されている印象ですが、生活の中で大切にされていることを教えてください。
髙橋:僕は不器用でして。だいぶ時間を作りたいので、常に効率を考えて動いています。
例えば、昨日は、IHで鶏肉を焼きながら、翌日のカバンの用意をし、吸入器をセッティングして、火加減を見ながら吸入していました。
―すごいですね!器用!(笑)
極端な話、「トイレに座っている時間に水を飲む」なんてことも、効率が良いようにも思うし(笑)。
そういう組み合わせのアイディアをどんどん生み出していきたいなといつも思っています。
―俳優活動とプライベートのギャップがあり過ぎますね(笑)。そうやって効率化して作った時間は、何に充てるんですか?
髙橋:睡眠が好きなので、睡眠に充てますね。
あと体を動かすことがすごく好きなので、走ったり体を動かすことにも。
―では、リラックスしたいときは何をします?
リラックスしたいときは、大好きなコーヒーを飲みます。コーヒーが胃に良くないといわれれば、カフェイン入りは1日1杯に留めて、後はノンカフェインのコーヒーで水分補給するようにして。
そうだ、去年、音楽劇『無人島に生きる十六人』と、ミュージカル『アトム』で共演させていただいた飛龍つかささんが、WATWINGのライブを見に来てくれたんです。
その際、「(髙橋さんが)いつもおにぎりを食べているから、差し入れにこれを」と、おにぎりの入浴剤をくださいまして。
入浴剤の中には、カプセルトイのような具剤が入っているんですよ。日々の中にそういう楽しみがあると、すごく癒されちゃうんですよね。

髙橋 颯(たかはしふう)プロフィール
1998年5月8日生まれ、埼玉県出身。ホリプロ初の男性ダンス&ボーカルグループ「WATWING」のメンバー。2026年4月にはグループとして東京ガーデンシアターでのライブを控える。俳優としても大きな躍進を続けており、ミュージカル『デスノート THE MUSICAL』(2020年)、『ジェイミー』(2021年・主演)、ドラマ『DCU』(2022年・TBS系)、舞台『「チコちゃんに叱られる! on STAGE」~そのとき歴史はチコっと動いた!~』(2022年)、『「福」に憑かれた男』(2023年)、音楽劇『無人島に生きる十六人』(2025年)、ミュージカル『アトム』(2025年)などに出演。2026年6月には、舞台『「鬼滅の刃」其ノ陸 柱稽古』にて竈門炭治郎役を演じることが決定している。趣味・特技はギター、ピアノ(弾き語り)、甘いもの、辛いものチャレンジ。
●Instagram @fu_takahashi_official
文:小澤彩
撮影:髙橋耀太
ヘアメイク:HIKARU(LEIMAY)
スタイリスト:中村剛(ハレテル)
衣装協力:RIPO trenta anni