アニメ「物語」シリーズは西尾維新によって生み出された怪異青春ラノベを原作としたアニメシリーズで、吸血鬼を助けて吸血鬼になった阿良々木暦を中心にさまざまな近代の怪異と出会う作品です。
独特な映像表現が多く、多くの視聴者をその作品の世界観に引き込む演出が印象的で、多くの動画配信サービスでもほぼ全ての作品シリーズが配信されています。
本ページでは、アニメ「物語」シリーズが配信されている動画配信サービスの紹介と、それぞれの作品詳細、あらすじをまとめています。おすすめの見る順番については公開順、時系列順にまとめています。
- アニメ「物語」シリーズを見れる動画配信アプリ
- アニメ「物語」シリーズおすすめの見る順番と作品紹介
- 時系列で見る「物語」シリーズまとめ【あらすじ解説・作品情報】
- 〈物語〉シリーズの魅力あふれる怪異とキャラクター紹介
- 物語シリーズの聖地巡礼用スポットまとめ
- 物語シリーズの原作はライトノベル
アニメ「物語」シリーズを見れる動画配信アプリ
ここではおすすめの動画配信アプリ、動画配信サービスの仕組みや特典、料金や同時視聴台数、プロフィール作成の可否、配信されている作品タイトルなどの情報を解説しています。
こちらで紹介している動画配信アプリでは本作品が配信されていますので、どの動画配信アプリを利用するかじっくりご検討ください。
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アニメ「物語」シリーズおすすめの見る順番と作品紹介
アニメ「物語」シリーズは時系列がバラバラになっていることが多く、別のタイトルの中に時系列が同じタイトルが入っている場合もあります。
まずは「物語」シリーズという作品の世界観にどっぷりと浸かって、何度か繰り返し見てから詳しく理解しようとするのが無難です。
ストーリーを詳細まで理解しようとしなくてもよく、「物語」シリーズそのものがアート作品のような独特な演出や描写を含んでいる作品なので、理解することは後回しにしてただ浴びるように作品を見ていくのもおすすめです。
公開順で見てから時系列で見るのがおすすめ
「物語」シリーズはまずは公開順で見ていくのがおすすめです。いきなり時系列でストーリーを追っていこうとしてもキャラクターの雰囲気や性格、世界観が掴みづらいため、まずは公開順に視聴していって「物語」シリーズに慣れるのが無難です。以下、公開順に「物語」シリーズを並べたものです。
- 化物語(2009年)
- 偽物語(2012年)
- 猫物語(黒)(2012年-2013年)
- 〈物語〉シリーズ セカンドシーズン(2013年)
- 憑物語(2014年)
- 終物語(2015年)
- 暦物語(2016年)
- 傷物語〈 I 鉄血篇〉(2016年)
- 傷物語〈 II 熱血篇〉(2016年)
- 傷物語〈 III 冷血篇〉(2017年)
- 「終物語」まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク(2017年)
- 続・終物語(2018年)
- 傷物語 こよみヴァンプ(2024年)
- 〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン(2024年)
ストーリーや設定、登場人物の特性上、どうしてもグロテスクな描写や少しアダルト向けな描写があります。
吸血鬼や怪異というものを扱っているため、ホラーではないにしても独特の都市伝説風のサスペンス要素や謎解きの雰囲気があり、ヤンデレや超個性的キャラクターに振り回される所もあるでしょう。
親子関係や友人関係、恋人関係などに関するトラウマに触れそうなシーンも時折見受けられますので、タイトルによっては全て見ようとせずに一部飛ばして見ても問題ありません。
時系列で見る「物語」シリーズまとめ【あらすじ解説・作品情報】
ここからは時系列で「物語シリーズ」を見るのにおすすめの順番に沿って、各タイトルのあらすじ、作品の魅力は作品詳細、見どころを紹介します。
一部ネタバレを含み、タイトルによっては見なくてもストーリーを理解できるものも含みます。ぜひ公開順に見てから時系列順でみることをおすすめします。
ここで紹介している作品を月額見放題できるU-NEXT(ユーネクスト)やdアニメストアを利用してじっくり時間をかけて見ていくのが理想的です。
傷物語〈 I 鉄血篇〉(2016年)

物語シリーズにおいて記念碑的な作品でもあり、アララギ君が「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」に遭遇し、四肢がない状態で泣きじゃくっているシーンなどかなり印象的なシーンが再現されています。
物語シリーズの始まりのストーリーでもあり、物語シリーズとはどんな内容なのかを視聴者に伝えてくれる作品でもあります。
ねっとりとしたアダルトっぽい表現で人間への吸血を表現し、圧倒的で独特な演出と表現で一度見たら記憶から離れないほどの映像美が映し出されています。
羽川翼の強調されすぎた胸の揺れや吸血行為など、幼い少年には少し刺激が強い印象もありますが、これまでの映画化前のアニメ版でも比較的際どい演出はあったため劇場版におけるサービスの一貫とも捉えられます。
作品の魅力や見どころ
本作は友達のいないアララギ君が怪異や都市伝説の中に身を投じていくような描写が印象的で、映像の美しさや特殊な雰囲気、ある意味で異常なまでに美しい世界観の描き方で、通常の状態ではないことを示しているかのようでした。
吸血鬼退治をしているエピソード、ドラマツルギー、ギロチンカッターの3名のほか、忍野メメという素性のよく分からない成人男性との関係もここから始まっているようです。
アララギ君は半ば強引に吸血鬼にされてしまい、死なない身体になった上、眷属にされてしまったわけですが、「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」の両手足を取り戻すことで自身も吸血鬼ではない普通の人間に戻してもらうという約束を取り付け、深い深い闇の中に落ちていくことになります。
勝てるかどうかも分からない相手に挑まされたり、窮地を忍野メメに救われたり、まるで不思議の国のアリスにでもなったかのようにわけが分からない謎の状況を乗り越えていくことになります。
放送年 | 2016年 |
上映時間 | 62分 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 |
スタッフ | 監督:尾石達也 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト 音楽:神前暁 総監督:新房昭之 演出:尾石達也、鈴木利正 |
傷物語〈 II 熱血篇〉(2016年)

主にアララギ君と羽川翼がグロいほどの傷を負わされるシーンがあるため視聴する前に覚悟が必要です。
アララギ君が吸血鬼の回復力をもって、ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターとの熾烈な戦いが描かれ「熱血篇」と言われるのが分かるほどに戦いに対して、また、羽川翼の下着に対しての無駄に強い熱意とこだわりを持っているアララギ君の様子が描き出されます。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」の身体が復活しかけている状態で、かなり大人っぽい色気や魅力が描かれ、羽川翼とアララギ君のやりとりも、もはや友達の域を超えた恋人関係のような様子でした。
作品の魅力や見どころ
とにかく記憶に残るのは羽川翼が大ダメージを負うシーン、そして、アララグ君が必死にそれを助けようとするシーンです。
化け物級にやばい存在になっているアララギ君が見せた体裁を気にせずに羽川翼の命を救うために必死になる様子はまさに人間の行動そのものでしたが、起きていることは既に人間の世界の事象ではなく、羽川翼も怪異の現象の一部に入り込んでしまっていることを意味します。
アララギ君の血液で命を救われ、傷も治りますがトラウマ級の怪我の仕方をしていた様子は、映像的にも美しい描写の中で描かれたためかなりエグいグロさになっていました。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」の身体が回復した時には一体どれだけの描写が見られることになるのか不安になるほどの容赦ない戦闘描写が生々しく映し出されており、ある程度グロ耐性のある視聴者にとっても忘れられないトラウマが残ったであろう作品です。
放送年 | 2016年 |
上映時間 | 67分 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 |
スタッフ | 監督:尾石達也 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト 音楽:神前暁 総監督:新房昭之 演出:宮本幸裕 |
傷物語〈 III 冷血篇〉(2017年)

「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」の過去について明かされた上に、アララギ君とキスショットが持ちつ持たれつな関係を維持するという不思議な関係になるまでの様子が生々しく描き出されています。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」と阿良々木暦の戦いはグロテスクという単語では言い表せないもので、まさに怪異と怪異のぶつかり合い、人知を超え、生命の定義をも覆すほどの状態になりながらも戦えてしまう異様な光景が描き出されました。
欠損しようがやけどをしようが即時回復する上に本来ならば死んでいるような状態でも生きているという怪異・吸血鬼の異様な常識が見せつけられます。
最終的には2人は互いに人でも怪異でもない中途半端な存在となり、互いにどうしようもなく不幸な選択肢を選ぶことで曖昧な関係のままエンディングを迎えます。
阿良々木暦はキスショットのために血液を与え続け、キスショットも阿良々木暦の血液をもらわないと死んでしまうという変わった関係が維持されることになります。
作品の魅力や見どころ
傷物語全体を通して触れられていたのが、生きることに直結する「性」と「食」の2つで、人として生きる場合は、人が性の対象となりますが、怪物として生きる場合は、人が食料となります。
アララギ君は人であることを選び、完全なハッピーエンドではなく、ストーリーがうまくまとまった感じでもないですが、生きるということの曖昧さ、不安定な上でも生きていける様子などが描き出されました。
阿良々木暦は羽川翼という友人を性の対象として見ていることを本人にさえ明かしましたが、羽川翼はそれを拒否せず、男として情けない状態の阿良々木暦さえも許すというもはや彼女を超えて本妻とも言える存在になっています。
異様にあいまいな状態で生きている阿良々木暦とキスショットのことについても理解がある数少ない人物が羽川翼で、今後の作品でもキーパーソンとして何度も登場します。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」と阿良々木暦の戦いで明らかになったのはその異常な強さです。
キスショットがその500年近い時間の中で眷属を作ったのはアララギ君が2人目で、かつ、自分を助けるために手を差し伸べてきたのもアララギ君だけというかなり特殊な状況下にあります。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」にとって阿良々木暦は500年間で特異な存在であり、阿良々木暦にとっても怪異の中でも特にやばい存在と言えるキスショットとの出会いは人生を完全に変えてしまうほどの存在となりました。
放送年 | 2017年 |
上映時間 | 81分 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 |
スタッフ | 監督:尾石達也 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト 音楽:神前暁総監督:新房昭之 演出:鈴木利正、宮本幸裕 |
傷物語 こよみヴァンプ(2024年)

「こよみヴァンプ」は、傷物語〈 I 鉄血篇〉、傷物語〈 II 熱血篇〉、傷物語〈 III 冷血篇〉の3つを1つにまとめて、いくつかの追加シーンを交えた総集編的な作品です。
阿良々木暦がキスショットと出会って、なんやかんやキスショットを助けた上に、いびつで曖昧ないつ崩壊してもおかしくない関係になるまでを描いており、総集編としても評価が高く、物語シリーズの始まりを語るうえで欠かせない作品でもあります。
本作が公開されたのは2024年と令和の時代に入ってからということもあり、物語シリーズを初期の頃から追っている人にとってはご褒美のようなものです。
ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターとの戦いのあと、時間を開けずに自然にスムーズにキスショットとの戦いが始まるため、アララギ君が過ごしていた時間に似た感覚のまま続きを待たずに結果を見られます。
傷物語〈 I 鉄血篇〉、傷物語〈 II 熱血篇〉、傷物語〈 III 冷血篇〉の3作品は公開されるまでにかなり時間があいており、およそ1年も経つと前回の内容や感動、熱意が薄まってしまいますが、本作「こよみヴァンプ」ではストーリーを忘れることもなく、世界観にどっぷりと浸かったまま最後までストーリーを追えます。
作品の魅力や見どころ
傷物語3部作「傷物語〈 I 鉄血篇〉、傷物語〈 II 熱血篇〉、傷物語〈 III 冷血篇〉」を順に見ていってもよいですが、追加シーンなどもある「こよみヴァンプ」を見たほうが効率的で話も分かりやすいです。
ただし、約2時間半の上映時間の中に、羽川翼とのやりとりやキスショットとの戦闘などが盛り込まれていて中身が濃厚になっており、初見で「こよみヴァンプ」を見ると話の展開に追いつけない可能性はあります。
独特な映像表現と世界観を浴びながらイッキ見することになるため、物語シリーズを少しでも見たことがある人のほうがすんなり話が入りやすいはずです。
戦闘シーンやアララギ君と羽川翼との関係が進展するシーンはそこまで描写に変化はないですが、映画という長い時間の中でメリハリがあることで見ているうちにどんどんストーリーに引き込まれていきます。
最初は特徴的な映像表現、カットの多い映像や世界観がめちゃくちゃになるような描写が入り込みつつ、次第にカットの少ない阿良々木暦やキスショットなどキャラクターの姿や声をじっくり映し出すような安定したカメラワークになっていくため、怪異という特殊なものの存在している世界観を見届けようと脳がスイッチを切り替えるような瞬間を感じられるでしょう。
ナレーターのような感覚で話を進めていく阿良々木暦や忍野メメの声をベースにして、映像が絶妙なタイミングで切り替わり、さまざまなシーンを長く見せないことでサブリミナル効果とまではいかないまでも、衝撃的なシーンを脳に直接焼き付けるような描写が多いです。
映像を見ているうちにストーリーを理解し始め、だんだんと映像が脳に直接刷り込まれるようになってくると完全に物語シリーズの思うがままで、視聴者は物語の結末を見ずにはいられなくなります。
引き込み方が非常に絶妙で、本当は1秒にも満たないシーンをスローで見せたり、本当は一瞬で終わっているはずのシーンを感情の揺れ動きを表現するために長く描写するなど映像作品として学ぶことも多い作品です。
放送年 | 2024年 |
上映時間 | 144分 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 |
スタッフ | 監督・脚本:尾石達也 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト 音楽:神前暁 キャラクターデザイン:渡辺明夫、守岡英行 |
猫物語(黒)(2012年-2013年)

本作は傷物語と化物語の間に起きたことを描いており、特に羽川翼の生い立ちや暮らし、家庭内でのストレスについて、また、キスショットが忍野忍と呼ばれるようになるまでの様子を履修できます。
埋葬した白猫が怪異で、助けてくれた人物に取り付く「障り猫」であったことから羽川がブラック羽川へと変貌し、羽川翼の頭脳と障り猫という怪異の力で忍野メメでも太刀打ちできない上に、阿良々木暦でも力不足になってしまうという状況に陥りますが、キスショットの方な「心渡」とキスショットのエナジードレインで羽川は元の羽川に戻ることに成功します。
羽川翼の家庭環境の異常さが特に際立っており、新たに居場所ができたキスショットと羽川翼との孤独さや苦痛が似ているようにも思えます。
羽川翼と父親、母親は血がつながっておらず、家には自室がなく、いい子でいることで自分を守ってきたような所もある背景から、学校でも体裁よく誠実でやさしい性格を演じており、自分という個性を徹底的に否定され続けてきた羽川翼が怪異よりも怪異に近いと言われるほどの状態なのもうなづけます。
作品の魅力や見どころ
羽川翼という魅力的な人物が、実は非常に抑圧された環境に耐えて精神を病みながらも世間で言う普通を演じ続けてきた反動が、障り猫という怪異として行動してもよい大義名分を得てしまったことで、怪異を逆に取り込み、自身のそれまでのストレスを爆発させるかのように人を襲うようになってしまいます。
全てにおいて善でいようと心がけなければいけない状況は普通ではなく、普通で居続けようとしないといけない状況も普通ではありません。
障り猫という人から受けた恩を仇で返すタイプの怪異でさえ羽川翼に同情するほど羽川翼は「いい子でいる」演技に徹しており、阿良々木暦がこれまで見てきて憧れた羽川翼がなんだったのか微妙な気持ちになるのも仕方はないでしょう。
傷物語で、阿良々木暦にとっては初めてできた友達のような存在でもあり、初めて仲良くなれた委員長でかわいくて美人な異性としても特別な存在である羽川翼に命を捧げる覚悟で向かっていく阿良々木暦もまたその後の化物語でさまざまな怪異に困っている人々を助けるお人好しに拍車をかけているようにも思えます。
自分が自分でいるために、理想の自分を演じ続けているようなもので、世間一般でもよく見られるヒューマンドラマが色濃く、生々しく描かれています。
放送年 | 2012年 |
話数 | 4話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏旧 キスショット:坂本真綾 阿良々木火憐:喜多村英梨 阿良々木月火:井口裕香 |
スタッフ | 監督:板村智幸 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト キャラクターデザイン:渡辺明夫 音楽:神前暁 総作画監督:渡辺明夫・杉山延寛 総監督:新房昭之 キャラクター原案:VOFAN |
化物語(2009年)

傷物語では阿良々木暦がキスショットという超特殊な怪異との関わりがどのようにして起きたのかが語られましたが、化物語では「戦場ヶ原ひたぎ」という同じく怪異に関わりがある人物が登場して、アララギ君のお人好しが発動します。
物語シリーズとしては第一弾、最初の物語シリーズと言っても良いもので、多くの視聴者はアニメ「化物語」から物語シリーズを履修し始めているはずです。
傷物語では羽川翼と阿良々木暦が秘密を共有していましたが、化物語公開当時はまだ傷物語の展開は映像化されておらず、アララギ君が怪異に悩まされている少女たちを救っていくという構成でした。
大きなカバンを背負って徘徊する八九寺真宵、さまざまな怪異との問題を解決するために毎回頼られる謎の多い忍野メメなど超個性的なキャラクターが登場するのも魅力の一つです。
作品の魅力や見どころ
傷物語を見てから化物語を見ると羽川翼に対する阿良々木暦の配慮がかなり足りていない事が分かりますが、化物語から見始めた人は羽川翼がちょっと変わった雰囲気を持っているように見えてしまうかもしれません。
それぞれの人物の過去や事情を知っているかどうかで見え方が大きく変わるため、理想としては化物語を一番最初に見てから、傷物語を見て、再び化物語を見ると見え方が変わってかなりおもしろいはずです。
2023年には化物語が再放送されるなど10年以上経ってもその人気は衰えておらず、今でもファンは多いです。独特な世界観、怪異や都市伝説というようなものを扱っていることもあり、妖怪や幽霊といった類とは異なるものでありながら現実世界でリアルに存在しそうなものに対峙していく話として特別な思いになれる内容です。
羽川翼と戦場ヶ原ひたぎは2大ヒロインと言う印象ですが、どちらかと言えば本妻は羽川翼、後妻が戦場ヶ原ひたぎというような感覚です。厳密には
- ひたぎクラブ
- まよいマイマイ
- するがモンキー
- なでこスネイク
- つばさキャット
という5つに分類されています。ヒロインも5人いる感じですが、それぞれの登場人物に対して特別な感情や関係があるように描かれており、それは時に妹に似た感覚だったり、実子に向けるような感覚だったり、男友達に向けるような感情だったりするのも特徴的です。
友達がいないのを友達を作らないという言い訳に置き換えていたアララギ君が女性に対してはお人好しを発動している様子はもはや何かのコンプレックスか、思春期特有の何かか、阿良々木暦という人物の背景や過去、人格形成期に起きた何かが影響している可能性は十分あるでしょう。
本作ではまだ全てが明らかになるわけではなく、人物描写やそれぞれの登場人物の背景など作中では関係性も曖昧なままになっているものも多く、実際の現実に起こる人間関係と似たような描写も見受けられます。
放送年 | 2009年 |
話数 | 15話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和 八九寺真宵:加藤英美里 神原駿河:沢城みゆき 千石撫子:花澤香菜 羽川翼:堀江由衣 忍野メメ:櫻井孝宏 阿良々木火憐:喜多村英梨 阿良々木月火:井口裕香 |
スタッフ | 監督:新房昭之 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト キャラクターデザイン:渡辺明夫 音楽:神前暁 |
偽物語(2012年)

化物語で5人の少女に関係していた怪異と向き合い、ひとまずの解決を果たした阿良々木暦が、今度はその妹の阿良々木火凜と阿良々木月火にまつわる怪異を解決していくことになるストーリーです。
戦場ヶ原ひたぎの家庭を壊した詐欺師の男「貝木泥舟」が呪いや怪異を悪用しており、この男を追い詰める過程で、火凜にかかった「囲い火蜂」の呪いとも向き合うことになり、暦と火凜が兄弟喧嘩をすることになりながらもなんとか問題は解決されます。
また、ファイヤーシスターズとも呼ばれる阿良々木姉妹の「月火」に関しては「しでの鳥」という怪異に関わりがある怪異そのものであったことも判明し、ゴーストバスターの「余弦」と「余接(式神)」との戦いを通して月火の存在を見逃してもらうことになります。
忍野忍(キスショット)と阿良々木暦がタッグを組んで戦うシーンは、傷物語での戦いの時にも似た不思議な協力関係が生かされており、吸血鬼としての能力で無事に勝利を掴みます。
作品の魅力や見どころ
阿良々木暦の妹たちに関するストーリーが描かれたことで、阿良々木暦が普段の暮らしの中でかなり怪異の近くで暮らしていた人物だったことがはっきりします。
阿良々木暦の母親に取り付いた「しでの鳥」のせいで、阿良々木月火は「しでの鳥」という怪異の子どものようなもので、阿良々木暦にとっても阿良々木火凜にとってもかけがえのない家族になってしまっていることが明かされます。
現時点では、阿良々木暦はキスショットと血を分け合った吸血鬼、阿良々木火凜は「囲い火蜂」と呼ばれる怪異とも暗示ともとれる状態を克服しており、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼など周囲には怪異に関わった人たちがどんどん増えていく様子です。
火凜に関しては本物の怪異ではなく、偽怪異というべきもので、どちらかというと火凜の思い込みや暗示に近いものでした。
月火に関しては偽物の妹であったにも関わらず、家族の誰もそれに気づかずに長く共に暮らしており、これらの状況から「偽物語」というタイトルはぴったりでしょう。
偽物でありながらも周囲がどう受け止めるかで真実(現実)にもなりうるということ、偽物であってもそれを受け入れて今まで通りにすることもできるという流れになっており、怪異を完全に退治したり、消滅させたりするのとは異なり、怪異とともに生きる選択が選ばれているのも特徴的です。
放送年 | 2012年 |
話数 | 11話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 阿良々木火憐:喜多村英梨 阿良々木月火:井口裕香 戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和 八九寺真宵:加藤英美里 |
スタッフ | 監督:新房昭之 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフト キャラクターデザイン:渡辺明夫 音楽:神前暁 総作画監督:渡辺明夫 |
〈物語〉シリーズ セカンドシーズン(2013年)

これまで、化物語や猫物語で扱われた少女と怪異の物語の新たな展開を描いた作品シリーズで、猫物語、化物語、偽物語を見ているとストーリーへの理解が深まります。
描写されているのは、それぞれ怪異と向き合ったあとに起きていることだったり、怪異に出会う前の話だったりするため本シリーズを見たあとにもう一度化物語や猫物語を見てもよいでしょう。
放送年 | 2013年 |
話数 | 31話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史 羽川翼:堀江由衣 戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和 八九寺真宵:加藤英美里 神原駿河:沢城みゆき 千石撫子:花澤香菜 忍野忍:坂本真綾 阿良々木火憐:喜多村英梨 阿良々木月火:井口裕香 虎:斎賀みつき |
スタッフ | 監督:板村智幸 原作:西尾維新 アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫 音楽:神前暁 総監督:新房昭之 キャラクター原案:VOFAN |
・猫物語(白)|5話

ブラック羽川との詳細な内容が描かれた猫物語(黒)とは異なり、羽川翼が幽霊となってしまった少女「八九寺真宵」と出会って異変に巻き込まれていく様子が描かれています。
羽川翼にまつわるストーリーは「つばさファミリー」、「つばさキャット」、「つばさタイガー」というように名付けられており、羽川翼が猫だったり虎だったり、ネコ科に関わりが深い事が分かります。
猫物語(白)は、羽川翼が嫉妬により再び怪異を生み出してしまった結果起きているもので、羽川翼が少し成長するストーリーでもあります。
傷物語での一件以来、阿良々木暦に恋心を抱いていた羽川翼がようやく阿良々木暦に気持ちを伝えることができ、既にブラック羽川の一件を解決した時に恋心ではないと気持ちに整理をつけていた阿良々木暦にフラレて自分の感情と向き合う結末を迎えます。
ブラック羽川はストレスで人を襲い、つばさタイガー「苛虎」は嫉妬で家や場所を焼き払うなど、どちらもかなり厄介な怪異でしたが、どちらも阿良々木暦の関与により解決されており、2人の関係性も少し全身したように思えます。
今はまだお互い初恋同士だったこともあり、お互いに恋愛感情を抱いていたことを明かしただけで、今後の展開によっては進展する可能性もあるかもしれません。
・傾物語|4話
忍野忍と阿良々木暦が、幽霊の少女「八九寺真宵」の過去の時間軸で、八九寺真宵が死なないよう救い出すことに成功します。しかし、そのせいで元いた世界が崩壊して、人類はゾンビ化してしまっており、その中でも生き残っていた八九寺真宵、別世界のルートのキスショットらと対面することになります。
誰かの過去を変えてしまったことで、パラレルワールドが生じてどちらかの世界が崩壊してしまうというSF要素が描かれたことで少しストーリーが難しくなっていますが、既に起きてしまっていること、特に人の死の事実を書き換えるのは非常に問題が大きいということを描いた作品でもあります。
ストーリーは濃厚で、時間やタイムスリップの話などもあるため、4話だけで理解するのは難しいですが、奥行きや重みのあるストーリーはこれまでの怪異や都市伝説っぽい話とは雰囲気が異なっていておもしろいです。
忍野忍と阿良々木暦の信頼関係の強さ、弱くなっても十分すぎるほどの忍野忍の強さなども描写されており、あと1話、2話ほどあっても良かったのではないかと思える展開でした。
・囮物語|4話
千石撫子が阿良々木暦に恋心を抱いていること、阿良々木暦には戦場ヶ原ひたぎという恋人がいるという事実が重なって生まれたストーリーが描写されています。ヘビの神様「クチナワ」の御神体を探す千石撫子の本気が見られる内容で、貝木泥舟の仕掛けた詐欺やこれまでの怪異に比べると闇深さが別格です。
千石撫子はとにかく容姿も声もすべてがかわいいキャラクターで、そのかわいらしさが災いして、他人から嫉妬されたり、恨まれたりした結果被害者になってしまった存在です。しかし、千石撫子自身も決して弱くはなく、かわいらしさを隠そうとする様子が余計にかわいかったり、飛び抜けて勉強ができるわけでもないため、バランスの取れたかわいい女の子として怪異に巻き込まれることになります。
千石撫子は、怪異よりも上位の存在と言えるヘビの神様を一人で復活させ、妄想を具現化し、忍野忍も阿良々木暦も一時的に倒してしまえるほどに覚醒しています。ヤンデレの権化とも言える千石撫子は、阿良々木暦に恋人がいると知った瞬間から変化が始まっており、阿良々木暦がこれまで当たり前のように触れ合ってきた怪異の影響なのか、嫉妬が生み出した怪異の影響なのか、より強く厄介な神様(怪異)となってしまいました。
本シリーズ「囮物語」で2人目のラスボスとも言えるのが「戦場ヶ原ひたぎ」で、神様となった千石撫子との交渉に成功し、死にかけていた忍野忍、阿良々木暦を救い出します。どうあがいても敵わない神様相手に半年という準備期間を用意したファインプレーを発揮したのは、日頃から怪異でもある阿良々木暦を相手にしていたからかもしれません。
・鬼物語|4話
時系列的には、忍野忍と阿良々木暦が、八九寺真宵を救おうとタイムスリップした別の世界から帰還したあとの話で、傾物語の続きと捉えてもよいでしょう。タイムスリップから帰ってきたあとに正体がわからない「くらやみ」に襲われてしまいます。事情が分からない阿良々木暦に対して忍野忍は吸血鬼として日本に来た頃である400年ほど前の話を語って聞かせてくれます。
- 傾物語
- 傷物語
- 猫物語(黒)
- 化物語
- 偽物語
- 傾物語
- 猫物語(白)
- 囮物語
といった複数のタイトルにまたがって話が交差するため、時系列順を完ぺきに守ろうとするのは非効率的です。1度全て通して見てしまってから、謎解きの解決編を見る感覚で視聴するのが無難で分かりやすいでしょう。
怪異や幽霊には役割や存在意義があるのか、その存在そのものが役目を果たさずにいるとそれを消し去ってしまうのが「くらやみ」という存在です。吸血鬼であるべき存在が吸血鬼でなくなったら存在が抹消されてしまうわけですが、400年前のキスショットは眷属を作ることでその「くらやみ」から逃れる結果となったことなど、新たな謎が残される展開が描写されます。
・恋物語|6話
囮物語からつながる内容で、忍野忍と阿良々木暦への「死の宣告」まで半年という時間を手に入れた戦場ヶ原ひたぎがかつての「貝木泥舟」を利用して、神様となった千石撫子との決闘に向けて準備を進めていくというストーリーです。
忍野忍の過去が描かれたと思いきや今度は戦場ヶ原ひたぎと貝木泥舟の過去が描かれ、複雑でいびつな人間関係と、一筋縄ではいかない人間の心や感情が映し出される内容でした。戦場ヶ原ひたぎの思っていた事実と異なる内容が明かされたり、多くの視聴者が貝木泥舟へのイメージを変えざるを得なかったりするなど新要素とも種明かしとも言えるような要素が多く、最後の戦いを前にした準備、嵐の前の静けさかのような淡々としたシーンも多い印象です。
・花物語|5話
主に神原駿河が自身の左腕に宿った猿の怪異と過去に向き合うストーリーで、人々の悩みを聞いてくれる〈悪魔〉と呼ばれる怪異のような存在の正体を確かめるところから始まります。次第に神原駿河自身の親の話、自分自身の話にも焦点が当てられ、戦場ヶ原ひたぎや阿良々木暦から嫌われている貝木から情報をもらう描写もあります。
これまで描かれてきた貝木とはかなりイメージの異なる貝木、沼地という名前で神原駿河のかつての宿敵なども登場します。神原駿河の持つレイニーデビルという悪魔の腕の存在への執着のような責任感のような感覚、愛着ともまた異なる思い入れがある様子にも触れられていました。
自分の身体とは異なる猿の腕は、普段はそれを隠したり、寝る時には縛っていたりするなど手間のかかるものですが、なくなったらなくなったで喪失感があり、長く自分の体の一部として生活をともにした思い入れからか、神原駿河はレイニーデビルの腕を再び自分の体に戻すことになります。他人に迷惑をかけないためか、帰属意識や所有意識か、本当はない方が良かったはずのものなのに、大切にしているような様子はまるで怪異に操られているかのような雰囲気もあります。
憑物語(2014年)

阿良々木暦の体に起きた変化と向き合い、影縫余弦・斧乃木余接らとの関わりも描かれる作品です。手折正弦という怪異の専門家も登場するなど、スピンオフ的な要素も見受けられますが、シリアスな展開が続いたこれまでの息抜き的な内容とも言えます。
鏡に自分の姿が映らなくなったことに気づいた阿良々木暦は、吸血鬼の眷属としてではなく、生まれつき吸血鬼だったかのような状態になりつつあることが明かされます。これは、完全に人間を食べる吸血鬼になってしまう可能性があるという点、妹たちや怪異つながりの友人たちに不幸を及ぼす可能性があるということで阿良々木暦は事態の解決を図ります。
完全に解決することはないですが、阿良々木暦がこれまで吸血鬼キスショットの力を使いすぎていたせいで、その反動が身体に変化を及ぼしてしまい、むやみに吸血鬼の力を使えない状況になったことが明かされる内容です。
作品の魅力や見どころ
本作はアニメシリーズとしては4話のみでさくっと見られる内容ですが、シリアスな展開とコミカルで明るいギャグ展開が適度に混ざっており初見でも割と楽しく見られる内容です。過去に何が起きたのか全く知らなくても、見ていられるようになっており、怪異や都市伝説のような謎と向き合う様子がシンプルに描かれてます。
映像表現、キャラクターの個性、ストーリーのおもしろさや構成・展開はかなりテンポよく、物語シリーズがどんな複雑な背景にある物語なのか気になって過去作や前日譚が気になってしまうような内容です。
阿良々木暦が妹たちとお風呂に入る、性癖を開示する、鏡に自分の姿だけが映っていないなど法的にアウトとなりそうなシーンも描き出されていますが、ギャグっぽい雰囲気とシリアスな雰囲気が交互に描き出されて視聴者を飽きさせない工夫が多いのが印象的です。
物語シリーズはこれまでの作品でも登場人物がやたらと多くなることはなく、せいぜい片手の指で数えられる程度しか毎回出てきていませんが、本作でも登場人物は少なめでキャラクターを覚えやすいという利点があります。阿良々木暦らしい挙動もよく描写され、シリアスな描写、高低差・落差のあるテンポのよい演出が見られるのも魅力の一つです。
放送年 | 2014年 |
話数 | 4話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史斧乃木余接:早見沙織 |
スタッフ | 監督:板村智幸原作:西尾維新アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫音楽:羽岡佳総作画監督:渡辺明夫、岩崎たいすけ |
暦物語(2016年)

物語シリーズの公式アプリでのみ配信されていたショートアニメシリーズで、各話13分前後で視聴できます。直江津高校で過ごす1年の間に阿良々木暦が経験したさまざまな怪異の中で、作中では描かれていないものをまとめた短編集です。
作品の全体のストーリーとしては決戦前の復習といった感覚で、これまでに起きた怪異とのやり取りや事件を振り返りながら、それ以外の時間に起きていたこと、本筋とはほとんど関係がない怪談の話などスピンオフやサブストーリーのような内容が展開されています。
全部で12話ある中で、阿良々木暦の1年間を追うようにストーリーが展開されていくため、ちょうどこれまで何が起きたか、誰と順番に出会っていたかなどを思い出すのにもちょうどよいでしょう。
ホラーでもサスペンスでも怪談話でもないちょっと変わった日常をショートアニメで描き出した作品です。
作品の魅力や見どころ
本作は全12話、各話12分から15分程度のショートアニメでとにかく見やすいのが魅力です。元々は物語シリーズの公式アプリでしか見られなかったものがU-NEXT(ユーネクスト)などで配信されており、それだけでもだいぶラッキーです。本編のメインストーリーとはあまり関係ない話、だいぶ脱線する話もありますが、メインストーリーを理解していると話のおもしろさが深まります。
最後の12話では阿良々木暦の死亡(臥煙伊豆湖により殺害)が描かれてしまうなどだいぶ衝撃的な展開もありますが、阿良々木暦という人物の1年間を1ヶ月ごとにまとめてショート動画にしたようなもので、一人の人間が怪異と向き合って死ぬまでが生々しく、サクッと見れられるように描き出されています。
この時点では、阿良々木暦が1度死ぬことでキスショットはその力を完全に取り戻すことになるわけですが、その結果はどうなるのか、阿良々木暦の周囲の人物や幽霊・八九寺真宵らとの関係はどうなってしまうのかなど、阿良々木暦の死によって起こる可能性が高いさまざまな変化やその後についてが大いに気になる内容になっています。
放送年 | 2016年 |
話数 | 12話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和羽川翼:堀江由衣八九寺真宵:加藤英美里神原駿河:沢城みゆき千石撫子:花澤香菜阿良々木火憐:喜多村英梨阿良々木月火:井口裕香 |
スタッフ | 監督:板村智幸原作:西尾維新アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫音楽:神前暁 |
終物語(2015年)

阿良々木暦の過去とキスショットの最初の眷属との対決などに触れられている作品で、阿良々木暦が友達を作らず避けるようになった経緯や阿良々木暦の変わった性質の背景を知ることとなります。
転校生の忍野扇との出会い、老倉育という人物の話なども興味深いですが、死んでから地獄に落ちて八九寺真宵に出会い復活しようとするストーリーも見ごたえのある内容です。ホラー要素はないですが、全体的にシリアスで少しサスペンス要素を感じる側面が大きく、物語シリーズらしい展開が多いのが魅力的です。
「終物語」という名前にふさわしい決戦がいくつか用意されており、かつ、阿良々木暦の過去が明かされていくことで作中のちょっとした謎が少し納得できる形で終結を迎えるのも重要な要素です。
作品の魅力や見どころ
暦物語の最後に阿良々木暦は忍野忍(キスショット)との関係が切れたため、吸血鬼としての能力はなくなり、ただの人間になっていますが、そんな状態でも怪異と向き合って、怪異に接していくような様子はまだ完全に自覚がないのかかなり危なっかしい様子です。
老倉との過去を思い出す際、扇との出会いと怪異と向き合う様子、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの初代眷属鎧武者との出会い、忍野メメが根城にしていた廃ビルへ出入りするなど死なない身体ではなくなってからも危険な橋を渡る様子が描き出され、次第にキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの初代眷属が死にきれずに400年かけて復活してしまったことを知りけじめをつけることになります。
扇とのストーリーはそこまで多くはなく、どちらかというとキスショットと初代眷属、忍と2代目眷属の関係、初代眷属とキスショットが互いに感謝を述べてけじめを付けるまでが描かれ、なかなか届かない思い、言葉にしきれない思い、けじめを通したかった者同士の清算などを含め、特に初代眷属が400年かけてやっと眠ることができたことへの感動的な「終わり」は強く記憶に残ります。キスショットがずっと抱えていたわだかまりや、初代眷属の本心・苦痛なども結果的に阿良々木暦が解決した形となっており、
放送年 | 2015年 |
話数 | 12話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史忍野扇:水橋かおり老倉育:井上麻里奈戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和羽川翼:堀江由衣 |
スタッフ | 監督:板村智幸原作:西尾維新アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫音楽:羽岡佳総監督:新房昭之キャラクター原案:VOFAN |
「終物語」まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク(2017年)

阿良々木暦が死んで地獄に落ちてから、八九寺真宵や手折正弦と出会ってどうなったか、また、戦場ヶ原ひたぎとのデート、臥煙伊豆湖によって明かされる忍野扇の正体などストーリーの本筋と関わりのある部分で、あまり深められていなかった要素が含まれており、物語シリーズの詳細を理解したい場合は必見です。
主人公の突然の死、そこからの復活、忍野扇との決着まで、これまでのちょっとした伏線や背景を紐解くような流れで物語のエンディングが近づいていることも感じさせます。
浪白公園(しろへび公園)での八九寺真宵との再会、羽川翼が連れてきた忍野メメなどいくつか感動的?な再会があるのもおもしろいところで、阿良々木暦自身がさまざまな怪異とか変わってきたことが盲点になっている部分もじっくりと語られていました。
作品の魅力や見どころ
本作の一番のポイントは忍野扇が、阿良々木暦が生み出してしまった怪異であると明かされることで、これまでにも確かに複数の伏線はありました。アララギ君が行く先々で既にその場所にいたり、アララギ君の過去をやたら詳しく知っていたり、相手によっては男だったり、女だったり正体がはっきりしないままなんだかんだで登場人物たちのサポートに回っていたりと、そう思わせるシーンはたくさんありました。それでも他の異常な状況や怪異の存在が描かれ続けていたことで、忍野扇の正体は完全に盲点となっていました。
阿良々木暦がどんな人物なのかが明かされていくシーンが多いですが、ここまでの内容を見た視聴者はあらかた展開が予想できるようになっているはずで、そこまで新しい驚きはなかったことでしょう。
憑物語以降の少しダークで複雑でわかりにくそうな雰囲気がある展開に一応のハッピーエンドを挟み込んだ形になっており、ちょうど無難な一区切りとも言えるタイトルです。北白蛇神社、浪白公園というつながりが明かされるのも鳥肌ものですが、それよりも阿良々木暦とのペアリングが切れて元の姿に戻ったキスショットの姿が久々に映し出されるシーンも魅力的でした。ストーリーの時系列では傷物語で完全体のキスショットが登場してからは、ほとんどの時間を忍野忍の状態のキスショットとして過ごしており、完全体が阿良々木暦に有効的な状態で出てくるなど、今回は貴重なシーンも満載です。
多くの視聴者はこのあたりで時系列や物語のキャラクターとの関係性が混乱し始めたり、忘れてしまったりしているケースが多かったです。1年前、2年前にアニメ化された内容を思い出す必要があったため、リアルタイムで見ていた人は1度、2度と繰り返し見返す必要がありました。イッキ見したとしても理解が及ばないシーンが多く、映像表現として一時停止しないと読めないシーンも多いため焦らずじっくり時間をかけて見るのがおすすめです。
特に物語シリーズ「セカンドシーズン」で描かれた猫物語(白)あたりから話が複雑になっていくため、見返す場合は「セカンドシーズン」あたりからイッキ見すると良いかもしれません。傷物語や化物語まで戻って見なくてもよく、その後の話がややこしく絡み合っていく部分から復習すると時短になります。
放送年 | 2017年 |
話数 | 7話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史忍野扇:水橋かおり戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和八九寺真宵:加藤英美里 |
スタッフ | 監督:板村智幸原作:西尾維新アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫音楽:羽岡佳 |
続・終物語(2018年)

阿良々木暦が鏡の中の反転した世界に入ってしまうというスピンオフ的な作品です。前作「「終物語」まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク」あたりでおおまかなストーリーは完結していますが、本作は原作小説でもメインストーリーとはあまり関わりはない特典やサブストーリーのような性質で、見ても見なくても問題はないです。
反転した世界では、これまでに登場したキャラクターたちの裏の顔、ある意味では本心が強く描き出されており、本編では表に出すことのなかったキャラが解放されているようでもありました。
本当にキメ顔をする斧乃木、おしとやかで控えめなキスショット、大人っぽいお姉さんな八九寺真宵、豪快な神原駿河、神様バージョンのクチナワ撫子、ブラック羽川は幼い子どもになっており隠されていた本性や少し違った人生を歩んでいればそうだったかもしれない彼女たちの様子が描写されています。
作品の魅力や見どころ
ある意味では公式による二次創作のような所もあり、さまざまな登場人物が本編では見せなかったが、性質としては隠し持っていた部分を表に出して演じられているのが本作の特徴で、全く変化がないように見える人物がいるのもおもしろい点でした。裏表のない人物はありのまま、そのままの性格で、裏の顔や隠しておきたい部分があったものはそれが表に出ているというのが、阿良々木暦が入り込んでしまった反転世界でした。
本作はひとまず物語シリーズの最終巻に関する内容がアニメ化されており、本編とも関わりはそこまでない蛇足な内容ですが、もしかしたらこんなことがあったら嬉しかったかもという「IF」的要素が現実化されており、小説だけでは感じにくかったキャラクターの雰囲気や声色なども表現されていて、よりリアルに物語シリーズの世界観が脳裏に焼き付けられるような作品になっています。
人によっては小説で抱いたイメージとアニメで抱いたイメージに差があったかもしれませんが、キャラクター・人間の二面性、そう単純ではない人間の本性などいろいろと考えさせられる要素も多く、学びになることも多いはずです。
放送年 | 2018年 |
話数 | 6話 |
キャスト | 阿良々木暦:神谷浩史戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和八九寺真宵:加藤英美里神原駿河:沢城みゆき千石撫子:花澤香菜羽川翼:堀江由衣 |
スタッフ | 監督:新房昭之原作:西尾維新アニメーション制作:シャフト音楽:羽岡佳 |
〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン(2024年)

2025年8月時点での最新作である「〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン」は、以下の4つのパートで構成されています。
- 愚物語(1話)
- 撫物語(5話)
- 業物語(2話)
- 忍物語(6話)
当初はABEMA主体で配信され、ギャグアニメとしてはかなり本気で作られている上に、物語シリーズの続編という位置づけとしても非常におもしろい展開で往年のファンからも新規視聴者からも人気が高まるという現象が起きました。
これまで登場したさまざまなキャラクターを元としたその後の話がほとんどで、阿良々木月火と魔法少女・余接のお話、花澤香菜祭りとも言われた漫画家モンスター千石撫子と余接のお話、天才・坂本真綾による一人朗読会とも言える業物語、直江津高校バスケ部の行方不明事件などサスペンス要素、ギャグ要素満載の新シリーズは非常に話題となりました。
作品の魅力や見どころ
最も印象に残っているのは直江津高校バスケットボール部で発生した行方不明事件に関するストーリーで、本作の前半はこの忍物語を描くための準備運動のようなものではないかとも思えます。
最初はおもしろく、かわいらしく、いつもの物語シリーズらしい映像描写、演出で視聴者をぐっと引き込んで世界観を浴びるように見せていき、続きが気になって仕方がなくなったあたりで急に不安な展開となる怪異の発生を描くことで、物語シリーズの深い沼にハメていくような展開でした。
今回はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの元マスターと言われている「デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」、通称スーサイドマスターが行方不明事件に関与しているのではないかと考えられ、1000年以上も生きている吸血鬼を相手にすることになります。
サスペンス要素以外にも大勢を巻き込んだ推理モノのような展開になっているのもおもしろいところで、どんでん返しとも言えるような展開があるのも魅力の物語シリーズのおもしろさをさらに引き出しているのが忍物語でしょう。
放送年 | 2024年 |
話数 | 14話 |
キャスト | 戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和八九寺真宵:加藤英美里神原駿河:沢城みゆき千石撫子:花澤香菜阿良々木月火:井口裕香 |
スタッフ | 監督:吉澤翠原作:西尾維新アニメーション制作:シャフトキャラクターデザイン:渡辺明夫音楽:神前暁 |
〈物語〉シリーズの魅力あふれる怪異とキャラクター紹介
ここでは物語シリーズに登場した個性的な登場人物たちとそれぞれが関わった怪異を簡単に紹介しつつ、シーズンごとに作品のあらすじやストーリーをまとめています。
起承転結という構成ではないにしても、ストーリーの前半と後半、もしくは、3部構成になっていると考えられ、本作をより深く知って楽しむための一助になれば幸いです。
近代怪異ファンタジーを独特な世界観で描き出している作品
シリーズ全体を通して阿良々木暦は吸血鬼の存在の影響を大きく受けており、吸血鬼が眷属を作るという逸話や吸血鬼が人の生き血を栄養にするという話などがベースにあります。
本作の舞台は近代化された日本ですが、吸血鬼は古いものでは古代ローマやメソポタミアの頃からその概念があったとされ、ヴァンパイアという名称とともに今の吸血鬼の概念が生み出されたのは18世紀頃ともいわれています。
近代化される以前、人類のここ数千年の歴史の中で密かに伝承されてきた存在で実在するかどうかは別にして、人々に恐れられてきた存在が怪異の一つとして登場します。
怪異とキャラクター・登場人物の関係性や因果関係
キスショット・アセロラオリオンハート・アンダーブレードという名前の吸血鬼は、怪異を討伐するための重要な力を持っていると忍野メメによって語られますが、吸血鬼退治の専門家である「エピソード」などは吸血鬼をとにかく倒そうとしており怪異に向き合う派閥があることもおおよそ見当がつきます。
怪異を抑え込むために怪異を活かすもの、怪異を人の手で始末して怪異が人に触れないようにしようとするものがおり、怪異を活かそうとするのが忍野メメや阿良々木暦、怪異を始末してしまおうという姿勢が強い人物もストーリー後半では出てくるようになります。
阿良々木暦自身が半分怪物のような半分人間のような状態になってしまっていたことも影響しているのかもしれませんが、怪異から人々を救うといいつつも、怪異を消し去りきらずに怪異と共に暮らしたり、互いに消し去り合わない距離感で怪異と隣人になるような所があります。
人を守ると言いつつ、間接的に怪異の存在する状態も助けている事になり、その影響による責任については作中でも何度か話題に上がっていました。
- 阿良々木暦:半分吸血鬼、半分人間。
- 阿良々木火凜:姉。普通の人間。怪異もどき「囲い火蜂」。
- 阿良々木月火:年子の妹。怪異「しでの鳥(不死鳥)」そのもの。
- 羽川翼:ブラック羽川(障り猫)、つばさタイガー(苛虎)であるが、比較的普通の人間。
- 戦場ヶ原ひたぎ:普通の人間。怪異「おもし蟹」の被害者。
- 神原駿河:臥煙伊豆湖の姪。レイニーデビルの左腕を持つ。
- 千石撫子:蛇切縄の被害者。北白蛇神社の神「クチナワ」を復活させた。
- 八九寺真宵:幽霊。地縛霊。元人間。怪異「迷い牛」。
- 忍野扇:「正体不明」なのが正体。阿良々木暦が生んだ怪異。「くらやみ」にも似た挙動をする。
- 死屍累生死郎:初代怪異殺し。キスショットの初代眷属。鎧武者。忍野扇が生まれる要因。
作中で登場した怪異に関わりが深い人物の中には、人の姿をしている怪異もおり、特に異質なのは阿良々木月火、忍野扇です。阿良々木月火に至っては阿良々木暦の母親が生んだという事実もあり、阿良々木暦の確かな妹であり、見た目は完全に人間ながら、実際には怪異であるという不思議な状況があります。
また、阿良々木暦の心が生み出してしまった忍野扇と呼ばれる人物も阿良々木家の一人、阿良々木暦の関与があって生じており、阿良々木家が怪異と深い関わりを持っているという不思議な現象が起きています。
思い込みや嫉妬、家庭環境のストレスなどから生じた人間本体を間借りするような形で姿を現す怪異もおり、羽川翼や神原駿河、千石撫子はその類と言えます。
元々そんな怪異はいなかったはずが、強い感情が原因で怪異が具現化してしまっており、それによって引き起こされている事件などは現実世界では精神病や神隠し、行方不明、家出として扱われてしまいそうな事象です。
たくさんの怪異がいる中で八九寺真宵はシンプルに人の幽霊として登場していますが、物体をすり抜けられるわけではなく、阿良々木暦が触れることができるという特殊なパターンの幽霊です。
現世への思いが強いために地縛霊になっているという事情があるにしても、阿良々木暦に起こるトラブルをサポートすることにもなる重要な存在として作中で割と活躍します。
特殊な映像表現やカットシーンが多い
物語シリーズは抽象的で世界観や雰囲気が大きく異なるタッチのカットシーンが複数回挟まったり、場面展開が多いことでもよく知られています。
特に世界観を説明するような序盤のシーンでは、文字が書かれているのにほんの一瞬しか見せずにサブリミナル効果を狙うかのようなカットも多く、キャラクターのデフォルメや作画崩壊っぽさを適度に活用しつつ、テクスチャや現代アートのような背景を用いることで異常さ、異様さを表現しているようにも思えます。
さまざまな看板を用いた表現、部屋の散らかり方が特殊な神原駿河の部屋、戦場ヶ原ひたぎの部屋の透明化されているかのような特殊な表現、廃ビルの異空間っぽさなど普通の街並みや多くの人がおおよそイメージする建物の感覚、物体として認識しているモノの表現が個性的です。
単純にグロかったり、エロかったりする描写もありますが、表現がストレートになる部分と異常に抽象的な部分があることで、ストレートな描写がより際立つようになっています。
普通の背景、普通の世界観で描いてもただエログロなシーンになってしまいそうですが、その描写に至るまでの世界観や独特な雰囲気があるせいで、衝撃的なシーンなはずが少し自然に感じてしまうようなシーンもあります。
対比や描写の落差をうまく生かしているため、場面展開の速さに追いつこうした脳が、いきなり慣れ親しんだ世界や認識しやすい人物だけを移すようなカメラワークでその世界観に引き込まれてしまい、作品に熱中させられてしまう点もあります。
何も考えずに見ていても、何か考えながら見ていても取り込まれてしまうような印象があり、その視聴者に起こる変化そのものが怪異であるかのようにも思えてしまいます。
ストーリーも怪異が怪異を呼ぶ内容であるため、視聴者も怪異に引き寄せられてしまっているかのように演出されています。
各シーズンと作品の公開順が異なる
以下で紹介するファーストシーズン、セカンドシーズン、ファイナルシーズン、オフ&モンスターシーズンは、アニメが公開された時期がズレているものがあります。
U-NEXT(ユーネクスト)やAmazonプライムビデオ、dアニメストアで見る場合は視聴する順番に気をつけると話が分かりやすくなります。先述の通り、最初は公開順に見ていき、2度めは時系列順で見直すのがベストです。
- 化物語(2009年)
- 偽物語(2012年)
- 猫物語(黒)(2012年-2013年)
- 〈物語〉シリーズ セカンドシーズン(2013年)
- 憑物語(2014年)
- 終物語(2015年)
- 暦物語(2016年)
- 傷物語〈 I 鉄血篇〉(2016年)
- 傷物語〈 II 熱血篇〉(2016年)
- 傷物語〈 III 冷血篇〉(2017年)
- 「終物語」まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク(2017年)
- 続・終物語(2018年)
- 傷物語 こよみヴァンプ(2024年)
- 〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン(2024年)
公開順では、ある程度物語シリーズの世界観が分かってきた所で、傷物語で阿良々木暦と忍野忍の間にあったことが描かれ、それから「終物語」まよいヘル/ひたぎランデブー/おうぎダーク、続・終物語へと続いていきました。
公開時には暦物語で阿良々木暦が粉砕消滅してから2年ほどかけて続編が続いたため次の展開がかなり待ち遠しかったとともに、内容を忘れてしまいそうになった人も多かったでしょう。
「貝木泥舟」という人物について

偽物語から登場した怪異に詳しい人物で、戦場ヶ原ひたぎを騙した人物としてかなり悪印象を持たれている存在です。お金は命よりも大事だと考えており、中学生におまじないを広めて、千石撫子や阿良々木火凜らとスレスレ接点もありました。
神原駿河よりも足が速く、神原駿河と沼地の件で対面した際はやたらと、おごりで肉を食えと勧めてくるなどおせっかいでちょっと変わったそこそこ優しい遠い親戚のようなキャラクターも見せていました。
怪異に対する対応能力は、臥煙伊豆湖から一目置かれるくらいにはありますが、得意分野、不得意分野があり状況に応じて繊細な決断や扱いが必要な場合に特に力を発揮します。
阿良々木暦と忍野忍も全く刃が立たなかった千石撫子を騙すことに成功し、千石撫子を神から人間に戻しているなど作中における功績も大きく、与えた被害も大きいという善でも悪でもない微妙なポジションにいるキャラクターです。
戦場ヶ原ひたぎの母親が没頭した宗教に関わりがあったようですが、貝木はかけがえのないものが嫌いで、人々にとってその宗教がかけがえのないものになっていたために気に入らずに宗教をつぶし、結果的に戦場ヶ原ひたぎと微妙な接点が生じていると考えられます。
貝木は確かに詐欺師であることもありますが、お金が稼げれば詐欺師でも怪異退治でも何でもやるというタイプであり、お金を稼ぐ手段の一つとして詐欺師というやり方があっただけとも考えられます。
千石撫子を騙す時には戦場ヶ原ひたぎがお金を用意して誠意を見せたため仕事として引き受けて成功させ、神原駿河は貝木にとって身内や仲間とも言える存在と関わりがあったためお金を払って神原駿河にやたら肉を食べさせています。
ダークヒーロー的なポジションにおり、人によってよく見える側面と悪く見える側面があり、怪異だらけの物語シリーズの中では非常に人間らしい存在とも言えます。
「忍野メメ」という人物について

公開順で言えば最初の化物語から、時系列順でも最初となる傷物語の頃から登場している怪異の専門家で、キスショットを怪異の王として認知して死なない程度に助ける他、阿良々木暦に対しても度々怪異についてのアドバイスをしている独特な雰囲気を持った人物です。
人間を食らう存在が悪だとすれば、人間に寄生したり、人間を食べる吸血鬼は悪なはずですが、だからといって吸血鬼や怪異を積極的に討伐・退治するわけではなく、バランスを保つ者として作中でも自分のことをバランサーと表現しています。
人間、怪異どちらの味方でもなく中立を維持しており、雰囲気としては神出鬼没ながら廃ビルに行けばたいてい会えるという不気味でちょっと危険なニオイのする大人のおじさまを演じていました。
服装も上半身は基本裸にアロハシャツを着ているだけで、タバコを咥えていながらも火はつけずにいるという悪そうに見えて悪くはないようで、決して善でもなさそうな善悪の中間にいるような雰囲気を服装や性格からもにじませていました。
作中、ほとんど姿を見せなくなる時期がありますが、ちょうど忍野扇が登場する頃と重なっており、忍野扇と忍野メメがどんな関係にあるのか、視聴者によってさまざまな考察がなされた過去もあります。
怪異とバランスを保とうとする点は阿良々木暦と似ている点もありますが、貝木に比べるとお金への執着はそこまでなく、後払いでもよいからと怪異への対応を先に済ませてくれる場合もあります。
貝木より緩い雰囲気で遊び人っぽい外見ですが、筋を通すところはきちんと筋を通す男で、キスショットを忍野忍と名付けてかくまったり、忍野忍にアロハ小僧と呼ばれたりするなど、どちらかといえば味方に近いキャラクターです。
ファーストシーズン|化物語・傷物語・偽物語・猫物語(黒)
公開順や時系列は別として、ファーストシーズンに属する物語シリーズでは、シリーズに登場するキャラクターの紹介をするような要素がメインで、阿良々木暦、羽川翼、戦場ヶ原ひたぎといったレギュラーメンバーの他、怪異に巻き込まれたり、怪異そのものになってしまう神原駿河、千石撫子、八九寺真宵、阿良々木月火、阿良々木火凜などについても語られます。
どんな人物で、どんな怪異と関わりがあったか明かされ、基本的には阿良々木暦のおせっかいやお人好しのおかげで救われたという形で物語が進行していきます。
阿良々木暦が吸血鬼になってしまった要因でもあるキスショット、その出会いの過程で出会った忍野メメ、偶然仲良くなった羽川翼など各人物の背景、それまでの出会いや怪異と関わることになった理由について描かれる場合もあれば、あいまいなままストーリーが進行することもあります。
完全な解決に至っていなくとも、怪異とうまく付き合っていくスタンスが多く、アンバランスであいまいでちょっとつつけば崩れてしまいそうな関係を維持しながら怪異と共生するような流れが多い印象です。
セカンドシーズン|猫物語(白)・傾物語・花物語・囮物語・鬼物語・恋物語
ファーストシーズンに登場した少女と怪異たちのその後に触れており、怪異と向き合ったあとに何が起きたか、どんな変化があったか描かれてます。
1度は解決したはずの問題が再燃したり、全く新しい問題が起きたりしているケースもありつつ、ファーストシーズンでは忍野忍として静かに暮らすようになったキスショットもより多く登場するようになります。
傾物語からは忍野扇という新しいキャラクターも登場し、時に少女、時に少年として非常にあいまいで正体がはっきりしない存在も出てきます。
化物語では少ししか名前が出なかったり、存在だけ明かされていた人物が出てきたりしていき、よりそれぞれの人物像やヒューマンドラマの部分に焦点が当てられます。
ファーストシーズンでは羽川翼、八九寺真宵、神原駿河、千石撫子、忍野忍、戦場ヶ原ひたぎといったヒロインたちは互いに関わり合うことはほとんどなかった印象ですが、セカンドシーズンでは互いに関わりを持つことも多くなっており、相互関係が複雑になっていきます。
阿良々木暦とそれぞれのヒロインだけの関わりだけならば話が分かりやすいですが、同じ高校に通っていたり、同じ街に存在していることでそれぞれの思いや感情が絡み合うようになっていきます。
セカンドシーズンでは、ファーストシーズンで視聴者が覚えた各キャラクターの属性や阿良々木暦への思いや向き合い方をベースに、人間関係が蜘蛛の巣のように広がっていくため、いきなりセカンドシーズンから見始めても分からない部分が多いでしょう。
できるだけファーストシーズンを見てから履修するか、間にはさまる総集編をしっかりと見るのがおすすめです。
ファイナルシーズン|憑物語・暦物語・終物語・「続・終物語」
ファイナルシーズンは、神様となった千石撫子による死の宣告を乗り越えるためにどう動くかを捉えた問題と、阿良々木暦が完全に吸血鬼になりかけてしまっている問題をどうするかといういくつかのストーリーの軸があります。
同時に起きてもおかしくない問題ではありますが、阿良々木暦が半分怪異で半分人間である状態を維持できなくなる要素が加わります。
特に衝撃的だったのは暦物語の第12話で、阿良々木暦が臥煙伊豆湖に殺害されてしまう点です。アニメでの描写では殺害と言って良いのか分からないほど繊細で粉々で跡形もなく消し去られたような感覚で、異世界に転生させられて消えてしまったかのような状況でもあり、死んだと言われている現象のあとには何も残っていませんでした。
サイコロステーキ先輩のような粉々な死に方に近いですが、出血もなく、残滓もなく、まさしく消滅に近いものでした。その後、地獄とは思えない場所で目覚めた阿良々木暦はすぐに八九寺真宵に出会います。
阿良々木暦の死後の話は、終物語第5話「まよいヘル」から始まり、阿良々木暦が復活する所までが描かれます。
臥煙伊豆湖が阿良々木暦を消滅させる前に、解決方法の一つと語っている点が不可解で、阿良々木暦とキスショットの関係をどこまで把握しているかによって話が変わってくる可能性もある事態です。
キスショットの眷属が減るだけではなく、忍野忍が完全体のキスショットとなって復活することがどれほど必要なことだったかについても考えさせられることになります。
阿良々木暦に関わるさまざまな問題が解決していく展開もあれば、若干曖昧なまま流れていくものもありました。たいていは答え合わせ的なストーリーとなっていましたが、まだ完全な完結編ではなく、怪異と向き合っていかないといけない彼らの生活は変わらないようです。
オフ&モンスターシーズン|愚物語・撫物語・業物語・忍物語
物語シリーズの続編、かつ、サブストーリー、スピンオフといった感じのシリーズで、忍野忍(キスショット)の過去、千石撫子の問題の解決など全ての元凶や始まりのストーリーの一部分に触れていて、かつ、新たな人間関係の進展にまで踏み込んでいる内容です。
これまでセカンドシーズン、ファイナルシーズンはギャグ要素も交えつつ、シリアスなシーン、サスペンスや謎解き、各キャラクターによる語り・ナレーションを含んだような単調な展開が続いてきた印象がありましたが、オフ&モンスターシーズンではギャグ要素が強くなり、化物語の頃のように、コメディ色豊かな感じも出ています。
それでいて、物語シリーズらしい映像描写や演出があり、怪異と向き合っていくサスペンス風の展開や謎解きっぽさもあったためバランスの良いシーズンに仕上がっています。
それぞれのキャラクターがどんな背景でそのシーンに登場しているか分かっていないと意味が理解できない状況がほとんどで、最低限セカンドシーズンを見ていないと何の話をしているのかさっぱりわからないでしょう。
全14話、各30分ほどの作品なため履修するのにそれほど時間はかかりませんが、セカンドシーズンやファイナルシーズンの履修が前提になっている側面があるため予習、復習の時間があったほうが楽しめるはずです。
物語シリーズの聖地巡礼用スポットまとめ
ここからは物語シリーズ内に登場した名所などの中から、訪問しやすく、記憶に残っている可能性が高いスポットを厳選して紹介します。
西武新宿線「井荻駅」
アニメの中の「ひたぎクラブ」にて度々登場した駅で、外観やカメラワークを見ながら比べると分かりやすいでしょう。魔法少女まどか☆マギカなどでも知られている物語シリーズの制作会社シャフトの本社が近くにあります。
九龍城砦
学習塾跡の廃ビルのモデルと言われているのが香港の「九龍城砦」で1994年に解体されてしまいましたが、非常に入り組んだ怪しさ満点の作りや都市伝説や怪異を隠しておくのには確かに雰囲気がぴったりな見た目でさまざまな作品のモデル地にもなったスポットです。
新潟県立直江津中等教育学校
阿良々木暦が通っている高校は、新潟県にある実在の学校がモデルになっていると言われています。学校であるため訪問は避けたほうが良いですが、実在している学校として在校生の方々は是非物語シリーズを履修してみてはいかがでしょうか。
東京スカイツリー
アニメの中の「なでこメデューサ」にて登場しています。観光地としても訪問しやすく、立地も交通の便もよく、写真撮影も楽しめるでしょう。
井草八幡宮(東京都杉並区)
北白蛇神社のモデルと言われているのが井草八幡宮です。恋物語にて千石撫子がその根城にした場所で、実際に似たような構図もいくつかあります。
物語シリーズの原作はライトノベル
物語シリーズの原作はラノベで、2006年から2023年までに既刊30巻が販売されており、まだ続編の公開が予定されています。
最新刊30巻では阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎが結婚しており、変わらず怪異と向き合う様子が綴られています。Amazonで販売されている特典付きの全巻セットは約48,000円です。
- 化物語(上)|2006年
- 化物語(下)|2006年
- 傷物語|2008年
- 偽物語(上)|2008年
- 偽物語(下)|2009年
- 猫物語(黒)|2010年
- 猫物語(白)|2010年
- 傾物語|2010年
- 花物語|2011年
- 囮物語|2011年
- 鬼物語|2011年
- 恋物語|2011年
- 憑物語|2012年
- 暦物語|2013年
- 終物語(上)|2013年
- 終物語(中)|2014年
- 終物語(下)|2014年
- 続・終物語|2014年
- 愚物語|2015年
- 業物語|2016年
- 撫物語|2016年
- 結物語|2017年
- 忍物語|2017年
- 宵物語|2018年
- 混物語|2019年(番外編)
- 余物語|2019年
- 扇物語|2020年
- 死物語(上)|2021年
- 死物語(下)|2021年
- 戦物語|2023年
ラノベはシリーズごとに関連する登場人物に関係する文字と「物語」がセットで名付けられており、アニメではまだ描かれていないタイトルも複数あります。
オフ&モンスターシーズンなどで扱われたストーリーとラノベのタイトルの一致状況から、アニメが今どこを追いかけているかも分かりやすいです。
コミック版・漫画版も販売されており、2023年時点では全22巻(193話)が公開されています。ラノベを読むのが最も早いですが、コミック版もラノベやアニメとは異なるおもしろさがあるためぜひ手にとって読んでみてください。コミックは1巻792円で、22巻揃えると約17,000円ほどになります。
西尾維新とは
物語シリーズの原作者・著者は、ペンネーム「西尾維新」の名で活動しており、1981年生まれの小説家です。
西尾維新の名前はローマ字にすると回文になっており、関西人ゆえのちょうどよいテンポでの人物同士のやり取りやボケとツッコミを主体としたコミュニケーションを描くシーンが多いです。
旅行を趣味としており「戯言シリーズ」や「めだかボックス」などでもその才能を発揮しています。デビュー作は「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言使い」というタイトルで、戯言シリーズの最初の作品でもあります。
2024年には「鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説」、「短物語」、「怪傑レディ・フラヌール」といった作品を公開しており、2025年も精力的に執筆活動を行っています。
2024年の「短物語」は、「なでこパスト」や「しのぶフューチャー」などについて書かれており、2025年にも何かしらの新作が公開されることが期待されています。
物語シリーズをアニメやラノベで見ておもしろいと感じた方はぜひ西尾維新氏の他の作品もチェックしてみてください。