スタジオジブリが制作・公開している「ジブリ」作品・シリーズをより深く楽しむために、ぜひ見ておいてほしい作品をまとめて紹介しています。
日本国内ではジブリ作品はネット配信されておらず、動画配信サービスやアプリではジブリを見ることはできません。TSUTAYA DISCAS(ツタヤディスカス)などで、DVDやBlu-rayをレンタルして視聴するのが最も確実な方法です。
1984年公開の「風の谷のナウシカ」から始まり、2023年公開の最新作「君たちはどう生きるか」のほか、「となりのトトロ」や「ハウルの動く城」、「千と千尋の神隠し」など多くの名作を残してきています。
テレビで再放送されるのを待つのも一つの手ですが、DVDやBlu-rayをレンタルして見るか、購入して見るのが一番おすすめです。
「ジブリ」作品を見る方法【スマホでDVD/Blu-rayプレーヤー】
ジブリ作品はDVDまたはBlu-rayで見るのが確実な方法です。VPN接続をしてNetflixで視聴する方法もありますが、日本テレビの持つTV放映権などの関係で日本国内でこの方法を使うのはあまり好ましくはないかもしれません。
TSUTAYAでDVDやBlu-rayをレンタルして視聴するのは問題なく、ジブリ公式ショップなどでDVDやBlu-rayを購入して視聴するのも問題ありません。
そのため、ここでは正規の手段として、スマホでDVDやBlu-rayを視聴できるデバイスを紹介しています。
動画配信サービスで見るよりも手間がかかりますが、DVDやBlu-rayを購入すればディスクと端末がある限り何十回でも繰り返し視聴できる上、DVD特典などもチェックできますのでご検討ください。
TSUTAYA DISCAS(ツタヤ ディスカス)でレンタルする

TSUTAYA DISCASを利用すれば自宅にいながらDVDやBlu-rayをレンタルでき、視聴後に最寄りのポストから返却するだけで良いのでTSUTAYAの店舗に行かなくても作品を確実にレンタルできて視聴もできます。
TSUTAYAの店舗に行く場合は、レンタルしたい作品がお店でその日に借りられるかどうか分からなかったり、お店に返却にいくタイミングをわざわざ作らなければいけなかったりするため手間も時間もかかります。
TSUTAYA DISCASならば、お手持ちのスマホから移動中でも自宅からでも借りたいDVDやBlu-rayを毎月一定枚数まで注文でき自宅のポストに届きます。
作品を見たあとは通勤・通学中などに所定の封筒に入れてポストに投函すれば返却されます。ジブリ作品を見たい場合は、この方法が最も確実で、最もお得です。
定額レンタル4プランは月額1,100円(税込)で、毎月4枚まで作品をレンタルできます。このプランの場合、2枚1組でレンタルすることになり、定額レンタルプランの場合は返却期限はありませんが、返却しないと次のレンタルはできない仕組みです。
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スマホでも使えるDVDプレーヤー
以下、スマホと連携して使用できる「DVDプレーヤー」を簡単に紹介します。初期設定が必要なものや、追加で有線コード、設定が必要なものもありますが、これらのデバイスがあれば好きなアーティストのCDを聞ける他、好きなDVDをネットに接続しなくても見れるようになります。
Blu-rayにも対応しているプレーヤーはあるにはありますが、一万円前後では入手が難しく、数万円かかってしまいます。ここでは比較的お手頃な価格で入手できるDVDプレーヤーのみ紹介します。
バッファロー「ラクレコ+」|11,980円(税込)

Amazonのバッファロー公式ストアで購入でき、星4以上の評価で、かつ、3,300件以上のクチコミがある信頼できる製品です。
パソコンを使わなくても、このデバイスとスマホだけでCDの音楽をスマホに取り込むことができるアプリもあります。製品重量は500gと少し重めですが、クチコミの件数が多く、どんなトラブルがあるか購入前に分かりやすく、レンタルDVDを視聴できることも書かれており、うまく動いたスマホ端末の報告も多く寄せられています。
Amazonで購入できて、情報も多く、DVD視聴もできるデバイスとしてまずはこちらを検討してみるのが良いでしょう。
ロジテック「LDR-LSM5WWUVDWH」|10,431円(税込)

こちらの製品は、公式からはCDの再生や取り込みをメインに紹介されていますが、無料の専用アプリ「Logitec Wireless DVD Player」をスマホにインストールすることで、DVDも再生できるようになります。
Wi-Fiの届きやすい範囲であれば再生可能で、本体重量は330gと比較的軽量です。
アイ・オー・データ「CDレコ5v(CD-5WDW/U)」|12,990円(税込)

無料アプリ「DVDミレル」をインストールすることで、スマホでもDVDが見られるようになります。Blu-rayには対応しておらず、クチコミもあるにはありますが数が圧倒的に少なく、レンタルDVDを何の問題もなく見られるかははっきりしません。
確実に使えて、レンタルしたジブリ作品を確実に再生できるかはっきりしない上に、価格が約13,000円するため気軽には手が出ないかもしれません。
ジブリ作品のDVD/Blu-rayを購入する
確実にジブリ作品を視聴したい場合は、DVDやBlu-rayディスクを購入するのがおすすめです。
ジブリ美術館やジブリパーク、ジブリのオンラインショップなどで購入できますので、ぜひご検討ください。一度購入すれば子どもや孫の世代までジブリ作品を残せます。

ジブリの人気タイトルが15枚セットになっているDVD作品集で、「となりのトトロ」や「崖の上のポニョ」のほか「君たちはどう生きるか」などもあります。
価格はBlu-rayよりも安く、15枚セットで税込48,400円、1枚あたり約3,227円で何年でも見たい時に見れるようになります。

ジブリの人気タイトルが15枚セットになっているBlu-ray作品集で、「天空の城ラピュタ」や「千と千尋の神隠し」、「もののけ姫」のほか「君たちはどう生きるか」などもあります。
DVD作品集よりは高く税込72,600円かかります。単品で購入する場合は1枚約5,000円かかりますので、1枚あたり4,840円と少しお得に入手できます。

HMVでDVDを購入する場合は、1作品あたり税込5,170円、会員価格でも税込4,395円かかります。
ジブリの公式オンラインショップで購入するのが一番ですが、HMVなど音楽関連のオンラインショップで購入するのもよいでしょう。
おすすめのジブリ作品・8選
ジブリ作品の中でも特におすすめなのが以下の作品です。
- 魔女の宅急便
- 千と千尋の神隠し
- 紅の豚
- もののけ姫
- 天空の城ラピュタ
- となりのトトロ
- ハウルの動く城
- 風の谷のナウシカ
どの作品も理不尽な状況に置かれている主人公が友人や家族、仲間たちと協力しながら困難を乗り越えて成長し、成功するストーリーで世界観の描写、ストーリー構成、演出も美しく、ストーリーを抜きにしても見とれてしまうような内容です。
「魔女の宅急便」
「千と千尋の神隠し」
「ハウルの動く城」
「もののけ姫」
「天空の城ラピュタ」
「風の谷のナウシカ」
「となりのトトロ」
「紅の豚」
「君たちはどう生きるか」
たいていは1度見れば満足できますが、数ヶ月、数年経った時にまた無性に見たくなるような作品で、視聴する時の精神状態、年齢、人生経験の数などで作品の見え方が大幅に変わるのも特徴的です。
まだ幼い年齢の少女が、魔女として一人前になるために旅に出る「魔女の宅急便」では、新たに大学や高校に進学する学生目線で見る場合と、大人になってから見る場合とで登場人物に対する捉え方が大きく変わります。
ジブリ長編アニメーションのあらすじ・紹介【公開順】
スタジオジブリが公開しているアニメーション作品のうち、世間的にいわゆる「ジブリ映画」と言われる長編アニメーション作品のあらすじ、解説をまとめて紹介しています。
風の谷のナウシカ

ジブリ作品1作目でもある「風の谷のナウシカ」は、巨神兵なども投入した過去の大戦でほとんどの人類が滅んでしまった世紀末を描いており、巨大な蟲、呼吸すると肺が侵される腐海などの脅威と隣合わせの状況で、人間同士の争いや人の醜さが描かれた作品です。
主人公であるナウシカは「風の谷」という小さな国の姫でもあり、普段は風使いとなるためにメーヴェというグライダーのようなものに乗って空を飛ぶ練習をしたり、人々と慎ましく穏やかに暮らしていました。
ある日巨神兵の胚を積んだトルメキアの飛行船が「風の谷」に墜落した所から、暮らしは一変しさまざまな人や国の思惑、欲望に振り回されるようになります。
平和で穏やかだった暮らしは、怒りと憎しみがあふれ、抑圧される暮らしになってしまいナウシカたちがその状況を打開するために奮闘していきます。
本作では、トルメキア、ペジテ、風の谷という3つの国が登場しますが、どこの国も腐海の菌に飲み込まれないように必死になっており、過去の人類が犯した罪に苦しめられている状態で、その現状を嘆き悲しむようなナウシカの様子も描写されています。
王蟲と呼ばれる腐海の主とも呼ばれる巨大なダンゴムシのような生き物や空飛ぶムカデのような生き物も登場しますが、どれも地球の古代に存在した巨大な恐竜のような大きさで人の乗る飛行船よりも大きなものもいます。
世界観の深さや人間の愚かさが詰め込まれた作品で、その中で必死に宿命に抗いながら生きるナウシカや風の谷の人々が描かれています。
公開日 | 1984年3月11日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 高畑 勲 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 島本須美 ⋅ 納谷悟朗 ⋅ 松田洋治 ⋅ 永井一郎 ⋅ 榊原良子 ⋅ 家弓家正 |
上映時間 | 116分 |
主題歌 | 「風の谷のナウシカ/風の妖精」 安田成美 |
天空の城ラピュタ

はるか昔存在したとされる王国と空飛ぶ島ラピュタを巡って人々の欲望や陰謀が渦巻く中、少年と少女が互いを守るために命がけの冒険をすることになるストーリーです。
はじまりは飛行船から落下して気絶するシータが、所持していた飛行石の力でゆっくりと浮遊しながらパズーに助けられる所から始まります。
炭鉱で働くパズーは、シータと衝撃的な出会いを果たし、海賊からも軍からも追われるシータを助けるために自身のそれまでの暮らしから抜け出して、ラピュタを見つけるという夢を追いかけることになります。
幼いながらに果敢に努力し、一人暮らしも仕事もこなすパズーにとっては炭鉱の親方の奥さんの言葉が強い後押しになり、シータを空の果てまで助けに行くことになります。
海賊とパズーの利害が一致したことで命がけの協力をしながらシータもラピュタも救うことになりますが、海賊「ドーラ一家」の人間らしさや人間としての筋の通し方、魅力なども描かれており、海賊でありながらムスカ大佐の野望を潰して間接的にパズーやシータ、ラピュタの軍事力の脅威から世界までも救っています。
宇宙(空)へのあこがれが強い人にとっては夢とロマンがあふれている作品で、存在しないと思われていたラピュタが存在したこと、謎の空飛ぶ自律ロボットが大量に存在することなど、人間の科学力がどれだけ発展しても、この世界には人間の理解の追いつかない存在があるかもしれないというロマン、冒険心をくすぐるような展開が満載です。
公開日 | 1986年8月2日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 高畑 勲 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 田中真弓 ⋅ 横沢啓子 ⋅ 初井言榮 ⋅ 寺田 農 ⋅ 常田富士男 ⋅ 永井一郎 |
上映時間 | 124分 |
主題歌 | 「君をのせて」 井上あずみ |
となりのトトロ

主人公はまだ幼い姉「さつき」と「メイ」で、母親の治療、父親の研究などの事情で田舎町に引っ越してきた所から物語が始まります。
やさしく穏やかで理解ある父親と新しい一戸建てを探索したり、家中掃除したりしながら、マックロクロスケやトトロたちと出会うというファンタジー要素もある作品です。
ストーリーとしてはシンプルで、引っ越ししてきた子どもが母親にお見舞いの品を送り届けようとして迷子になった子をトトロと一緒に見つけて無事に家に帰るというお話です。
子ども目線では山の神様トトロも巻き込んだ大冒険ですが、大人目線で見てみると危険の多い山で子どもが行方不明になってしまって村人総出で捜索するというヒヤヒヤしてしまう展開もあります。
大人から見ると、そこまで必死にお見舞いをしに行かなくても良いのではないかと思ってしまいますが、子どもの猪突猛進さがありのまま自然に描かれており、母親を思う純粋な子どもの気持ち、穢れのない無邪気な子どもの行動とそれを支えるトトロや周りの大人と友達など「さつき」と「メイ」の周囲の人間関係、出会い、成長を描いた作品です。
マックロクロスケ(すすわたり)はジブリ作品の中でも公式キャラクター化のように扱われるほど人気で、似たようなキャラクターがあちこちで登場します。
トトロとの出会いも衝撃的で、まるでネコを追いかけるような感覚で子どものトトロを追いかけてヤブに入っていってしまうメイの様子も印象的です。
子どもにとって母親が病気で入院しているということがどれほど大きな心配事になるかがリアルに扱われており、宮崎駿監督自身の経験がその描写に大きく影響していると言われています。
子どもの頃に見た感想と大人になってから見た感想が大きく異なる作品でもありますので、今一度見てみてください。
公開日 | 1988年4月16日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 日高のり子 ⋅ 坂本千夏 ⋅ 糸井重里 ⋅ 島本須美 ⋅ 北林谷栄 ⋅ 高木 均 |
上映時間 | 86分 |
主題歌 | 「さんぽ」 井上あずみ |
火垂るの墓

結末がツラすぎて二度目は見れないとトラウマになるほどの描写が数多く存在し、戦争に苦しめられる子どもの様子が非常にリアルに描かれている作品です。
公開時は「となりのトトロ」との同時上映で、性質が全く異なる長編作品を2つ同時に劇場で見て感情の揺れ幅が大きすぎて混乱する人が続出するほど衝撃を与えました。
主人公は「清太(14歳)」と「節子(4歳)」の2人で、舞台は昭和20年、1945年、第二次世界大戦が終わりを迎えようとしている頃です。
戦時下において、何もかもが足りない時代に、4歳の子どもにとって宝物とも言えるようなサクマドロップス缶、マーマ人形なども忠実に再現されており、当時の暮らし、建築物なども再現度が高いです。
作中では監督高畑勲の岡山大空襲の経験がリアルに再現されており、焼夷弾の延焼の様子、戦時下の様子など全てが現実を元にして制作されており、途中で見ていられなくなるほどキツくなるシーンも多いです。
それでも、過去、本当にあったことを元にして描かれている作品であり、戦争がどんなものなのか知らない世代に「戦争」を伝えるために残すべき作品としては素晴らしいのものとなっています。
短い生涯を終えた主人公2人がそれまで見てきた世界というものがどんなものであったかを観客にも見せるというような演出で、感情移入しやすくなっており、人の死ぬまでの人生をまるまる1つ見ているような感覚にもなります。
公開日 | 1988年4月16日 |
脚本・監督 | 高畑勲 |
音楽 | 間宮芳生 |
声の出演 | 辰巳 努 ⋅ 白石綾乃 |
上映時間 | 88分 |
主題歌 | 「はにゅうの宿」/原題「Home Sweet Home」 アメリータ・ガリ=クルチ |
魔女の宅急便

魔女として独り立ちするために主人公「キキ」が黒ネコの「ジジ」とともに旅に出て、成長していくストーリーで、新天地で一人ひたむきに努力する様子や理不尽な環境や大変な状況に立ち向かっていく様子に感情移入する人も多く、元気がもらえる映画としても人気が高い作品です。
魔女の「キキ」は、魔女ではあるものの占いや薬の調合などはできず、まだほうきで飛ぶことくらいしかできないため、魔女の修行というよりも一人暮らしをするのに必死な若い少女という感覚で、高校や大学への進学、就職をするような人々と似たような状況にあります。
新しい土地、環境に慣れていく様子、新天地での人間関係構築などがリアルに描かれていて、少しずつ街に溶け込んでいくシーンもあります。
キキが運良く感じのよいパン屋さんの空き部屋に住めることになったり、少しやんちゃしてそうな青年ながらもまじめで夢を追っているトンボとの出会い、スランプに陥った時に出会った画家ウルスラなど周囲にはキキを応援してくれる良い人が多く、キキが一時的に魔法が使えなくなった時にも色々とサポートしてくれています。
キキは作中で一度ほうきで飛ぶことすらできないくらいに魔法が使えなくなってしまい、ジジの声も分からなくなってしまいますが、最後にはデッキブラシで空を飛べるようになっており、親譲りの力から脱却して、自分自身の魔法の力で人を助けられたというような描写があります。
自分の力が人の役に立ったことへの喜び、これまで与えられてきたモノやチカラへの思いなど、色々と考えることも多い内容です。
「となりのトトロ」と同じく、この作品を見る心情、年齢によって捉え方が大きく変わる作品で、登場する人物への気持ちや感情移入、作中の人物からかけてもらう言葉などが身にしみることも多いです。
子どもの頃に見た「魔女の宅急便」は魔法のチカラを取り戻したように見えたかもしれませんが、大人から見ると「自分自身の内側から出てくる魔力」に目覚めたのではないかと思えるようなスランプの描き方があり、新天地や新しい環境でがんばる人への応援映画のようでもあります。
全体的に明るい内容の作品で、心をきれいにしたい時に見るのもおすすめです。
公開日 | 1989年7月29日 |
原作 | 角野栄子 |
プロデューサー・脚本・監督 | 宮崎駿 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 高山みなみ ⋅ 佐久間レイ ⋅ 山口勝平 ⋅ 加藤治子 ⋅ 戸田恵子 |
上映時間 | 102分 |
主題歌 | 「ルージュの伝言」 「やさしさに包まれたなら」 荒井由実 |
おもひでぽろぽろ

主人公で27歳になった「タエ子」が幼い頃の自分を思い出しながら、田舎暮らしをするか、都会暮らしを続けるか思い悩む様子が印象的な作品です。
幼い頃から知っているトシオとの関係を育みながら、都会での華々しい暮らしを思いつつ、田舎での地味な生活ができるのか思い悩む様子、結婚を考える年齢でその後の自分がどんな道を歩んでいくべきかを悩むような描写が印象的です。
一人の女性が、子どもから大人になる過程で何を経験し、何を感じたかがリアルに描かれており、27歳という人生の進むべき道を思い悩む時期の心境まで再現されています。
作中では、大人の視点と子どもの頃の視点が両方描かれており、タエ子にとっての過去と現在が交互に思い出されるよう演出されています。
昔懐かしい風景、駅の様子、田舎の町並みのほか、タエ子目線の世界がありのままに描写されており、子どもの頃に見えていたもの、大人になってから見えているものの対比もあります。
「となりのトトロ」や「風の谷のナウシカ」のような若者の今を描いたものとは異なり、「火垂るの墓」のように自分の過去を回想しながら、今の自分のことも見つめつつストーリーが進んでいく構成です。
20歳から30歳くらいの年齢の人にこそ響くものがある話が多く、人生に迷った時や悩んでいる時に見るのもおすすめです。
公開日 | 1991年7月20日 |
原作 | 岡本 螢 ⋅ 刀根夕子 |
脚本・監督 | 高畑勲 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 星 勝 |
声の出演 | 今井美樹 ⋅ 柳葉敏郎 |
上映時間 | 119分 |
主題歌 | 「愛は花、君はその種子」 都はるみ |
紅の豚

顔がブタの主人公「ポルコ・ロッソ」は、空軍のエースだった過去を持ち、飛行機乗りとして生きる様子が描かれています。
有名な飛行機乗りに勝利して名を上げたいカーチスや、飛行艇修理屋でもある少女フィオと出会ってともに旅をする等して男のプライドや大人のかっこよさを描いたような作品です。
個性的でそれぞれの美学を持つ登場人物が多く、マンマユート団のご一行、カーチス、ポルコ、少女フィオ、誰もが憧れる歌姫マダム・ジーナなど、それぞれ過去を背負った大人がそれぞれのペースで人生を謳歌している様子も描写されています。
過去に囚われている者や、思いを秘めたまま待ち続けている人、積極的にチカラを得ようとする者もいれば、若さゆえに無謀な行動に出てしまう者もおり、さまざまな人生の一部、複数の人々が関わり合う人生の一瞬が切り抜かれたような作品です。
空賊でありながら誘拐した子どもたちにたじたじになるマンマユート団の一行は子どもには暴力は振るわず、穏やかに接していたり、少女フィオにはやさしく紳士的であるなど筋を通す所は通し、ポルコやカーチスなどにはぶっきらぼうに対応する所もあり、血の通った人間的な一面が多く描かれている印象があります。
カーチスに傷つけられたポルコ・ロッソの飛行艇を修理するピッコロ社での女性たちの労働の様子、ポルコの筋の通った言動やフィオの努力を認める様子など基本的に登場人物は誰もが人柄がよく、プライド、美学、自分らしさも大切にしながら互いに折り合いをつけていき、不遇の時代を生き残っていく様子が描かれた作品です。
公開日 | 1992年7月18日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 森山周一郎 ⋅ 加藤登紀子 ⋅ 桂 三枝 ⋅ 上條恒彦 ⋅ 岡村明美 ⋅ 大塚明夫 |
上映時間 | 93分 |
主題歌 | 「さくらんぼの実る頃」 「時には昔の話を」 加藤登紀子 |
海がきこえる

ジブリ作品ながら、TVアニメとして公開されたもので長編でありながら劇場公開はされていない少し特別な作品です。
高知から東京に進学した主人公「杜崎拓」と「武藤里伽子」がそれぞれの思い出を振り返りながら向き合っていくストーリーで、誰もが感情移入してしまうような高校時代の青春が描き出された作品です。
高校の頃の思い出を振り返りながら、少しおとなになった2人の関係の変化なども印象的です。
若い男女が経験したであろう青春、思春期の独特の雰囲気の中での恋愛感情、まだ幼く素直になりきれずに終わってしまった過去やすれ違い、若い頃の後悔など若者が抱くことの多いもやもやした気持ち、お互いを深く知っている男女が再会して起こる感情などを若手クリエイターを中心にして描き出した作品で「耳をすませば」などの作品にもつながるような描写も見受けられます。
公開日 | 1993年5月5日 |
原作 | 氷室冴子 |
脚本 | 中村 香 |
監督 | 望月智充 |
音楽 | 永田 茂 |
声の出演 | 飛田展男 ⋅ 坂本洋子 ⋅ 関 俊彦 |
上映時間 | 72分 |
主題歌 | 「海になれたら」 坂本洋子 |
平成狸合戦ぽんぽこ

変化のできるたぬきたちが自身の住処を奪われないように多摩ニュータウン開発を妨害していくお話で、人間に対抗して住処を守って生きるか、人間社会に溶け込んで人間のふりをして生きるかを選ばされるたぬきの葛藤が描かれており、視聴者に対しては自然を壊して暮らしを広げていく人間の傲慢さや生命体としての強者の横暴さが皮肉っぽく、説教っぽく描かれています。
見る人によって捉え方や感じ方が大きく異なり、たぬきでありながらも人間社会に溶け込んでしまったほうが良いと思う人もいれば、自然を壊す人間は悪だと捉える人もいます。
また、人間に化けて人を騙して都市開発を止めようとするやり方以外にもできることがあったのではないかと考察する人もおり、自然と人との共生について問題提起されているような構成です。
たぬきの世界の社会性や暮らしぶりも描きつつ、対比しながら人間の暮らしも描かれており、自然あふれるマイペースな暮らし、便利な道具や安全な部屋が用意される人間の暮らしの両方があり、どちらかがよいか決められはしないものの、2つの異なる世界の違い、双方が共に生きる道を選ぶことの難しさも扱われています。
公開日 | 1994年7月16日 |
原作・脚本・監督 | 高畑勲 |
企画 | 宮﨑 駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
声の出演 | 古今亭志ん朝 ⋅ 野々村真 ⋅ 石田ゆり子 ⋅ 三木のり平 ⋅ 清川虹子 ⋅ 泉谷しげる ⋅ 芦屋雁之助 ⋅ 村田雄浩 ⋅ 林家こぶ平 ⋅ 福澤 朗 ⋅ 桂 米朝 ⋅ 桂 文枝 ⋅ 柳家小さん |
上映時間 | 119分 |
主題歌 | 「いつでも誰かが」 上々颱風(シャンシャンタイフーン) |
耳をすませば

読書好きな中学3年生「月島雫」を中心に、友達、異性、親子関係などを通して成長していく様子が描かれています。若者によくある恋愛の悩み、なんとなく気に入らない異性に対する思い、自分自身の努力を認めてもらえる喜びなどさまざまな思春期の若者の感情が扱われた作品でもあります。
思春期、自分のやりたいこと、受験勉強、恋と友情、家族との関係など、超リアルな中学3年生の生活がありのまま描かれており、子どもの頃に見た場合と大人になってから見た場合で登場するキャラクターに対する考え方・感じ方が180度異なります。
思春期当時の猪突猛進・一直線な気持ちと行動も理解ができ、高校受験を終えてからやりたいことをやればよいのではという冷静な考え方もでき、不思議といつ見ても学ぶことのある作品です。
若くして将来の結婚を約束する2人の様子を微笑ましく思えるシーンもありますが、若い頃の約束ほど曖昧で儚く不安定なものもないため、夢と希望を抱きながら前に進んでいく若者を応援したくなるようなシーンも多いです。
公開日 | 1995年7月15日 |
原作 | 柊あおい |
製作プロデューサー・脚本・絵コンテ | 宮﨑 駿 |
監督 | 近藤喜文 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 野見祐二 |
声の出演 | 本名陽子 ⋅ 高橋一生 ⋅ 立花 隆 ⋅ 室井 滋 ⋅ 露口 茂 ⋅ 小林桂樹 |
上映時間 | 111分 |
主題歌 | 「カントリー・ロード」 本名陽子 |
もののけ姫

自身の集落を守るために命がけで戦い呪いを受けてしまった「アシタカ」が、自身の呪いを解くために長い旅に出るストーリーで、まだ深い森の中に巨大な獣や「神」が存在する時代に、健気に自然と共に生きる様子を美しい演出とともに描いた作品です。
アシタカが祟り神を倒して受けてしまった呪いの原因となった土地に向かう途中には、戦をしているシーンもあり、山犬に育てられたもののけ姫「サン」との出会い、たたら場を運営する女リーダー「エボシ」などの影響もあり、アシタカは自身が選ぶべき道を決断することになります。
呪いの影響から集落を守るために旅立ったような所もあるアシタカにとって、帰る場所はなく落ち着ける場所もない状況でありながら、時折自暴自棄に見えるような行動に出る様子も印象的です。
呪いに蝕まれる自分の身体、まだ若い青年らしい心を抑えながら厳しい自然の中で生きようとする姿勢など、作中における「呪い」が本来は時限的な「死」であるを意味していることを理解するとストーリーへの理解度が深まります。
人間の何十倍も大きな乙事主、山犬のモロ、鹿の姿をしたシシ神、豊かな森にのみ現れる「こだま」、アシタカに付き従うヤックルなど人間以外の登場キャラクターが多く、ストーリー全体を通してみると人間よりも森の中の自然の方が多く、人間が驚異的な自然に対してギリギリ耐え忍んでいるシーンも見受けられます。
それでも人間は人間同士の「戦」を続けており、人の愚かな所、人が変化できる所などが描かれており、人間の良いところ、悪いところが両方感じられます。
公開日 | 1997年7月12日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 松田洋治 ⋅ 石田ゆり子 ⋅ 田中裕子 ⋅ 小林 薫 ⋅ 西村雅彦 ⋅ 上條恒彦 ⋅ 美輪明宏 ⋅ 森 光子 ⋅ 森繁久彌 |
上映時間 | 133分 |
主題歌 | 「もののけ姫」 米良美一 |
ホーホケキョ となりの山田くん

ジブリ作品の中では若干影が薄い作品ですが、「たかし」と「まつ子」が結婚して子どもたちが成長していく「山田家」の様子がコメディチックに描かれています。
「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」という超有名大人気作品の影に隠れてしまっていますが、20世紀最後のジブリ作品でもあり、原作に忠実に制作された個性的なアニメです。
作品としての評価は高いですが、視聴率的な人気はあまり高くはなく、昭和から平成にかけての1つの家族の生きる様子がリアルに描写され、ジブリらしくないシンプルで淡い雰囲気でアニメ化されている点は注目すべき点です。
ちょっとしたシーンで差し込まれる俳句や、お寺の掲示板に書かれるようなシンプルなメッセージは、見る人の心を支えたり、応援したりしてくれる言葉でもあります。
ゆるく生きることを線画や淡い色合いでも表現しているかのようで、ジブリ作品が好きな人には是非チェックしてほしい作品です。
後に公開されるスターウォーズとのコラボ作品や「かぐや姫の物語」などでも本作と似たようなタッチの作品が生み出されるきっかけとなった作品でもあります。
公開日 | 1999年7月17日 |
原作 | いしいひさいち |
脚本・監督 | 高畑勲 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
声の出演 | 朝丘雪路 ⋅ 益岡 徹 ⋅ 荒木雅子 ⋅ 五十畑迅人 ⋅ 宇野なおみ ⋅ 富田靖子 ⋅ 古田新太 ⋅ 斉藤 暁 ⋅ 矢野顕子 ⋅ 柳家小三治 ⋅ 中村玉緒 ⋅ ミヤコ蝶々 |
上映時間 | 104分 |
主題歌 | 「ひとりぼっちはやめた」 矢野顕子 |
千と千尋の神隠し

引っ越しの最中に迷い込んだ山道から異世界に入り込んでしまう冒険風ストーリーで、主人公は一人っ子でまだ幼い少女「千尋」で、おっちょこちょいで主体性がなく、あまり自信もない少女が、自分を見つめ直し、自信を持って強く成長していく様子が描かれています。
物語の冒頭から、日本らしい独特な山道、日本らしさを感じる車、建物や食事処、屋台のほか、油屋での暮らし方や働き方まで、あちこちに日本らしさが詰まった作品で、千尋が迷い込んだ油屋にやってくる「八百万の神」という概念も日本人はすんなり受け入れられますが、海外では理解するのに日本人的な感覚を知る必要がある独特な要素です。
神様にお供えする料理を両親が食べてしまった罰としてブタに変えられてしまったり、川・ひよこ・大根の神様などさまざまな神がいたりする様子など印象的な世界観が多いです。
何より、ストーリー冒頭から少しずつ、まるで視聴者自身が異世界に迷い込んでしまっているような気持ちにさせる演出になっており、日本人がよく使う「神隠し」がどんなものなのかを考えさせるような所があるのも魅力的です。
油屋のボスで魔法を駆使する「湯婆婆」、蜘蛛のような手足をしている「釜爺」、千尋を助けてくれるハクやリンなど、本作を代表するような主役級の登場人物が多いのも見どころの一つです。
それぞれが抱えている思い、事情が交錯しながら迷い込んでしまった「千尋」をサポートするかのように周囲が察して動いてくれるやさしさ、次第に力強く自分の道を歩もうと決める様子は感動的です。
ただ迷い込んでしまっただけで怖い思いをして、それでも生き残るために健気、かつ、真摯に理不尽な状況に立ち向かって大勢の信頼を得るような働きを見せる「千尋」の言動にはきっと元気をもらえるでしょう。
公開日 | 2001年7月20日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 柊 瑠美 ⋅ 入野自由 ⋅ 夏木マリ ⋅ 内藤剛志 ⋅ 沢口靖子 ⋅ 上條恒彦 ⋅ 小野武彦 ⋅ 菅原文太 |
上映時間 | 124分 |
主題歌 | 「いつも何度でも」 木村弓 |
猫の恩返し

ネコを助けたら、恩返しとしてネコの世界に招待されたラクロス部の女子高生「吉岡ハル」のちょっと不思議で甘酸っぱい物語です。
本作は「耳をすませば」の月島雫が書いた物語と言われており、続編ではないものの2つの作品には関連があり、ジブリ作品の中では珍しいタイトルです。
随所にネコらしさがあり、ネコらしいお礼の品の数々、ネコらしい仕草や言動などねこ好きにとってはたまらない要素も多いです。大きな白ねこの「ムタ」、ハルを助けてくれる「バロン」、ハルをお嫁さんにしようとする王子「ルーン」、心があるカラス「トト」、かつてハルが助けたねこ「ユキ」など、ネコを助けたことで大変なトラブルに巻き込まれる女子高生のちょっとした異世界旅行が描かれています。
何の変哲もない日常から、ネコの世界で結婚させられそうになり、日常の暮らしに戻るまでを描いたジブリらしいファンタジー作品で、ねこ好きによる、ねこ好きのための映画とも言えます。
ひどい悪意などはほとんどなく、ねこという獣らしい様子が印象的で、バロンがギリギリ話の通じる人間らしいネコとして登場しており、バロンに恋した視聴者も多いのではないでしょうか。
公開日 | 2002年7月20日 |
原作 | 柊あおい |
監督 | 森田宏幸 |
脚本 | 吉田玲子 |
音楽 | 野見祐二 |
声の出演 | 池脇千鶴 ⋅ 袴田吉彦 ⋅ 前田亜季 ⋅ 山田孝之 ⋅ 佐藤仁美 ⋅ 佐戸井けん太 ⋅ 濱田マリ ⋅ 渡辺 哲 ⋅ 斉藤洋介 ⋅ 岡江久美子 ⋅ 丹波哲郎 |
上映時間 | 75分 |
主題歌 | 「風になる」 つじあやの |
ハウルの動く城

魔法が存在する世界で帽子屋の娘として健気に生きる「ソフィー」と、魔法に取り憑かれた「ハウル」が時空を超えて出会って結ばれるストーリーです。
ソフィーにとっては初めての「ハウル」との出会いとなる瞬間から、少しずつハウルと親交を深めていきますが、荒地の魔女の魔法で見た目を老婆に変えられてしまった状態で、ハウルのお世話係としてカルシファーやマルクルと奇妙な暮らしをすることになります。
ストーリーが終盤になると魔法の力で、ソフィーが幼い頃のハウルに話しかけていた事が分かり、ハウルはずっとソフィーを追いかけていたことも分かりその経験を通して初めてソフィーも想いに気づくような描写があります。
元々現実世界に期待をしていなかったソフィーは心が年老いた老婆のようになっており、荒地の魔女によってその心に見合った見た目に変えられてしまいますが、年齢相応の言動をしている時は見た目も変化しています。
恋愛を感じさせない内容になっていますが、ソフィーが若く純粋な心を取り戻すにつれて荒地の魔女の魔法も解けていき、最終的には元の姿に戻ることができます。
魔法の力に溺れた青年、魔法で出会ったソフィーに出会うために魔法を学ぼうとした青年、青年を育て虜にした荒地の魔女などさまざまな人間関係も描写されており、それぞれの事情や詳細を知るとエンディングや各シーンの見方が大きく変わります。2度、3度と見返してほしいジブリ作品です。
公開日 | 2004年11月20日 |
脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 倍賞千恵子 ⋅ 木村拓哉 ⋅ 美輪明宏 ⋅ 我修院達也 ⋅ 神木隆之介 ⋅ 大泉 洋 ⋅ 原田大二郎 ⋅ 加藤治子 |
上映時間 | 119分 |
主題歌 | 「世界の約束」 倍賞千恵子 |
ゲド戦記

主人公の少年「アレン」が賢人「ハイタカ」とともに世界を破滅から救う冒険に出るストーリーで、永遠の命を得ようとする魔法使い「クモ」やその手下の「ウサギ」から顔に火傷の跡がある少女「テルー」を救い出すことになります。
欲にまみれたクモの言動は印象的ですが、父親、かつ、国王を刺殺したアレンもなかなかのもので、悩んでいるようには見えても父殺しの理由が明確ではなく、何が「悪」なのか考えさせられる展開になっています。
答えが見つかるタイプの映画ではなく、特段これといった理由もなく人を殺したアレン、自分の永遠の命のために悪事を働くクモが違うタイプの悪として描かれているように感じられます。
ハイタカやテルーは人間的で善性の存在ですが、決してヒーローのような存在ではなく、ハイタカは等身大の人間であり、テルーも秘密を隠して人として生きている存在であり、それぞれの思惑や事情があるように感じられます。
ストーリー構成はシンプルで魔法使いが倒されるという内容ですが、それに付随する登場人物の生き様や言動などが印象的な作品です。
公開日 | 2006年7月29日 |
原作 | アーシュラ・K. ル=グウィン |
原案 | 宮崎吾朗 ⋅ 丹羽圭子 |
監督 | 宮崎吾朗 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
声の出演 | 岡田准一 ⋅ 手嶌 葵 ⋅ 田中裕子 ⋅ 香川照之 ⋅ 風吹ジュン ⋅ 内藤剛志 ⋅ 倍賞美津子 ⋅ 夏川結衣 ⋅ 小林 薫 ⋅ 菅原文太 |
上映時間 | 115分 |
主題歌 | 「テルーの唄」 手嶌葵 |
崖の上のポニョ

海の女神と魔法使いの魚の子である「ポニョ」が人間の男の子「ソウスケ」と相思相愛になり、ポニョが人間になるストーリーです。
魚の子が人間に恋をして、人間になって想いを実現するという展開ですが、ソウスケの気持ちが揺らぐとポニョは泡になって消えてしまうという残酷な条件もあり、作品内ではポニョの夢はかなっていますが、その後の長い人間としての暮らしの中でいつまでポニョが生きていられるのかは不安になる点です。
ポニョが得てしまった魔法の力、嵐を起こすほどの力を失わせるためにポニョを人間に変えてしまえばよいという親でありながらだいぶ残酷な展開もあり、最終的にポニョから魔法の力も取り上げて、ソウスケと同じ5歳の子どもに変えてしまうというシーンがあります。
魔法使いの存在、魔法使いの陰謀、ポニョの持つ魔力の強さとコントロールできていない様子なども描かれており、ポニョの置かれた境遇に同情できる点も多いです。
ソウスケの母「リサ」は作中で豪快な母親のイメージで描かれていますが、年齢はまだ25歳と若くして5歳の男の子を持つ強い母親で、年齢的にはまだ若く、若さと母の強さを兼ね備えた存在として描かれています。
公開日 | 2008年7月19日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 山口智子 ⋅ 長嶋一茂 ⋅ 天海祐希 ⋅ 所ジョージ ⋅ 奈良柚莉愛 ⋅ 土井洋輝 ⋅ 柊 瑠美 ⋅ 矢野顕子 ⋅ 吉行和子 ⋅ 奈良岡朋子 |
上映時間 | 101分 |
主題歌 | 「崖の上のポニョ」 大橋のぞみ、藤巻直哉 |
借りぐらしのアリエッティ

人に見られてはいけないという鉄の掟の元、古い人間のお屋敷で慎ましく生活する「アリエッティ」が、屋敷の少年に見つかってしまい、お屋敷に古くから伝わるさまざまな事情を知ることになり、最終的にそれぞれの世界で生きることになるストーリーです。
小人として隠れながら生きるアリエッティやその父・ポッドと母・ホミリー、屋敷の少年「翔」と理解のない家政婦「ハル」のほか、小人の少年スピラーなど2つの世界が絶妙に交わり、交錯する内容となっています。
小人たちが生き残っている世界、人間の世界の2つの世界があり、療養中の少年「翔」とアリエッティの短く奇妙な関係がそれぞれにどんな変化をもたらすのかも気になる所です。
本来は交わることのない小人と人間、関わり合ってはいけない小人と人間が互いに歩み寄ろうとした結果、結局うまくいかなかったという事例として描かれていますが、「翔」の曽祖父も小人のための小屋としてドールハウスを用意しているなど、人間なりの理解はある程度あったようですが、受け入れられることはありませんでした。
ファンタジー要素とともに、交わることのない世界があること、歩み寄った末に離れることを選ぶケースがあることを描いた独特なエンディングのジブリ作品と言えます。
ハッピーエンドではないように思えますが、それぞれの道に進むための決断ゆえの結末なため、新たな歩みを迎える形としては良い話になっています。
公開日 | 2010年7月17日 |
企画・脚本 | 宮﨑 駿 |
原作 | メアリー・ノートン |
監督 | 米林宏昌 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
声の出演 | 志田未来 ⋅ 神木隆之介 ⋅ 大竹しのぶ ⋅ 竹下景子 ⋅ 藤原竜也 ⋅ 三浦友和 ⋅ 樹木希林 |
上映時間 | 94分 |
主題歌 | 「Arrietty’s Song」 セシル・コルベル |
コクリコ坂から

時代は朝鮮戦争があった1963年頃、主人公の女子高生「松崎海」と学級新聞の関係者である「風間俊」が「カルチェラタン」を守るために奮闘しつつ、恋に落ちていくストーリー。
海と俊は恋に落ちますが、お互いの父親が同じ人だと勘違いして叶わぬ恋となりますが、母親から真実を告げられたことで恋して良い相手であったことが分かり、なんだかんだカルチェラタンの取り壊しも中止になってハッピーエンドになるという展開です。
学生運動の様子、戦後の混乱の中でも恋と学業に専念する様子、親子関係や家族関係が互いに影響し合う様子など、厳しい時代を生きた学生のリアルなヒューマンドラマと感動的な結末が描かれている作品です。
航海の安全を祈る国際信号旗U旗とW旗の掲揚は「I wish you a pleasant voyage.(ご安航を祈る)」を意味しており、海で亡くなった家族を持つ少年と少女が、航海から無事に帰還してほしいと願いを込めているという人間の通じ合おうとする思いが大きくなっていきつつ、不安も膨らんでいく様子があります。
最初は「海」は父を偲んで旗を掲げていましたが、エンディングには「俊」の安全を祈って旗を掲げるようになっており、互いに前に進めている事が示されています。
公開日 | 2011年7月16日 |
企画・脚本 | 宮﨑 駿 |
原作 | 高橋千鶴 ⋅ 佐山哲郎 |
監督 | 宮崎吾朗 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 武部聡志 |
声の出演 | 長澤まさみ ⋅ 岡田准一 ⋅ 竹下景子 ⋅ 石田ゆり子 ⋅ 柊 瑠美 ⋅ 風吹ジュン ⋅ 内藤剛志 ⋅ 風間俊介 ⋅ 大森南朋 ⋅ 香川照之 |
上映時間 | 91分 |
主題歌 | 「さよならの夏 〜コクリコ坂から」 手嶌葵 |
風立ちぬ

関東大震災の後、そして、第二次世界大戦前の不遇の時代に、戦争、病、不況という困難の中で時代に立ち向かって生きた愛し合う2人のストーリーです。
主人公の「堀越二郎」は飛行機の設計士として働きますが、大日本帝國海軍の零戦を作ることになり、仕事を果たさなければいけないこと、そして、結核で苦しむ「里見菜穂子」との婚約と結婚生活も実現したいという状況下で苦しむことになります。
飛行機に乗りたいという純粋な心と、ロマンとして戦闘機がかっこよくて好きだという気持ち、戦争反対という至極真っ当な気持ちがある意味では二律背反しつつも、同時に存在できる感覚であることが描かれているかのようでもあり、運命のいたずらか、時代が悪すぎたのか愛する人との普通の幸せな暮らしも叶わないという悲しみを背負うことになっています。
現代の若者や今を生きる人々からすれば当たり前にある暮らしが当時はかなり貴重なものであったこと、また、不況の時代にあっても恵まれた環境にいた二郎でさえも望むもの全てが手に入るわけではなく、最愛の人との暮らしも長くは続かなかったなど、それぞれの思いが重くのしかかってくるような作品です。
宮崎駿監督の好きなものが思う存分盛り込まれた作品でもあり、どこか閉塞的で物悲しい雰囲気のある映画です。
公開日 | 2013年7月20日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 庵野秀明 ⋅ 瀧本美織 ⋅ 西島秀俊 ⋅ 西村雅彦 ⋅ スティーブン・アルパート ⋅ 風間杜夫 ⋅ 竹下景子 ⋅ 志田未来 ⋅ 國村 隼 ⋅ 大竹しのぶ ⋅ 野村萬斎 |
上映時間 | 126分 |
主題歌 | 「ひこうき雲」 荒井由実 |
かぐや姫の物語

高畑勲監督の遺作にして、線画を生かした独特な描写が特徴の作品です。
物語は原作の竹取物語などで知られている展開を踏襲しており、竹から生まれたかぐや姫が、美しい少女、姫に育ち、5人の貴公子「車持皇子、石作皇子、阿部右大臣、大伴大納言、石上中納言」に貴重な品を持ってくることを条件に約束を取り付けて追い返すシーンなども描かれています。
当時の天皇である「御門」からも言い寄られてセクハラをされますが、その時に本来の生まれである月に助けを求め、月からの遣いに連れられて月に帰っていきます。
かぐや姫は地球での育ての親である「翁」や「媼」との暮らしを望んでいましたが、天人には逆らえず月に帰っていってしまいます。
とても儚く、淡く、現実離れしたお伽話が独特の線画と色合いで描かれたアニメーションで描写されており、よく知られた物語でありながらも感動的で物悲しい話に仕上がっています。
公開日 | 2013年11月23日 |
原案・脚本・監督 | 高畑勲 |
脚本 | 坂口理子 |
プロデューサー | 西村義明 |
音楽 | 久石 譲 |
声の出演 | 朝倉あき ⋅ 高良健吾 ⋅ 地井武男 ⋅ 宮本信子 ⋅ 高畑淳子 ⋅ 田畑智子 ⋅ 立川志の輔 ⋅ 上川隆也 ⋅ 伊集院光 ⋅ 宇崎竜童 ⋅ 中村七之助 ⋅ 橋爪 功 ⋅ 三宅裕司 ⋅ 朝丘雪路 ⋅ 仲代達矢 |
上映時間 | 137分 |
主題歌 | 「いのちの記憶」 二階堂和美 |
思い出のマーニー

孤児で心を閉ざしている少女「アンナ」と、謎の多い少女「マーニー」が出会い、アンナの心が開かれ、紐解かれていくストーリーです。
自分の心の中の殻に閉じこもってしまったアンナがマーニーとの時間を過ごすことで少しずつ物事に気づいていき、成長していく様子が描かれています。
作中の出来事としては不思議な体験として描かれていますが、幻影や妄想のようなものとも考えられ、アンナの精神状態・心理状態を映し出す存在とも言えます。
母親も祖母も死んでしまっているアンナの孤独感と不安、養母との関係も良好ながらも養育費を受け取っていることで養母さえも疑ってしまうという子どもだからあり得る勘違いも合わさって、自分への愛情があるのかないのか不安を感じて苦しむ幼い少女の心情がリアルに描写されています。
大人になってから見ると、養育費をもらっているだけで愛情がないとはならないのですが、子どもながらにお金のために自分の面倒を見ているんだと感じてしまうのは致し方ないことでもあるでしょう。
全体的にアンナがマーニーと過ごす時間や境遇に不思議な点が多く、マーニーが何者で、アンナはどうしてマーニーと過ごしているのかなど、はっきりとしない事が複数あります。
解説されてもいまいち納得できない点も多く、2度、3度見ただけでも理解できない描写もあるでしょう。
マーニーはアンナがまだ幼い頃、祖母から聞かされていたお話や心の奥底に残された記憶から生み出されている存在と言ってもよく、アンナの夢の中の存在と考えることもできます。
もちろん、ジブリ作品では異世界で冒険するようなファンタジーもよく描かれるため、祖母のリアルな霊体が屋敷に現れてアンナを支えつつ、アンナの夢にも登場したと考えても良いでしょう。
正しい答えはなく、視聴者がどう捉えるかによりますが、マーニーは悪い存在ではなくアンナを愛し、支えるための存在であることには変わりありません。
公開日 | 2014年7月19日 |
原作 | ジョーン・G・ロビンソン |
脚本 | 丹羽圭子 ⋅ 安藤雅司 ⋅ 米林宏昌 |
監督 | 米林宏昌 |
プロデューサー | 西村義明 |
音楽 | 村松崇継 |
声の出演 | 高月彩良 ⋅ 有村架純 ⋅ 松嶋菜々子 ⋅ 寺島 進 ⋅ 根岸季衣 ⋅ 森山良子 ⋅ 吉行和子 ⋅ 黒木 瞳 |
上映時間 | 103分 |
主題歌 | 「Fine On The Outside」 プリシラ・アーン |
レッドタートル ある島の物語

フランスの「プリマ・リネア・プロダクションズ」、日本の「スタジオジブリ」、ベルギーの「ベルビジョン」が協力して制作したアニメーション作品で、遭難した男性が無人島で大きな赤いウミガメの妖精のような女性と出会って恋に落ち、子どもを一人もうけて島を旅立つまでに育て上げ、島で死を迎えるというストーリーです。
生き残るために必死だった男はいかだを作って脱出しようとしますが、いかだはすぐに壊れてしまい、赤いウミガメがいかだを壊したのではないかと怒り狂いウミガメにひどい暴力を働きますが、心だと思われたウミガメからは人の姿をした女性が出てきて看病し、恋に落ちます。
2人の間に生まれた息子は島の外の世界を夢見て旅立つことになりますが、男と女は一緒に島で暮らすことを決意し、男は島で亡くなり、女は最後にウミガメの姿に戻って海に戻っていきます。
厳密にはジブリだけで作った作品ではありませんが、大自然の中で命がどのように紡がれていくのかがテーマになったメッセージ性のある作品です。
赤いウミガメが、できの悪いいかだで出航して死ぬのを防ぐために男を島に残したのか、命を育むために島に男を縛り付けたのかは分かりませんが、命は紡がれていき、新しい世界に旅立っていきました。
捉え方はさまざまありますが、じっくりと考察してみてもらいたい作品です。
公開日 | 2016年9月17日 |
原作・脚本・監督 | マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット |
脚本 | パスカル・フェラン |
アーティスティック・プロデューサー | 高畑 勲 |
音楽 | ローラン・ペレズ・デル・マール |
上映時間 | 80分 |
主題歌 | 「Love in the sky」 Laurent Perez Del Mar |
アーヤと魔女

孤児の「アーヤ」が、魔女「ベラ・ヤーガ」とその夫「マンドレーク」の養女となり、魔法を教えてもらう代わりに雑用もこなしながら生活することを受け入れ、自身の境遇を切り開いていくストーリーです。
ジブリでは初めてのフル3DCG作品で難しい展開や深い描写、シリアスな要素はあまりなく、アーヤがアーヤらしく生きていく様子が描かれている比較的シンプルな作品です。
アーヤが孤児院で培ってきた大人に取り入るスキルを駆使して自分の希望を叶えようとする様子が印象的で、アーヤの強い生き方には学ぶべき所もあるでしょう。
近年はストーリーの起伏が激しく、展開の早い派手な作品が好まれますが、大人が見ても、子どもが見ても少し飽きてしまうくらいには平坦なストーリーの中に、子どもにとって複雑で厄介な時代に、大人を上手に転がして思いのままに操るスキルが描かれているように思えます。
公開日 | 2021年8月27日 |
監督 | 宮崎吾朗 |
プロデューサー | 鈴木敏夫 |
原作 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ |
脚本 | 丹羽圭子 ⋅ 郡司絵美 |
音楽 | 武部聡志 |
声の出演 | 寺島しのぶ ⋅ 豊川悦司 ⋅ 濱田 岳 ⋅ 平澤宏々路 ⋅ シェリナ・ムナフ |
上映時間 | 83分 |
主題歌 | 「Don’t disturb me」 「あたしの世界征服」 シェリナ・ムナフ |
君たちはどう生きるか

太平洋戦争が起きていた時代に疎開した少年「眞人」が、新しい環境に溶け込めず、死んだとされる母親を忘れられずに異世界に迷い込んでいくストーリーです。
眞人の父親が経営者で疎開した先でも比較的裕福な暮らしができる環境にありながらも、母親がいない悲しさ、新しい母親を受け入れられずにいる様子が描写されており、見る人の立場や年齢によって見方が大きく変わる作品です。
家庭環境が良くても母親がいない悲しさは子どもを狂わせてしまうことを描いており、眞人の感情や言動の理由もよく分かります。不思議な世界に迷い込み、その世界で母親に何があったのか探し求める様子は印象的です。
新しい母親として迎えられた人物「夏子」は、眞人の母親「ヒサコ」の妹で、眞人同様家族を失った悲しみを抱えていますが、眞人の母代わりになろうと彼女なりに努力をしますが、なかなか気持ちは伝わらず苦悩する様子が描かれています。
眞人が「塔」を通して迷い込んだ異世界「下の世界」では、現実世界にも存在したキリコやサギ男とともに夏子を探すことになり、獰猛で巨大なインコの大群やワラワラのようなファンタジー要素もあり、不思議な世界の中で大叔父、夏子、キリコなどの協力もあって現実世界に帰還します。
この冒険を通してバラバラだった家族が強い結束で結ばれることになった上に、眞人は一回り成長しています。家族の形や絆に関するメッセージのほか、命が生まれる場所の概念など独特な世界観が非常に印象的です。
一度だけでは理解できない内容も多いため、2度、3度と視聴しつつ、登場人物の背景や原作を履修してみるのがおすすめです。
公開年 | 2023年7月14日 |
原作・脚本・監督 | 宮崎駿 |
制作 | スタジオジブリ ⋅ 星野康二 ⋅ 宮崎吾朗 ⋅ 中島清文 |
音楽 | 久石 譲 |
上映時間 | 124分 |
主題歌 | 「地球儀」 米津玄師 |
ジブリ短編アニメーションのあらすじ・紹介【公開順】
ここからはスタジオジブリ制作の短編アニメーションとそのあらすじ、大まかな内容などを紹介します。短編作品はなかなか見られない内容で、実際に見た人も少ないですがぜひ触れてほしい作品です。
On Your Mark

CHAGE&ASKAの楽曲のPVとして制作された作品で、近未来感あふれる世界で羽が生えた少女を空に返してあげるというようなストーリーです。
近未来SFファンタジーのような展開はジブリ作品の中では珍しく、見た人からの評価も比較的高い作品です。
公開年 | 1995年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 6分48秒 |
フィルムぐるぐる
三鷹の森ジブリ美術館で公開されている短編集で
- 華麗なる舞踏会
- ランプータンの冒険
- 魚の魚
- タコレーター
- ぴよぴよバーバ
- ぼうぼう君
- マダラン界
- 進化論
といった8つの作品が順にループ上映されています。当初は3つのみループ上映されていましたが、現在は8作品ループ上映されています。
美術館内のアトラクションの一つのようなものなので、是非美術館でご覧ください。
公開年 | 2001年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | ー |
くじらとり
幼い子どもたちが作った積み木の船でくじらを捕まえ、一緒に写真を撮ったあとにくじらが海に帰っていくという空想をリアルにしたような作品です。
子どもが積み木で作った頼りない船で、空想の海を航海し、巨大なくじらを捕まえるというかわいらしいファンタジー様子が描かれています。三鷹の森ジブリ美術館で視聴可能です。
公開年 | 2001年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約16分 |
コロの大さんぽ
三鷹の森ジブリ美術館で視聴可能な作品の一つで、東京郊外の住宅地で飼い主を追いかけて外に出た子犬「コロ」が都会の中で大冒険をするお話です。
約15分の上映で、少女「サワ子」を追いかけて迷子になってしまい、冒険をすることになる子犬の健気で純粋な気持ちや迷子になってしまった時の不安なども描写されています。
自由に歩き回って迷子になりながら楽しんでほしいという三鷹の森ジブリ美術館のコンセプトにも合った作品です。
公開年 | 2002年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約15分 |
めいとこねこバス
三鷹の森ジブリ美術館でのみ視聴できる「となりのトトロ」の関連作品で、ねこバスの子ども「こねこバス」とメイがこっそりと夜中に部屋を抜け出して森を旅し、秘密の集会に参加するようなファンタジー作品です。
ねこバスの子どもを捕まえるメイ、こねこバスとキャラメルで仲良くなるメイ、こねこバスながらもしっかり風として走る様子も描かれており、ススワタリやトトロなども登場する魅力的な短編アニメです。
公開年 | 2002年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約14分 |
空想の空飛ぶ機械達
ブタの仮装をした宮崎駿監督が出演し、「天空の城ラピュタ」に出てきた乗り物を紹介・解説する内容です。未来の飛行機について語られている作品で、コウモリやトンボのような姿で羽ばたくように空を飛ぶオーニソプターなども出てきます。
映画というよりは短編ドキュメンタリーや展示用動画のような内容です。
公開年 | 2002年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約6分 |
空想の機械達の中の破壊の発明
潜水艦、機動歩兵など破壊の限りを尽くす近未来的な兵器や乗り物が最後には爆発して終わるシンプルな作品で、映画やドキュメンタリーとも異なり、高度な空想の機械を実現させるべきではないと言いたいかのような描写を感じられます。
ナレーションと音楽だけの作品で、キャラクターや登場人物は特に存在せず、メッセージ性の強い内容になっています。
公開年 | 2002年 |
監督 | 庵野秀明 |
上映時間 | 2分47秒 |
ギブリーズ episode2

2002年に「猫の恩返し」と同時上映された作品群で
- カレーなる勝負
- 初恋
- お昼
- ダンス
- 美女と野中
- エピローグ
という6つの構成で作成されており、ブタの顔をしたサラリーマン風の男、丸メガネの料理人などが登場し、辛い食べ物を食べて飛び上がった勢いで地球をぐるぐる回ったり、急に過去回想が始まったりする不思議な空想をリアルにしたような個性的で不思議な世界観が詰まった作品です。
公開年 | 2002年 |
監督 | 百瀬義行 |
上映時間 | 約25分 |
ポータブル空港|space station No.9|空飛ぶ都市計画
映画「キューティーハニー」と同時公開されたアニメ作品で、2019年の「ジブリがいっぱいSPECIAL ショートショート 1992-2016」などに収録されています。
少し古い近未来感が描かれており、「space station No.9(2005年公開)」と「空飛ぶ都市計画(2005年公開)」という作品とセットになっている3部作のうちの一つです。
セリフなどはなく、きのこみたいなバケットハット帽子を被ったオレンジ色の髪をした薄着の女性が日常を過ごす様子が音楽とともにシンプルに描かれています。近未来の暮らし、さまざまな空想上のテクノロジーなどが盛り込まれており、自然と共生する美しさなどを描いた長編アニメーションとは異なる不思議な世界観が印象的です。
公開年 | 2004年 |
監督 | 百瀬ヨシユキ |
上映時間 | ー |
水グモもんもん
三鷹の森ジブリ美術館の「土星座」などで視聴できる限定映像作品のひとつで、水グモとアメンボが恋に落ちるという展開が描かれています。宮崎駿監督が苦手としているクモを好きになれるような内容として制作されているようで、クモへの印象が少しだけ変わるかもしれない作品です。
水グモの動き方や仕草はとてもかわいらしく描かれており、水グモは、魚に食べられそうになったアメンボを救い出して2匹の恋が始まります。
公開年 | 2006年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約15分 |
星をかった日
三鷹の森ジブリ美術館で放映されている作品で「イバラード」という「耳をすませば」や「猫の恩返し」などにも登場する国家をベースに、「ハウルの動く城」の前日譚的な内容になっていると言われています。
少年「ノナ」と美しい女性「ニーニャ」が農園での暮らしを始め、ノナは取引で、モグラとカエルの姿をした行商人から「小さな星の種」を受け取り育てていきます。
自由な時間を過ごしにくい時代背景、まるで植物を育てるかのように星を育てていく様子、ニーニャの元から少年ノナを旅立たせるような描写などが印象的です。ニーニャは荒地の魔女、ノナはハウルではないかと言われており、2人の過去を垣間見れる特別な作品でもあります。
公開年 | 2006年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 16分 |
やどさがし
三鷹の森ジブリ美術館やジブリパークで視聴できる作品で、タイトルの通り、新しい家を探す大きな麦わら帽子をかぶった少女の旅を、日本語の擬音表現を交えて描いた独特な世界観の作品です。
音楽、効果音など全てが人の声で作られており、「魔女の宅急便」に出てきたウルスラが背負っていたような大きなかばんと大きな麦わら帽子を被った少女の旅が描かれています。
マックロクロスケのような目をした蟲なども出てきて、マンガのオノマトペのような表現も気色の悪い生き物が出てきた時はそれを表現するかのような文字として描かれています。
公開年 | 2006年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 12分 |
ジュディ・ジェディ
3つの作品「ポータブル空港」と「space station No.9」と「空飛ぶ都市計画」が1つにまとめられた作品のことで、「立喰師列伝」と同時上映されました。
内容はポータブル空港から始まる三部作と同じで、空想の近未来の時代に暮らす一人の女性を主役として、その暮らしを独特なタッチで描いた内容です。
公開年 | 2006年 |
監督 | 百瀬ヨシユキ |
上映時間 | ー |
ちゅうずもう
しわくちゃなジイとバアが、相撲で負け続けているネズミのために団子や田楽などのごちそうを用意して上げるという内容の作品で、白い体のネズミ、黒い体のネズミ、そして、行司役のカエルが登場します。
日本の民話「ねずみのすもう」を元にした作品で、三鷹の森ジブリ美術館で見ることができます。
公開年 | 2010年 |
監督 | 山下明彦 |
上映時間 | 約13分 |
パン種とタマゴ姫
三鷹の森ジブリ美術館で見れる作品の一つで、「バーバヤーガ」という魔女の住む水車小屋で働かされているタマゴ姫が、命を持ったパン種とともに水車小屋から逃げるお話です。
命を持って歩き出すパン種(パンの生地)とタマゴ姫の逃避行を描いており、作中には小麦を収穫するウサギの農夫なども個性的でかわいらしいです。
公開年 | 2010年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 12分 |
たからさがし
中川李枝子と大村百合子が制作した絵本「たからさがし」を元にした作品で、見つけた魔法の杖のような棒を巡って、人間の子ども「ゆうじ」とうさぎが競争をするお話です。
最終的に棒はギックおばあちゃんのものになり、ゆうじとうさぎはお茶菓子をもらえることになります。魔法の杖のような棒をもらったギックおばあちゃんも、ゆうじもうさぎもハッピーエンドなエンディングで、子どもらしさやおばあちゃんの優しさ・賢さなども感じられるような作品です。
公開年 | 2011年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 9分 |
毛虫のボロ
生まれたばかりの小さな毛虫目線で見た世界が描かれている作品で、寝グセのような毛、大きな目と独特の白い口を持ったイモムシが広い世界を生きていきます。
葉っぱをむしゃむしゃ食べる毛虫の様子、大きな葉っぱに囲まれた広い世界、危険な生き物も存在する脅威などにも触れられており、毛虫目線の世界がかわいらしく、リアルに描写されています。また、小さな生き物には酸素なども見えているのではないかという監督の想像も描写されており、空気を可視化しているような所も印象的です。
公開年 | 2018年 |
監督 | 宮崎駿 |
上映時間 | 約14分 |
禅 グローグーとマックロクロスケ
ディズニー制作のドラマ「マンダロリアン」シリーズに登場するベイビーヨーダ「グローグー」を主役に、マックロクロスケとグローグーが登場するシンプルな作品です。
水面でジェダイの修行「瞑想」をしているかのように見えるグローグーの周囲でうろうろするマックロクロスケがグローグーにぶつかって、居眠りしていたグローグーを起こし、追いかけっこしたかと思えばマックロクロスケがグローグーに一輪のかわいらしい花をプレゼントする展開です。最後にはグローグーが画面上で丸を描いてエンディングを迎えるという超自然的な雰囲気やジェダイらしいファンタジー感、自然との対話っぽさが描かれています。
ジブリ作品ですが、ディズニープラスで配信されており2025年現在も視聴可能です。
公開年 | 2022年 |
監督 | 近藤勝也 |
上映時間 | 約3分 |
ジブリ好きな人は「ジブリパーク」へ行こう!【愛知県】

ジブリパークは、2022年、愛知県長久手市「愛・地球博記念公園内」に公開されたテーマパークで、ジブリの世界観が再現されています。当日券などは用意されておらず、2ヶ月以上前から予約チケットを購入する必要があります。
ジブリパーク内にはエリアが5つあり、
- ジブリの大倉庫
- 青春の丘(耳をすませば、猫の恩返し)
- どんどこ森(となりのトトロ)
- もののけの里(もののけ姫)
- 魔女の谷(ハウルの動く城、魔女の宅急便)
など、ジブリ作品に関係する舞台を再現したエリアで構成されており「大さんぽ券」を持っていればすべてのエリアを回れますが、全てを1日で回るのは難しく、何度かに分けて訪れる必要があります。
ジブリパークは午後5時には閉園してしまうため、最初は3つのエリアを回れる「大さんぽ券スタンダード(平日大人3,300円)」でゆっくりと「ジブリの大倉庫」、「もののけの里」、「魔女の谷」を回ってから、残りの2つのエリアを訪れるのがおすすめです。
2ヶ月前からチケット予約が可能なため、2ヶ月前の時点で1日目、2日目のチケットを予約すれば2日連続でジブリパークを堪能できます。
混雑しているときには列に並んでいるだけで時間が過ぎてしまうため、3回、4回と訪れるつもりで余裕をもって行くのがベストです。
三鷹の森ジブリ美術館でじっくりジブリを楽しもう!

「三鷹の森ジブリ美術館」は、東京都三鷹市にあるアニメーション美術館で、ジブリの短編アニメーション作品やグッズなどを楽しめる施設です。愛知県のジブリパーク同様、事前予約チケット制です。
図書閲覧室「トライホークス」、カフェ「麦わらぼうし」、ショップ「マンマユート」、映像展示室「土星座」などがあり、ジブリの魅力を全身で浴びるように感じられます。
本ページでも紹介した短編アニメーション作品の多くは「三鷹の森ジブリ美術館」で視聴するのが確実です。ネット配信などはされていないため、是非美術館でゆっくりとご覧ください。
ジブリ作品の魅力と学べること【厳選作品紹介】
ここからはジブリ作品の長編アニメーション作品の中から特におすすめのタイトルを紹介しながら、ジブリ映画の魅力とジブリ映画から学べること、学んだこと、学んでほしいことをまとめていきます。
ディズニーの名作映画や世界中に存在する不朽の名作同様、ジブリ作品は子ども、孫の世代にも残していってほしい作品です。ただの映画としてではなく、見る人の人生、教訓、経験、価値観などを育むものとして年齢・性別・国籍関係なく触れてもらいたいです。
ジブリ作品で特に多い要素は以下の通りです。
- 人と人との関わり
- 自然と人との関わり・共生
- 人の変化と成長
ジブリ作品では、登場人物の人生が変わる瞬間や変化する時に焦点を当てているものが多く、記録や記憶に残りにくい変化の瞬間に起きることを美しく、時に残酷に描き出しています。

「となりのトトロ」では、まだ幼く純粋な2人の女の子を主役として、自然の中に存在する神のような存在とも言えるトトロやねこバスの協力もあって精神的な成長を遂げています。
姉のサツキは子どもらしさを取り戻し、妹のメイも本人には気づかないような特別な成長を遂げており、母親への不安が取り除かれ大きく前進できる感動ストーリーになっています。

サツキやメイに対して笑いかけることの多いトトロやねこバスは、彼女らの悩みが無事に解決することを分かっているかのようでもあり、ちっぽけな人間の悩みなど簡単に解決できることであることを理解して余裕の表情を浮かべているようでもあり、長い年月を生きてきている神様のような存在だからこそ数年、十数年しか生きていない幼いニンゲンの子の悩みを温かく包みこんでサポートしているようにも思えます。
人間社会でも人生経験豊富な大人からすれば、子どもが近所の公園で大切なぬいぐるみを紛失してしまったとか、カバンが汚れてしまったとか、ペンダントが壊れてしまったというような悩みは交換したり、洗ったり、ちゃんと探し直したりすれば済む話です。
大人からすれば泣くようなことではないと考えるかもしれませんが、子どもにとっては必死の話で、トトロの感覚や表情もそれと似たような感覚なのかもしれません。
これが子ども目線では、大きな森に住んでいる巨大でやさしく超常的な力を持つトトロが困っている自分のために力を貸してくれたということそのものが、大きな自信につながります。大人や周囲の人が協力してくれたという思い出は、子どもの心の成長にとても大切なことです。
母親が入院中でこうした経験が不足しているサツキとメイにとって、トトロやねこバスの存在は相当大きな存在で、子どもの視聴者にとっても憧れの的になります。ファンタジーでありながらも、そういう存在がいてほしいと願う心があるため、映像作品を通して自信を得たり、夢や希望を抱いたりします。

「魔女の宅急便」では、まだあどけなさが残る少女が愛情あふれる家族から背中を押されて一人前になるために旅に出ますが、親の手が届かない場所で一人で頑張らないといけない状況、まだまだ非力で何でも自分でこなせるわけではないという現実に向き合うことになる辛さ、自分のことを何でも自分で決めることの難しさなども描かれています。
一時的に魔法が使えなくなってしまうという大きな変化に打ちひしがれる様子もあり、成長に伴うスランプや思い通りにいかないこと、どう頑張っても変えられない現実に向き合う大切さも描かれています。
若い魔女の力を例えにしていますが、こういった状況は魔法を使えない人間でも同じようなもので、高校では通じていた自分のスキルや能力が、大学に進学したらありきたりでありふれたものでしかなく、特別に感じていた自分の価値やアイデンティティの喪失などを通して、新しい自分を見つけることになります。

さまざまな人と出会い、先輩や大人の経験を頼りにして人生を学んでいくシーンも印象的で、誰もがどちらの立場であっても過去の自分に重ね合わせることができ、当時の懐かしさを感じられて、今の自分の成長加減を感じ取れるシーンもあります。
様々な生き方をしている人生の先輩、周囲の大人、年齢の近い人々と触れ合う主人公の様子を見ることで、視聴者自身も学びになることがいくつもあります。

成長する過程で得た大切な存在、絶対に失いたくない存在ができることもあり、自らの力を信じきれていなくても、大切な人を失うくらいなら死ぬ気で本気を出して後悔しない選択をするシーンもジブリ作品に多いです。相当決意が固まっていないと行動できないようなことも実行に移す主人公を見ているとついつい声に出して応援してしまうほどです。

「千と千尋の神隠し」は、「魔女の宅急便」とは異なり自分から主体的に難しい境遇に挑戦したわけではなく、理不尽に、半ば事故で理不尽と向き合わなければならない状況で、自身を成長させざるを得ない状況で、自信を育み、自分らしさを見つけて、心や本能の赴くままに行動するようになっていく様子が描かれています。
変化の時は自分で選べないこともあるというメッセージのようでもあり、チャンスを掴むかどうか、チャンスを自分のものにできるかどうかは自分自身にかかっていることも伝えられています。
油屋までの橋を渡る間に息をしないでいればバレずに済んだシーンで、カエルが喋りかけてこなければ問題は起こりませんでしたが、千尋は残念ながら失敗してチャンスを逃してしまいます。
しかし、次の苦肉の策を教えてもらえて、新たなチャンスを手にし、今度はチャンスを掴んで命を失わずに済んでいます。
作中では何事でもないように流れるように描かれていましたが、千尋にとっては言われたことを絶対にやり遂げる、約束を守り切ることでチャンスを掴んだ結果となっています。
これも一つの成長と言えるでしょう。自信がなければ、我慢して、成功を掴み取るところまでいく前に諦めてしまいそうなものですが、背水の陣で臨んだ湯婆婆との面談で千尋は契約を勝ち取っています。

純粋で誠実な心に従い、多くの助けを借りてどんどん成長し、変化し、結果を出していく姿は、日々同じ暮らし・仕事をして飽き飽きしていた油屋の者たちにはさぞ眩しい存在だったのでしょう。
湯婆婆的に、経営者的には心配事が増えたかもしれませんが、一人の少女の成長と変化はとても微笑ましく、元気を与えてもらえる機会だったと考えられます。

理不尽な境遇に出くわして成長していくストーリーは「天空の城ラピュタ」でも描かれています。
空から女の子が降ってきて助けたのがきっかけで死にかけながらも、新しい発見をして、新しい友人関係を作り、それまで避けるべき対象だった存在への理解も深まって、結果的にラピュタを見つけて夢を叶えています。
盗賊や空賊、海賊はどんな時代でもできれば出会いたくも関わりたくもない存在ですが「天空の城ラピュタ」では人間味あふれるドーラ一家の存在がパズーとシータを大きく成長させています。
盗賊よりも「悪」の要素が強い政府機関を相手にしたことで、分かりやすい努力や正攻法だけでは解決できない問題があることを学び、目的のためには手段を選ばないという盗賊の好むような手法を選んだ少年パズーは、ある瞬間までは盗賊に向いていると判断されたかもしれません。
また、盗賊とはいえ大人である彼らからすれば、まだあどけない少年が手段も選ばず、軍隊を相手にしてでも少女を救いたいと行動する様子は応援せずにはいられなかったことでしょう。
単純な利害の一致だけではなく、その論理的な思考や可能性について考えないぶっとんだ勢いのある少年の行動が全てを変化させ、多くの冒険と大発見を生んだとも考えられます。大人にとってあどけない少年少女の色恋沙汰など、かわいらしいエンタメでしかないですが、老婆心からかどうしても応援したくなってしまうものなのでしょう。

少年・少女からすれば全てが知らない世界で、信用できるかどうかも分からない人々に囲まれていましたが、自分たちに危害を加えようとしないで自然とともに生きているだけのロボット、指示通りにしか動かないロボットは確かに信用できそうな存在であったでしょう。
パズーがラピュタに到着したあとの言動からも疑り深くなっているのは明らかですが、少年は「信用」や「信頼」の大切さを学んで相手を見抜く力を得たようにも思えます。
少女をなんとか守ろうとする様子も、少年が「男」として成長していることを示しており、好意を寄せた相手を守りたいという思いが生まれているようなシーンもひとつの成長を描いたものでしょう。

先入観や偏見などもあって、一番信用できなかった盗賊が、最終的に最も頼りにできる存在になったという経験は、少年・少女にとって人生観を大きく変える出来事だったはずです。
単なる良い盗賊だったというお話で終わりではなく、その人の「心」は行動や見た目だけでは判断できず、利害関係や仲間意識、共通の敵などさまざまな要因で変化することを学ばせてくれています。

「君たちはどう生きるか」に登場した「眞人」も、母親の死と失踪、父の再婚、戦争と疎開など完全に理不尽な状況下で自分の心を殺して生きていましたが、強くあろうとした心は少し歪みかけてもおり、少年の変化に影響を与えていました。
嘘をついたり、自傷行為をしたりするほどに心が病み始めており、男になろうと背伸びをしすぎている部分、幼い少年として甘えたいけれど甘えている場合ではない状況が重なり、少年は健全な心を失いかけます。

そんな少年が体験したのは、超自然的な意味のわからない世界での冒険、現実世界と同じ名前をした姿の異なる存在、弱肉強食の本能に支配されている純粋に危険な存在などを相手にして、少年の目的や心は大きく揺らぎます。
謎の多い塔の向こうの世界での経験は、自分の存在意義、家族へのあこがれや希望、納得のいかない自身の状況などを考え直すきっかけになったことでしょう。

何を選んで、どう生きていくべきか答えが見つかったわけではなくとも、何が正しくて、どう前進していくべきかは判断できます。何事も正しい答えがあるわけではなく、自身の選んだ行動が間違いである可能性も十分ありえますが、前進しないでいても何も解決できず、自分を見失ってしまうことがあるというメッセージを伝えているようにも感じられました。
作品のタイトルにもあるように「どう生きるか」は人間にとっては大きなテーマでもあり、「どう生きるべきか」と問いかける言葉にも聞こえますが、自分自身に語りかける「どう生きていこうか」と悩んでいる言葉としても受け取れます。自由に羽ばたいて空に散っていくシーンは、鳥たちに対する「君たちはどう生きる”べき”か」の答えになっているようでもあります。

「もののけ姫」では同じく少年が理不尽な状況下で、自身の命と向き合う様子が描かれています。大自然の中で慎ましく生きていればありふれた幸せと人並みの暮らしが約束されていたはずですが、祟り神から受ける呪い、その呪いが集落に残らないようにするために、自らが集落を出ていくことで集落を守り、自分の命を自分で守るために安全が約束されていない深い森の中へ入っていって旅をすることになります。
アシタカの右腕に抱えた「死」の呪いは、通常ならば精神を病んで全てに絶望するほどのものですが、おそらくアシタカはまだそこまでの考えが及ばないほど若く純粋な心の持ち主であり、自分の力や可能性を疑わないほどには傲慢でいられる若者だったのでしょう。
導かれるままに目的の土地へ進んでいき、運を味方にして自身の運命を変える出会いを果たします。

子どもながらも自身の境遇や運命を理解し始めているアシタカは、包帯だらけの者たちがタタラ場で守られながら働き、生きている様子を見て集落から追い出された自分とその人々を比べて苦しんで悲しんでいるようにも見えます。
守ってもらえたわけではなく、追い出されただけと思えば自暴自棄になっているような行動を取るのも理解できます。
発言や行動は大人びていても、無茶な言動を選ぶほどには子どもであり、少年から男になろうとしている成長と変化の途中の複雑な心理状態の中で銃弾の受けても呪いの力に頼って失血死を恐れず立ち向かったり、噛み殺される恐怖がありながらも山犬に近づいたりするシーンは非常に考えさせられます。
サンから口移しで食べ物を与えられるシーンで、アシタカは涙を流していますが、助けようと思ったサンに助けられている自分の不甲斐なさや弱さ、もう死んでしまいたかった自分が死ねていないことへの哀しさ、こんなにもボロボロでも生きなければいけない人生の辛さなど、ただ好意を抱いているサンとの関係の変化に喜んでいるわけではないと考えられます。
まるで母鳥にエサを押し込まれるヒナのような状態で、男になろうとしているアシタカは何を考えていたのか、一言で言い表すことはできないでしょう。

自身の置かれた境遇を半ば諦めつつ、さまざまな者と出会い、呪いの原因と呪いを解けるかもしれない可能性を得てからのアシタカは命が尽きかけるほどに呪いの力を使うようになっており、ある意味で自暴自棄になっていますが、最後の賭けに出てタタラ場とサン、山犬などの置かれている状況を打開するために、自分の命の価値や存在意義を見出そうとしています。
死を覚悟したものでなければ選べないような選択をしているのはジコ坊も理解しているようで、「バカには勝てん」とそれ以上失うもののない最強の状態のアシタカを嬉しそうな表情で揶揄しています。
これは自分が大事でしょうがないジコ坊がアシタカに対して贈った褒め言葉でもあり、プライドが高そうなジコ坊が完全に敗北を認めた言葉でもあります。
命の覚悟ができているものの恐ろしさや強さ、若者の無知や経験の少なさが驚くべき行動と結果を生み出す事などが描かれた複雑な作品となっています。

「風の谷のナウシカ」でも、理不尽で救われる可能性の低い状況下で奮闘する若者の様子が描かれています。
小さいながらも一国の姫として人々に希望を与えるために行動し、ある意味で命を粗末にするような危険な行動さえ躊躇なく行う様子は非常に印象的です。
作中では明るく生きようとしているように見えますが、腐海の恐怖に支配されている暮らし、大国による侵略を受けている状況、大切な家族の死など受け止めきれるはずがない状況でも負けずに立ち向かっている姿は多くの人の行動を変えていきます。

本来ならば泣き叫んで震えて隠れてしまいたいほどに恐ろしいはずの状況でも、恐怖を噛み潰して乗り越えていく様子は姫としての強さだけでなく、生まれ持った人間的な強さや自信の大きさもあったでしょう。
それでも自身の死の覚悟を見せつけなければ変えられない王蟲の群れへの真摯な向き合い方やすべてを受け入れるという覚悟はナウシカから学べる大切なことです。
ナウシカなりの研究でなんとなく察している人類の過去、もう後戻りできない絶望的状況、半ば諦めていながらも賭けに出る行動など、もう死んで楽になってしまいたいと思えるほどの状況だからこそ、命を犠牲にして何かを守るために行動できたとも考えられます。
死を恐れているものは隠れたり、逃げたりしていますがナウシカだけは最前線で、跡形もない肉片となってもおかしくない王蟲の群れに王蟲の子を返すという行動に出て、ほぼ無傷で生還します。

「紅の豚」では飛行艇乗りというかっこつけたい大人たちが、まるで心が子どものまま大きくなったようなしょうもない戦いを繰り広げる様子が描かれています。
見た目のクールさ、無駄なプライド、ちょっとズレた男らしさなどがリアルに描写され、それらは主に女性から訂正されるような形で整っていきます。
ストーリー序盤はかっこよさげな大人が何人か登場しますが、マンマユート団の情けない様子、かっこつけたいだけのカーチスなどが登場することで、大人の男たちに「少年の心」を感じることができます。

行動や発言は大人っぽくなっても心は夢や希望やあこがれを抱いていた少年の頃のままで、その事を理解したうえでかっこつけている男たちの滑稽な様子も描き出されます。

最後には、見た目もプライドもぼろぼろになりながらも、本当に守るべきもののために全てを犠牲にしようとする「純粋で真っ直ぐな心」が描かれており、特にポルコとカーチスのフラフラな殴り合いは印象的です。
もはやかっこよさも何もない、飛行艇乗りとしての戦いですらないプライドのぶつかり合いが表現されており、ポルコもカーチスもともにこの経験を元に大きな成長をして、変化している様子が理解できます。
それに対して成長を感じられないマンマユート団の一行が対照的に描かれており、不遇の時代を生きる者たちの様子と人間らしさがリアルに表現されています。
男目線のシーンが多いように感じられますが、だからこそプライドを捨ててでも憧れの女性に認めてもらいたい、かわいい女の子を守りたいという思いが強く描写されています。

「ハウルの動く城」では、外見的には一人前の女性、心は少し荒み気味で老婆のような若い女性ソフィー、夢を追いかけて魔法を使いこなす青年ハウルが、互いの距離をゆっくりと詰めていく様子が描かれています。
ハウルは魔法を学んでいる時に、不思議な現象の中で出会ったソフィーという女性を追いかけていますが、ソフィー自身は時間の流れ的にまだその瞬間に出くわしておらず、時空を超えてすれ違っていた2人がタイミングを合わせるまでの様子が描かれた作品とも言えます。
ハウルはじっくり準備を整えつつ、ただひたすらに待ち続けており、ソフィーの準備が整うのを待つかのような落ち着きぶりを見せます。過去の精算、彼なりのやりたいこととも向き合いながら一人の若い青年らしい生き方をしています。
ソフィーはとばっちりでまるで神隠しの事件に巻き込まれるような形で荒地の魔女に魔法をかけられ、不思議な因果の元、ハウルの城に迷い込む形でハウルと出会っていますが、ハウルやマルクル、カルシファーと関わる中で少しずつ気持ちが芽生えて育まれていき、ソフィーからハウルに「待ってて」と叫びかけるシーンでようやく全ての糸がつながります。

ハウルからすれば、王国の魔女や荒地の魔女、戦争を繰り返す危険な時代もすべて終わらせてから平和になった土地でソフィーと一緒に暮らしたかったのか、かなり無茶な行動をしています。
多くの若気の至りを見せるハウルも、ソフィーの前では少年のような顔を見せたり、ネガティブで弱々しいところを見せる様子があり、まだ関係が深まっていなくとも、ソフィーに対して母親のような恋人のような気持ちを抱きつつ、お互いの関係を育んでいるようにも思えます。
ハウルは大人の男になるための成長をしており、ソフィーは年齢相応の女性になるために変化しており、不遇の環境、厳しい時代の中でも自分たちの心と未来を守るために全力で戦った物語となっています。
ジブリ作品全体を通して、成長や変化の大きい若者が中心になっていることが多く、大人になった誰もが一度は通った道、似たような経験が描かれています。
大人になってから見ても、ちょうど作中の登場人物と年齢が近い学生の間に見ても学ぶことや感じることが多く、人生の中で何度も見たくなるのがジブリ作品です。
変化の多い時、うまくいかない時、変わりたい時にもぜひジブリ作品に触れてみてください。