慶応2年。九州・小倉の商家に逃げてきた手負いの武士が亭主の友助に「大日本史」を託す。以来日本陸軍興隆の一翼を担ってきた一族。友助の息子・友之丞、その息子・友彦も軍人として一時代を過ごし、やがて友彦の息子・伸太郎も大東亜戦争への出征が決まる。

「陸軍」は、巨匠・木下恵介監督の感動ドラマで、戦争に対する彼の真の思いが投影されています。戦時中に戦意高揚映画として制作されたものの、クライマックスでは監督自身の揺るぎない意志が示されます。昭和の大女優・田中絹代の熱演は、観る者を涙させるほどの力強さがあります。この作品は、戦争の真実を描きつつ、人間の強さと脆さ、そして生きる意志を描いた名作と言えるでしょう。