なぜ「池井戸潤」氏のドラマはヒットするのか?その魅力に迫る

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ルーズヴェルト・ゲーム、ノーサイド・ゲーム、下町ロケットや空飛ぶタイヤ、半沢直樹などドラマのヒットを出し続けている作品の原作者「池戸田潤」氏の人気の秘密と魅力に迫ります。

本ページでは、池井戸潤氏の小説、ドラマ作品やその特徴を深堀りし、どんな作品が世の中に求められているのか、なぜ人気が出るのか考察します。

池井戸潤氏の生い立ちと影響を受けた作品

池井戸潤氏は、1963年岐阜県生まれ、慶應義塾大学文学部・法学部を卒業し、1988年に三菱銀行に入行、1995年に退職して1998年に「果つる底なき」で第44回江戸川乱歩賞を受賞。

氏の青年時代の作家になりたいという夢を叶えました。

その後、2010年「鉄の骨」で吉川英治文学新人賞受賞、2011年「下町ロケット」で直木賞受賞を果たしています。

江戸川乱歩賞受賞時に、銀行ミステリーと評価されたことがきっかけで、「半沢直樹」シリーズ、「花咲舞」シリーズは銀行絡みの小説になっており、氏の希望であるエンタメ性を持った作風は「下町ロケット」シリーズや「民王」シリーズで発揮され、感情移入しやすい作品が生み出されています。

オトバンクの行った池井戸潤氏へのインタビューの中で以下の作品に影響を受けたことを明かしています。

「七つの会議」著者 池井戸潤さん bestseller's interview 第45回
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池井戸潤氏が影響を受けた作品

エンプティ・チェア

著者:ジェフリー・ディーヴァー

治療のために訪れた場所で捜査の依頼を受け、怪事件を科学捜査で解決するストーリーです。犯罪者や「悪」の存在を分かりやすくも絶妙な表現で生み出しています。

科学捜査の過程でやたらと昆虫に詳しい昆虫少年が出てくる他、機材の少ない現地の警察とのリアルなやり取りなどが描かれています。

イメージしやすい要素、ありきたりな暮らしの中で起こる怪事件と謎という構図で本を読む手が止まらなくなる作品です。

ジャッカルの日

著者:フレデリック・フォーサイス

映画化もされているスリラー小説で、プロの暗殺者「ジャッカル」による大統領暗殺を食い止めるために奮闘する警察たちの様子が描かれています。

ジャーナリストとして働いていた著者が、仕事を通して聞いていたシャルル・ド・ゴール大統領暗殺未遂事件とフランスの秘密軍事組織OAS(Organisation de l’armée secrète)の攻防を元にして書き上げられた半分実話、半分フィクションの作品です。

第二次世界大戦後の1954年「アルジェリア戦争」の影響もある中で起きた事象を交えており、1971年に刊行されています。

ライ麦畑でつかまえて

著者:J・D・サリンジャー

16歳の少年の思春期の揺れ動く気持ち、理不尽な世の中、若気の至り等を描いています。

薄汚れてしまった世の中の大人たちと目先の利益のために穢れている世間への嫌悪感、純粋で無垢な存在の希少性の再認識と慈愛を自らの中に見いだした少年は、若くして隠居を考える老人のような気持ちも抱きながら、ゆっくりと大人になっていく様子が描かれています。

誰もが経験したことがあるような感情も描写されており、共感されやすいことの大切さが伝わる作品でもあります。


これらの作品と池井戸潤氏の作品を比べてみると、確かに影響を受けているであろう箇所がある気がします。

池井戸潤氏自身の経験を元に銀行の話を扱いつつも、人間味あふれる登場人物や描写が多く、感情移入や理解しやすい展開が描かれ、多くの人が経験しているであろう事象を共感しやすく表現しています。

アメコミや特撮に出てくる視覚的に分かりやすい「悪党」と、概念や存在としての「悪」の違いがかなり深堀りされていると考えられ、一般企業やごく普通の生活の中にも「悪」は存在していて、自身もそれになりうる事を理解したうえで、多くの読者が叶えたい正義や行動を描いているように感じます。

池井戸潤氏の作品やドラマ化作品をもっと理解したい方は、ぜひ、上記の作品にも触れてみてください。

池井戸氏個人事務所のX(旧Twitter)アカウント

池井戸潤氏の原作小説とドラマ作品の紹介

池井戸潤氏の書いた小説は、半沢直樹、下町ロケット、空飛ぶタイヤ、陸王、民王、ルーズヴェルト・ゲームなど、その多くがドラマ化されています。

半沢直樹【小説】(2004年)

画像出典:U-NEXT

原作小説は、「オレたちバブル入行組」、「オレたち花のバブル組」、「ロスジェネの逆襲」、「銀翼のイカロス」、「アルルカンと道化師」の5部出版されています。

2013年のドラマ「半沢直樹」には「オレたちバブル入行組」、「オレたち花のバブル組」の内容が描かれており、2020年のドラマ「半沢直樹(2020)」では、「ロスジェネの逆襲」、「銀翼のイカロス」の内容が描かれています。

銀行員としての成長を取り扱う金額の大きさで分かりやすくしたり、ある程度、敵や悪が分かりやすく描かれているのも魅力的です。

はじめは5億、次は120億、出向からの復帰を実現させ、さらに700億円を扱うこととなり、毎回同じ会社の同僚や会社組織そのものの陰謀や巨悪と戦う姿勢が描かれ、かなり多くの人々の共感と応援したくなる気持ちに響く内容でした。

ドラマでは「やられたらやり返す、倍返しだ」のセリフ等で火が付き、銀行を巡る不正と陰謀、現代の時代劇的な展開、豪華な俳優陣による熱演、脚本の八津弘幸らの努力もあり、日本中で有名になった作品です。

堺雅人演じる「半沢直樹」、香川照之演じる「大和田暁」、片岡愛之助演じる「黒崎駿一」などそれぞれが主役級の俳優陣が作品を盛り上げており、普段は見られない銀行の舞台裏にはびこる不正との戦いを劇的に描いています。

2013年にドラマ化された際の視聴率は、軒並み20%を超える人気ぶりで、第二部最終話10話では視聴率42%に達しました。

勧善懲悪、復讐、腐った世の中への宣戦布告のような姿勢、嫌いな上司への反撃と下剋上、正義を貫き通す姿勢、銀行員としての矜持などが濃厚に描かれ、日本中を巻き込んだドラマとなりました。

ノーサイドゲーム【小説】(2019年)

画像出典:U-NEXT

主人公が、自分の信じる正義を貫き通す点は半沢直樹と似た要素で、会社の中での統率や分析、社会人のスポーツクラブの運営という全く異なるようで、似ている点も多くある組織運営を成功させていく爽快なストーリーが人気の理由です。

世間のサラリーマンが失ってしまった情熱や純粋な気持ちを思い出させてくれるような内容で、自分も頑張ってみたいと思わせる仕掛けが作中あちこちにありました。

気持ちがあってもなかなか実現できない社会・組織が多い中、成功を掴んでいく様子がある意味ファンタジーとして描かれています。

大泉洋主演、自動車会社の経営戦略室「君島」が、横浜工場に左遷され会社のラグビー部「アストロズ」のゼネラルマネージャーを任されたことで始まる2つの成り上がりストーリー。

問題を抱える会社の買収を食い止めるために奔走し、ラグビー部も優勝目指して全力投球する様子が描かれ、社会人、サラリーマンの生き様、プライドをリアルに描いた作品です。

第1話の視聴率は13%を超え、その後最終話10話まで視聴率は約10%を維持、最終話10話には13.8%に到達し、作品としてのユーザー評価もかなり高いです。

陸王【小説】(2016年)

画像出典:U-NEXT

足袋の製造会社が時代の変化に対応するためにスポーツマン向けのランニングシューズの開発に挑む内容で、ライバル企業からの妨害や融資のトラブルなどにも対応する様子が描かれ、リアルな企業運営が描かれています。

実際に似たような経験をしている職人や中小企業も多いと考えられ、池井戸潤氏の「共感しやすい」世界観をベースに描かれています。

創業から100年を超える足袋製造会社「こはぜ屋」が会社の存続をかけてランニングシューズを製造・販売していく苦悩を描いたストーリー。

歴史ある会社ながら、時代の流れから必要とされなくなった「足袋」、長年の経験から現代のスポーツマン向けのランニングシューズを生み出す挑戦をする様子が描かれています。

時代の流れに追いつくために、自身も会社も変化しなければいけない難しさと、職人としてのプライドや新しいことに挑戦する難しさなどをリアルに描いた作品で、世の中のサラリーマンや職人の共感も得ました。

下町ロケット【小説】(2010年)

画像出典:U-NEXT
※主演三上博史、WOWOドラマ版
画像出典:U-NEXT
※主演阿部寛、TBS版

下町ロケットでは、ロケットの部品を作る話、人工心臓の部品を作る話、トランスミッション開発、無人農業用ロボットの開発と会社とスタッフを守るために新分野開拓を熱心に行う様子が描かれています。

何度も訪れる経営難、自転車操業ながらなんとか持ちこたえる様子に共感する人は多く、勇気をもらえる作品でもあります。

現実には失敗事例や諦めてしまった事例が多い中、挑戦する情熱や失敗した際の苦悩も描かれており、製造業の大変さがリアルに描写されている作品です。

精密機械製造の中小企業「佃製作所」が取引先を失い、資金繰りのための融資も受けられないギリギリの状態から、ロケットを飛ばす部品づくりの道に賭けて成功を掴み取る話。

WOWOW版の「下町ロケット」は「空飛ぶクルマ」のスタッフによる第二弾のドラマで、主演は三上博史。

これ以外にも主演が阿部寛のTBS版「下町ロケット」も制作されており、どちらも「佃製作所」のがんばりと池井戸潤氏原作の下町ロケットの世界を再現しています。

民王【小説】(2010年)

民王では、親子が入れ替わってしまうストーリー、「民王 シベリアの陰謀」ではシベリアからの謎のウイルス拡散を防ぐために奔走するストーリーが描かれています。

動画配信サービスでは、配信限定の「民王番外編 秘書貝原と6人の怪しい客」も放送されました。

画像出典:U-NEXT

大人の社会にもまれたいかつい父親、女子力も高くゆるキャラが好きな息子が入れ替わってしまったというファンタジー要素があるストーリーで、未熟な息子は総理大臣の仕事に苦戦し、父親は息子の身体で偉そうにしすぎて失敗するなどコメディ要素も満載。

登場人物の多くがおバカ属性を発揮しており、基本的にどの登場人物も世間からのバッシングを受け続けるのに相応しいレベルの所業をしており、ツッコミどころが多い内容です。

作中に登場する「キッチンやみくも」に関連するヒューマンドラマも見もので、イマドキの若者の気持ちや生き方も比較的リアルに描写されています。

視聴率は7%前後と若干伸び悩みましたが、スペシャル版やスピンオフ版も制作され、一定の人気を得ているドラマです。

池井戸潤氏が描くのは「共感しやすい」世界観と願望

半沢直樹でも下町ロケットでも、ほとんどの作品で描かれているのは、一般企業や中小企業が逆境の中盛り返していく展開です。

銀行員、製造業のサラリーマンが、会社員として会社の中で生き、苦労して成功していく展開が描かれており、日本社会の今を切り取ったかのようなシーンや背景を多く用意し、その中で多くの一般人がそうなりたいであろう成功パターンや希望、願望を描くことで、苦しいながらも成功を掴み取るサクセスストーリーとして大勢に受け入れられています。

誰もがヒーローになりたい

会社経営者やスーパーヒーローが登場するわけではなく、地味で堅実で地道な努力を続け、歴史に名を残すほどの偉業ではないがその会社の中、友人、家族の中では大成功して満足できている様子がリアルに描写されます。

現代社会において、会社の中でも成功するのはもはやファンタジーのようなもので、取引先、上司、先輩などのしがらみや年功序列、波風を立てずに無難にうまく生きていこうとする人がほとんどである中で、悪い慣習や社会の中でも出会ったことがあるような悪意を持つものをギッタギタに社会的にやっつけて成功していく様子を見るのは爽快なものです。

分かりやすい背景で感情移入しやすい

作品の舞台や主人公の背景、登場人物がシンプルで、人間関係も分かりやすいのは現代の作品において重要です。スマートフォンではニュースアプリ、日々の通知、流れていくSNSのタイムライン、毎日入れ替わり消えることのない仕事や事務作業に追われる中で、社会人は難しい物語のために脳のリソースを割けなくなっています。

頭を空っぽにして見れるアニメやドラマを好むようになり、フレンドリーでコメディ色の強い作品を優先して見るようになり、さらには20分から30分程度の短い時間で濃厚な内容を楽しめる作品を好むようになっています。

池井戸潤氏の原作小説やドラマ化作品は、この分かりやすさや感情移入のしやすさがあるのも人気の理由でしょう。

世の中の巨悪への反抗や下剋上願望

実際の世の中には、犯罪ではないけれど、倫理的には問題がありグレーなゾーンなだけで他人に自慢できるようなことではない事象は多く、それを抱えながら仕事だから、仕方のないことだからと割り切って働いている人がとても多いです。

男性の多い職場ではどうしてもセクハラやパワハラが生まれやすく、男性だけの職場でもパワハラや支配的な上下関係、本音の言えない環境が生まれやすいです。

他人や部下の仕事やアイデアを奪ったり、他人の成果を自分のもののように言いふらして出世を勝ち取ったり、信頼できないリスクがあることがわかっているけれど安い見積りを出してくれる取引先を選んだり、トラブルになることがわかっているのに黙って見なかったことにしたりすることが世の中には多いです。

ドラマや小説、映画の中くらいでは正義感に任せて正しく生きて、成功しているストーリーを味わいたいという叶わなかった正義感や選べなかった過去の自分の弱さを補った気になれるような作品は気分よく見れるものです。

自分にはできなかった事、これからもできない事をやってくれる作品やその登場人物に自分を重ねて勇気をもらうのは大人にも子供にも必要なことです。

池井戸潤氏の作品が配信されているサービス

池井戸潤氏の原作小説やドラマ化作品を両方楽しめる、電子書籍も配信されている動画配信サービスを3つ紹介します。ユーネクスト(U-NEXT)は月額料金は高いですが、毎月1,200ポイントが加算され有料レンタル作品や電子書籍の購入に利用でき、非常にお得です。

Amazonプライムの特典で利用できるプライムビデオではドラマ化作品や映画を楽しめ、Amazon Kindleではコミックや原作小説を楽しめます。

FODプレミアムでも池井戸潤氏原作の作品が一部配信されているため、フジテレビ系列のドラマや映画・番組を見たい方にはおすすめです。

ユーネクスト(U-NEXT)

月額2,189円(税込)で利用でき、毎月1,200ポイント(1ポイント1円)加算され、優良店たる作品の視聴や書籍の購入に使用できます。

池井戸潤氏原作のドラマ化作品、書籍も配信されており、その他、ドラマ作品の主演を担った堺雅人や大泉洋が出演している他の作品もまとめて楽しめます。たくさんドラマや映画を見たい方にはとくにおすすめの動画配信サービスです。

Amazonプライム

月額600円(税込)利用できるAmazonプライムの特典である「プライムビデオ」と「Kindle」が便利です。電子書籍、コミック版、ドラマ化作品をまんべんなく楽しめて、Amazonでのお買い物の送料が無料になったり、お急ぎ便を利用できるなど様々な特典があります。

一部有料レンタルの作品もあるため、月額料金以外に課金が必要になる可能性があります。

FODプレミアム

月額976円(税込)で利用できるフジテレビ系列の作品が多く配信されているFODプレミアムでも池井戸潤氏原作のドラマ化作品やコミック版作品を利用できます。

全て配信されているわけではないですが、ノーサイド・ゲームなどの作品は視聴できます。

フジテレビ系列のドラマを視聴できますので、一部の池井戸潤氏原作ドラマと合わせてお楽しみいただけます。

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