夏休みに公開されるホラー映画『あのコはだぁれ?』。元NMB48の渋谷凪咲さんが主演の教師役を務めるこの映画に、生徒役のひとり阿部大樹として出演しているのが、現役高校生俳優の蒼井旬さんです。
小学生から子役として数々のCMに出演を重ね、俳優としてのキャリアはすでに9年目!そんな17歳の彼が見たホラー映画の撮影現場とちょっとした恐怖体験、若手実力派としての将来のビジョンを伺いました。
映画『あのコはだぁれ?』作品紹介
昨年、「本当に怖いホラー映画」として話題になった『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ話題作。
とある夏休み、補習授業を受ける男女5人の教室にいないはずの“あのコ”が怪奇を巻き起こす学園ホラー。臨時教師として補習クラスを担当することになった君島ほのか(渋谷凪咲)の目の前で、ある女子生徒が 突如屋上から飛び降り、不可解な死を遂げてしまう。
“いないはずの生徒”の謎に気がついたほのかと、補習を受ける生徒・三浦瞳(早瀬憩)、前川タケル(山時聡真)、阿部大樹(蒼井旬)らは、“あのコ”にまつわるある衝撃の事実にたどり着く……。
彼らを待ち受ける、予想もつかない恐怖とは……? 2024年7月19日(金)全国一斉ロードショー。
※映画『あのコはだぁれ?』公式サイトより引用
本当はホラーは苦手。でも怖がりだからこそ、その気持ちが役に活かせる
―いよいよ夏休みにぴったりのホラー映画『あのコはだぁれ?』が公開されますね。暑い夏にゾクゾクできそうで楽しみです!まずは蒼井さんの役どころを教えていただけますか。
蒼井旬さん(以下、蒼井):君島先生(渋谷凪咲さん)のもと、夏休みの補習授業に集められた65人の生徒のうちの1人が僕です。大樹(蒼井さん)は、蓮人(荒木飛羽さん)と一緒になってふざける男子の役。一人ずつ、怖いエピソードを味わっていくんです。
―ホラー映画に出ることになったときのお気持ちは?
蒼井:僕は結構怖がりで、出演が決まったときも、ホラー映画は怖いだろうな…と戦々恐々。でも怖がりだからこそ、その気持ちは役に活かせるなと思いました。
実は、ホラー映画の出演は2回目なんです。2017年に映画『ホーンテッドテンプル~顔のない男の記録』に出演したときは、神社の壊れた床から突き出す“手”だけの役でした(笑)。
―手の役(笑)!今回の映画ではメインキャストですから、かなり出番が増えましたね。そういえば、蒼井さんはオーディションで選ばれたと伺いました。
蒼井:清水崇監督は、オーディションのときから演技指導をしっかりしてくださる監督でした。応募者2人ずつの対面でのオーディションだったのですが、30分話して10分でお芝居という感じで、じっくりと僕の人間性を見て選んでくれたと思います。
同じ台本で2~3回、違う演技をするように言われたのですが、監督に「今度はこうやって演じてみて」と言われたオーダーに、変化をつけてきちんと適応できていたことを評価していただけたようです。
とにかく楽しかった撮影現場。ちょっとした恐怖体験も味わった
―同世代の役者さんとの撮影は楽しそうですが、先生役の渋谷凪咲さんはじめ、キャストの皆さんとの現場はいかがでしたか。
蒼井:渋谷さんはこの映画で出ずっぱりの上に、その他のお仕事も忙しいのに、いつも笑顔なんです。疲れた顔ひとつ見せずに、共演者の僕たちにもずっとにこにこと接してくれて、気配りがすごい方だと思いました。人間的にも尊敬できる方です。
生徒役の山時聡真(さんときそうま)くん、荒木飛羽(あらきとわ)くんは少し年上なのですが、年下の僕にも積極的に話しかけてくれて。早瀬憩(はやせいこい)ちゃんは撮影当時16歳で同い年だったので、高校の勉強がヤバイねっていう話で盛り上がりましたし…。他の共演者の皆さんとも仲良く過ごせて、本当の学校生活みたいで、楽しい現場でした。
―撮影現場では、監督からどのように演技をアドバイスされたのでしょうか。
蒼井:監督は日常の会話も丁寧な指示をくださるので、いつも通り、等身大の高校生の自分で演じればいいのだと、不安がなくなりました。
監督は本当に陽気な方で、撮影でOKを出す際にも「その表情、可愛さを狙ってない?(笑)」なんてツッコミやコメントを挟んで士気を上げてくれるなど、ずっと笑いが絶えなかったです。
撮影の後の打ち上げで、監督に僕の演技を「モニター越しに見ていても不安がなかったし、安心して見ていられたよ」と言っていただけて、僕の目指している俳優像に一歩近づけた気がして、すごくうれしかったです。
―ちなみにホラー映画というと、撮影中に怪奇現象が起こる場合もあると思うんですが、蒼井さんは撮影中に怖い経験はしなかったですか。
蒼井:撮影現場ではなかったのですが、自宅でちょっとした恐怖体験がありました(笑)。
呪いの歌が怪奇を巻き起こすストーリーで、男子3人で呪いの歌の録音をする日があったんです。ただ音程が結構難しいので、収録前夜に自宅のお風呂でも練習していたんですが、朝起きたら母に「ちょっと大丈夫なの?」と言われて。
「何が?」と聞いたら「昨日、あなた私の部屋に入ってきて、歌を1小節歌って『これで大丈夫かな』って言って部屋に戻ったでしょう。覚えてないの?」と言われ、ぞっとしました(笑)。全然覚えていなかったです(笑)。
―それは怖い!(笑)
蒼井:母も鼻歌の一件以来、お清めの塩をネットで注文していました(笑)。
―怖がりな蒼井さん、この映画を映画館で見ることができるんでしょうか(笑)。
蒼井:いつもなら、ホラー映画は映画館では絶対観られません(笑)。『あのコはだぁれ?』も、本読みの時から怖かったのに、スクリーンで観るとなるとさらに怖いだろうなと思うのですが…、覚悟して観ます(笑)。
高校の友達がSNSでこの映画の情報をよく見るようで、「一緒に観に行こうぜ!」って言ってくれているので、友達とも観に行くかもしれません。幅広い年齢の方、ホラーが好きな方も、そうでない方も楽しんでいただける映画になっていると思いますので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。
低学年から始めた芸能活動。中学時代に出演した映画で将来が決まった
―蒼井さんはつい先日17歳になったばかりなのに、出演作がとても多いですよね。聞けば子役からキャリアを重ねてこられたのだとか。
蒼井: 小学校の担任の先生に「旬くんは音読が上手ですね」と褒められたのをきっかけに、母が子役をやらせてみようと思ったようで、その流れで低学年から子役事務所に入ることになりました。
僕自身、幼稚園のお遊戯会で戦隊ものの舞台をやったときに「どうしてもレッドがいい」とごねたほど、目立つことは大好きだったので、お仕事は結構楽しくて。現場では子役でもひとりの大人として扱ってもらえるので、「旬くん、入られます!」なんて言われるたび、気分も良くなっていきました(笑)。そうやっていろいろな仕事を重ねるうちに、だんだん母の意思ではなく、自分が役者をやりたいと思うようになっていきました。
―思い出に残っている作品はありますか。
蒼井:2023年に公開された映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』(足立紳監督)です。オーディションで数多くの応募者の中から選んでもらった作品でした。
同年代の少年7人の青春映画なのですが、自分と同じ年代で役者を目指している人との共演はすごく刺激でしたし、同年代の子とたくさんお芝居をしていく中で、僕もこのままみんなと一緒に役者の世界で生きていきたいと強く思うようになりました。
東京国際映画祭のレッドカーペットに立つこともできて、芸能活動ができる高校を受験することも決意して…。この映画の出演はまさに、自分にとってのターニングポイントでした。
―蒼井さん流、オーディションを勝ち抜く方法とは。
蒼井:必勝法はないです、多分勝率1~2割くらいだと思います(笑)。
でも、受かる人はほんの一握りだし、身長や周りとのバランス…努力ではどうにもならない理由で落ちることもあるので、結果がダメでもクヨクヨしないようにしようとは思っています。
なにより自分がいいお芝居ができていれば、次また別の作品できっと呼んでもらえる。そういう気持ちで、どんなときも自分の最大限の力を発揮するように意識しています。
―素敵な考え方です!
蒼井: “役者・蒼井旬”のときは、メンタルが強くなるというか、オーディションのときも、「この中では俺が一番」というテンションでやっている気がします(笑)。
神経質な部分もあるのですが、演技に関しては「なんとかなる」と楽観的。おそらく芸歴が長いから度胸があるのかもしれなくて、それは自分の武器なんだろうなと思っています。
何があっても挫折しないくらいの胆力を、今のうちに身につけたいです。
―蒼井さんは、映画やドラマ、MV…。いろいろなジャンルのお仕事をこなされていますよね。
蒼井:僕は映画が一番好きというか、チーム一丸となって公開まで向かっていく感じがとても好きです。ドラマは今のところ、1話だけのゲスト出演が多いので、連続ドラマのレギュラー出演をすることができたら、また意識も変わるかな、と思っております。
でも、ほぼ1日で終わるMVも楽しいです。一期一会の出会いがとても貴重で、子役時代にお世話になった方と再会できることもある…。撮影時間が短いからこその楽しさがあるので、結局どのお仕事も好きですね(笑)。
とある現場で、ヘアメイクさんに「どこかで会ったことある気がするなと思って、経歴を見たらあのときの子役の子じゃん!まだやってたんだね」なんて言われて嬉しかったことも。子役時代から積み上げてきたものを実感できて、「やってきてよかったな」と思える瞬間です。
生意気だった過去を反省しつつ、将来はどんな役もこなせる実力派俳優に
―蒼井さんにとって、俳優のやりがいとは。
蒼井:普通だったら経験できないことを、映画の中で経験できることですね。映画の中ではその人の人生の一番面白いところを切り抜くと思うのですが、僕はその役の一番面白いところを演じられる、体験できると考えると、俳優って本当に素晴らしい職業だなと思います。
映画って、演じる側も、見る側も、映画でしか体験できない感動があって。そういう感覚が味わえるのは、他の職業にはない部分ではないかなと思います。
―なるほど。演技に対しても、何かこだわりがあったりしますか。
蒼井:演技をするときは、自分からアクションを起こさないようにしています。
泣くシーンがあったとして、自分から“泣こう”とするのではなく、相手の演技や、そこに込められた思い、周囲の環境からいろいろなものを感じ取ったり受け止めたりして、その結果泣いたり笑ったり怒ったりする。いつも受動的であることを心がけていますね。
あとは挨拶をきちんとすること(笑)!
子役時代は本当に生意気だったので、誰かにひどいことをしていないかと思うと怖くて(笑)。昔の僕が、誰かに迷惑かけたかもしれないことがあったとしたら、今の自分でその過去をカバーしたいと思って行動しています。
―将来、どんな俳優になりたいですか。
蒼井:僕、安藤サクラさんがすごく好きなんです。現場にいるだけで安心できる、作品の信頼感が増す役者さんだなと思っていて、僕もみんなから安心して見てもらえるような俳優になりたいなと思っています。
3番手から5番手くらいの役をコンスタントにこなしつつ、主役もできるような…。どの役でも使ってもらえるような役者になりたいです。
今まではシリアスな役を演じることが多かったので、コメディタッチの作品もやってみたいですし、将来的には主役としても脇役としてでも、日本アカデミー賞などの賞に名前を残せるような俳優になれたら嬉しいです。
―成長した蒼井さんの活躍を見ていて、子役時代を知っているお母さまも感慨深いでしょうね。
蒼井:母は子役時代から僕をずっと見てきているので、「写真映りが良くなったね」「笑顔がうまくなったね」とか、「昔と比べて態度がしっかりしてきたね」なんて褒めてくれることも多くなりました。二人三脚でやってきたので、役者として頑張って親孝行したいですね。
蒼井旬(あおい しゅん)プロフィール
2007年5月30日生まれ、神奈川県出身。低学年からCMや映画・ドラマなどに出演を重ねる。『山里亮太の不毛な議論』(2017~20年・TBSラジオ) の5 代目子ども師匠を務める。ドラマ『季節のない街』(Disney+)、『半径5メートル』(NHK)、『有村架純の撮休/ふた』(WOWOW)、大河ドラマ『どうする家康』(2023年・NHK)や、映画『流浪の月』(李相日監督)、『孤狼の血LEVEL2』(白石和彌監督)、『雑魚どもよ、大志を抱け!』、『においが眠るまで』(2024年)、おいしくるメロンパンMV『空腹な動物のための』、ねぐせ。MV『花束が似合う君へ』など数々の作品に出演。7月19日公開映画『あのコはだぁれ?』(清水崇監督)に出演中。特技はクラシックバレエ(4歳~15歳)、バレーボール、趣味はギター、読書、散歩。
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取材・文:小澤彩