海宝直人、念願の映画『ウィキッド ふたりの魔女』で日本語吹替版・フィエロ役に。まっすぐに語る“ウィキッド愛”

インタビュー
インタビューニュース

ミュージカルの名作がついに映画化されました。映画『ウィキッド ふたりの魔女』は2025年3月7日に公開され、期待が高まっています。

今回は日本語吹替版で、ウィンキー国の王子・フィエロ役を担当した海宝直人さんにウィキッドの魅力を語っていただきました。

フィエロ(ジョナサン・ベイリー)はエルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)が通うシズ大学に転入し、学校中の生徒を虜にしていく王子です。

映画『ウィキッド ふたりの魔女』作品紹介

魔法と幻想の国オズにある〈シズ大学〉で出会ったふたり ―誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、だれよりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダは、大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。

ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。

映画『ウィキッド ふたりの魔女』公式サイトより引用

ウィキッド ふたりの魔女
「人は邪悪に生まれるの?それとも邪悪になっていくの?」というささやかな問いから始まる。魔法と幻想の国・オズにあるシズ大学の学生として出会ったエルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・...

●公式X  @wickedmovieJP

「神がかり的な映画化だと思います」ミュージカルの傑作、ついに映画化

ーウィキッドの大ファンを公言されている海宝さんが、ウィンキー国の王子・フィエロ役で吹替を担当される、その思いを教えてください。

海宝直人さん(以下、海宝):2004年のトニー賞の時にミュージカル『ウィキッド』に圧倒されて、とても感動しました。そこから劇団四季が日本で上演を始めて、そこで初めて実際に舞台を見ました。

一幕が終わってからしばらく呼吸を忘れて立てなかったという経験が初めてで、放心状態になるほど衝撃的な作品でした。ニューヨークやロンドンでも見るくらい本当に好きな作品なんです。

「ウィキッド映画化するらしい」みたいな噂話を聞くたびに、「映画版も見たいな」って思っていたので、今回それが叶いました。

舞台へのリスペクトもありながら、それでいてオーケストレーション※も凄まじい。実際に演じながら歌っている臨場感のある生歌唱とお芝居と、本当に神がかり的な映画化だと思います。

※オーケストレーション:オーケストラのために楽曲を編曲することやその編曲法。管弦楽法とも言う。

ー世界中から期待されている映画化ですね。フィエロ役が決まった経緯について教えてください。

海宝:今回はオーディションでした。アフレコのような形で声を当てて撮ったものを送って合否を判断していただく形式だったのですが、やはり僕自身の思い出も詰まっている分、気合も入っていました。

結果が来るまではじれったい時間で「ダメだったのかな」という気持ちもありましたが、受かったと聞いてすごく嬉しかったし、信じられなかったです。

ーオーディションに受かり、日本語版吹替キャストが発表された時のファンの反応はどうでしたか。

海宝:喜んでくださっているみたいでよかったです。一方で、皆さんの声を見れば見るほどプレッシャーも感じました。

自分の体でフィエロを演じるんだとしたら、自分自身の解釈と自分の思いを持って演じれば、“自分なりのフィエロ”が出せますが、今回はジョナサン・ベイリーさんの演じたフィエロに対して声を当てるという作業でした。

彼が演じたものを自分の中に受け入れて、それをちゃんと声で伝えられるのかという不安はありました。

ですが、映画を作ってくださるエンジニアさんや監督さんがベストテイクを使ってくださっていると思うので、どのテイクが実際に使われたのか、僕自身見てみないと分からないからワクワク、ドキドキもしています。

ーなるほど。確かに俳優と声優とでは役作りの方法もまた変わるのではと思います。

海宝:もちろん練習しましたし、僕の中で色々なイマジネーションを膨らませていました。

今回はお芝居と歌、それぞれの監督さんが統括して“全体でこういうテイストにしたい”とか、“こう表現したい”というものを明確に持っていらっしゃったので、そことすり合わせながら進めていきました。

自分自身で役作りをガッチリ固めてそれを披露するというよりも、日本語版のクリエイターのみなさんと共同作業で作っていったので、大変でしたが普段とは違う部分もあり面白かったです。

映像と音楽、エンタメ性と社会問題。『ウィキッド』の魅力の真髄を語る

ー原作がミュージカル作品ということもあり、本格的な歌も大きな見どころです。いちおしのシーンどこですか。

海宝:いや、もう全部です(笑)。でも「これは映像の力だな」って特に胸を打たれたのはスターダストダンスホールでのシーンでした。

黒い帽子をきっかけに、とある事件が起きますが、その場で対応して踊るエルファバをみんなが笑っているところにグリンダが一緒に踊りだして…。そしてエルファバの涙がこぼれるあの瞬間。あれはもう本当に僕も涙が出てきました。

舞台でもその空気感は伝わってきますが、ステージと客席ではどうしても距離があるので、流れ出る涙のアップは映画ならではですし、胸が打たれます。そのシーンで流れる音楽や2人のお芝居の空気感、どれをとってもすごく秀逸だと思います。

ー映像美もポイントですね。この映画はアカデミー賞で10部門ノミネートされたことでも注目を集めています。

海宝:すごいことだなと思います。ウィキッドの持つエンターテイメント性は抜群ですし、感動できるところも多いです。音楽や劇中歌も本当に素晴らしい。

エンタメとしての完成度の高さはもちろんですが、その裏側に横たわっている社会的なメッセージがこの『ウィキッド』をさらに素晴らしい作品にしているなと思うんです。

エンタメ性と社会的な問題提起のメッセージの両立ってやはり難しいし、だからこそのアカデミー賞🄬ノミネートだと思います。

この2つがアンバランスだと、押しつけがましい説教くさい作品になるかもしれないし、中身のないただのエンタメ作品になるかもしれません。でもそこが重厚に両立しているのが『ウィキッド』という作品の魅力だと思います。

ー確かにそうですね。随所で感じられる社会へのメッセージもこの作品の柱であり、見どころです。

海宝:この作品のベースには人種問題や差別問題などの社会が抱える問題を取り込んで作られた作品でもあるので、すごく普遍的なテーマだというところにも魅力を感じています。

ーエルファバ役のシンシアさん、グリンダ役のアリアナさん、さらにはジョン・M・チュウ監督の緊急来日もあり、公開に向けて盛り上がりを見せていますね。

海宝:日本での公開は、世界中での公開に比べるとだいぶ後です。そういう意味では、頑張って公開を待ち続けるみなさんへのスペシャルなサプライズだと思いました。

ー舞台とはまた違った、映像ならではのビッグスケールな世界観もポイントですが、特に印象深い曲やシーンはありますか。

海宝:たくさんあります。さっき言ったダンスホールでのシーンもそうですが、『ウィキッド』の代表曲「ディファイング・グラヴィティ」の歌唱シーンも映像でしか表現できない魅力がありました。もちろん舞台も舞台で素晴らしい演出が楽しめますが、映像ならではの浮遊感やエネルギーには圧倒されました。

僕も映画の中で「ダンシング・スルー・ライフ」という曲を歌っていますが、舞台版よりも話したり語ったりするから、そういうところで感じられる繊細さも魅力です。

他にも、「ザ・ウィザード・アンド・アイ」という曲もすごく好きです。崖に向かってワーッと走って歌い上げる、あのシーンのダイナミックさも素晴らしいんです!

ーミュージカル作品として有名な『ウィキッド』ですが、映画や映像としても新鮮さを感じながら楽しめそうだと思います!

海宝:そうですね。冒頭のシーンから「これはやられたな」って思いました。

グリンダのアナウンスの後に翼を持った猿達が窓を破って飛び出して、その下ではあるキャラクターが馬を駆ける姿が…。

オズの魔法使いに登場する4人がイエローブリックロードを歩いていて、そこからエメラルドシティのお城の全景が見えてくるあのシーン。これはやられたなと感じました。

「“文字”にハマっています」出演作から見つけた新たなリフレッシュ方法

ーこの映画が公開される3月には海宝さん主演の舞台も上演が始まります。お忙しい中での、リフレッシュ方法はなんですか。

海宝:僕は大きいお風呂が好きなので、スーパー銭湯とかに行っておいしいものを食べることがリフレッシュになります。結構長い時間入るんです、2、3時間とか。

寝湯に入ったりもしていたらずーっと入っていられるので、これが一番のリフレッシュです(笑)。

ーファンもまだ知らないような、最近ハマっていることはありますか。

海宝:昨年『ファンレター』というミュージカル作品に出演したことをきっかけに、いろいろと手紙を書く機会があったので文字を意識するようになりました。だから今、文字をきれいに書くことへの情熱が盛り上がっていて、“文字”にハマっています(笑)。

ーそうなんですね。改めて考えると文字って難しいですよね。

海宝:ひらがながやっぱり難しい。自分の名前をきれいに書くのも、バランスが難しいと感じました。「海」のさんずいとか…。だから自分の名前をきれいに書きたいと思っていることを含めて文字にハマっていたりします。

文字を書いている間は無心になれるので、リフレッシュにもなると思います。

ー少しプライベートな質問にもお付き合いいただきありがとうございます。最後に、作品への意気込みをお願いします。

海宝:日本語吹替版に関しても本当に素晴らしいみなさんと作り上げて、歌も本当にワクワクする仕上がりになっているので、とにかくいい形になって多くの方に見ていただけたらいいなと思います。

海宝直人(かいほうなおと)プロフィール

1988年7月4日生まれ。7歳の時、劇団四季『美女と野獣』チップ役でデビュー。

その後『ライオンキング』の初代ヤングシンバ役に抜擢される。子役時代を経て、『レ・ミゼラブル』マリウス役、劇団四季『アラジン』アラジン役、『ノートルダムの鐘』カジモド役など舞台を中心に活動を続け、2018年『TRIOPERAS』ロンドン・ウエストエンド舞台デビュー。近年の出演作に『ファンレター』、『この世界の片隅に』、『アナスタシア』、『ミス・サイゴン』などがある。声優として映画『リトル・マーメイド』エリック王子役の日本語吹替キャストとしての活動や、シンガーとしてロックバンド「シアノタイプ」のヴォーカリスト、ソロシンガーとしてもメジャーデビューするなど、様々なスタイルで音楽活動を展開している。第46回菊田一夫演劇賞、第13回岩谷時子賞奨励賞受賞。

3月よりミュージカル『イリュージョニスト』、6月より『海宝直人舞台芸能活動30周年記念コンサート』が控えている。

●公式X @naotosea

写真:天倉悠喜

タイトルとURLをコピーしました