小出恵介が振り返る過去、そして渡米した理由。「NY生活は“精神と時の部屋”に入っていた時間。結局、自分には俳優の道しかなかった」

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2018年にニューヨークに渡った小出恵介さん。渡米中の2020年に日本で芸能活動を再開し、現在は日本に拠点を戻し俳優活動を行なっています。7月に公開された映画『愛のぬくもり』で濃厚なラブシーンを演じきった小出さんに、今回の作品に対する意気込み、活動休止期間のアメリカ生活と、気になる結婚生活について伺いました。

映画『愛のぬくもり』作品紹介

小説家の辺見たかし(小出恵介)と美容師の横澤サトミ(風吹ケイ)は赤の他人。

ふたりはある日、街中でぶつかって階段から転げ落ち体が入れ替わってしまう。その日からお互いになりきって、それぞれの生活を送るようになる。しかし、たかしもサトミもそれぞれに深刻な問題を抱えていた。たかしは妻の由莉奈に最近男の影があることでやきもきし、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男ができたので別れたいと言われ大慌て。なんとか事態を好転させたい2人の行く末は…。

2024年7月6日新宿K’s cinemaにて公開。その後、全国順次ロードショー。

(※映画『愛のぬくもり』公式サイトより抜粋) 

奇才・いまおかしんじ監督の演出で広がった演技の幅、俳優としての新境地

―『愛のぬくもり』を拝見しました。男女の入れ替わりを通して、いろんな愛の形を描いた映画ですが、まずはこの作品に出演を決められた理由を教えてください。

小出恵介さん(以下、小出):今回の『愛のぬくもり』の脚本と監督を務めたいまおかしんじさんは、以前主演した映画『銀平町シネマブルース』の脚本を書いていただいたご縁もあり、また、いまおか監督はミニシアター界ではとても有名な監督なので、オファーいただいたときはとても嬉しくて、ぜひ出演させていただきたいと即答しました。

今回の映画にはかなり刺激的なラブシーンもあって、今までとはひと味違った小出さんを感じました。いまおか監督の演出はいかがでしたか。

小出:とにかく監督は自由なんです、すごく!なんでもないシーンなのに「踊りながら歩いて」とか「変なポーズをして」とか、不思議な演出なんですよね…。奇才といわれるいまおか監督だけあって、脚本もぶっ飛んでいるし、演出も想像を越えてくる。それについていくのに必死でした。

また、僕にとっては全裸で挑むラブシーンはある意味チャレンジでしたが、いまおか監督ファンの方が期待しているシーンだけあって、監督やスタッフの気合はかなりのものでした。でもラブシーンは、僕よりも相手役の風吹ケイさんのほうが大変だと思っていたので、僕が緊張している場合ではないなと思って撮影に臨みました。

―この『愛のぬくもり』を、どんな方に見てもらいたいですか。

小出:まずはいまおかしんじ監督のファンの方、ミニシアターファンの方々、そして体当たりの演技をしている風吹ケイさんのファンの方に楽しんでいただきたいです。

僕も40歳になり、どんどん殻を破っていきたい、俳優としていろんな役に幅広くチャレンジしたいと思っています。この『愛のぬくもり』もさまざまな表現に挑戦できた作品になりました。そんな今の僕の姿勢を、映画の中に見ていただければ嬉しいです。

ニューヨークで過ごした時間はパワーアップのための“精神と時の部屋”

―現在も変わらず演技力に定評のある小出さんですが、2018年にニューヨークに行かれました。あのとき、どんな気持ちで渡米されたか教えていただけますか。

小出:一度自分を見つめ直したいな、と思ったんです。行くからには、アメリカで俳優としてのチャレンジもしてみたかったので、学生ビザではなく就労ビザをとって行きました。ニューヨークには旅行で何度か行ったことがあって、街の雰囲気がすごく好きだったので、この場所に身を置いてみたいと思いアメリカに渡りました。

今思うと、アメリカでの日々は、まさに『ドラゴンボール』でいうところの“精神と時の部屋”に入っていた時間でした。自分がかつていた世界から抜け出して、すべてを遮断して徹底的に自分、そして世界と向き合った時間でした。

―アメリカではどのように活動されていたのでしょう。

小出:英語に関しては、少しはできると思っていたのですが、アメリカの英語はなかなか大変でした。だからまず語学学校に入ったんです。語学学校は不思議な場所で、いろんな国、いろんな年齢、いろんな背景の人たちが集まるんですよね。ブラジル人や中国人、南米系の人などが多かったかな。

その後、演技の学校にも通い始めました。

僕はそれまで十数年間日本で俳優をしてきていたので、演技だけはできると思っていたんです。でもこれが想定外で。考えてみたら当たり前なんですが、英語がうまく喋れないとうまい演技だってできないわけです。みんなの前で、いいパフォーマンスが発揮できないもどかしさ…。英語が苦手というのはどれほどビハインドなのか、まざまざと見せつけられました。挫折というより、想定とは違うというショックの方が大きかったです。

結局、アメリカではいろいろなオーディションも受けたものの、CMでちょっとした役をいただいた以外は、あまり形にならなくて。ブロードウェイのオーディションもある程度までは進むんですが、「グリーンカードがないと出演できない」と言われてしまって、そこまででした。

―慣れない海外生活に、苦労はありましたか。

小出:もちろんありました。日本は便利だし安全です。それを捨ててまで海外に滞在し続けるのは、よっぽどのモチベーションがないと大変だなあと感じました。

3カ月、3年…。3の数字でホームシックになるというジンクスがあるようですが、僕は何度もつらくなった。いろいろ我慢して頑張って、でもときどき限界がきて、「このところずっとしんどいな、気分が上がらないな」っていう時期が唐突に来るんですよね。後から振り返るとホームシックで、「僕はここで一体何をやっているんだろう」っていう気持ちになるんです。

―それでも帰国せずにアメリカで頑張れたのは。

小出:1回日本を離れて自分を見つめ直したいと思ったのに、そんなにすぐに「やっぱり無理でした」って帰国するのはちょっと違うなと思いました。なにかしら自分の中で、“変わったな、成長できたな”っていう実感を得ないと戻れないと思っていました。

―小出さんはこうしてお話ししていても頭の回転が速いし、博識なので、俳優でなくても、別の仕事でも成功できるのではないかと思うんですが。

小出:考えたこともなくはないんです。アメリカで、俳優以外の全く違う仕事をしたこともありました。でも、“何のためにアメリカに来たのか”という原点に立ち返ると、あくまで俳優として一回り成長して、いろんなものを吸収して、それを演技という表現に還元したいんだという思いに至りました。

弱ったり、疲れたり、ふと自分を見失いかけたときに、「もうこんな挑戦やめて、普通に仕事して暮らそう」と思っても、“いやいや、自分がいた日本の芸能界に再び貢献するために僕はアメリカに来たんじゃないか”って、思い直すんですよね。

自分が渡米した意味を見失わなかった。そこだけはなぜかぶれなかったです。

華やかだった過去。未練や後悔はあるが、今も俳優としての歩みは止めない

―過去の自分を振り返ることはありますか。

小出:もちろんあります。でも、あることがきっかけで、すべてを自分で決断しなくてはいけない状況がいきなり始まったんです。人生の選択や生き方を自分で全部決めることになった。それが良かったのか悪かったのかはわからないんですけれど。

それまでもてはやされていた自分がゼロになって、本当の自分のサイズみたいなものを思い知らされました。そんな中でアメリカに渡って、周囲は芸能人とか俳優ではない等身大の自分を見てくれた。そこで人として成長したり、いろんなことに気づいたり…人間として大事なことにたくさん気づくことができました。

通った語学学校にはもちろん日本人もいましたが、演技の学校のほうが語学学校より日本人が多かったです(笑)。

学校にも学校以外にも、僕の過去を知っている人がたくさんいる。それは恥ずかしさでもありましたし、誤解を恐れずにいうと、屈辱的な気持ちにさいなまれることもありました。でも、それはすべて自分の招いたことだと受け止め、絶対自分が乗り越えなければいけないことだと思っていました。

アメリカで必死に踏ん張っているうちに、変におごらずに自分がフラットに接していけば、人って人間味をもって接してくれるんだとすごく感じました。

―いろいろな経験を重ねた小出さん。40歳になって、作品への向き合い方は昔と変わりましたか。

小出:昔は、“自分がこうありたい、こう映りたい、こう見られたい”っていう思いが結構強かった気がします。でもいまは、年齢を重ねた部分もすごく大きいと思うのですが、“自分の見せ方”を気にするのではなく、“作品の一部になりたい、作品に貢献できるようになりたい”という意識が強まりました。僕が作品の足を引っ張りたくない。それが責任感ということなのかもしれないですけれど。

あとは健康に気を使うようになりました。俳優の仕事って、セリフを覚えるにしろ、演じるにしろ、すごく頭を使うので、リフレッシュするためにもジムで体を鍛えています。心と体が健やかだと、やっぱりいいですよね(笑)。

人生の伴侶を得た今の生活。そして今後の活動への意気込み

―2023年1月にご結婚されましたが、奥様はどんな方なんでしょうか。

小出:僕より長く、十数年ニューヨークで暮らしていて、バリバリ働いている人です。その姿を見ていて、とにかくたくましいなって思って、結婚を決意しました。

―奥様はきっと、『愛のぬくもり』の過激なシーンに心がざわめいたりするかと思うんですが…(笑)。

小出:確かにそうですよね(笑)。出演を決める前に妻に一応相談はしました。最初は強がってか、「いいよ、いいよ」みたいに言ってくれたんですが、やっぱり気になるみたいで、ビジュアルが出てくると「ずいぶん攻めてるね」なんて言っていました。“この人にもこんな人間味あふれる部分があったんだ”、そういう部分も素敵だなと思いました(笑)。

―なんだかいい関係ですね(笑)。ちなみに小出さんは、オフの日はどんな風に過ごされているんですか。

小出:日本ではもっぱら仕事で、アメリカに帰ったときがオフの時間ですね。ニューヨークではドッグ・ボーディングという犬の預かりサービスをやっているので、いろんなワンちゃんを預かって触れ合ったり、妻とドライブをしたり、旅行に行ったりしています。

―今後はどのように活動されていく予定でしょうか。

小出:俳優って、自分でゼロから何かを産み出す仕事ではなく、人に呼んでいただいて初めてできる仕事なんです。誰かがどこかで見ていてくれたり、話してくれることでしか繋がっていかないと思うので、それを信じてやっていくしかないですよね。

今も舞台や映画には出演させていただいていますが、さらにより多くの映像の仕事や映画に加えて、テレビドラマにも出たいと思っています。

あとは海外作品にも挑戦したいですね。

小出 恵介(こいでけいすけ)プロフィール

1984年2月20日、東京都出身。40歳。『ごくせん』(日本テレビ系)、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)、『ROOKIES(ルーキーズ)』(TBS系)、『JIN-仁-』、映画『パッチギ!』、『シュアリー・サムデイ』、『ボクたちの交換日記』、『銀平町シネマブルース』ほか出演多数。舞台も精力的にこなし、2024年にはすでに3作品に出演。

●インスタグラム @kaykoide
●YouTube @Keisuke_Koide
小出恵介オフィシャルサイト

取材・文:小澤彩
撮影:髙橋耀太

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