【篠田諒インタビュー】「自分と役の間が薄くなっていくようにしたい」今後大注目の実力派若手俳優に迫る

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津田寛治さんの後輩として演技力に定評があり、『断捨離パラダイス』(2023)でも初主演を務めるなど活躍の幅を広げている篠田諒さん。

謙虚で物腰の柔らかい感じの篠田さんですが、お芝居に対してはかなりストイックな一面も。今後大注目の篠田さんに、役者としての想いからプライベートまでインタビューさせていただきました!

初の主演作品『断捨離パラダイス』(2023)で魅せた魅力

『断捨離パラダイス』(2023) ストーリー

ピアニストの白高律稀はある日突然、原因不明の手の震えによりキャリアを断たれてしまう。ピアノのみに人生を捧げてきた彼は、絶望から立ち直るべく、たまたまチラシで見かけたごみ屋敷専門の清掃業者「断捨離パラダイス」で働くことを決意する。破天荒な上司と、様々な事情を抱えた依頼者たち。華やかな世界から一転、律稀は想像を絶する世界を目撃していくことになるのだった。 6 篇のエピソードからなる新機軸の断捨離人情喜劇。

引用元:映画『断捨離パラダイス』オフィシャルサイト

ー初主演映画『断捨離パラダイス』(2023)を観ましたが、とても面白かったです。監督が33歳と若手で、注目されている萱野監督ですが、どのような方ですか。

萱野監督は「シュールさ」に細かい方です。それまでの作品も拝見していたのですが、細かいところにユーモアがちりばめられていて、クスッと笑えるような、そういう面白さを大切にしている方だなと感じました。

―初めて長編映画での主演でしたが、1500人の中から主演が決まったときはどのようなお気持ちだったのですか。

大変光栄で嬉しかったですし、必ず作品に応えたいという気持ちでした。僕、実は何人受けていたというのも最初は知らなくて。1500人という数字を、オーディションの前に聞いたら気負いしてしまいそうなので、あとから知ってむしろよかったかもしれないですね(笑)。

―主演に選ばれた決め手については、監督からお話はありましたか。

作品パンフレットが発表されたとき、監督のコメントを読んで、僕のストイックさが決め手だったということを知りました。

実は最終オーディションの前日に、事務所の先輩の津田寛治さんと現場が一緒で、そのときに「台本を丸々1冊覚えていくといい」とアドバイスをもらったんです。

朝方その現場の撮影が終わって、オーディションはその日の夕方だったのですが、ほとんど寝ず、津田さんのアドバイス通りに必死に台本を丸々1冊覚えてオーディションに臨みました。そのストイックさが、この作品の主人公のストイックさと重なったようです。

―初めて主演を務めるにあたってプレッシャーはありましたか。

主演をやる前より、出来上がってからの方がプレッシャーはありました。自分のせいで面白くなかったらどうしようとか。でもその不安を壊してくれたのが、監督の妥協のない撮影への想いだったと思います。

監督はこだわりが強い方で、良いシーンが撮れるまで20テイクくらい撮ることもあって。「こんなに妥協せずに作ったんだからどうなっても大丈夫」という気持ちにさせてくれました。

―作品に出てくるさまざまな ”ごみ” が本当にリアルでした。小道具だとはわかりつつ、なんだか匂いがしてきそうだなと思いました(笑)。

そうなんです。この作品は「ごみが主役」と言っても過言ではない、ごみ屋敷はアート作品としてもお楽しみいただけるかなと思います。

この日はこのごみを入れて、次の日はこのごみを入れて…というように、ごみ用の撮影スケジュールがあるくらい、制作スタッフさんがこだわって作ってくださったセットです。

もちろん衛生的には問題ないように、セットとして作られているのですが、本当にリアルですよね。

―どのような役作りで臨まれたのですか。

僕が務めさせていただいた「白高律稀」という人物は、厳格な親の元に、ピアノ以外の選択肢が与えられない環境で育った、もともと感情表現の乏しい人物なのですが、徐々に誰かと関わることで感情表現が豊かになっていくというような役です。

それで最初は、人間味を消すにはどうしたらいいかを考えて、撮影前や撮影期間の1ヶ月は食べ物を意識しました。具体的には動物性のお肉を食べないようにして、野菜や豆腐ばかりを食べて、体重も減らしましたね。

ー役を演じるにあたって監督からのアドバイスなどはあったのですか。

「よく映画やドラマで演じられている人物って、笑顔だったり笑っていたりする人が多いけど、実際の生活って意外とみんな笑っていないから、そんなに笑わなくていいです」ということを言われました。その言葉が結構、僕の中では響きました。

ー作品を観て、篠田さんって無言の中に演技を込められている方なんだなって思いました。

ありがとうございます。誰かと関わること、触れ合うことで出てくる感情を大事にしたいと思っていたので、自分から発信するというよりは、「受ける芝居」を意識していました。

ーごみ屋敷専門の清掃業者で、ごみを片づける役柄でしたが、篠田さんご自身は片づけは得意なのですか。

すごく言いずらいのですが、どちらかと言うと苦手です(笑)。洗濯物が散らばっていたり、台本が散らばっていたりして、ご飯のときに除けるくらいですね…。

―どのようなところが見どころでしょうか。

ごみがテーマの作品です。ごみって他の人から見たらただのごみかもしれないけど、その人にとっては宝物だったり、その人の人生が詰まったものかもしれない。

断捨離の末に彼らがどのように歩んでいくのか、結局自分の人生に大切なものはなにかについて、考えさせられる作品になっているので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです!

観客のあたたかさに触れることで、役者である意味を実感する

ー役者の楽しみってどういうところですか。

別府短編映画プロジェクトなど、別府ブルーバード劇場のみなさんとの関わりの中で、お客さんから「すごく面白かったよ」というお声を直接いただいたときは、「僕はこのために役者をしているのかもしれない」と思わされます。

そのくらい別府のみなさんがあたたかくて、僕が役者を続けようと思ったきっかけでもあります。東京で疲れたなと思うことがあっても、事務所のみんなで「今週頑張れば別府があるから」とお互いに励ます合言葉になるくらい、みんなの心のオアシスなんです。

・別府ブルーバード劇場:90代の岡本照館長が運営する老舗の劇場。全国から訪れるファンも多い。
・別府短編映画プロジェクト:日本屈指の映画監督がリレー方式でそれぞれのオリジナル短編映画を制作するプロジェクト。作品の舞台は別府市で、別府市民と協力し、完成尺が30分前後の作品を撮る。作品中には必ず共同温泉のシーンが入っている。完成した短編映画は、別府ブルーバード劇場で上映後、全国のシアターで上映する。

ー別府のみなさんは具体的にはどのような感じなのですか。

みなさんあたたかく迎えてくれて「おかえり!」と言ってくださったり、昨年は、僕なんかまだまだ無名の役者なのに、1日劇場をジャックして特集上映も組んでくださったりと、大きな愛情を感じています。

僕がというより、その前に津田さんがみなさんに愛されているので、後輩として関わらせていただいて本当にありがたいことだなと思います。

ー篠田さんの謙虚で物腰の柔らかい感じ、好かれる理由が分かる気がします。『惡党と物書き』(2022)ですが、こちらは篠田さんが出演&助監督も務められたとか。

『惡党と物書き』(2022)は、別府短編映画プロジェクトの第一弾として制作された短編作品なのですが、制作側を経験させていただくことによってどうやったら現場がスムーズに進むのだろうとか、こうやって撮るとこういう画になるんだとか、制作側の意図を考えることができ勉強になりました。

―今後監督というお仕事にもご興味が湧いたのでは。

いつか自分でも撮れたら素敵だろうなとは思うのですが、監督さんってすごいセンスもありますし、情報量とか勉強量も遥かに多い。本当にすごい。ちょっと自分には監督できるセンスがないなと思うので…(笑)。今のところは役者一本でやっていくのかなと思います。

日本映画の作風に強く惹かれ、自然と俳優の道へ

ー事務所の先輩の津田寛治さんと一緒に活動されることが多いと思うのですが、津田さんってどのような方なのですか。

本当に優しくて、僕にとってお父さんのような存在です。現場でのスタッフさんに対する物腰の柔らかさや、現場に臨んでいるときの姿勢は、毎回勉強させていただいています。僕も早く追いつきたいなと思っています。

ー俳優の道を志したきっかけは何だったのでしょうか。

元々父が映像関係の仕事をしていたので、幼い頃から映画が身近な存在でした。高校生のときに、レンタルビデオショップでビデオを借りるようになって、日本映画を見たときに衝撃を受けたのがきっかけです。

それまではエンタメ色の強い洋画が好きで主に観ていたのですが、日本映画のどこか余白のある、答えがあるのかないのかわからないような作風に惹かれて、映画の世界に入り込んでいました。特に西川美和監督の『ゆれる』(2006)が好きです。

ー特に影響を受けた俳優さんはいるのですか。

そのときは週一くらいレンタルビデオショップに通って、1回に5本〜10本のビデオを借りては家でずっと映画を観ていたんですが、毎回そのうちの 3 本くらいは高良健吾さんが出演しているものだったんです。それで、こんなに沢山の映画に出演できる高良健吾さんってすごいなと思って、1つの目標になりました。

ー今後やってみたい役はありますか。

どの役でもいただけることが嬉しいですし、作品のために応えたいと思っていますので、どんな役でもやらせていただきたいですね。

ただ、主演をやらせていただいてから、やはり現場にいられる時間が長い分、沢山の共演者の方、スタッフの方とコミュニケーションを多く取れるっていうのは、メリットなのかなと感じました。

ー役作りの際に工夫していることも教えてください。

あまり型はなくて、常に新しいアプローチはないかなと探しています。例えば暗い役、毒っけのある役の場合は、睡眠時間を8時間から3時間にしてみたり、1日に飲むコーヒーを 3杯から 5,6杯にしてみたり。自分と役の間が薄くなっていくようにしたいと常に考えていますね。

ーいつも役について考えているストイックな篠田さんだと思うのですが、プライベートはどのような感じなのですか。

僕は本当に出不精なんですが、以前お仕事で乗馬をしたことがあって、極めたいと思っています。レッスンに通っていてもう50回くらいは馬に乗っていますね。ストレスが溜まっているなっていうとき、馬に乗ると、そのことだけに集中しているので、考えることをシャットダウンできたり、自分の成長を感じられたりするのが楽しいですね。

ー今後の役者としての目標を教えてください!

今年はとにかくチャンスをつかんで、飛躍したいです。一つでも多くの作品、役に出会いたい。「篠田諒じゃなきゃ」「篠田諒にこの役をやってほしい」って言われるような役者になりたいです。乗馬シーンもどこかでできたら嬉しいですね。

ー今後も飛躍する篠田さんの姿、とても楽しみにしています。ありがとうございました!

篠田諒(しのだ りょう)プロフィール

1996年9月1日生まれ、神奈川県出身。dTV『眠れる真珠』(15/廣木隆一監督)でデビュー。主演短編映画『追憶ダンス』(16/土屋哲彦監督)にて【FOX ムービー短編映画祭 2016】審査員特別俳優賞を受賞。主な出演作品は、『人狼ゲーム プリズンブレイク』(16/綾部真弥監督)、『サマーフィルムにのって』(21/松本壮史監督)、『散歩時間~その日を待ちながら~』(22/戸田彬弘監督)、『映画刀剣乱舞―黎明―』(23/那雲哉治監督)、『GOLDFISH』(23/藤沼伸一監督)、『GONZA』(23/千村利光監督)、『断捨離パラダイス』(23/萱野孝幸監督)、NHK『アシガール』『シューカツ屋』、WOWOW『ながたんと青と』など。

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