竹内力「70歳まで作品を作り続けたいね」映画『欲望の街』で描く“現代社会の闇と一筋の正義”

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ビデオ映画シリーズ『ミナミの帝王』で人気を集めた竹内力さん。
1月に還暦を迎えてもモノづくりへの情熱は冷めることなく、現在は映像製作会社の会長業、プロデューサー兼主演俳優としてオリジナル作品『欲望の街』シリーズを世に送り続けています。

二枚目俳優として芸能界デビューしてからはや40年弱。“正義”を追求し、人を楽しませる作品づくりにこだわる竹内さんに、シリーズ最新作にかける思いを伺いました。

『欲望の街』作品紹介

ビデオ市場を席巻し、関西でのTV放送時には常に高視聴率を叩き出した大ヒットシリーズ『難波金融伝 ミナミの帝王』から15年。多くのファンの声に応えて始動した新たなオリジナルシリーズの『欲望の街』は、『ミナミの帝王』の銀次郎を彷彿とさせる事件師の鮫島竜士が、ミナミを舞台に巨大な悪を暴力ではなく法律の力で倒していく痛快なストーリー。現在1~4話まで配信されており、8月9日から最新作の第5話がU-NEXTで独占公開される。

『欲望の街』公式サイト

事件師の鮫島が巨悪に立ち向かう『欲望の街』。隠された意図とは

―竹内さん、今年還暦を迎えられたとのこと、おめでとうございます。カッコよさは昔のままですし、映画のプロデュースをされて役者もされてお忙しい日々と聞いています。本当にパワフルですね。

竹内力さん(以下、竹内):いやあ、そんなことないよ。70歳くらいで亡くなる身近な人たちを見てきているだけに、俺もそれくらいに寿命が来るんじゃないかと思ってる。

まあ、俺の親父もおふくろも、ふたりとも83歳で亡くなったから、そこまで生きられるかもしれないけれど。とにかく健康に気をつけないと、と思っているところではあるね。

―竹内さんといえば『ミナミの帝王』の萬田銀次郎役のイメージが強いのですが、現在精力的に制作されているシリーズ『欲望の街』という作品はどんなお話なんですか。

竹内:『欲望の街』は、9年間の服役を終えてミナミに舞い戻ってきた事件師の鮫島竜士という男が、巨悪に立ち向かう話。悪い奴を懲らしめるという、勧善懲悪のオリジナルストーリー。

かつて時代劇が描いていたような、単純な見終わった後にスカッとする話を俺は新たに作りたかった。現在1~4話まで公開していて、8月に公開される最新作もU-NEXTで独占配信が決まってる。

今ってさ、どうしても強いものに巻かれてしまう時代でしょ。金持ちはずっと金持ち、権力者はずっと権力者だし、税金は上がって貧乏人はどんどん貧乏になってしまう。自分の子どもとかがかわいそうだなと思う。

だから作品を通して、社会に訴えかけたいと思って、毎回毎回、時代を反映させるネタを扱っていこうと思ってる。権力者が世の中のすべてを掌握していて、一般国民は浮かばれないことが多い時代。絶対におかしいと思うんだよね。だから俺としては、真面目にやっている人が馬鹿をみることも多いこんな時代に、一石を投じたい気持ちで作った話でもあるんだ。

―そんな熱い思いがベースにあるとは。

竹内:『欲望の街』の1~3話では、親友殺しの濡れ衣を着せられて9年間服役した鮫島の因縁について描いている。冤罪を作った闇のフィクサーがいて、そいつに復讐していくという話で、これは『欲望の街』の序章であり、根っこだね。4話からは1話完結のストーリーになっているから、どこから見ても楽しめる。

8月に公開する第5話は、道頓堀川沿いに集まる家出少年、少女たちの話。その子供たちの救世主と名乗る男により嵌められて深みにはまっていく妹を助けるために姉が騙されて窮地に陥るという話。

見た人が泣けるストーリーになってる。俺ね、昔、三浦友和さん・山口百恵さんのサスペンスドラマ“赤いシリーズ”で育っているから、感動的なストーリーが好きなんだよな。

―社会派のストーリーでありながら感動もあり。いろいろ複雑な時代に、分かりやすさって大事かもしれませんね。

竹内:そうだね。ただ、やっぱり単に人助けをする良い人の話にはしたくないので、ちゃんとビジネス的にも儲けさせていただきます、ってスパイスは入れてる。

クリーンすぎても共感できないし、警察が介入できないところに介入するということは、いつ殺されるかもわからないリスクもあるわけで。巨悪と戦うということはきれいごとでは済まない。そういうことだと思うんだよ。

『ミナミの帝王』を見てくれてた人には楽しんで貰える作品になってると思う。『ミナミの帝王』が好きで、まだ『欲望の街』を知らない人もいるようだから、そんな人には懐かしく楽しんでもらいたい。特に5話、6話はさらに面白いと思うから、絶対に見てほしいです。

社会のひずみを地道に取材して映像化。ものづくりへの飽くなき探究心

―春と秋に2本ずつ、年間4本制作しているそうですが、結構なハイペースですよね。どうやってネタを見つけるんですか。

竹内:毎回いろいろな人に声をかけて、ドラマになりそうなネタを取材していくんです。この人の話と、あの人の話をくっつけたら面白くなるな、なんて感じで、脚本家と相談して。

脚本のネタ集めから台本の完成までに半年はかかるし、撮影と編集をして作品が出来上がるのは1年後。もともとは自分たちの取材から話ができているのに、台本を書いている間に事件として表面化し、ニュースで報道されたというケースもある。

作品がようやく完成したら、「この話は、このニュースの真似なんじゃないか」って言われることもある。でも「違うよ、スタート段階ではこっちが先だったんだよ」っていうこともたくさんあります。ニュースが出た後にようやく俺たちの作品がリリースされるから、なんとなくニュースをヒントにしたように感じられてしまうのが悔しいところ(笑)。

―まさにリアル。社会問題や事件がベースとなって、現代を映しだす作品になっているんですね。

竹内:今の時代は、本当に不自由すぎるよね。便利で暮らしやすくなったんだけど、その分不自由なことがすごく増えすぎて、みんな委縮して生きている感じがしない?それが最近のドラマにも感じるんだよ。

SNSも、いいほうに使われればいいけれど、大人のいじめに繋がっちゃう場合もあるじゃない。俺はいじめをしている奴を許せなくてさ。それが鮫島のやる“悪人の成敗”に繋がっている。

―『欲望の街』では役者としてだけでなく、協賛以外は全額出資し、プロデューサーもされていますね。台本からロケ地探し、撮影に最後まで立ち会うとも聞きました。

竹内:プロデューサーという立場も陣頭指揮を執る立場であり、やりがいがある。俺、人と同じことをやるのが嫌なんですよ。人生1回しかないでしょ。刺激を欲しているというか、出資という投資もやっていきたい。

役者でいながら、20年以上も制作会社を経営してるから、企画やロケ地探しもするし、「欲望の街」では製作費も自分で出す。俺はリスクがあっても、華やかさから一歩引いた裏方で挑戦したい。

多分、宮大工だった親父の血を受け継いでいるから、モノづくりが好きなんだと思う。誰の真似でもない、オリジナリティのあるものを作っていきたいんだ。思うと、作品づくりって、中学の技術の授業で、誰にも真似できないような木工作品を仕上げたときの感覚に似ているかもしれない。

台本を作って映像化するって、パズルみたいな感じなんだよ。それぞれのシーンを頭から撮影していくわけではなく、天候、ロケ場所の問題、役者のスケジュール…そういったいろいろな要素をパズルのように組み合わせながら、1シーン1シーン積み上げていくんだ。

撮影が終わったら編集作業。「この役者のこの目の芝居は削っちゃダメだ」なんて監督と意見を交わしながら編集し、音楽をどこに入れるか考える。できた作品をいろいろな人に見てもらって、面白いと思ってもらえるかどうか。これは観てくれる人のジャッジにゆだねることになるわけだけど、その勝負がまた楽しいんだよね。

幼いころから心の中にある“正義”が、自分を動かす原動力に

―竹内さんは本当にかっこよくて、二枚目俳優として活躍していたのに、ビデオ映画へと主戦場を移し、チンピラやヤクザなど、反社会的な役が増えていきますよね。

竹内:俳優になった当時はトレンディドラマ全盛期で、いただく役も真面目で爽やかな役が多かったんだけど、実は役者を辞めたいと思ってた。ちょっと不良っぽい自分の素顔を隠して、取材でも猫を被ったことを言わなくちゃいけない。そのギャップがストレスだったんだよ。

だから、素の自分で演じられる役を求めていったんだ。チンピラやヤクザの役は、やりやすいというか、演じていてアドリブも出たし、気が入りやすかったんだよね。

―素の自分…。昔からやんちゃだったんですか?

竹内:高校時代はリーゼント決めてバイクに乗って(笑)。単車での通学は禁止だったから草むらに隠して通学するんだけど、たまにバレて怒られて。でも、ものを盗むとか、人をいじめるとかはしなかったな。むしろ、いじめっ子を成敗するタイプだった。

これは芸能界に入っても変わらなかったね。人に対して横暴な態度をとる俳優とかスタッフとか、最初の1週間は我慢して見ているんだけど、2週間、3週間そんな状況が続くと、我慢できなくなってブチ切れて飛び蹴り(笑)。

だから若い頃はいろいろと問題になったけど、俺は俺の中の正義とか道徳心を貫いていた感じだった。俺はそういうの、我慢ならなかったんだよね。

―それは衝撃的(笑)。そういえば、『欲望の街』 “正義”に対する竹内さんの思いが映し出されているような気がします。

竹内:幼少期も、幼馴染が近所の子どもにいじめられて泣いて帰ってきたときに、かたき討ちをしようとプラスチックのバットを持って飛び出していったことがあったんだ。親父が俺を必死に止めにかかったよ。そういうのって性格だよね、もう(笑)。

昔から、いろいろ考えないで、勢いでいっちゃうタイプ。そんな性格だから、大怪我もしてきたんだ。

―大怪我?

竹内:若気の至りで、勢いでアクションをやって首の骨を折ってしまったんだけど、複雑骨折により骨が神経を圧迫して伸びきって切れる寸前だったんだよね。神経が切れてたら死んでたって医者に言われたよ。

寝たきりから車椅子になり、リハビリしてだんだん歩けるようになった。「もうアクションしたらダメですよ」と言われているのに、またアクションしちゃって、また手術して…。おかげで、骨を全部入れ替えてる。今も医者からアクションNGが出ているから、『欲望の街』ではアクションは封印してるんだ。

―確かに、激しいアクションはなかった気がしますが、終始ハラハラして楽しめました。5作目もどんな作品なのか、今からとても待ち遠しいです。最後に、竹内さんの今後の活動も教えていただけますか。

竹内:『欲望の街』と、同じくプロデュースしているドラマ『かっこいいスキヤキ』の2本をあと10年、70歳までやりたいと思っている。なんか今までいろいろな役をやらせてもらってきたけど、もう俺の中ではやり尽くしたっていう思いがある。

俺は正直言うと、役者だけではなく会社経営も長年やっているし、この2作に向かうだけで十分だなと思っているんだよね。

特に『欲望の街』は、配信で話題になってから、地上波でも取り上げられるようになったらいいなと思っている。それというのも昔、『ミナミの帝王』もビデオレンタルで爆発的に人気が出てから地上波で放送してもらえて、さらに見てくれる人が広がったという経験があるから。

俺の場合は、せっかく自分の映像会社を持っているから、自分が企画を考えて自分が資金出せば権利を持てる。その強みを生かして、多くの人に『欲望の街』を見てもらって、この作品のファン層をもっと拡大させていきたいね。

竹内力(たけうち りき)プロフィール

1964年1月4日生まれ、大分県佐伯市出身。俳優、歌手、映画プロデューサー。
『難波金融伝 ミナミの帝王』、『仁義』、『岸和田少年愚連隊カオルちゃん最強伝説』など、長年シリーズ作品に出演。現在は、最新作『欲望の街』がU-NEXTにて独占配信中。映像製作会社RIKIプロジェクトの代表取締役会長で、近年は映画「月」、「死刑にいたる病」などを制作している。

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取材・文:小澤彩

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