女優山下リオ ミュージカルは三井のリハウスガールのころからの悲願。赤坂で『DEATH TAKES A HOLIDAY』の幕が上がる。

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14歳で三井のリハウスガールに抜擢され、ドラマやバラエティで活躍。所属事務所を退所し、独立してから、ドラマの主演や本多劇場での舞台など精力的に活動している。ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』で、ヒロインに抜擢された山下リオさんにインタビュー。芸能界に入るきっかけだったミュージカルへの憧れと挫折について伺いました。

ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』作品紹介

イタリアの劇作家、アルバート・カゼッラによる戯曲『La morte in vacanza』(1924)に基づき、ウォルター・フェリスが1929年に『Death Takes A Holiday』として英語で戯曲化。ハリウッド映画やオフ・ブロードウェイでリメイクされ、日本では2023年に宝塚版が上演されました。小瀧 望を主演に迎え、宝塚の生田大和の演出でお届けします。
(STORY)
これは、人類が史上未曾有の“死”に取り憑かれた第一次世界大戦の悪夢から覚め、“狂乱の”1920年代が始まって間も無い頃の物語……
深夜、イタリア北部の山道を“飛ばして”走る一台の車があった。
乗っているのはランベルティ公爵一家。一人娘グラツィアの婚約をヴェニスで祝った帰りなのだ。だが一家を乗せた車を悲劇が襲う。突如現れた“闇”にハンドルを取られた車がスピンし、グラツィアは夜の闇へと投げ出されてしまうのだった……!
……大事故に遭ったにもかかわらず、まるで何事も無かったかのようにグラツィアは無事だった。彼女の無事に安堵する一同。しかしグラツィアは、自身に“何かが”起こったと感じていた。

9月28日(土)〜東急シアターオーブで上演
(※『DEATH TAKES A HOLIDAY』公式サイトより引用)

大好きだったミュージカルを諦めなかったから、10年越しのチャンスを掴めた。

―『DEATH TAKES A HOLIDAY』は、昨年宝塚歌劇団で上演されて、今回のミュージカルは、その宝塚歌劇団の生田大和さん演出ですね。

山下リオさん(以下、山下):生田さんは「僕は死神を見たことがあるんだよ」とおっしゃってました。だからこそ、ファンタジーもリアルに描くことができるんだと納得しましたし、宝塚で演出されてきた方だからこその、繊細で美しい世界観がこの舞台にも散りばめられていて、今作に対する愛情をとても感じます。

―原作をリメイクしたハリウッド映画の『ジョー・ブラックをよろしく』とは違う感じなのでしょうか?

山下:映画とは全然違うものですね。今回の作品のストーリーは、第1次世界大戦であの世へ魂を導き続けることに疲れ果てた死神が、人間の体を借りて休日を二日間もらうという物語です。死神が、色んなカタチの愛に触れて、心揺さぶられていく姿は見どころです。

―10年ぶりのミュージカルご出演と伺いました。

山下:20歳のときに『ファントム』でクリスティーヌを演じたのですが、その時は悔しい想いをたくさんしました。もともとミュージカルが大好きで憧れを持っていたので、自分の技術的な面に納得がいかず苦しかったです。

その後は10年間ミュージカルにはご縁がなかったので、“私にはやっぱり無理なんだ”と思っていたところに、このような大きなチャンスを再びいただいたので、“今回は悔しいと言う感情にならない程やり切った!!”と思えるよう、当たり前の努力を飛び越えたところにいこうと思って稽古していました。

―テレビやCMなどたくさんご出演されてますが、ミュージカルはどのようなところが難しいと感じられますか?

山下:私は映像の仕事が多く、お芝居はその時動いた感情をそのままぶつけていくことが多かったですが、ミュージカルは、感情だけで歌っても歌の技術が足りてないと成立しないんです。

逆に歌に集中しすぎても、感情が歌に乗っかっていないと、歌が他のお芝居から分離してしまう。その良いバランスがコントロールできず、稽古場からもかなり苦戦しました。

でも難しいのは分かりきっていたことだし、逃げずに向き合うことで、必ず成長できると確信していたので、音楽と仲良くなっていこう!と、楽しめるようになってきました。

―演じる上で大切にしていることはなんですか?

山下:台本にあることを疑わないことと、そして台本に描かれていない、その人の生きてきた時間を埋めていくことです。

手がかりは台本しかないですが、“前のシーンと後のシーンの間は30分あるかな”と時間軸を計算したり、その時期の天候だったり、「あったかい」という台詞があれば、実際にはその時期、その地域の“気温は何度だろう”と調べます。頭の中の想像で、全て疑似体験してみると、舞台のセットにはない景色も浮かび上がってくる気がしています。

―死神役の小瀧さんの印象は?

©️岩田えり

山下:テレビの中のキラキラした姿も印象的でしたが、実際お会いすると人を緊張させない自然体な空気感をお持ちの方です。本当に忙しいスケジュールの中でも努力を惜しまないし、疲れた様子も見せない。自然と“ この人に付いていきたい!”と思えるし、小瀧さんだからこそ平和な稽古場になっているんだなと思います。

死の前のグラツィアが見たであろう景色を感じたことが、その後に歌う、深淵なソロの曲への橋渡しになった。

©️岩田えり

―山下さんご自身は、死神とか幽霊を見た体験はないですよね?

山下:実は…あります!

―いつですか?

山下:普段から目に見えないものを見たこともありますし、幽体離脱したこともあります…。

そんな経験をしているからか、目に見えない世界は信じています。

グラツィアが事故を起こして倒れてる時に死神が現れるシーンが序盤にあるんです。私はずっと目をつぶってて、真っ暗な世界に死神の歌が聞こえてくるんですけど、グラツィアが見たであろう死の間際の世界を、目を閉じてることもあり瞑想状態で想像します(笑)。

その感覚がとても大事で、その後にグラツィアがソロで歌う曲に繋がってくるというか…とても大事な曲なんですけど。

―そのシーンは見てみたいです。

山下:その曲、本当に難しいんですけど(笑)!

でも、グラツィアの魂の扉が開いていくような素晴らしい曲です。生田さんもこだわってらっしゃったナンバーなので、是非注目してもらいたいです。

―生田さんはどういった演出をされるんですか?

山下:ロジカルな思考をお持ちのように思えますが、第三の目で心を捉えていらっしゃる方でもあるので、言葉が巧みに心情や動きを伝えて下さる。

あと、今回は美園さくらさんとのダブルキャストで、稽古場では交互に芝居をするんですが、同じ動きをしなくてはいけないということでもなくて、「本番はやってくれるだろうと思っているから、思いのままにやってみていいよ」とおっしゃって下さったのが、とても有り難く印象的でした。

独立してから、気持ちはいつも新人女優。

―デビューしてずっと所属されていた事務所を退所されて、変わりましたか?

山下:誰にも頼ることはできないし、全て自己責任という部分では、社会人としては当たり前だと思いますが、守られることがないからこそ、一人の人間としてより一層自立できたと思います。

でも一人でやっているからこそ、色んな方に助けていただいていて。本当に有難さを実感していますし、お恥ずかしいことですが、以前の自分はプロデューサーさんや制作さんが、そもそもなんの仕事をしているかも知らなかったんです。直接やり取りをさせていただく中で、チームの一員として自分が存在していることが、とても幸せに感じます。

―今後、チャレンジしたいことは?

山下:世界中を旅すること、スカイダイビング、ケーブダイビング…ハラハラする項目が多いですが(笑)。今までやったことがないことは、全てやってみたいです。

不安になるのは簡単だけど、その不安に自分をコントロールさせたくなくて、人間関係も遊びも仕事も、全て全力で向き合ってます。

失敗も最高の経験なので、まだまだチャレンジすることがたくさんある、今後の私の人生にワクワクしています。

―とてもカッコいいです。今回の役のグラツィアにも通じるところがあるんでしょうか?

山下: たくさんあります!グラツィアの尽きない好奇心、物怖じしないところや、永遠の愛に憧れてるところも私と似てるなと思います。

そして、その愛を見つけることができるグラツィアは、理想的な女性です。

―最後に、今回のミュージカルへの想いをお願いします。

山下:10年越しの大好きなミュージカルで、とても気合がはいっています。作品のテーマは愛なんですが、夫婦や友達などいろいろな愛の形が描かれています。

音楽とストーリーに私たち出演者とスタッフのエネルギーが乗った、壮大な愛の物語を是非楽しんでください。

山下リオ(やましたりお)プロフィール

1992年生まれ。徳島県出身。14歳の時、12代目三井のリハウスガールに抜擢され、テレビ、映画、CMで活躍。ミュージカルは2014年の『ファントム』でクリスティーナ役を演じた。2022年所属事務所を退所し、独立。2023年にテレビ大阪「わたしの夫は-あの娘の恋人-」で主演。

【映画】『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』(2010)、『魔法遣いに大切なこと』主演(2018)、『寝ても覚めても』 (2018)、『母性』(2022)、『記憶の居所』主演、『PLAY!勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』『ペナルティループ』(2024)

【ドラマ】TBS『ラブレター』(2008)、テレビ大阪『わたしの夫は-あの娘の恋人-』主演 (2023)

【配信ドラマ】ディズニー+『ガンニバル』(2022)、Netflix『韓国ドラマな恋がしたい』(2023)

【舞台】『ファントム』 (2014)、『笑わせんな』(2024)、『DEATH TAKES A HOLIDAY』(2024年9月上演予定)

●Instagram  @rio_yamashita_official

●X  @rio_y10

文:姫田京子

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