石川瑠華が描く繊細に揺れ動くリアルな10代の心。『水の中で深呼吸』の優しい世界

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7月に公開の映画『水の中で深呼吸』。自分は女なのか、男なのか。この気持ちは恋なのか、友情なのか。揺れ動く10代の心模様を描いた、ひと夏の物語です。

今作で主演を務める石川瑠華さんにインタビュー。映画の魅力を伺いました。

映画『水の中で深呼吸』

水の中で深呼吸の配信サービス・あらすじ・キャスト・作品概要|ユーウォッチ
上級生から受ける日々の嫌がらせに耐えながら、水泳部で黙々と練習をこなしている高校1年生の葵。そんな葵は、同じ水泳部で同級生の日菜への気持ちを持て余していた。この気持ちは何なのか?...

水泳部に所属する、高校1年生の葵(石川瑠華)。理不尽な上級生からの嫌がらせに耐えながら、黙々と練習に打ち込む日々を送っている。

そんな葵には、誰にも言えない、もうひとつの悩みがあった。同級生の水泳部員・日菜(中島瑠菜)に惹かれる気持ちを持て余していたのだ。

この胸の高鳴りは、友情なのか、それとも──?

(※映画『水の中で深呼吸』公式サイトより引用)

7月25日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

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無鉄砲でまっすぐだけど、心のうちに悩みを抱え込んでいる。その矛盾がとてもリアル

ーユーウォッチの取材が2回目※の石川さん。よろしくお願いします!

石川瑠華さん(以下、石川):ありがとうございます!よろしくお願いします。

ー今回石川さんが演じた、水泳部所属の高校1年生・葵。演じて感じた葵の魅力を教えてください。

石川:私は役を演じる際に出来る限り、“こういう子”と決めつけたり、はっきりした言葉で書き出したりしないようにはしているんですが…。

葵のキャラクターとして、無鉄砲・まっすぐという2つの部分は守ろうと思いました。

一方で、自分の悩みに対してはまっすぐ表に出すのではなく、自分の心の内に抱え込んでしまう。その矛盾が、めちゃくちゃ私にとってリアルでした。

高校生くらいの年代の子って、周りから“あの子はこういう子”と思われている子が実際には違う一面を持っていたり、本人の悩みが周りには見えていなかったり。

葵も周囲には“まっすぐで無鉄砲な子”と見えているかもしれないけど、実は人知れず悩みを抱えている部分がある、ということが「特別なこと」としてではなく描かれることが大切なのかなと思いました。

ーそんな葵を演じるうえで、大切にしたことを教えてください。

石川:私自身、高校生のときに映画の中で描かれているような悩みを抱いていたことがあって。そのとき、人に相談できなかったんです。当時の感情や自分の温度感を思い出していました。

あとは、私は役作りを外(外見)から作っていくことが多くて。髪を切ったり、水泳の練習に通ったり…。そのことをしている間は、自然と葵のことを考えていられる時間でした。

作りたかったのは単純な青春群像劇でもLGBTQ+映画でもなく、“優しい世界”

ー安井祥二監督とは、何度も話し合いを重ねたそうですね。

石川:そうなんです。たぶん、役者がする作業じゃないことをわがままに口出ししたりしてしまいました(笑)。

ただ、何事でもそうなんですが、まだ何かを諦めてやりたくないんです。もちろん実際に撮影が始まって現場にいくと諦めなければいけないことは出てくるんですが、その前の時間にまだ余裕がある準備段階で妥協したくなかった。だから時間の許す限りお話をさせていただきました。

作品の方向性や役の立ち位置によっては私が強い熱量とこだわりを持って取り組むことが場違いな場合もあるんですが、今回は自分が主演ということ、そしてなにより私の熱量を受け止めてくださる安井さんの人柄もあって、時間をかけて作らせていただきました。

ー石川さんが作品に懸ける熱量が伝わってきました。今回は、具体的にどのような話し合いをされたのでしょうか。

石川:まず、土台をしっかりしたかったんです。主軸はLGBTQ+なのか、青春群像劇なのか。どちらも両立させて描くのはとても難しいし、軸がブレかねないと思って。

やっぱりよくわからない世界で葵を生かしたくなかったし、飛び込む場所ははっきりさせておこうと。

そしてその葵についても、自分自身と重ねて自分に寄せるべきなのか、全く新しく葵という人物を作り出すべきなのかを話しました。

ー話し合いを経て、方向性はどうなりましたか?

石川:結局は、“どうしても群像劇を描きたい”“LGBTQ+がテーマの映画を作りたい”ということではなくて、“優しい世界を作りたかった”ということ。

とっても漠然としているけれど、すごくシンプルなことだったんです。どれだけ話し合いをしても本番前にははっきりわからなかったことが、撮影を終えた今はすごくよくわかります。

これはやっぱり、演じながら安井さんと一緒に現場で作り上げていったことだと思います。

自然な距離感で仲のいい現場。たくさん話したはずなのに内容を覚えていない、それが不思議と高校生のときみたい

ー今回、石川さんは主演・座長という立ち位置でしたが、いかがでしたか?

石川:めっちゃ緊張しました(笑)。

私はもともと一匹狼タイプというか、協調性を大事にできる方ではなく、それをいかに許してもらえるか、という甘え方をしてきた人生で…(笑)。

これまでは年上の俳優さんに引っ張っていただいたり、役に切り替えるために撮影前(カチンコをうつ前)に静かに過ごさせていただいたり、たくさん「不器用」ということを言い訳に助けられてきたんです。

でも今回は座長という立場なので、自分が指揮をとらなきゃいけないかなとか、現場の会話が弾まなかったらどうしようとか、たくさん差し入れをしようかなとか…まあ差し入れでなんとかなる問題ではないんですけど(笑)。

そんなあまり慣れていないことを、どうしたら無理してると思われずに自然にできるか、たくさん考えました。

ただ、周りのみんなが私以上にしっかりしていたので、結局私が逆に引っ張ってもらっていました(笑)

(中島)瑠菜ちゃん(小坂日菜役)は若い10代の子らしく無邪気に現場にいて、倉田(萌衣)さん(山下胡桃役)や佐々木(悠華)さん(佐久本梨花役)は本当にお芝居のことも現場のことも考えつつ、明るい空気でいてくれて。

ー水泳部の1年生を演じた4人は、撮影期間中ホテルで同室だったと伺いました。

石川:めちゃくちゃ和気あいあいとしていました。現場でもホテルでもずっと一緒だったので、とても仲良くなりました。

みんなお互いに気遣いあいながらも、べったりすることなく心地いい距離感で。ラフに部屋で寝ている人がいたり、音楽を聴いている人がいたり、それぞれ自由に過ごしていました。帰りにスーパーに寄ってもらって、お菓子とか餃子とか買って、みんなで分け合って部屋で食べたりもしました。

ーいい空気感ですね。

石川:オフの日も一緒に出かけました。私はちょっと遅くまで寝かせてもらって途中合流というプランをゆるしてもらっていましたが(笑)。

撮影場所近くの伊香保温泉(群馬県)に行ったり。

みんなでたくさん話しました。でも、何を話したか全く覚えていないんです(笑)。若い口調で「まじ?」とか言い合いながら、たぶんすごく内容の薄い話をしていて(笑)。

でも、それも高校生のときみたいですよね。あの頃って友達とずっと話していたはずなのに、何を話していたか全然覚えていない。なんだか自分の高校時代と重なって、不思議で面白かったです。

心に残った「葵は葵」というセリフ。シンプルな言葉にすっと気持ちが軽くなる

ー心に残っているセリフはありますか?

石川:中島瑠菜ちゃん(日菜)の、「葵は葵だよ」というセリフです。

人にもらったひとことでこんなに救われることがあるんだ、と。

自分が自分であることで嫌な思いをしていた中で、「葵は葵」というシンプルな言葉にすっと心が軽くなる。自分で自分に言い聞かせ続けてもどうにもならなかった言葉を大切な人から言われることでこんなに気持ちが楽になるんだ、と劇中に感じました。

ー改めて、作品の魅力を教えてください。

石川:一度きりしかない高校生活のスピード感やみずみずしさ、このキャスト、スタッフでしか作れない空気感が繊細に画面に映し出されています。

それらを観てご自身の青春時代を思い出してもらったり、これからのことを想ってもらったり…。

安井さんが作ってくれた“優しい世界”で息をしているこの子たちを、みなさんがスクリーンでどう観てくださるのかとても楽しみにしています。

ー最後に石川さんご自身について。今後の目標や展望を教えてください。

石川:今は、いろんなことにどんどんチャレンジしたいです。

私はお芝居がしたくてこの世界に入ったんですが、自分で選択肢を狭めなければめちゃくちゃいろんな表現方法があるなって思って。

ただ、自分の価値として表現したものは、一度表に出ると、今度、その価値を決めるのは周りになってくる。

私はまだ周りに価値を決めてもらえるほど自分のいろいろな表現を提示できていないので…。どんどん表に出してみて、周りの反応を見ながら自分の進む道を決めていきたいです。

道を狭めていく段階になるまで、今はチャレンジし続けたいな、と思います!

撮影:髙橋耀太