映画『ソーゾク』主演の大塚寧々。多趣味な暮らしから見えた人生観

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誰もが必ず経験する「ちょっとした相続トラブル」をユーモラスに描いた映画『ソーゾク』。

本作の主演を務め、佐藤礼子を演じる大塚寧々(おおつかねね)さんにインタビュー。映画の魅力やプライベートについて、たっぷり伺いました。

映画『ソーゾク』作品紹介

映画「ソーゾク」の配信サービス・あらすじ・キャスト・作品概要|ユーウォッチ
高齢の母親が亡くなり悲しみ暮れる鈴木家の子供たち。仲の良い家族だったが、母親の遺産分割を巡り雲息は怪しくなっていく。実家を売却したお金を分配しようと考える長女と次女、後継ぎだと土...

高齢の母親が亡くなって鈴木家の子供たちは悲しみに暮れています。本当に仲の良い家族だったのです。 ところが、母親の遺産分割を巡って雲行きが怪しくなります。

 長女と次女は実家を処分して売却したお金を分けるつもりなのに、弟夫婦が「跡継ぎ」だからと土地家屋は自分たちのものだと主張したのです。これに、亡き長男の未亡人も加わって、親族関係はギクシャク。話はこじれにこじれて相続トラブル勃発!

後から見つかった母親の遺言書にまで文句を言いはじめれば、ついには裁判沙汰に!? それぞれに言い分はありますが、家族の絆って何なのでしょう? 数百万円のお金でこじれてしまう人間関係って……

滑稽? 戸籍に縛られた日本人特有の相続トラブルは悲劇? それとも喜劇?

(※映画『ソーゾク』公式サイトより引用)

10月17日(金)より
ヒューマントラストシネマ有楽町
シネ・リーブル池袋
キネカ大森など他全国順次公開

●X @sozoku_movie

●Instagram @sozoku_movie

「この映画は転ばぬ先の杖なんです」主演が語る魅力と見どころ

ー最初に台本を読んだ時の感想を教えてください

大塚寧々さん(以下、大塚):純粋にすごく面白いと思いました。「相続」と聞くと、大金持ちの遺産相続の事件をイメージしますが、この映画は一般的な家庭の相続問題を描いているんです。

亡くなった家族を思う悲しさや遺産相続の大変さもありますが、どこか滑稽さもあって。つっこみどころが散りばめられていて人間っぽい。そういうところが面白いなと思いました。

ー映画の題材が一般家庭で巻き起こる相続問題というのは新しいと思いました。

大塚:そうですね。妹や弟との仲が悪くてギスギスしていたわけではないし、“3人で3分割でいい”って思うじゃないですか。でもそこに弟夫婦や長男の嫁も加わって、話がどんどん拗れていくんです。亡くなった母の面倒を見たのは誰とか…。

さらに、状況によって結託する相手が変わっていくところも面白いなと思いました。

ーなるほど。私も最初は3分割で良いって思っていました(笑)。

大塚:そう思いますよね(笑)。生前に相続の話をすることもあまりないし、そもそもまだ生きているのに「相続についてなんだけど」とは言いづらいし。

もし「ちょっと相続で話しがある」と言われたら「今からそんな話しないで」って話題をそらしちゃう人も多いかと思います。

でも話しづらい相続というものが映画の題材になっているからこそ、ご家族で見ていただけたらすごく嬉しいです。

ー相続問題というところに色々な要素が入っているのも見どころだと思います。

大塚:これは日本独特なのかわからないですけど、「お墓を守る」とか「名字を継ぐ」という視点からも相続問題が描かれています。

お金が絡むと人は欲が出ますし、それぞれに生活があって、正義も違う。そういう色々なことが揉める要素になっているし、どこか滑稽で笑ってしまうところもある。

ーなるほど。今回演じられた佐藤礼子というのはどんな人物でしたか。

大塚:礼子は長女だからしっかりしなきゃとは思っていますが、自分のやりたくないことなどは妹や他の人に頼むことも多くて。「ちょっとお姉ちゃん!」ってつっこまれるような人間らしさもある可愛い人だなと思います。

ー礼子を演じる上で大切にしたことはなんですか。

大塚:お芝居をしながら面白おかしくドタバタ感を出しながらも、「亡くなったお母さんを家族仲良く見送ってあげたいのに、なんで揉めなきゃいけないんだろう」っていうやるせなさや悲しみもすごく大切にしました。

その部分を意識しないとガチャガチャした映画になってしまうので、「亡くなったお母さんの長女は私だ」というような気持ちは大事にしました。

ーお芝居をされる前の役作りについても教えてください。

大塚:今回は家族の話だから、兄弟のリアルな雰囲気を大切にしたいと思っていたので、共演する方との関係性は結構意識しながら役作りをしました。

次女・田中聡美役の有森也実(ありもりなりみ)さんとは今回の映画が初対面でしたし、先輩だったので、どういうテンポ感で姉妹を演じるかって悩んでいたんですけど、その心配は杞憂なくらい器の大きい方でした。

初日からもうあっという間に姉妹のような雰囲気になれたので、大船に乗ったつもりで也実さんに甘えっぱなしでした(笑)。

その関係性はお芝居をするうえでもいい感じで出せたなと思います。

ー撮影現場ではお話されることも多かったんですか。

大塚:撮影期間は1週間くらいだったので、結構スケジュールがタイトでした。

濃密な時間だったから体感としては2、3週間くらい撮影していたような気分で、みんなと本当の家族のように仲良くなれました。そういう撮影現場になったのは藤村磨実也監督の力量でもあり、みなさんの優しさでもあり、今回の映画を撮影するでは大きなポイントだったと思います。

ー藤村監督とはどんなお話をされましたか。

大塚:「こうしてください」というよりも温かい目で見守ってくださっていて。也実さんとの姉妹の掛け合いのシーンで少しヒートアップしてしまったことがあったのですが、その時は「ちょっと抑えてください」としっかり軌道修正をしていただきました。

ー実際にお芝居をされて感じた、この映画の魅力を語ってください。

大塚:相続問題って生きている間は話しづらいけど、お金持ちだけじゃなくて本当に多くの方が遭遇するかもしれない問題なんだと思います。

むしろお金持ちは遺言書をしっかり作っておくので、普通の家庭の方が相続で揉めやすい、ということもあります。実際に自分がその場面に直面して、急に法的な説明をされても「よくわからない」ってなってしまうから、この映画は「転ばぬ先の杖」になればいいなと思っています。

相続問題で揉めて拗れていく人間の滑稽な姿とかシニカルな感じ、つい欲が出る人間らしさとか、色々なエッセンスが散りばめられている映画なので楽しんでいただけると思います。

相続について考えるきっかけにもあるので、ぜひご家族やご兄弟、いとこと一緒に見ていただけたら嬉しいです。

俳優業で心がけているのは「自分の立場に固執せず、柔軟でいること」

ー長年俳優のお仕事をするうえで大切にしていることはありますか。

大塚:作品ってみんなで作っているものなので、「自分の役に固執しない」ということ、柔軟でいることを心がけています。

もちろん台本はセリフを覚えるために自分の役の立場から読むんですけど、それに固執しないように。例えば、自分とは違う役の設定で台本を読んでみたりして、いろんな角度から見るようにしています。

ーなるほど。そう考えた理由やきっかけはありますか。  

大塚:相手の役者さんがどういう役作りをして、どんなお芝居をするかによって、自分が投げ返すものも変わってくるんです。

自分の役作りがカチカチに固まっていたら相手に合わせられないし、「私はこう思う」と自分の考えにこだわりすぎると作品全体がうまくいかない。だから柔軟でいることを意識しているんだと思います。

ーここからはプライベートについても伺えればと思います。プライベートでは、旅行がお好きだという大塚さん。ご家族でも旅行に行かれますか。

大塚:家族でも行きますね。それぞれのスケジュールが合えば、ですが…。子供が小さい時はよく行っていたんですが、大きくなってからは部活があったりそれぞれ忙しくて。

それに、「いつまでも親と行くよりは、もう成長したんだから友達と行ってください」って感じです(笑)。子供が大きくなるのって、あっという間ですよね。

ー(笑)。大塚さんが旅行する際、行き先はいつもどうやって決めていますか。

大塚:なんとなく流動的に、その時に行きたいと思ったところを状況を見ながら決めています。スケジュールやホテルの空き具合とか。

ー今後、旅行に行ってみたいところはありますか。

大塚:あちこちいっぱいありますね。行きたいけど行けていないところだと、スリランカとか。ジェフリー・バワの建築物を生で見てみたいんです。

今まで行った中では、アジアも好きだし、フランスやイタリア、スペインとかも好きです。

笑って過ごすこと、畑作業をすることがリフレッシュに

ー過去の記事を拝見しまして、大塚さんはカメラや旅など、様々なことを楽しんでいらっしゃる印象を受けました。大塚さんはアウトドアなタイプですか?

大塚:私はやっぱり自然が好きです。土を触っていたり、冷たい風を感じたり、鳥の鳴き声を聞いたり、そういうのが落ち着くんですよね。

ーお忙しい中でのリフレッシュ方法や気持ちが落ちてしまった際の回復法について教えてください。

大塚:落ち込む状況にもよるのですが、例えば仕事で何かあったとしたら、仕事とは全然関係ない学生時代の友達とかに愚痴って、食べて飲んで笑います。

特に私の年齢だと、企業に勤めている友達も「上からも言われ、下からも言われ、どうすんの私たち!」みたいに、シチュエーションは違えど同じような悩みを抱えていることが多いので、お互い愚痴りあってワチャワチャして(笑)。飲んでいると楽しいし、結局最後は笑って消化できます。

あとは、俳優業はお芝居で表現をアウトプットをする仕事なので、自分が刺激を受けたりインプットする時間がすごく大事だと考えています。本を読んだり、美術展に行ったり。

それから、畑作業をして土を触ることも。土を触っていると、“無”になれるんです。そういう“無”の時間が必要だし、大事だと思っています。

“無”の時間が大事なはずのに、友達とワチャワチャうるさくしてしまっていますが(笑)。その時間もある意味、“無”ですよね。うるさい“無”(笑)。

ーいいですね(笑)。最近新しくはじめたことなどがあれば教えてください。

大塚:山野草(さんやそう)という、 山や野原などに咲いているお花を生ける教室に通い始めました。

ススキとかツユクサとか、そのへんに咲いている雑草のような花を生けるんです。季節ごとに生ける花が違うところも面白くて。

教室の先生のお知り合いの方が作ってくださっている陶芸の花器を使うと、花が長生きするんですよ。器を作るときの薬を使うか使わないかで花がものすごく長持ちするんです。

ーそうなんですね!

大塚:あと、最近シルクスクリーン※も始めました。画家の友人が作ったシルクスクリーンのTシャツがすごく可愛くて、「何それ!?」って聞いたら「やる?」って誘ってくれて。「やる!!」って言って始めてみたら、すごく楽しかったです。

※シルクスクリーン:孔版画の技法のひとつ。メッシュ状にインクが通過する穴と、通過しない穴を作ることで版画の版を製版し、印刷する技法。

ー楽しそうですね。最近買ってよかったものはありますか?

大塚:買ってよかったものは、11月号の雑誌『GLOW』で紹介したワッツのピンク色のヨットのバッグです。防水だし頑丈だしなので、野菜とか重いものも入れられます。自分の好きな色と形を選べるので楽しいですよ。

ー『GLOW』に載っていた、“田辺画伯”(田辺誠一さん)画のイラスト、拝見しました。

大塚:(笑)。出版社の方に頼まれたので、(田辺さんに)お願いしてみたら描いてくれました。

ー大塚さんは雑誌やエッセイで食べ物なども紹介されていましたね。美味しい食べ物はどうやって見つけるのでしょうか。

大塚:お散歩していて偶然見つけることもありますし、友達が「これ美味しいうよ!」ってプレゼントしてくれたりすることも多いです。美味しいものを「これが美味しかった」と人と共有し合うのって楽しいですよね。

ー2025年11月14日公開予定の映画『君の顔では泣けない』や2025年12月19日公開予定の『楓』など、続々と出演作の公開が決まっている大塚さん。今後挑戦したいことはありますか。

大塚:いっぱいあります。

でも、とにかく体の健康がすごく大切だと思うんです。お仕事は大変な部分もありますが、あまり力まず笑って楽しみながら。健康でいるためにも笑って過ごすのが一番大事だと思います。

ー笑って過ごすこと、大切ですね。

大塚:食べ物もすごく大切にしていて、農業のプロの方から教わりながら自分で畑をやっているんです。朝起きてトマトをもぎって食べるって本当に美味しいんですよ。

ジャガイモは一年分くらいあるんですけど、自分で育ててとったものだから美味しい。味噌も大豆から作っています。

植えた種から芽が出ると嬉しくて、「大根の芽が出た!ニンジンの芽が出たぞ!」みたいな(笑)。

実はお庭やベランダでもピーマンやナス、トマトも栽培できるので、やったことがないみなさんもぜひ家庭菜園に挑戦してみてほしいです。

畑作業で体も動かせるし、美味しい野菜も食べられるし、体と心の両方が健康になります。そうやって健康に、日常を楽しみながら笑って過ごせたらいいなと思います。

大塚寧々(おおつかねね)プロフィール

1968年6月14日生まれ、東京都出身。

ドラマ『君のためにできること』(1992)で役者活動を始める。『スキャンダル』(1993)で連続ドラマ初主演。映画『やさしい嵐』(1994)で映画デビューも果たす。

映画『笑う蛙』(2002)で第57回毎日映画コンクールで主演女優賞、第24回ヨコハマ映画祭で助演女優賞を受賞。

主な出演作に、ドラマ『HERO』(2001)や『おっさんずラブ』(2018)、映画『Dr.コト―診療所』(2022)など多数。

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