1人で壁に向かって野球の練習に励む少年。そこにもう1人、野球部員の少年が現れる。チームメイトであり、ライバルでもある2人の野球少年は、壁にボールを当てる。微妙な関係の2人は、淡々としたリズムでボールを投げ、キャッチし、またボールを投げる…。

「壁当て」は、野球少年たちの友情と葛藤を描いた作品で、PFFアワード2021に入選した井上朝陽監督の短編映画です。壁当てという行為を通じて、少年たちの言葉にできない感情がリズムとともにあふれ出し、観る者に深い共感を呼び起こします。言葉以上に雄弁に語られる少年たちの心情は、観る者を少年時代の純粋な感情に引き戻します。ビジュアルアーツ専門学校大阪在学中の井上監督の繊細な演出が光る作品です。