南米の刑務所の監房の中。同じ房に入れられている二人の男。ひとりは政治犯のバレンティン。もうひとりのモリーナはホモセクシュアルで風紀罪に問われていた。同房に居合せながらまったく別の世界をもつ二人。映画好きのモリーナは、いつか見た映画の話をバレンティンに語り聞かせている。しかし、バレンティンはその話にうんざりし、同志と全く連絡もとれず茫然とただ時を過ごす毎日だった――。

「蜘蛛女のキス」は、南米の刑務所で出会った二人の男、政治犯のバレンティンと風紀罪で収監されたホモセクシュアルのモリーナの物語。異なる世界から来た二人は、モリーナが語る映画の話を通じて心を通わせていく。しかし、モリーナは刑務所長からバレンティンのゲリラ組織についての情報を聞き出すよう命じられていた。モリーナはバレンティンに情愛を抱くようになり、情報を聞き出すことができず、仮釈放される。その前夜、バレンティンはモリーナにゲリラへの伝言を頼む。