2.5次元の舞台俳優・赤澤遼太郎の新境地。映画『アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!』で犬系男子を好演

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ほのぼの癒されるBL(ボーイズラブ)映画、『アキはハルとごはんを食べたい』(2023年)待望の続編『アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!』が6月に公開されます。

大好きなハルのために料理を作る金髪のアキを演じているのが、俳優の赤澤遼太郎さん。2.5次元の舞台やミュージカルなどで活躍する彼の演じるアキのひたむきの愛情模様に、誰もが幸せな気持ちになるはずです。この映画の見どころや撮影秘話、赤澤さん自身の生き方に迫りました。

BLカップルの繊細な心情が描かれる『アキハル』2杯目。見どころは

©たじまこと/竹書房・「アキハル2杯目!」製作委員会

映画『アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!』作品紹介

ごはんものの新鋭・たじまことによるBL漫画『アキはハルとごはんを食べたい』。周りから“ゼロ距離”と言われるほど仲の良い大学生のアキとハル。暖かみのある一軒家でルームシェアをする二人のほのぼのとした日常と誰でも簡単に美味しく作れるレシピで、読者の心と胃袋を掴んだ話題作の実写映画が帰ってくる!前作に続き、料理担当のアキ役は赤澤遼太郎、片付け担当のハルは、高橋健介が演じる。就職活動に奔走する二人。大学生活も残りわずか。愛おしく心温まる“おいしい毎日”は卒業とともに終わってしまうのか―。2024年6月14日よりシネマート新宿ほか2週間限定公開。

引用元:『アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!』公式サイト

アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!
高校の同級生の秋吉純太(アキ)と藤城春継(ハル)は別々の大学に進学するも、静かな住宅街にある一軒家でルームシェアをしていた。大学4年生になり、就職活動に勤しむ二...

―去年の『アキはハルとごはんを食べたい』1作目に続いて、あっという間の2作目の公開ですね。

赤澤遼太郎(以下、赤澤):そうなんです。実は去年、1作目を撮影し終わったときに、すでに続編の製作が決定していまして、そのまま2作目の撮影へ突入。

1作目の舞台挨拶時には、2作目もほぼ撮り終えている状態でした。ようやく『アキハル 2杯目!』がスクリーンで見られる。僕もとても楽しみです。

―映画を見て、『アキハル』はライトBLというのか、性描写が少なく、ピュアで、ほんわかした愛のあふれるお話だなという印象でした。

赤澤:僕自身、映画のお話をいただくまで、BLというジャンルは見たことがなかったので、一体どんな作品なんだろうと思っていましたが、原作を読んで、BL初心者にも楽しめるライトな作品だなと感じました。

相手役の(高橋)健介くんとは20歳のときに一度舞台で共演したことがあったんです。健介くんがどんな演技をするかも知っていましたし、関係性が出来上がっていたので撮影はとてもスムーズでした。

川野浩司監督も、アドリブというか2人の空気感をすごく大切にしてくださる方だったので、2人のいい雰囲気が映像に表れていると思います。

―主人公のアキはワンコみのある可愛い大学生ですが、赤澤さんと似ている部分はありましたか。

赤澤:アキって“好き”に一直線なんですよね。好きだと思ったら、その人に対してなんでもやってあげたくなっちゃう。そういう部分は、すごく僕に似てるなと思いました。

僕も、ファンの皆さんが喜んでくれることをしたいし、喜んでもらったらさらに嬉しいし。友達の誕生日にサプライズを仕掛けて、笑顔になってくれたら幸せになるし。ハルの喜ぶ顔見たさに料理をするアキに、すごくシンパシーを感じました。

©たじまこと/竹書房・「アキハル2杯目!」製作委員会

―『アキはハルとごはんを食べたい 2杯目!』の見どころを教えていただけますか。

赤澤:今回は、料理シーンはありつつも、前作よりアキとハルの繊細な心の描写が多いんです。

この一線から先に踏み込んだら、もう引き返せないというBLの“好き”のライン。前作から一歩進んだ、いじらしい2人が見られます。

あと、今回はロケシーンも見どころのひとつですね。前作は家でのシーンが多かったのですが、今回は2人の心情にすごくうまく調和するさまざまな場所でロケ撮影しました。少し大人になったアキとハル、2人の心模様が、情景とあいまってとても素敵で。

特に僕が好きなのは夜景のシーン。とてもロマンチックで、撮影していて感情もすごく高まったので、楽しみにしていただきたいです。

―この映画を、どんな人に見てもらいたいですか。

赤澤:いろいろな人に見てもらいたいですが、しいて言うなら、それこそ将来に悩んでいたり、就職活動に悩んでいる人に見てもらいたいですね。

「(会社に)入るだけがゴールじゃない。入ってからのほうが大事だから、それを楽しめる会社のほうがいいんじゃない」みたいなニュアンスのセリフを、ハルがアキに投げかけるシーンがあるのですが、それってどの仕事にも当てはまると思うんです。

ただ働きたいんじゃなくて、楽しく働くために頑張ろうよ、というメッセージは、多くの人に届くといいなと思っています。

―就活なんて、まさに人生の岐路ですよね。赤澤さんのファンの中にも、受験や就活…人生の岐路に立っている方がいるとおもうのですが、そういう方にメッセージがあればぜひ。

赤澤:僕、すべてのものごとには意味があると思っていて。今やっていることがもし失敗したとしても、きっと自分にとって、それが一番いい結果であるはずだと思うんです。

それまで頑張ってきたプロセスって、ちゃんと自分の中に積みあがっていると思うし、そうならないと出会えなかった人、出会えなかったこと、行けなかった場所もあるはず。そういう必然ってあると思うんですよね。

僕だって、役者として「この作品やります?」って聞かれたときに、やろうか迷う作品もたまにあるんです。それでもやってみるかと思って挑戦した作品が、その先の僕の人生のいろいろな展開につながったり、信頼できる人と知り合えたり、それこそ親友と呼べる存在に出会えたり。

全てのことに意味がある、じゃないですけれど、自分に起こる結果が最善なんだと思うようにすることが大事なんじゃないかと思います。

人生、少々ミスっても大丈夫だと思うし、ミスったときに何を見つけられるか、それに気づけるアンテナがあれば、その先きっとうまくいくんじゃないかな。就職でも受験でも、きっとそうです。

『アキハル』とは違う2.5次元の舞台の役作り。アニメ好きならではのこだわり

―普段演じられている2.5次元の舞台と、今回の映画の役作りは違いましたか?

赤澤:根本的なところは変わりません。ただ、今回の『アキハル』は、原作はありながらアニメ化されておらず、声優さんが誰も声を当てていない状態。まっさらだからこそ、等身大で演じられました。

アニメ化されて、声優さんがついている作品を2.5次元の舞台で演じるのと、その点がちょっと違いましたね。

―そうなんですね。いつも、2.5次元の役作りはどのようにやっているんですか。

赤澤:役者さん、それぞれ独自のアプローチの仕方があると思うんですが、僕の場合は“すでに世に存在する声や雰囲気に寄せる”のがこだわりです。

あるアニメのキャラクターが好きで、その舞台を見に行ったとき、キャラクターが自分の知っている声と全然違ったとすると…、僕だったらそこでちょっと冷めちゃうと思うんです。

アニメファンの頭の中では、すでに声優さんの癖がキャラクターの中に息づいているので、その声優さんたちと手を取り合って、舞台を作り上げるような意識で役に向かうようにしています。

声は寄せつつ、あくまでもモノマネじゃなくて“風味を感じさせる”って状態を意識して。

―アニメ好きの赤澤さんならではのこだわりですね。ちなみにアニメオタク歴もお聞きしていいですか。

赤澤:小5のとき、たまたま間違えて録画してしまった深夜アニメ『さよなら絶望先生』を見て、漂う背徳感に魅せられてからどんどんハマっていきました。

さよなら絶望先生
ネガティブすぎる教師・糸色望がすべてに絶望し続けるブラックコメディ第1弾!

中高は寮生活だったのですが、ワンセグを寮の窓に置いて深夜アニメを録画したり、iPod Nanoに動画を入れたり。

『ゼロの使い魔』、『涼宮ハルヒの憂鬱』あたりからのめり込んで、教室ではライトノベルばかり読んでいるタイプでした。

ゼロの使い魔
ツンデレアニメの代表作!自分も支配されたくなる、剣と魔法の異世界バトル!
涼宮ハルヒの憂鬱
涼宮ハルヒに振り回される高校生・キョンと、彼女が設立した“SOS団”の騒動を描く

寮は閉鎖的な空間で、オタク文化に寛容でもなかったので「2次元とかきっしょ!」って感じの扱いで(笑)。

女子からもらった手紙にも、当時ハマってたアニメキャラクターのテンションで返信しちゃってたみたいで、二度と返事が返ってこなかったこともありました(笑)。

―学生時代からモテたんじゃないかと思っていたので意外です(笑)。でも、舞台は、赤澤さんが好きで見に来るファンが多いはず。アニメファンを意識して演じることはないのかと思っていました。

赤澤:一口に舞台といっても、役者のファンが多く見に来る舞台と、作品やアニメのファンが多く来る舞台とに分かれると思うんです。でも僕は、どちらのファンの方にも楽しんでもらえるように舞台を作ります。

僕自身のファンの方には、序盤で「なるほど、赤澤くんはこの声優さんにも寄せられるんだ」と思ってもらいつつ、後半で僕の色に染めていく。

一方、アニメファンの方には「僕はあなたの敵ではないです。このキャラクターのことをすべてわかった上で、自分の演技をしますね」という提示を、舞台の2時間半を使ってグラデーションをつけながら伝えていくのは、結構好きなところでもありますね。

最近、夏にやる『マッシュル-MASHLE-』THE STAGE 2.5の切り抜き動画を公式さんがSNSに上げてくださっているんですが、いいねが2000以上ついたり、「原作に寄せてて嬉しい」みたいなコメントをいただけたりして、すごく報われます。

圧倒的に自分を知らない人たちに向けてお芝居をやらなければいけない。でもモノマネをしたいわけでもない。あくまでも自分のテリトリーに引き込みたい。そんな策略で演じています。

―自分が知らなかったキャラクターを演じることもあると思いますが、その場合はどうするんですか。

赤澤:とにかく時間をかけますね。作品に関係するメディアミックスはすべてあさります。マンガ、小説、ゲーム、アニメ、映画、実写映画、それこそ全部!

全部に目を通したうえで、舞台に必要な情報かどうかを取捨選択しながら、自分の舞台を作り上げます。舞台化には向かない表現があったら、“この表現はやめて、この表現で補おう”とか…。

―こだわりもそこまで!途方もない時間がかかりそうです…。

赤澤:僕、台本読む時間もすごく長いんですよ。気付けば台本を読んでいるうちに、丸一日経ってることもザラ。今日も取材前に4役を演じる朗読劇をやってきたんですが、その台本をひたすら読み込んで「どう演じよう」って考えて…。

好きでやっているので苦ではないものの、よく取材で「オフの日には何をしているんですか」って聞かれても、「台本を読んでいます」って答えちゃって、面白味がないというか(笑)。

そんな中にオーディションが入ってくるわけですが、オーディションの役もひとつの出会いだと思っていて、そこも全部調べないと気が済まないから、圧倒的に時間が足りないですね。

ライフワークの2.5次元を大切に、映像や声の仕事にも挑戦していきたい

―お話を伺うと、赤澤さんは常に前向きで、信念を持って突き進んでいる方のように思えます。落ち込んだり、スランプになったりしたことはないんですか?

赤澤:スランプになること、多々ありますよ。それこそ新しい役にあたるごとに、作品に壁や課題を感じます。そんなときは、“今日より明日の自分のほうが絶対にいい結果になるな”っていう思いを持ちながらやっています。

頑張ってクリアしようといろいろもがいて乗り越えると、すぐに次の作品がやってくる。「良かったです」という声はありがたく受け取りつつ、でも自分の中では「もうちょっとこうした方が、きっといいよな」と、無限にこだわり続けています。

―ストイックですね!

赤澤:いやいや、僕なんて全然です。もっとやっている人も、もっと上手な人もたくさんいる世界ですから。でも、課題があるからこそ飽きないし、楽しめているんでしょうね。

最近は声のお仕事もやったりして、これもまた必要な引き出しが全然違って発見も多かったんです。同じ“芝居”なのにアウトプットする先が違うだけでこんなに違うんだ、みたいな面白さがありました。

―作品ごとに経験値を上げていく赤澤さん。今後のお仕事にも、さらに広がりがありそうですね。

赤澤: この先、2.5次元のフィールドを大切にしつつ、ドラマ、映画、朗読劇、アニメ…。いろんなことに挑戦していきたいなって思っています。

僕をここまでにしてくれた2.5次元には求められる限り一生関わっていきたいし、恩返しをしていきたい。ただ、2.5次元をやっていると続編なども多いので、1年間に出来る役、作る役が限られてしまうこともあるんです。

年齢的にもより多くの役柄を経験しないといけないと痛感していて。同じ役をやり続けることにより、ひとつの役を深掘りできるという、ありがたさの反面、自分の違う引き出しも増やしたいという欲求も僕にはありまして…。

すでにできあがったキャラクターを演じるのではなく、0から1を作りだすオリジナルな作品にも挑戦できたらいいですね。

赤澤遼太郎(あかざわ りょうたろう)プロフィール

1997年1月11日生まれ。神奈川県出身。明治大学卒業。2015年、舞台『CHaCK-UP―Episode.0―』で俳優デビュー。『MANKAI STAGE『A3』』や『あんさんぶるスターズ』、『おそ松さん』などの人気演目に出演。世界的に人気原作となった『マッシュル-MASHLE-』THE STAGEの主演をはじめ『コードギアス〜反逆のルルーシュ』や『HIGH CARD』などの主演を務める2.5次元界のトップランナー。初連続ドラマでは『救出劇』で主演を務めた。声優の両親を持ち、透き通る高音の歌唱力を持ってグランドミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』に出演するなど歌唱や踊り、演技力に定評がある。アニメ大好きの新時代の2.5次元俳優。趣味はアニメ・漫画・舞台観劇。特技は動画編集・野球(PL学園軟式野球部)、大阪弁。

●X @akazawa_taro
●インスタグラム @akazawa_taro

取材・文:小澤彩

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