【森田想インタビュー】映画『辰巳』ヒロイン 復讐を誓う、危うげな19歳少女を熱演

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『ケンとカズ』(2016)で多くの映画ファンの度肝を抜いた小路紘史監督による、8年ぶりの待望の新作映画『辰巳』。本作の2024年4月20日公開を記念して、圧巻の演技を魅せたヒロインの葵役・森田想さんにインタビューさせていただきました。

『辰巳』の撮影秘話や共演者とのエピソード、女優としてのこれからについてもたっぷり伺いました!

映画『辰巳』ストーリー

裏稼業で働く孤独な辰巳(遠藤雄弥)は、ある日元恋人・京子(龜田七海)の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵(森田想)を連れて、命からがら逃げる辰巳。片や、最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は、京子殺害の犯人を追う。生意気な葵と反目し合いながらも復讐の旅に同行することになった辰巳は、彼女に協力するうち、ある感情が芽生えていく。

引用元:映画『辰巳』公式HP

撮影から5年…当時19歳で挑んだ”葵”について

ーオンライン試写で一足お先に『辰巳』を拝見いたしました。荒々しい口調のセリフが多く印象的でしたが、森田さんと葵には共通点がありそうですか。

森田想(以下、森田):実は、普段も結構荒々しいんですよ(にやりと微笑む森田さん)(笑)。

撮影当時、私は19歳で葵の年齢に近かったので言葉使いとか、雰囲気とかをそのままで演じられたので意外と演じやすかったなと思います。

ーそうなんですね。葵の役作りには、あまり苦労されなかったということでしょうか。

森田:そうですね。シーンで気をつけることとか、アクションとか、セリフのニュアンスはもちろん色々考えなきゃいけなかったのですが、すごい責任重大とかではなくて、良い意味でラフにできたかなと思っています。

ー葵の役をやるにあたって、なにか参考にしたものはありますか。

森田:監督から『レオン』(1994)だけは観ておいてほしいって言われていたので、『レオン』を観て、直接的というよりかは、小生意気な感じとか、子どもがちょっと大人っぽくしたがる感じとかを意識して演じました。

ーアメリカ映画っぽさを大事にされていると小路監督から聞いていたのですが、どんなところでアメリカっぽさを出していたのでしょうか。

森田:ロケーションも、撮り方もそうなんですけど、後づけの音楽とかも”アメリカ映画っぽさ”を意識しているようです。

ー衣装もこだわりがあったのでしょうか。

森田:どう考えても『辰巳』に出てくるキャラクターはみんな、新品の綺麗な服は着ていないだろうということで、みんなで一緒に古着屋さんに行って、自分の服を選んだりとか、汚れもそのロケ地でつけたり意識してやっていました。

そこのリアリティさも全員同じ熱量で作っていけたかなと思います。

ー葵が唾を吐くシーンがすごく印象に残っているのですが、あのシーンはかなり練習されたのではないでしょうか。

森田:10テイクくらいはやりましたね。唾がどこまで飛ぶかなとか、唾の量とかは監督がこだわっていたので、いっぱい練習した記憶があります。

自分でもお風呂で「ペッ」って練習してました(笑)。

ー葵というキャラクターは台本では当初少年の役だったそうですが、オーディションで小路監督が森田さんに一目ぼれして少女に設定変更したとか…

森田:私もオーディションのときから小路監督のお人柄に惹かれていて「ぜひご一緒したいな」と思っていたので、純粋に嬉しかったです。

葵の役を少女役でいただけたときは、等身大の自分で臨めるいい機会だな、チャンスだなと思いました。

ーバイオレンスシーンを撮る際に、小路監督のアドバイスは何かありましたか。

森田:体格差のある大きな相手を、「倒せない」という風に思わせないように頑張りました。

「現実味のあるアクションにしたい」という小路監督の考えがあったので、例えば単純に押すのではなくて、相手が不注意なタイミングで刺すようにするとか、そういう見え方には気を使っていました。

ー『辰巳』ではどんな森田さんを見てほしいですか。

森田:みなさん、おそらくこんな汚い言葉遣いの女優はあんまり作品で観たことないんじゃないかと思います(笑)。

私はそこに関しては自分が得意だって自負しているので、そういう自分の面も、こうして自分の等身大の姿としてお芝居に昇華できて、見てもらえるっていうのは面白いですね。

嘘がないような作品、本当にどこかにいそうなキャラクターと、想像できるような世界観として楽しんでいただけたら嬉しいです。

ーお気に入りのシーンはどのシーンですか。

森田:自分の登場シーンがアメリカ映画っぽくて好きです。躍動感のある感じで自分のキャラクターが登場するというのがすごく気に入っています。

撮影をしたときから完成を楽しみにしていたところなので、ぜひ注目していただけたらなと思います!

撮影の裏話と小路監督への想い

ー小路監督からいただいた言葉で印象に残っている言葉はありますか。

森田:小路監督はダメ出しというよりは、「今のも良かったけどもっとこうしてほしい」とかなんかこうすごいポジティブな言葉で演出をしてくれるイメージ。

葵の場合も「もっと生意気に」っていう風に言われることが多かったかなという感じですね。

ー小路監督は撮影にかなりストイックだと伺ったのですが、森田さんから見た小路監督の印象を教えてください。

森田:本当に良い意味で、めちゃくちゃ頑固ですね(笑)。

頑固だからこそ「自分の中でこういうものを作る」っていうのが決まっているので、そこにただついいて行けばいいという安心感というか、作品としてブレはないんだろうなということは、オーディションのときから思っていました。

それがご本人の人柄としても体現しているなという風には思いましたね。

ー小路監督に伝えたいことはありますか。

森田:スレないでください…(笑)。

ー撮影の裏側はどのような感じだったのですか。

森田:おじさんだらけの現場だったのですが、常に和気あいあいとしていて、誰かとずっと喋っていました。

廃車場のシーンで、結構ガンアクションも入ってきたりもするのですが、竜二役の倉本朋幸さんが本当に驚いて「うわぁ!」とか言っていたのが面白かったですね(笑)。

ー森田さんもライフルを扱うシーンがありましたよね。

森田:そうですね、ちゃんと教わってからやったんですけど、やっぱり大きい銃だからその分反動も大きいので、そこも反応するように練習をしたり、上手く装填できないような演技もしたりしました。

ー森田さんにとって映画『辰巳』とは、女優人生の中でどういう存在ですか。

森田:5年前に撮影しながらみんなが「絶対面白くなるだろう」と信じていた気持ちが実っている感じがして、自分の代表作には確実になるだろうなという嬉しさがあります。

実際に『辰巳』のおかげで他のお仕事もたくさんいただけていて、自分が思っているよりも反響があるのかなと感じています。

当時は「なんか面白いものを作っている」くらいにしか思っていなくて、こうしてしっかり劇場公開までたどり着いて、インタビューとか取材とか受けているのは本当に感慨深いです。

ー4月20日公開ということでもうすぐですね。劇場で再度観たいと思います。

森田:そうですね、いよいよです。各俳優さんのすごくかっこいい部分が映っている映画だと思いますし、アメリカ映画を観たあとの興奮みたいなものを感じてくれたら嬉しいです。

劇場でおじさんたちの呼吸とか、良ければぜひ聴いてください(笑)。

「スカッとしたい」とか、「人に観たって自慢できる映画が観たい」みたいなというときにぜひ観てほしいです。

変幻自在に役を演じる彼女の魅力 女優としてのこれからに期待

ー森田さんはこれまで色々な役柄を演じてこられたと思うのですが、今後やってみたい役柄はあるのですか。

森田:うーん、まだまだ学生役がやりたいです。

高校生役とかは、やっぱり懐かしい気持ちになれるのでやりたいですね。

昔から本を読むことがすごく好きなので、いつか機会があったら小説の実写化などにも参加してみたいなって思います。

あとはキャラクターが濃いものとか、自分との共通点がない役も気になりますね。

ー役作りはいつもどのような感じでされているのですか。

森田:役作りはあまりしないんですよね…。普通に台本をもらって、読んで、やってます…(笑)。

これまで参加させていただいた作品は、脚本が面白いものが多かったので、思った通りに読むだけで演じることができていたんですよね。

”大事なことは全部台本に書いてある” と思っているので、台本の中の「…」とか行間とかも、自分なりに読み解いて、吸収します。

ーまさに天性の才能ですね…!2024年はどんな1年になりそうですか。

森田:今、24歳なのですが、年相応なことはできているのかなと思っていて。

周りの方に支えられて、すごく過ごしやすいですし、自分に合ったお仕事ができているんじゃないかなと思っています。

これからも周りに感謝しながらコツコツと女優として皆さんに知ってもらえるような動き、作品作りをしていきます!

ー今後のご活躍を楽しみにしています!ありがとうございました。

森田想(もりた こころ)プロフィール

2000年2月11日生まれ、東京都出身。幼少の頃より子役として活動をスタート。映画『ソロモンの偽証<前篇・事件>/<後篇・裁判>』(共に15/成島出監督)など多数の出演を経て、2018年松居大悟監督の『アイスと雨音』で初主演を務める。以降も『朝が来る』(21/河瀨直美監督)、『タイトル、拒絶』(21/山田佳奈監督)、『わたし達はおとな』(22/加藤拓也監督)、『THE LEGEND & BUTTERFLY』(23/大友啓史監督)など多くの作品に出演し、2023年公開の主演映画『わたしの見ている世界が全て』(佐近圭太郎監督)では、マドリード国際映画祭2022外国映画部門にて主演女優賞を受賞。2024年6月21日公開の映画『朽ちないサクラ』(原廣利監督)他、公開待機作多数。メインキャストで出演中の連続ドラマ『シークレット同盟』(ytv)が4月4日から、『滅相も無い』(MBS)が4月16日から、それぞれ放送中。 

・Instagram 森田想 kokoro morita (@kokoro_morita) • Instagram photos and videos
・X 森田 想(@kokoromorita)さん / X (twitter.com)

・映画『辰巳』公式サイト https://tatsumi-movie-2024.com/
・X https://twitter.com/tatsumifilm
・Instagram https://www.instagram.com/tatsumi_film/

ヘアメイク:齋藤美幸
スタイリスト:入山浩章

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