ドラマ『作りたい女と食べたい女』で原作再現度の高さが話題に!俳優・西野恵未としての第一歩

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スタジオミュージシャンとして活躍されている西野恵未(にしの えみ)さん。NHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』(2022)、通称「つくたべ」で春日十々子(かすが ととこ)役を務め、原作キャラの再現度の高さが話題を呼びました!

お芝居は未経験ながらポテンシャルを発揮した俳優としての西野さんにスポットライトを当てて、俳優デビューの裏話や目指す将来像など、たくさんのことをお話していただきました!

『作りたい女と食べたい女』で俳優に初挑戦、その理由とは

『作りたい女と食べたい女』作品紹介

人気漫画『作りたい女と食べたい女』(つくたべ)を原作にドラマ化。

2022年放送の前作(第1回~第10回)につづくシーズン2・全20話(第11回~第30回)。

【ストーリー】

料理が大好きだが、ひとり暮らしで少食のため、もっとたくさん作りたいと日頃から感じていた野本さん(比嘉愛未)。同じマンションに住む、豪快な食べっぷりの女性・春日さん(西野恵未)との交流が始まり、2人で料理を作って食べることで関係を深めていく。いつしか野本さんは、自身がレズビアンで春日さんへの思いが“恋”だと気づき・・・。新たな友人たちとの関係や、2人の恋の行方を描くシーズン2。

引用元:https://www.nhk.jp/p/tsukutabe/ts/5NX1QRN3VM/

作りたい女と食べたい女 続編
料理が大好きだが、ひとり暮らしで少食のため、もっとたくさん作りたいと日頃から感じていた野本さん(比嘉愛未)。同じマンションに住む、豪快な食べっぷりの女性・春日さ...

『作りたい女と食べたい女 シーズン2』 DVD3枚組 発売決定!

11月22日発売予定

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ースタジオミュージシャンとして活動されている西野さんが、ドラマ『作りたい女と食べたい女』(以下「つくたべ」)に春日十々子役として出演されることになったきっかけはなんだったのでしょうか。

西野:私がピアノを演奏していたライブに、『つくたべ』の脚本家の山田由梨さんとプロデューサーの大塚安希さんが偶然いらしていたんです。

ステージに立つ私を見て「春日役に合うかもしれない」って思ってくれたみたいで、ライブの一週間後くらいにSNSを通して連絡をいただきました。

ーすごい出会いですね。

西野:そのあとにオーディションという形で、制作統括の坂部康二さんはじめとするスタッフチームにお会いしました。セリフを読んで、役のことなどいろいろとお聞きしました。

今までドラマや映画などの映像のお仕事をしている方と関わることがなかったので、単純に話せて楽しかったという感じでした。

ーなるほど。そうして実際にお芝居に挑戦するという流れだったのですか?

西野:本当に現実味が湧かないままのクランクインでした。

ーこの作品を拝見していて、原作キャラの再現度の高さが印象深かったです。

西野:お芝居は一切やったことがなかったので、本当にイメージだけで選んでくれたのかもしれないです。

比嘉愛未さんが演じた野本さんと春日さんがだんだん仲良くなっていくのですが、”どのタイミングでどれくらい心を開いていくのか”を松嵜由衣監督と大塚プロデューサーと照らし合わせながら「最初のシーンでの声のトーンはこれぐらいで…」という風に細かく決めました。

そこからさらに中田博之監督や脚本の山田由梨さんともお会いして、【春日さん】という人物像をクランクインに向けて固めていきました。この時期、大塚プロデューサーが二人三脚で寄り添ってくださったのが心強かったです。

今まであまり会話をしてこなかった春日さんという人物を自然に演じるにはどうしたらいいかということをたくさん話し合いましたし、原作漫画の風景が壊れないようにテンポや区切るところ、呼吸のタイミングまで細かく決めて、撮影に臨みました。

ー「つくたべ」は同性愛を描いた物語でもあると思いますが、セクシュアリティな題材を扱ううえで、どう役作りをしていきましたか?

西野:役作りをする上で役の背景や台本に描かれていないような部分でさえもリサーチをするので、それぞれに勉強をしていたと思います。実際に撮影が始まる前にはパレットーク編集長の合田文(ごうだ あや)さんが作品に関わる全員にレクチャーをしてくれました。

ドラマのジェンダー•セクシュアリティー考証もされています。そのレクチャーを受けた後、さらに細かく”春日さんだったらどうだろう”と役柄に落とし込んでいきました。

そのご縁をきっかけに、文さんが出版されている書籍を買って読ませていただいたりしながら役作りを進めていきました。そこである程度固まってきた役の背景を自分の中に入れて自分がすることを考えた時に、”春日さんというキャラクターは野本さんと向き合うこと、ただひとつだな”って思いました。

野本さんに出会って”何を思うか”だけを考えていましたね。

ー役作りをしていく際に特に意識したことはありますか?

西野:つくたべドラマは、ゆざきさかおみ先生のとても人気のある漫画作品が原作となっています。なにより、ニュース出しの段階で出てくるのはイメージビジュアルの写真です。役者経験がない人が演じるという部分も合わさり”1番最初のビジュアル出しが、まずはとても重要だ”と私は考えていました。

その写真を見た人みんなが「この人誰?」じゃなくて「春日さんだ!」って思ってくれたら、映像作品にもまっすぐ入って観てもらえるのではないかというふうに考えていたんです。

それに向けてまずは漫画の春日さんに近づけられるよう体重を調整したり、姿勢を研究したり、歩き方や癖なども漫画を元に構築していきました。

春日さんはメイクをあまりしないキャラクターだと思ったので、私も演奏のお仕事でステージに上がる時以外はメイクをしないで過ごしたりしながら役に近い状態で生活をすることを意識しました。

写真が公開された時に、「なんでこの人を選んだんだろう」と思われないように、春日を演じる俳優として完璧な状態で表に出たかったので、そこは頑張りました。

ーこの作品への出演が決まったときの周囲の反応はどうでしたか?

西野:直前まで情報解禁がされていなくて人に話せていなかったこともあり、ドラマを見ていたけど途中まで気づいていない人もたくさんいました。春日として見てもらえたということなので気づかれないというのも嬉しかったです。

「つくたべ」は全員で作り上げた心温まる癒しのドラマ

ー現場の雰囲気について教えてください。

西野:みんな仲が良くて、思ったことは言うみたいな雰囲気でした。比嘉さんと話している時も、お互い「ここってこう思うんだけど」みたいなことが出てくると、それを監督と共有していつも話し合っていました。笑いの絶えない現場でしたよ。

ー1番思い出に残っているシーンはどこですか?

西野:シーズン2の第18話で、春日さんがお父さんと決別するシーンです。

春日さんは自分の中で思っていることはたくさんあるけど、それをわざわざ表には出さないし感情的になることも少ない性格なんですけど、野本さんとだから楽しいって感じたり、嬉しい気持ちを出せるようになってきているという段階での父親と縁を切るっていうストーリーでした。

その場面のリハーサルで私がボロボロに泣いてしまったんです。もちろんいつもの春日さんでは絶対に出さない感情なので、その場にいた全員が「それだと春日のイメージが崩れてしまう」と思っていたと思います。私も含めて。(笑)

私の想像でしかないですけど、今までの春日さんが生きてきた日々の中で結構な大きな出来事だったと思います。そう思いながらセリフを言っていた時に”役のイメージは絶対に大切。けれどそれに囚われすぎず実際に演じてみてその場で溢れ出す気持ちをしっかり出していくことも、感情が強く揺れるシーンでは間違いじゃないのかもな”ってその時に初めて思いました。

それを比嘉さんに言ったら、「西野恵未にならなければ、私はいいと思うよ」って言ってくれたので、本番ではいつもの春日さんとしての自然体で極力感情は出さないようにしつつ、気持ちの部分では刹那的に感じたままに野本さんの前に座っていました。

でも結局ボロボロ涙を流しながらって感じになりましたね。比嘉さんもしっかり向き合ってくださって、お互いにいろんな感情を引き出し合いながらお芝居できたと実感できた思い出のシーンです。

今思うとあのシーンがドラマのなかでも特に辛いシーンでもあり、それを経て二人の生活がまたひとつ進んでいくきっかけにもなったシーンだったと思うので、放送まではドキドキしていましたし放送後の反響を聴いた時にすごくホッとしたのも覚えています。

ー春日役を演じてみて、ご自身と似ていると感じた部分はありましたか?

西野:春日さんと私は全然似てないんです。

春日さんってすごく優しいし、相手のことを思って言葉を選ぶタイプなんですけど、私は結構感情的に言っちゃう。

だから春日さんみたいになりたいなって思います。「こんな優しい言い方をするんだ」って思いながらセリフを言っていた時もありました。

でも撮影期間中は、春日さんスイッチみたいなのがオンになっていた日々だったので、撮影期間の西野恵未は穏やかだったかもしれない(笑)。

ー共演された方とのエピソードや思い出について教えてください。

西野:私と比嘉さんは同い年だし、お互いに色々なことを経験してきた今だからこそ仲良くなれたんだ思います。作品の撮影が進んでいくにつれて、お仕事で出会っていながらも心の距離が縮まっていくことを日々感じていました。今では私生活でも親友です。(笑)

矢子可菜芽役を演じたともさかりえさん、憧れの方なのですがとても気さくに話してくださって…はじめて目の前でともさかさんがセリフを言われた時に急激に緊張しちゃって。

私はそれでとっさになぜかバミリを見つめてしまい、あとで「バミリみないでね」って監督に注意されました。(笑)

南雲世奈役を演じた櫻坂46の藤吉夏鈴さんのライブを、りえさんや比嘉さん達と一緒に応援に行きました。4階席の上の方だったんですけど、そこでサイリウムを持って全員で叫んだらあとで夏鈴ちゃんに「見えてましたよ」って言われて。目立ってたみたいです。すっごい叫んでいたので(笑)。

みんなで集まってご飯会したりとかもありましたし、またやりたいねって話してます。

ーご飯と言えば、ドラマの中で登場する料理も注目を集めていましたね。

西野:そうなんですよ。人気レシピを考案して発信している料理家のぐっち夫婦さんが監修に入ってくださっていて、いつも色々な食事を万全の状態で出してくださるので、リハーサルの時につい食べ過ぎちゃって怒られるっていうことも…(笑)。すっごく美味しかったです。

みんなでご飯会をした時は比嘉さんがぐっち夫婦の料理を再現してくれました。比嘉さんは本当に「作りたい女」です。

ージェンダー関連の作品だからこそ見ていて気づきも多いドラマでした。特に届いてほしいと思う人はいましたか?

西野:特定の人へというのは考えていなかったです。反響をスタッフさんから聞いて、本当に色々な人に届いているんだなと思いました。

幅広い年代の方からお手紙やメールが届いていたそうで、ちゃんと届いているんだな、受け取ってもらえてるんだなという実感がありました。

生活の中で、疲れて帰ってきてふとつけたテレビから一回15分の心地よい尺感で少しづつ進んでいく二人の人間模様とか、料理や温かい空気感で癒されましたという内容のお手紙が多かったみたいです。

良かったと思いましたし、頑張れました。

ーなるほど。まさに心温まる癒しの作品だったと思います。

西野:「つくたべドラマ」は映像作品ながら、日常生活に極めて近い世界を描いていますよね。

日常生活の中でドラマみたいに色々なことは起きないし、声をあげて怒ったり泣いたりすることってあまりないからこそ、気張らずに友達の話を聞いているみたいに「つくたべ」を見れたのかなって思います。

ドラマ初挑戦を経て俳優として歩み出した新たな道

―ドラマ初出演とのことでしたが、西野さんにとって「つくたべ」という作品はどんな存在ですか?

西野:”これからもお芝居をやりたい”と思わせてくれる、私の人生の転機となった大切な作品です。

ピアノを弾くミュージシャンと、俳優の両方をやっていきたいです。節度を持って本気でちゃんと向き合っていけばこういう仕事の仕方もいいんじゃないかなって思います。

「つくたべ」は、自分の中にある変なこだわりを取っ払えた作品だったので、本当に転機でした。「つくたべ」の二人を見て”私の人生をこうしなきゃいけないなんて誰も決められないじゃん”って思いました。自分の人生、楽しく生きていきます!

今回役作りで、自分の辛い過去を思い出してそれを整理してっていう作業をしたんです。そこで気づいたんですが、そういう作業で考えたことは楽曲や歌詞を解読するための解像度をぐんと上げる力にもなると思います。芝居も音楽も、共通するところがちゃんとあるんだと思いました。

全て繋がっているからこそ、自分が納得できる人生を進んでいこうって初めて心から思えたので、今はそれを信じて生きています。

ーお芝居のどういうところに魅力を感じましたか?

西野:音楽は歌うことや演奏することで表現しますが、お芝居は言葉や感情を身体を使って表現するので、これまで経験した出来事や感じた気持ち、色々なものを全部材料にして、全身で表現できるところが魅力だし本当に楽しかったんです!

お芝居に関しては始まったばかり。経験不足で勉強中なのですが、今まで経験してきたいろんな出来事や感情を役を作っていく材料にできると思った時に、思い出したくもない嫌なこととか悲しいことも経験しておいて良かったと思えるようになりましたし、それってすごく面白いことだなと感じました。

お芝居の魅力に気づいたことが自分にとっては前を向いて進んでいくひとつのきっかけにもなったと思います。

ー俳優としての今後のビジョン、なりたい俳優像を教えてください。

西野:まだキャリアもないのに”おばあちゃんになるまで俳優をやりたい”って今思っちゃってます。

いろんな方に俳優のお仕事に関する質問をしていた時に大体30代後半、40代になると俳優さんのイメージが固まってくるものだと聞きました。「この役だったらこの配役で、この組み合わせで」みたいな感じで。

たしかに、音楽のお仕事でもメンツって固まってきたり”界隈”ってできてくるものでそこを突破する大変さもよく理解しています。

でもその固まったところに新たなる謎の存在が入ってきたときに、もしかしたら何か変化が起きるんじゃないかなって。音楽のお仕事でも常々思っていて、同じようにはいかないとは思いつつもお芝居の世界でも存在することができるよう作戦を練っています。(笑)

経験値や知名度はないかもしれないけど、まだお芝居に癖がついていないからこそ、入っていける隙があるかもしれないって今は思っています。

私は身長が高いので、異物感のような存在感も出せるかもしれないし、今はそういうアイディアを考えながらまずはいろんな人に知ってもらうキャンペーンをしています。これを読んでくださってる映像関係の方、よろしくお願いいたします!

ー挑戦してみたい役はありますか?

西野:自分の知らない領域の感情を出すような役をやってみたいです。怒りなのか悲しみなのか。あとは今の技術では誰も知り得ない次元の話とか誰も行ったことない宇宙空間の話だったり、そういう地球で生きてる人間的には想像力必須な世界で生きている人の役もやってみたい。

あと猟奇的な殺人鬼の役やってみたいです。ハンニバルのレクター博士みたいな。羊たちの沈黙、大好きな作品なんです。

私のことを俳優として、人として面白いと思ってくれる人の作品でお芝居をできたらいいなって思っています。

西野恵未(にしの えみ)プロフィール

1987年3月14日、東京都出身。2歳よりピアノを始める。国立音楽大学付属幼稚園入園と同時に本格的にクラシック音楽の勉強を開始。一貫校でピアノをメインにソルフェージュ、リトミック、声楽など様々な分野から音楽を学習する。国立音楽大学鍵盤学科卒業までクラシックピアノを専攻。大学卒業後、在学中取得した教職免許を手に教育機関に教師として就職し音楽とかけ離れた生活を送る。 2011年の震災をきっかけに数年後退職。

2014年春から本格的にスタジオミュージシャンとして演奏活動を開始。現在はライブやレコーディングでの鍵盤演奏を主にコーラスやアレンジャーとしても活動の幅を広げている。

2022年、11月から放送開始のNHK夜ドラ「作りたい女と食べたい女」春日十々子役で俳優デビュー。同年12月、1st シングル「暁」配信リリース。

●X 西野恵未 (@xxxxxEMI)さん/ X

●Instagram https://www.instagram.com/emi_nishino/

●西野恵未公式HP:https://nishinoemi.bitfan.id/

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