⽇本独特のおかしな校則、教師のブラックな職場環境、暴⾛するSNS やネット報道という現代社会の問題を題材に、⼤⼈になりきれない教師・市川が⽣徒たちに振り回されながらも成⻑していく様を描いた映画『金髪』。
主演を務める岩田剛典さんにインタビュー。学生時代の校則や“年齢を重ねること”についてのご自身の考えなど、たっぷり伺いました。
映画『金髪』作品紹介
【第38回東京国際映画祭 観客賞受賞】
その日、中学校教師・市川(岩田剛典)の人生を大きく変える出来事が起きた。
一つは担任クラスの生徒数十人が髪を金色に染めて登校してきたこと。
前代未聞の大胆な校則違反とその抗議に学校中が大騒ぎ。
そしてもう一つは、彼女から結婚の話を切り出されたこと。
まだ30代。人生を決めるのは早い?というか考えたこともなかった市川…。
仕事の問題と人生の決断が一挙に押し寄せ窮地に立たされるも、大人の対応で全てを解決できるのか!?
(※映画『金髪』公式サイトより引用)
2025年11月21日公開
市川が社会人の愚痴を代弁。誰もが共感できるキャラクター

岩田剛典さんの前回インタビューはこちら↓
ー今回、映画『金髪』で主演を務める岩田さん。まずは、脚本を読んだときの感想を教えてください。
岩田剛典さん(以下、岩田): 読んだ瞬間、めちゃくちゃ面白いと思いました。この主人公を演じたいと強く思いましたね。
『金髪』は、現代社会の問題を愚痴と笑いを交えたコメディテイストで描いた作品。共感していただける方はきっと多いだろうなと思いました。
今までに挑戦したことがない作風で、ぜひ出演したいなと思いました。

ー次に、今回演じた主人公の中学校教師・市川について教えてください。
岩田:市川は、映画の中で現代の社会人の心の声を代弁する役割を担うキャラクターです。
みんなの思いを代弁する役割だからこそ、キャラクター的には“どこにでもいる人”。
僕自身も市川に共感できる部分が多かったです。
ーどんなところに共感しましたか?
岩田:市川が抱く、“社会人ゆえの愚痴”です。
社会人になると、いろんな理不尽と戦わないといけないですよね。
そんな社会人ゆえの心の叫びというか、他人には言えないようなことを脳内ナレーションでずっとブツブツ言っているんです(笑)。
皆さんも市川の愚痴に共感していただけるんじゃないかなと思います。
ーセリフ量がすごく多かったですよね。
岩田:そうなんです。セリフが長い分、読み上げているだけのようにはならないよう、なるべく自然に言うことを意識しました。

作品の核は、板緑と市川が校則について論議するシーン

ー注目してほしいシーンはありますか?
岩田:⽩⿃⽟季さん演じる中学生の板緑(いたろく)と市川の2人が、校則について論議するシーンです。坂下雄一郎監督が、このシーンが作品の核だとおっしゃっていました。
ーそのシーンについて坂下監督からアドバイスはありましたか?
岩田:セリフのテンポ感についてアドバイスをいただきました。セリフの掛け合いなので、お互いすごく早口で。
板緑は賢くて頭の回転が速いキャラクター。板緑に負けじと言い返す市川のスピード感を意識しました。

ー坂下監督が、「岩田さんの演じる市川は、笑顔の向こう側が空っぽになっていて面白い」とコメントしていました。
岩田:自分としては、意識していたわけではないんです(笑)。本当に脚本通りにお芝居をした結果、そうなっていたんだと思います。
実は、僕は自分の映り方は本当に気にしないタイプで、現場ではモニターチェックもしないんです。
お芝居をするうえでは、監督に「オッケー」と言われることが全てなのかな、と考えています。
ただ、自分が出演した作品を見返して、演技について「ここがよかった」「ここはダメだった」と振り返るようにしています。

ー印象に残っている撮影はありますか?
岩田:印象に残っているのは、若者の集団がお店の前でたむろしてるところに突っ込んでいくシーンです。
本当に意味不明なシーンで、その意味不明さがすごく面白かったです。
脚本を読んでいても面白かったんですけど、実際の撮影中は笑いを我慢するのが大変でした(笑)。
ー現場の雰囲気はいかがでしたか?
岩田:現場の雰囲気はとても和やかでした。
坂下監督はほんわかしている“癒し系”の方なんです。そのおかげで、現場の空気も和やかになったんだと思います。

ー『金髪』は、板緑を筆頭に中学生たちが校則に問題提起する作品。岩田さんご自身は学生時代、校則をどう捉えていましたか?
岩田:僕自身は、あんまり校則に反発するタイプではなかったです。
中学校まで校則がすごく厳しかったんですが、守るのが当たり前だと思っていたんです。
でも今(大人)になってみるとおかしいと思います。
ー改めて、作品の魅力を教えてください。
岩田:みんな決められたルールの中でなんとなく生きている、ということを風刺している作品だと思います。そして、大人になるまでに誰もが一度は通過する悩みのあるあるを描いています。皆さんに共感して、笑っていただけたら嬉しいです!

“良い年齢の重ね方”は、「幸せでい続けること。ときめく瞬間を大事にしています」

ー市川を通じて、“年齢の重ね方”についても考えさせられる『金髪』。岩田さんにとって、“良い年齢の重ね方”はどんなものですか?
岩田: そうですね…。幸せでい続けられることでしょうか。
ー幸せでい続けること。そのために、気を付けていることはありますか?
岩田:自分がときめく瞬間を大事にするようにしています。
例えば、新しいことに挑戦するとか。新しいことにチャレンジしている瞬間って、やっぱりときめいているなって思うんです。
今は韓国の番組に出演していて、日本語が全く通じないんです。そんな環境にいるとたくさん刺激を受けますし、気づかされることが多いですね。

ー審査員や自身初のソロアジアツアーなども始める岩田さんにとって、今年は変化の年だそうですね。
岩田: 本当に変わりましたね。別人のようになっちゃいました(笑)。
環境が大きく変わったわけではないんですけど、こんなにも心理的に変化が起きるとは、自分でもちょっと驚いています。
ー具体的には、どのような変化がありましたか?
岩田:生き方のベクトルが変わりました。
前までは、何かを積み上げていくことをすごく大事にしていて、積み上げていくのが人生だって思っているタイプだったんです。
でも、積み上げていく作業ってキリがないんですよね。だから、一度積み上げたものを全部ぶっ壊してみるフェーズなのかなってふと思ったんです。
ーでは、これからも新しい挑戦を続けていくのでしょうか?
岩田: そうですね。“こっから”です(笑)。
まだ自分が知らないものとか、知らない景色を見てみたくて。臆せずいろんなことに挑戦していきたいです。
生まれ変わったぐらいの気持ちで頑張りたいなと思っています。

ーすでに輝かしいキャリアを積み上げてきた岩田さん。新しいことに挑戦し続けるそのバイタリティは、どこから来るのでしょうか?
岩田:なんでなんですかね…。でも、実はあまりはっきりとした理由はないというか、年齢やタイミング、巡りあわせなんだと思います。
30代という年齢って、どんな業界の方も皆さん、この先どう生きていくのか改めてもう一度考える時期だと思うんです。
今までに培ってきた経験値や積み上げてきたものに頼って糧にしていると、気が付けばあっという間に10年は過ぎてしまう。
その10年後に何か新しいことを始めようとしても、そのときにはもう必要な体力がないかもしれないですよね。
それならば、体力のある今のうちにもうちょっといろいろ可能性を探ってみようかなって思えた、という感じです。

ー今年(2025年)も残りあと少しですが、今年中に何かしたいことはありますか?
岩田:いろんな人や友達に会いたいですね。
今年はすごく忙しくて、プライベートの時間が今までで一番なかったんです。
振り返ってみると、本当に仕事しかしていなくて(笑)。だから、会えていなかった人や友達に会ってお話ししたいです。
ー最後に、岩田さんにとってファンの方はどんな存在ですか?
岩田:本当にファンの方に生かされていると思いますし、感謝しています。
ファンの方がいなければ映像作品も観てもらえないし、音楽も聴いてもらえない。みなさんのおかげでこうやって生活できているし、ここまでのキャリアも歩めてきたと思うんです。
だからこそ、 応援してもらう立場ならば、積み上げてきたものに頼って楽をするのではなく、自分を鍛えて磨き続けるべきなんじゃないか、と思うんです。
ーなるほど、新しい挑戦を続けるのはファンの皆さんのためでもあるんですね。本日はたくさんのお話をありがとうございました!

岩田 剛典(いわた たかのり)プロフィール
1989年3月6日生まれ、愛知県出身。三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEとEXILEのメンバーとして2010年にデビュー。2013年から俳優活動も開始し、舞台「あたっくNo.1」で俳優デビュー。ドラマ『ディア・シスター』『ワイルド・ヒーローズ』『HiGH&LOW THE STORY OF S.W.O.R.D.』『砂の塔~知りすぎた隣人』『崖っぷちホテル!』『シャーロック』など話題作に多数出演。映画では『植物図鑑』(初主演)、『去年の冬、きみと別れ』『パーフェクトワールド 君といる奇跡』などで高い評価を受け、第41回報知映画賞新人賞や第40回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ複数の新人賞を受賞。趣味・特技はダンス、サッカー。
●Instagram @takanori_iwata_official
岩田 剛典さん出演作はこちら
↓↓↓
撮影:髙橋耀太