【谷口翔太インタビュー】出演作がアカデミー賞を受賞!『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』に出演したバイプレイヤーの素顔とは

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映画『シン・ゴジラ』、『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』―――。日本を代表する特撮怪獣映画2作品に立て続けに出演している俳優の谷口翔太さん。「エキストラから始めて、今も下積みのようなもの」という彼ですが、誰もが知るドラマや映画に多く起用される縁の下の力持ち的な存在でもあります。名バイプレーヤーの谷口さんに、これまでの人生を振り返っていただきました。

ゴジラ映画に出演して、初めてゴジラのすごさを知った

2016年公開の『シン・ゴジラ』は、現代の日本に上陸するゴジラを描いた話題作。庵野秀明氏が脚本・総監督を務めた。キャストは328人。最終興行収入82.5億円。

シン・ゴジラ
「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明による新しい「ゴジラ」ストーリーが誕生

2023年公開の『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』は山崎貴氏(VFX・脚本・監督)による映画。戦後に復興に向かって歩き出した日本をゴジラが襲う。累計興行収入は73億円、観客動員数は489万人(4月14日時点)を記録。『シン・ゴジラ』を上回るのではないかと期待されている作品。日本初、第96回アカデミー賞®視覚効果賞を受賞した。

ゴジラ-1.0
生きて、抗え。焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。...

―谷口さんといえば去年、あるツイートで一躍話題になりました。「シンゴジ(映画『シン・ゴジラ』)とマイゴジ(映画『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』)と闘ったのは唯一僕だけなんだって、さっき山崎監督から教えてもらっちゃった」 谷口さんにとって2つのゴジラ映画への出演は、俳優人生の大きなターニングポイントになったのではないですか。

谷口翔太さん(以下、谷口):そうですね。すっかり“ゴジラ俳優”と呼んでいただけるようになりましたが、それは、マイゴジの前に、庵野秀明監督がシンゴジで僕を起用してくれたことが大きかったと思っています。映画公開後に、見てくれた人の話を聞いて初めて、ゴジラ映画に出ることが、どれだけ特別なことかと実感できたというか。

僕自身は少年時代にゴジラにハマっていたわけではなくて、映画出演のおかげで、ゴジラがどれほど日本人に愛されていて奥深いものかを再認識できました。

『シン・ゴジラ』に出たあと、街を歩いているときに小学生の男の子から「あ!“きょさいたい(巨大不明生物災害対策本部)”の防衛課長だ!」って声をかけられたことがあったんです。「なんで知ってるの?」と聞いたら「僕、10回見たから!」って。ゴジラは大人だけではなく、子どもも夢中になる映画なんですよね。

“シンゴジ”には総勢328人のキャストが出ているんですが、「328人全員を探そう」といって、DVDをコマ送りにして見ているファンの方もいるそうで。そうなるともう、映画の見方じゃないですよね(笑)。あらゆる意味で、本当にすごい映画でした。

―谷口さんのご家族や友人は、出演作を見られて何かおっしゃいましたか?

谷口:『シン・ゴジラ』でやった防衛課長役は、いつも常にふざけている僕とはかけ離れている、シャープなイメージの役どころでした。でも実は、その役こそが谷口翔太の本質に近いのではないかと周りには言われました。例えるなら、トイレに座っている時の僕というか。

―トイレ、ですか?

谷口:そう。誰かと対面しているときは、みんな自分を装っているところがあるじゃないですか。でも、トイレの便座に座っているときの自分は、誰も見ていない、“素の谷口翔太”なわけです。つまり、誰も知らない僕。ナチュラルに、自分自身を投影した役だったんじゃないかと自分でも思います。

―『シン・ゴジラ』出演後、山崎監督から『ゴジラ-1.0』の出演を打診されたときはどんな風に思われましたか。

谷口:山崎さん(監督)に自分の名前と同じ「谷口」という役をいただきました。その作品がアカデミー賞を取っちゃったという。自分が出演した作品がアカデミー賞を取るなんて、びっくりですよ、いやもうほんとに。

「教員免許を取らなければ、俳優になることは許さない」と両親から

―谷口さんはどんな少年時代を過ごしたんでしょう。

谷口: 小学生のときは目立ちたがり屋でした。クラスに1人はいる、調子に乗ったタイプ。今と変わりません(笑)。好奇心旺盛で、サッカー、習字、水泳、ピアノ、そして週3の子どもミュージカル。習い事で1週間すべての曜日が埋まっちゃう、そんな日々を送っていました。結局、長く続いた習い事はミュージカルで、小4~中2までやっていました。ミュージカル団に在籍していた100人のうち、僕を含めて男子がたったの4人で。バレエのレッスンで、全身タイツを着て大勢の女子の前でくるくる回る。ちょうど思春期だったので、それが嫌になってやめちゃった(笑)。

―でもひょっとすると、それが俳優のルーツかもしれないですね。

谷口:かもしれないですね。その後、映画館で『バトル・ロワイアル』という映画を見て衝撃を受け、「僕も映画に出たい!」と思うようになって。いろんな人に相談して、高校1年のときに今の事務所に入り、翌年『リンダリンダリンダ』という映画でスクリーンデビューしました。

―高校を卒業してすぐ俳優の道に?

谷口:いえ、それは親に大反対されました。僕の両親、2人とも教員だったんです。僕が「役者やりたい。大学行く気はない」と話したら「絶対ダメだ」と。「大学に行って、教員免許とったら考えてやる」って言われたんですよね。結局、俳優になるために、大学に進学しました。

教育実習先は自分の母校でした。当時、初めての連ドラ出演が決まったタイミングで、それが『ブラッディ・マンデイ』の、殺人犯の役。その放送日が、まさに教育実習期間に被りまして。放送直後は学校中で騒ぎですよ。

じわじわ気づいていくんです、子どもたちが。「テロリストが先生してるぞ!これは何かのドッキリだ!」って(笑)。まだいいんですよ、男の子は。女の子なんて、こっちが「元気?」って聞いても、小さな声でこわごわ、「はい」って微妙な空気感で。まあ、役が役ですからね(笑)。

そのうち、子どもたちの騒ぎに気づいた教頭先生に「ちょっと来てください」って呼び出されまして。僕が行くと「一体どういうつもりですか。あなた、教員になりたくてここに教育実習に来ているんじゃないんですか」って問い詰められたんです。「僕、本当は俳優になりたくて…」と言ったら、「将来、どうするかちゃんと考えてきてください」と言われてしまいました。「とりあえず明日の第8話の放送を見てください」と教頭先生に言っても、「そんなの見ません!」と、取りつくしまもなくて…。

“教員免許を取ることは親にも約束しちゃっているし、答えなんて出せねーよな…”と悩みましたよ。ドラマの放送が土曜の夜だったので、週明け月曜日にとぼとぼと教育実習に行って、教頭先生に「おはようございます」と言ったら、「谷口くん!!…素晴らしかった!!」って。「え?」ですよ、もう。

「僕のドラマ、見てくださったんですか、ありがとうございます」という僕に、「あの“クッ!”て迫りくる表情がたまらなかった」って教頭先生が。

「じゃ、あの教育実習は…」「あのね、実習はもう続けてください、続けてください!それで教員免許を取って、素晴らしい俳優になりなさい!!」って言ってくれました。無事に教員免許は取れました。そして俳優という職業を選び、仕事をしています。それから何年後かに、母校の広報関連でインタビューの打診をいただいて…恩返し出来たかなと感慨深かったです。

両親は、“俳優という仕事は水ものだし、いざというときには教師になれる道があったほうがいいだろう”と、僕のためを思って考えてくれたようです。ただ、本当に厳しい親なので、俳優になってからも、演技を褒めてくれたことは一度もないです。常に「甘い」しか言われないですね(笑)。

とんかつの“からし”、牛丼の“紅ショウガ”のような俳優になりたい

―谷口さんはどんな俳優を目指しているんですか。

谷口:うーん、例えば…。白衣を着たお医者さんは「先生、先生」と言われますが、白衣を脱いでオフィス街を歩けば普通のおじさんですよね。弁護士の先生も、弁護士バッジをつけているから「先生」って言われてる。でも俳優という職業は、衣裳を着て役になりきったときに魅力的になるのではなくて、衣裳、役柄、全部なくなっても魅力的であり続けなくちゃいけない仕事だな、と思ってますね。

僕ね。お芝居はもちろん好きなんですけど、正直言うと、「生ものの現場」が好きだから、俳優を続けられている気がしますね。その現場でしか会わない人たちと、家族よりも長く濃い時間を一緒に過ごして、気づくと家族よりも仲良くなっちゃって、プライベートのことを話しちゃってる。でも現場が終わればその関係がピタッと止まって、中にはその後、一生会わない人もいる。そしてまたそれぞれが、次の現場に散っていく…そんな繰り返しが、俳優という仕事ならではだと思うんですよね。

―今後、やってみたい役はあるんでしょうか。

谷口:これがやりたいって役はね、ないです。逆に言うと、何でもやってみたいっていう気持ち。個性的な顔立ちで、一度見たら忘れられないのは自分の武器かなと思っているので、こんな僕にこんな役やらせたい、あんな役やらせたいって思っていただけるように努めていきたいと思っています。役の大小は選ばず、365日、何かの台本を持って仕事をしていたいっていうのが僕の勝手な目標なので。

僕ね、とんかつの“からし”みたいな役者になりたいんですよ。牛丼の“紅ショウガ”。カレーライスの“福神漬け”みたいな。なくてもいいけど、ないと寂しいし、あるとクセになる、そんな役者にね。

―2024年から2025年にかけて、情報解禁前のお仕事もたくさんあるそうですし、画面で谷口さんが見られるのを楽しみにしていますね。ありがとうございました。

谷口翔太(たにぐちしょうた)プロフィール

埼玉出身、1986年5月12日生まれ。2005年に映画『リンダリンダリンダ』で役者デビュー。ドラマ『ブラッディ・マンデイ』(TBS系)、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、『集団左遷』(TBS系)、『義母と娘のブルース』(TBS系)ほか、映画『シン・ゴジラ』、『ゴジラ-1.0』ほか出演多数。

・X @ shota3mawx

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