2014年の福島が舞台の映画『心平、』妹役・芦原優愛 「ちゃんと希望を持てる映画」

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東日本大震災から3年後の福島を舞台に、“家族”を描いた映画『心平、』

8月17日より新宿K’s cinemaにて上映されます。

今回は主人公・大村心平の妹・大村いちご役を好演した芦原優愛さんにインタビューしました。映画『心平、』についてや撮影現場の様子など、魅力的なお話をしていただきました!

映画『心平、』作品紹介

©冒険王/山城達郎

福島のある小さな村に住む心平は、幼い頃から通っている天文台で働く妹と、兼業農家の父を手伝いながら暮らしていたが3年前に起きた原発事故によって農業が出来なくなってしまった。以来、職を転々としてきた心平は、今は無職である。

父・一平は、そんな心平に軽度の知的障害があることに向き合えないでいる。小遣いをやるだけで、息子の未来のことを諦めている一平は、不本意な自分自身のことも酒でごまかしていた。

妹・いちごは、そんな呑んだくれの父と働かない兄のために家事をする日々に、ウンザリしている。母は、自分を産んですぐに家を出ていったきり、帰ってこなかったという。私たちは捨てられたのだ。と、いちごは、全部を恨んでいる。そして、近所の住民から心平が避難中の家々で空き巣をしているらしい、と聞いたいちごと一平は、家を出たまま帰ってこない心平を追いかけてある場所へとたどり着く。そこで見たものは、思いがけない光景だった――。

映画『心平、』公式サイトより引用

出演女優が語る映画の世界 「いちごの“人を放っておけない性格”が似ている」

ー映画『心平、』とはどのような作品ですか?

芦原優愛さん(以下、芦原):この映画は東日本大震災から3年が経った福島に住む家族のお話です。私の演じた大村いちごは胸の奥に言い出せずにいるものを抱えていて、いちごの兄・心平は軽度の知的障害を持っています。父はそんな子どもたちや自分自身とうまく向き合えずにいて…。

「家族」が中心のテーマになっていますが、その中に色々な要素が入っている作品になっていると思います。

ー役作りをしていくうえで気をつけたことなどはありましたか?

芦原:それはあまりなかったように思います。いちごの兄の奥野瑛太さんが演じた大村心平は軽度の知的障害を持っているという設定ですが、障害を持っているからといって、あえて特別なことを考えて役作りをしようとは思いませんでした。

軽度の知的障害を持っていたとしても、自分の兄であることに変わりはないから「お兄ちゃん」って接するんだろうし、そう考えると私の役作りとしては、特別に普段と違う役作りをする必要は無かったです。

©冒険王/山城達郎

ー芦原さんが演じた大村いちごはどのような人物だと思いますか?

芦原:いちごは結構強い子だなという印象がありました。でも実際に演じてみて、強い子を演じることに集中しすぎても、ただのわがままな子になってしまうと思ったので、そこは注意しながら演じました。

いちごはその日その日を生きているような人だとも感じました。お母さんがいない分、自分の仕事に加えて家事も全てやらなければならなかったので、自分の恋などを捨てて生きていたという点では“家”というものに縛られてたのかもしれないなって思います。

ー大村いちごという役を演じてみて、いちごに共感できる点や似ていると感じたところはありましたか?

芦原:いちごの「人を放っておけない性格」が私と似ていると思いました。

私には15歳下の妹がいるので、「いいお姉ちゃん」になりたくて色々やってあげちゃうんですよね(笑)。

でもいちごは「やってあげたい」というより「仕方なくやってあげる」感じなので、そこは少し違うかもしれません。

ー大村いちご役はどのように決まったのですか?

芦原:ありがたいことにオファーをいただきました。山城達郎監督の作品に出演するのは『ダラダラ』(2022)以来で、今回の『心平、』で2回目でした。

『ダラダラ』を撮った時はちょうどコロナ禍の時期で、色々なハプニングが起きたんですよ。そういう経験を共にしたからこそ、今回何か起きたとしても私なら臨機応変に対応してくれるだろうと信頼してオファーしてくださったみたいです。

ー共演した俳優さんとの思い出に残っているエピソードはありますか?

芦原:いちごのお父さんの大村一平役を演じた下元史郎さんと撮影のお休みの日が何度かかぶることがあって、撮影期間中みんなでずっと同じ宿に宿泊していたから、お休みの日にすれ違うと「どこ行くの?」って下元さんが声をかけてくれて、「ちょっと散歩してくる」って返事するみたいなやり取りをしました。

家族の設定だからといって無理してたくさん話そうとするのではなく、ちょうどいい距離感で心地良い雰囲気を作れていたと思います。

これは私のエピソードではないんですけど、奥野さんと下元さんは結構お芝居に関してディスカッションをしていました。やっぱりお互いにそれぞれ思い描くお芝居のプランがあるので、話し合いながらシーンを完成させていく真摯さが素敵だなって思いました。

「希望を持てる映画」 福島で挑んだ映画撮影

©冒険王/山城達郎

ー撮影をしていて大変だったことはありましたか?

芦原:撮影が結構タイトなスケジュールだったので、そこが大変でした。撮影期間が10日間くらいで、しかも真夏だったのでずっと暑い中での撮影だったんですよ。

その日に予定されているところまで撮り終わらなくても次の日に回すことができないから、深夜まで撮影を続けるということもありました。

改めて思うと大変なシーンだらけでしたね…。走る場面では体力も必要だし、心平といちごが相撲を取るシーンでは奥野さんが本当に私のことを海の方に倒そうとしてきたので、結構本気になって相撲をしました。ただでさえスケジュールが詰まっていたから、海水でびちょびちょに濡れるわけにもいかなったので(笑)。

ーこの映画の舞台は東日本大震災から3年が経った福島でしたね。

芦原:撮影したときは震災から12年ほど経っていていましたが、福島にはまだ震災の爪痕が残っていました。津波で全てが流されて何もなくなってしまったところや、家の囲いだけが残ってできた四角の枠の中に、ただ草だけが生えていたり…。

被災した時よりも空気はきれいになっているし、規制も解除はされているんですけど、まだ人が戻ってきていない町をそのままお借りして撮影を始めていったみたいです。だから住人はいないのに生活感だけが残っているというような雰囲気でした。

“大村いちご”という役に入っていたということもあり、福島のその風景を見ても重く受け取りすぎずにお芝居ができたと思います。

ー印象に残っているシーンを教えてください。

芦原:心平がぬか漬けで自分の気分を表すところです。こういうちょっとした場面でも、そこからなにか新たに発見できる、感情が読み取れる良いシーンになっていると思いました。

全体的に日常感のあるシーンが多かったと思います。脱ぎっぱなしの服を注意しているシーンとか、父と息子の距離感とかが結構リアルです。

©冒険王/山城達郎

ー『心平、』の出演が決まり、ファンの方からの反応などはどうですか?

芦原:山城監督作品にもう一度出演できるということで、それを喜んでくださっているファンの方もいらっしゃいました。なので公開されてからの反応も楽しみです。

ーこの作品の見どころや注目してほしいところを教えてください。

芦原:奥野さんが軽度の知的障害持ちの心平という人物をすごく丁寧に演じて作り上げてくださったので、そこをちゃんと見ていただきたいですし、下元さんが「心平に上手く向き合えないお父さん」をとてもリアルに演じてくださったと思います。なので「大村家」を優しく見守っていてほしいです。

福島の色々なところで撮影したことで、ありのままの福島を映せているのも魅力のひとつです。最初からずっと被災した福島の話が続くというわけではなくて、ちゃんと希望を持てる映画になっているので、家族の話として私たち大村家を見に来てください。

家族とうまくいっている人やうまくいかず悩んでいる人も、いちごみたいにとにかくやるしかなくて、仕方なく“家”に縛れながら生きている人も、どんな人でも見に来ていただけたら嬉しいです。

俳優・芦原優愛 「“今”が充実していられるように過ごしていけたら」

ー芸能界デビューのきっかけについて教えてください。

芦原:『探偵学園Q』(2007)というドラマで、自分と同世代の方が活躍していて、すごく輝いて見えたので、“私もお芝居をしてみたい”と興味を持ちました。

そこからオーディションを受けて事務所に所属して、この業界自体には10代からいますが、本格的に演技を始めたのは24歳のあたりでした。

ー思い出に残っている作品はなんですか?

芦原:『ダラダラ』ですね。その時まで映像作品にはあまり出演していなかったので、映画を見てくれた方から感想をいただけるということが嬉しかったです。

あとはドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(2024)が記憶に新しいですね。私は高校生の時に調理師免許を取っていたので、お芝居をしながら、ドラマ内で登場する料理のフードコーディネーターも担当していたんですよ。

俳優としてお芝居もしながら、ドラマで使うご飯も作るということが思い出深かったです。

おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!
このドラマの主人公は、世間の古い常識・偏見で凝り固まったひとりの中年男・沖田誠(51)。 家族からは「堅物」と嫌われ、デリカシーのないその言動は会社の部下からも...

ー今後演じてみたい役を教えてください。

芦原:ハツラツとした役を演じることが多かったので、逆に闇を感じさせるような暗い役を演じてみたいです。

ーお芝居をするにあたって役作りのコツなどはありますか?

芦原:結構役によるかもしれないです。現場で共演する俳優さんを見ながら雰囲気を感じて役作りするときもありますし、自宅で役として生活してみるところから役作りをするときもあります。

ーこれからどうなりたいかなど、将来の目標を教えてください。

芦原:私はあまり先のことは気にせず生きているんですよ。だから“今”が充実していられるようにこれからも過ごしていけたらと思います。

芦原優愛(あしはらゆあ)プロフィール

1993年11月13日生まれ埼玉県出身。代表作は、映画『ダラダラ」(22/山城達郎監督)、テレビでは東海テレビ・フジテレビ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」、テレビ朝日「IPサイバー捜査班」。舞台では、「りさ子のガチ恋♡俳優沼」(2022年)、「DECADANCE-太陽の子-」(2020年)CMでは、「ガリバー」、「LINEモバイル」など多岐にわたり活躍。

Instagram @yua_ashihara_official

X @yua_ashihara

映画『心平、』初日舞台挨拶について

©冒険王/山城達郎


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