今回は、2025年9月5日(金)より日本公開される映画『ヒックとドラゴン』日本語吹替版で主人公・ヒックの声を担当された坂東龍汰さんにインタビューしました。
初挑戦となる吹替のアフレコについてや実写映画ならではの魅力を語っていただきました。
映画『ヒックとドラゴン』作品紹介
何世代にも渡り人間とドラゴンが戦いを続けているバーク島で暮らすヒックはある日伝説のドラゴン、ナイト・フューリーと運命的な出会いを果たす。
トゥースと名付け、友情を育む中で、ドラゴンと共生する方法がないか模索していくがある古代の脅威が世界を危機に陥れ…
映画『ヒックとドラゴン』公式サイトより引用
2025年9月5日(金)より日本公開
吹替に初挑戦「ヒックの心の変化や成長に自然とリンクしていた」

ーユーウォッチの取材が2回目の坂東さん。今回の映画の主人公・ヒックの吹替を演じられて、どうでしたか。
前回インタビューはこちら↓
坂東龍汰さん(以下、坂東):声優のお仕事はアニメーション映画『ふれる。』(2024)の1回しかやったことがなく、吹替は初めてだったので僕にとってはまだまだ未知の世界でした。
最初は弱々しかったヒックがトゥースと出会ってどんどん成長していく姿を見て、役者を始めた頃の自分と重なって胸に響くものがあり、そういう部分を声で表現できたらいいなって最初は思っていたんですけど、実際にやってみるとそういうことでもなくて。
3日間の撮影期間の中で、1日目よりも2日目の方が、2日目よりも3日目の方がというように収録現場での僕自身の成長が、ヒックの心の変化や成長に自然とリンクしていたんです。
吹替の完成版を見させていただいた時に、「だんだん自信をつけてるな」と変化を感じました(笑)。
ーその変化はどういうところから感じられましたか。
坂東:物語の後半へ進んでいくにつれて、声優のお仕事に不慣れだった僕自身の成長がヒックの声の色にも出ていたと思いますし、極端に言えば声の音色すらも変わっていて。
でも、実際に撮っている最中は「ヒックの成長を表現しよう」「声の高さを変えよう」と意識していたわけじゃなくて、ヒックの感情を意識していたら自然とそうなっていったんだと思います。
ー収録していて難しかったことはなんですか。
坂東:テクニックの部分です。最低限出来ていなきゃいけないところができていなかった。
でも、急にやれって言われてもできないことなんですよ。声優としての技術は、プロの声優さんが何十何百、何千作品とやってこられている中で培っていくものだと思います。
僕ら俳優は、実際に自分の体と顔を映して演技をするから、例えば今回の映画だったら俳優は自分の体を使ってドラゴンライドのシーンを撮る。それが俳優の芝居なんです。
自分の芝居にアフレコで声を当てることもありますが、それは自分の顔に自分の声を当てていくからすごく自然にできるんですけど、誰かがやった芝居に自分の声を乗せるのは慣れない作業でした。
日本語で話す尺と英語で話す尺自体も違うし、間の取り方も違う中で、さらにそこに僕なりのヒックとしての表現を入れていくとなると、もう考えることが多すぎて(笑)。
常に頭をフル回転させて、尺を考えながらやっていくというのは難しいことでした。
ーなるほど。確かに英語と日本語では話すスピードや文の長さって違いますね。
坂東:そう、だからセリフが漏れちゃって。
ヒックが話し始めたタイミングにドンピシャで声を当ててスタートするというのがなかなか難しい。しかもセリフを1つずつ撮っていくわけじゃなくて、一気に撮ってから調整していくって流れだったので、セリフが漏れちゃうともう置いてけぼり…。
お芝居をする以上極力一発で一気に撮りたいんですけど、一発でピタッといくところはほぼないくらい難しかったです。

ー難しいところもやっていく中で克服していったんですか。
坂東:いや、もう結局身につかないまま。でも自分なりの工夫ができました。
ヒックが話し始めていても動揺せず、自分の間で話し始める。ヒックが話し終わっても普通に自分の間で続ける。そうすると、はじめに遅れた分セリフが漏れるので、それを繰り上げてもらうとピッタリになる(笑)。
手探りでやっていたらそういうこともできました。
ー不慣れさも逆手にとって工夫する、すごいですね。
坂東:もう開き直りです(笑)。でも監督も「それでもできる」「気にせず自分の間でやってほしい」とおっしゃっていました。
ー日本語吹替版の監督とのやりとりの中で印象深かったことはありますか。
坂東:なんでヒック役が僕に決まったのかが分からなかったので、「どうしてですか」って聞いてみると、「ヒックっぽい」と。「坂東くんが素でヒックっぽいし、主演の方と骨格とか顔の形の作りが一緒だから声が合わないわけない」って言われたのはすごく心強かったです。
最初はやっぱり僕で大丈夫なのか不安だったんですけど、「素の自分でありのままのヒックを」と言っていただけたのはうれしかったです。
映像美、音楽、ストーリー。「ヒックとドラゴン」の語りつくせない魅力

ー今回の役が決まった経緯についても教えてください。
坂東:ヒック役のオーディションがあるって聞いて、「やってみたい」と思ったのでオーディションを受けました。
でも、まさか自分に決まるとは思っていませんでした。海外の作品なので、本国チェックがあるんです。オーディションで撮影したものを(本国へ)送っても「全然ダメです」ってパターンも多々あると聞いて、期待はしていなかったんですけど、それでも決まったと聞いた時は素直に嬉しかったし驚きました。
この「ヒックとドラゴン」というのは大作ですし、自分の畑じゃないところで仕事をするという新しい挑戦に対するプレッシャーはありました。
ーそのようにして決まったヒックという役に共感できるところはありましたか。
坂東:ヒックというか、メイソン・テムズさんの演じられたヒックの“動き”に共感しました。
「僕がヒックを演じるとしてもそうするだろうな」とか「ここでこの表情でこの声のトーン、わかるわかる!」というように俳優目線で共感するところが多かったです。
今回は彼の演じた役に日本語で命を吹き込むっていう仕事。まずはメイソン・テムズさんの芝居・表現を好きになる、彼の役へのアプローチを好きになるというところから入って、ヒックをさらに好きになっていったように思います。
初めましての人でもいいところを見つけたら好きになっちゃうみたいな、そんな不思議な感覚でした(笑)。
ー好きなシーンはどこですか。
坂東:ヒックが初めてドラゴンライドに成功する一連のシーンは特に印象的でした。IMAXカメラで撮影された映像の疾走感や音楽が素晴らしくて。
しかもあそこの声、一発OKだったんです。その高揚感もあって、撮り終わった後に「ちょっと見させてください」って言って現場のみんなで見て、「最高ー!!」って言いながら何回もおかわり。「もうええやろ」ってつっこまれるくらい何回も見ちゃって(笑)。
ドラゴンに乗っていることを想像しながらで難しいシーンなんですけど、声のトーンやテンションが一番しっくりきて、自分でも手応えがありました。

ー声優初挑戦となった映画『ふれる。』の時と比べて、今回はどうでしたか。
坂東:前回はシーンに合わせて本当に自分も動いてしまっていましたが、今回はもう直立不動で(笑)。
ー『ふれる。』の際のインタビュー記事も拝見しました。途中から裸足になったとか。
坂東:前回の反省を生かしてちゃんと靴は脱いでやりましたし、準備運動がてらストレッチとかもしてみたり(笑)。
ドラゴンライドのシーンでもヒックは興奮して心拍数があがっているはずなので、ももあげをしてみたりとか、そういう動きはするようにしました。
前回声優をしたアニメ映画の時も「またご縁があったら声優をやってみたい」って思いましたし、今回の監督は声を当てるだけでもシーンに合わせて体を動かしたくなってしまう僕のことを“ヒックっぽい”と言ってくださいました。僕の普段の感じもヒックに合うという理由で選んでくださったのは本当にうれしかったです。
ー声優の面白さはどこにあると感じましたか。
坂東:映像は同じでも自分の声を少し変えるだけでキャラクターの印象が全然変わってくるというのはやりがいがありますし、自分の声で表現する面白さも感じられました。
実際には演じられない役でも、声優としてなら演じられるところも魅力です。三歳児とか、小鳥Aみたいな動物の役とかもやってみたい。今回ならそれこそトゥースとか。実は一人二役でしたみたいな(笑)。
普段ではできない役を演じられるのは声優の面白いところだと思います。
ーなるほど。出演された坂東さん目線で、この映画の魅力を教えてください。
坂東:映像美が本当に素晴らしいし、なんかもうため息が出ちゃうくらいの壮大なスケール感に圧倒されます。
IMAXで英語版の方を見させていただいたんですけど、「とんでもない作品の吹替をやっちゃってんな」って現実味がなくなるくらいすごかったです。収録中は小さな画面を見ながらやっていた分、IMAXの大きなスクリーンで見た時に「あれも見える、こんな音聞こえる!」ってすごく感動しました。
やっぱ映画は映画館で見なきゃいけないなと思いましたし、今回の作品は本当に映画館向き。ドラゴンのシーンも迫力がすごいですし、4Dとかで見るのもすごく楽しいと思います。
内容ももちろん魅力的で、ヒックが成長する姿やアスティとの恋愛、お父さんとの親子の関係性の変化も注目です。
あとはジョン・パウエルさんの音楽もすごく好きですね。アニメ映画『ヒックとドラゴン』(2010)も手掛けられているからすごくマッチしているし、アニメ版のファンの人も絶対楽しめます。アニメのカットに忠実にそのまま実写化している部分もあるので、初めて「ヒックとドラゴン」を見る方も、昔から好きな方もぜひ見てほしいです。
多彩な実力派俳優・坂東龍汰の価値観。「語学留学にいってみたい」

ー2025年下半期も、色々な作品への出演が決まっています。今後やってみたいことについて教えてください。
坂東:語学留学に行ってみたいです。
これはずっと言っているんですけど、全然行けていないのでちゃんと考えます。
ー語学留学に行きたいというのはなぜですか。
坂東:今後のためというのもそうだし、僕は違う環境に自分の身を置くのが好きなタイプの人間なんです。このお仕事も、全然違う環境に自分の身を放り投げる仕事なので、飽きずにやれているんだと思います。
あとは、最近お仕事で海外へ行く機会もあって、CMでオーストラリアに行ったりとか、DIORのイベントでパリに行ったりとか、そういうお仕事もちょこちょこいただけるようになってきたので、改めてそろそろ(語学留学へ)。
ー行きたい国、場所は?
坂東:もうどこでもいいというか(笑)。インドにも行きたいし、スウェーデンとかにも行きたいし、モンゴルやチベットにも行きたい。本当に幅広く、行けりゃどこでも。
その国に行きたい理由がなくても楽しめる気がするんです。知らな過ぎて怖かったとしても、それも含めての旅だなって。
ーなるほど。お忙しい中でのリフレッシュ方法や休日の過ごし方はどうですか。
坂東:どう過ごしてるかな、本当つまんないんですけど、寝てます。
お休みの前日ってやっぱりお酒を飲んじゃうんですよ。だから、それで寝てるみたいな(笑)。
あと、面白い映画に出会うとモチベーションになります。「世界にはこんなすごい映画あるんだ!」ってやる気が出るし、頑張らなきゃって思いますね。
人と話すことも好きなので、仲間たちと話してリフレッシュすることも多いかな。
ーお仕事をする上で心がけていることやこれから目指す俳優像などについて教えてください。
坂東:“仕事しやすい人でありたい”って思います。
一緒に作品を作っていて気持ちいい人でありたいし、仕事仲間との接し方をこれからもすごく大切にしたい。
時にぶつかることがあってもその話し合い方は大事にしたいですし、みんな気持ちよくお仕事ができる環境を整えられるよう考えながら立ち回れるポジションも担えるようになっていきたいと思っています。

坂東龍汰(ばんどうりょうた)プロフィール
1997年生まれ、北海道出身。
映画『フタリノセカイ』(2022)で映画初主演を果たし、第32回日本映画批評家大賞で新人男優賞(南俊子賞)を受賞。近年の出演作に、映画『若武者』(2024)、劇場アニメ『ふれる。』(2024)、『君の忘れ方』(2025)、『雪の花 -ともに在りて-』(2025)、『ルノワール』(2025)などがある。ドラマ『ライオンの隠れ家』(2024)では高い演技力で注目を集めた。待機作に、映画『爆弾』(10月31日公開)、ドラマ『シナントロープ』(TX10月期)がある。
●公式X @bando_ryota
●公式Instagram @ryota_bando
坂東龍汰さん出演作はこちら
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撮影:髙橋耀太