筋炎梅子
40代/女性
81 件のレビュー
4.0
タイトルから想像したのは、主人公の女性が嘘をつく物語。けれど実際は、嘘をつく彼を丸ごと愛する物語でした。 少しずつ真実に近づくなか、なんだかんだ頼れる探偵や、謎めいたストーカー女子の存在が、物語に深みとスリルを添えていました。 どんな過去があったとしても、具合の悪い女性に遭遇したとき、思わず自分のスニーカーを脱いで渡してあげるような優しさを持つ男性なら、愛したくなってしまうかもしれません。 高橋一生さんの実態がつかめない不思議な存在感と、まっすぐで行動力のあるキャリアウーマン役を演じた長澤まさみさん。二人のキャラクターは物語にぴったりとハマっていました。
2025.08.10 投稿
4.5
法医解剖医の中でも、「不自然死究明研究所(UDIラボ)」という架空の組織を舞台にした本作。実在はしませんが、実際には「監察医」などが担う、死因究明の役割に通じる物語だと感じました。 一つひとつの、そこにあったはずの命と真剣に向き合い、声なき声をすくい上げていく。やがて真実が明らかになった瞬間には、思わず鳥肌が立つような感動がありました。 そして、主題歌・米津玄師さんの「Lemon」。その冒頭の一節「夢ならばどれほどよかったでしょう」と、「苦いレモンの匂い」は、作品の中で描かれる、受け入れがたい現実や突然の別れに静かに寄り添い、消えない悲しみややりきれなさを象徴しているようでした。
2025.08.08 投稿
4.0
お団子ヘアがなんとも可愛い薬剤師を演じる石原さとみさん。 患者さん一人ひとりに強く寄り添い、ときには病院の外まで調査に飛び出す姿は、少し現実離れしているかもしれません。 でもそれ以上に、「薬」が持つ命を左右する重みと、薬剤師という職業の使命に尊さを感じました。 医師や看護師とはまた違う視点で、患者さんと向き合い続ける姿勢に、静かな感動があります。 主題歌のドリカム「YES AND NO」は、“たったイッカイやらかしたら終わり”という窮屈な現代の息苦しさの中で、自分は何を許し、どう生きるかを問いかけてくるようで、胸に刺さりました。
2025.08.07 投稿
4.0
前編を経て、スペシャル版では、「親になる」という新たなステージへ。観てみたら、やっぱりすごく“二人らしさ”にあふれていて。お互いの“初めての辛さ”を分かち合う姿に胸がじんとしました。 未曾有のコロナ禍での子育ても、二人はその都度しっかりと話し合い、最良の選択を重ねていく。「この二人なら、きっと何が起こっても大丈夫」。そう思える安心感に、ほっこりと温かい気持ちになりました。 また、独身を選ぶ人、シングルマザー、同性どうしで生きていく人たちなど、多様な仲間たちの姿が描かれている点も、今の時代をしっかり映し出していて、とても共感できました。
2025.08.07 投稿
3.5
ちょい役キャラに、オダギリジョーさん・清水ミチコさん・LiLiCoさん・石田ひかりさん、そして三谷幸喜さんまで登場するという豪華さ!そして何と言っても、実在の90歳の作家・佐藤愛子さんと、彼女を演じた草笛光子さん。お二人とも、賢くて、お世辞がなくて、かっこいい!これまで生きてこられた長い時代を振り返りつつ、現代の気になるテーマを彼女らしい視点で綴る文章は、読者としてこれからも読み続けたいと思わせてくれる、そんな魅力的なお人柄を感じました。さらに、唐澤さん演じる編集者も印象的。確かに時代遅れ感は否めないけれど、その諦めない情熱が、断筆していた愛子さんの心を動かしたのだから、拍手を送りたいです。
2025.08.05 投稿
4.0
CGアニメ映画はこれまで観たことがなかったのですが、その技術の進歩に感嘆。人間の柔らかさはもちろん、別の宇宙(ほし)の空間デザインや生き物たちの、浮遊感・スピード感・透明感…どれも美しくてため息。物語は、王道ですが、主人公エリオの機転の良さにスカッとしつつ、孤独を抱えていた心が、叔母さんとの絆で少しずつほどけていく姿には涙。吹替版のキャストも豪華。渡辺直美さん、そして松山ケンイチさんだと最後まで気が付かない悪役ぶりでした(笑)。叔母さん役の清野菜名さんも素敵で、特にエリオの友達・グロードン役の佐藤大空くんの話し方がかわいすぎました。字幕映画が好みですが、吹替版も楽しめました。
2025.08.04 投稿
5.0
「38歳で、一生付き合わなければならない病気になった」主人公。 それまでキャリアを重ねてきた女性だからこそ、「こんなはずじゃなかった」という思いは大きかったはずです。 それでも、お財布事情と相談しながらたどり着いた団地での暮らしや、「薬膳」という考え方を通じた人々との交流を経て、少しずつ「新しい自分」にしあわせを見出していく姿に、同じような病を持つ私も深く共感しました。 そして、いつもはキリッとした役柄が多い桜井ユキさんが、今回はもう驚くほど自然に「さとこさん(主人公)」そのもので、本当に素晴らしかったです。 きっと、一生大切にしたいドラマです。
2025.08.01 投稿
3.5
お酒を飲まない私は、珈琲がいつもの“一息”の大切なアイテム。 どの豆にするか選ぶ時間も、ゆっくり淹れて味わうひとときも、心身をそっと癒してくれます。 誰かに丁寧に淹れてもらった珈琲は、また格別。 そんな一杯を味わいながら、ふと立ち止まって休憩することで、何かに気づいていく主人公たち。 中でも、夏帆さん演じる女性が、上司にダメ出しされても丁寧にしたためていた手書きのお礼状が、実は大切に受け取られていたと知る場面は、うるっと来ました。「見てくれている人は、いるよ」――そんな優しいメッセージが胸に沁みます。 この珈琲屋さん、うちの近所にも来てくれないかな。
2025.07.30 投稿
4.0
実話を基にしたこの作品、観終わった後は胸が張り裂けそうでした。 ダウン症のマルコは、できないこともあるけれど、二人の愛をまっすぐに受け止めていました。主人公も、そのパートナーも、心からマルコを愛していたことが伝わってきます。 それなのに──。 70年代のアメリカでは、同性カップルが「家族」として認められない現実が立ちはだかり、理不尽な判決が下されます。 もし、もっと違う時代に生きていたら。もし、もっと寛容な社会であったなら。マルコは、命を落とさずに済んだかもしれません。 そう思うと、悔しくて、悲しくて、たまりませんでした。 ラストシーン。主人公が静かに歌うあの歌が、心に深く深く響きました。
2025.07.28 投稿
4.0
有村架純さんが出演されている作品を、今回初めてちゃんと観ました。これまで数々の作品に出演されてきた理由が、よく分かる気がします。 物語には、菅田将暉さん、仲野太賀さん、神木隆之介さんという豪華なキャストが揃い、なんとその3人がアパートで同居しながら、崖っぷちのコントグループとして活動中という設定。笑ってしまうような状況ですが、架純さん演じるヒロインは、そんな彼らを生き甲斐にしていて、その姿がまた健気。 深夜枠ならではの、なんとも言えないシュールな空気感がありつつ、コントのシーンではプッと笑えて。観終わったあとに少しだけ前を向ける気持ちになるような。続編があれば、ぜひ観たいです。
2025.07.22 投稿
4.5
一般的なミステリー作品では、カリスマ的な主人公が事件を鮮やかに解決していく展開が多いですが、『ミステリという勿れ』は少し異なります。主人公は、事件を解決したくて動いているわけではなく、むしろ「早く家に帰ってカレーが食べたい」と思っているような人(笑)。それでも、次々と巻き込まれる出来事の中で、彼の類まれな洞察力と忖度のない言葉が、当事者たちの心の奥にある“本当の思い”や“気づいていなかった事実”を、静かに浮かび上がらせていきます。 その気づきの瞬間、静かに流れるKing Gnuの「カメレオン」。心がすっと浄化されるような、静かな感動がありました。
2025.07.22 投稿
3.5
いろんな場所に置かれたピアノの横に、ただ定点カメラを設置して。 そこを訪れた人たちが、自由にピアノを弾く姿とその音を、淡々と映し出す――ナレーションもなく、音楽と空気だけで語る、とてもシンプルなドキュメンタリー。 シンガポールの空港の回が特に好きです。 青々とした緑に囲まれ、天井から豪快に降り注ぐウォーターフォール。ボタニカルガーデンのような空間の片隅に置かれたピアノに、ふと立ち寄って弾いていく人たち。それを誇らしげに見守る家族や、自然と集まってくるオーディエンスの姿もまた、あたたかい。 たった1曲の間に浮かび上がる、それぞれの人間模様。 毎回とても心地よく、楽しんで観ていました。
2025.07.22 投稿
4.5
何気なく見始めたドラマでしたが、ヒゲダンの主題歌がとてもドラマティックで、本編と共に強く印象に残っています。 この作品で、初めて「めめさん」(目黒蓮さん)を知りました。 難聴をきっかけに心を閉ざしてしまい、手話を使って少ない言葉を必死に伝える彼の姿は、とても儚くて胸に残ります。 そんな彼に、川口春奈さん演じる健常者の彼女が、まっすぐに、静かに向き合っていく姿もまた切なくて。 そして、夏帆さん演じる、生まれつき耳が聞こえない女性が言った 「手話をしなければならないから、手を繋いだり、バッグを持ったりできない」 という気持ち。「あなたは、わかる?」という手話と表情に、思わず涙がこぼれました。
2025.07.20 投稿
5.0
2007年の初回ももちろん良かったのですが、私としては、その後に加わったキャスト陣によって、よりドラマティックに進化したと感じました。 正義感が半端ない、マイルドヤンキー系事務官の北川景子さん。 切れ者なのにどこかおかしみのある検事を演じた吉田羊さん。 そして、八嶋智人さんが事務官、濱田岳さんがが検事という、抜群のバランス。 事務所の中央から見たアングルで、検事たちの部屋のドアがパタンパタンと開いて閉じて、全員がテンポよくやり取りするあのシーンは、まるで舞台で観るショーのようで、毎回つい笑ってしまいます。 会話劇としても本当に見事なシリーズです。
2025.07.18 投稿
4.0
普段はあまり「シーズン2」以降の作品を観ないのですが、これは…気がつけば「4」まで全部観てしまいました! 主題歌は変わっていたものの、BGMや同僚チームは変わらず健在で、「ああ、またこの世界に戻ってこれた」と、安心感と心地よさがありました。 なかでも印象的だったのは、早乙女さんが「誕生日」をあえて一人で、自分が本当に体験したいことにじっくり向き合う回。つい“誕生日に一人は寂しい”と思ってしまいがちだけど、「一人で過ごすのも、こんなに素敵なんだ」と気づかされました。 寂しいどころか、自由でカッコいい。こういう楽しみ方ができる大人、憧れます。早乙女さん(江口のりこさん)、大好きです!
2025.07.18 投稿
5.0
ファン人気投票+αで構成される、4年に一度のベストアルバム的なコンサート。その5回目にあたる今回のワンダーランドには、心から敬服しています。 さらに、この年はちょっと特別でした。 ステージ上では一切見せなかったけれど、美和さんはきっと、とても辛かったはず。 それを一ミリも感じさせない圧巻のパフォーマンス。 当時の東京・国立競技場で、6万人と大合唱した「何度でも」「LOVE LOVE LOVE」。 そして、大空に打ち上がった花火。 どれも胸に残っていて、今でもはっきり思い出せます。 このライブの後から、命や家族の愛をテーマにした楽曲が増えたような気がしました。
2025.07.17 投稿
4.0
「納棺師(おくりびと)」という職業は、「将来の夢」や「就職活動」といった場面では、なかなか話題に上ることのない仕事かもしれません。私自身も、この映画を通して初めてその存在を知りました。本木雅弘さん演じる納棺師が、故人を見送るために静かに、無駄のない所作で準備を進めていく姿には、思わず息をのむほど引き込まれました。美しく、敬意に満ちたその一連の動きには、まるで儀式のような神聖さがありました。故人を丁寧に送り出すという行為は、同時に、遺された人々の心をそっと整える時間でもあるのだと気づかされました。改めて、「おくりびと」という仕事の深さと尊さに、心を打たれました。
2025.07.12 投稿
5.0
全世界で共通して発生した災害、コロナ。それが、まだ正体も分からず、対策の専門家もいなかった時期に、56カ国・3,700名の命を預かる覚悟を決め、全員下船までやり遂げた災害ボランティアDMATをはじめ、医療関係者や船のクルーたちに、心の底から称賛の気持ちを抱きました。現場で次々に起こる難題に、明確なルールもない中、「人道的にどうするべきか」を軸に、各人が粛々と自分の役割を進めていく姿は、大げさな演出がなくても胸を打たれます。ドキュメンタリーとしてのリアルさが際立ちつつ、映画としての豪華客船の迫力や、心の通った繊細なシーンにも自然と引き込まれました。全人類に見てほしい!
2025.07.08 投稿